2014年05月13日

鼻血の原因を被ばくに求められてもね

 小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中の『美味しんぼ』が、ちょっとどころでない騒ぎを起こしている。

『美味しんぼの“鼻血” 双葉町が抗議』NHK News Web、2014年5月7日
     http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140507/k100142809
91000.html
(リンク切れ)
===ここから===
小学館の雑誌に連載されている漫画「美味しんぼ」(おいしんぼ)の中に、東京電力福島第一原子力発電所を訪れた主人公らが原因不明の鼻血を出す場面があり、地元の福島県双葉町が「風評被害を生じさせている」として、小学館に対して抗議文を送りました。
(後略)
===ここまで===

 この作品は、献血センターでぱらぱらと読んだ程度で、正直言って詳しくない。今回の件についても持ち合わせているのは、作中でどのような表現がされているのか、報道記事やネットでまとめている記事の情報程度だ。なので、知識が大きく限定されているため、「作中表現が風評被害を助長しているかどうか」の論議については言及せずにおく。

 さて、件の騒動の内容とは。
 主人公らが福島第一原発を訪問後、激しい疲労感や鼻血を出す症状を起こした。そしてその原因は、被ばくにある、と結論したものだ。

『原発取材後に原因不明の鼻血描写 人気漫画「美味しんぼ」に批判相次ぐ』MSN産経ニュース、2014年4月29日
     http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140429/dst140429202
90008-n1.htm

===ここから(青字強調は当方による)===
(前略)
 編集部は「鼻血や疲労感が放射線の影響によるものと断定する意図はありません」などとするコメントを同誌のサイトで発表した。

 掲載されたストーリーは、主人公の新聞記者らが同原発の取材後に鼻血を出したり疲労感に見舞われたりする描写の後、井戸川克隆・前福島県双葉町長が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ」と明かすという設定。

 一方で、主人公を診察した医師は「福島の放射線とこの鼻血とは関連づける医学的知見がありません」と話す場面もある。

 同編集部は「鼻血や疲労感は綿密な取材に基づき、作者の表現を尊重して掲載した。取材先や作者の実体験について、医師に見解を問う展開となっている」とした上で、これまでの連載では、検査で安全と証明されている食材を無理解で買わない風評被害を批判してきたと説明している。
(中略)
 北海道大学の奈良林直(ただし)教授(原子炉工学)の話「放射線の影響で鼻血が出たとなると、少なくとも1000ミリシーベルト以上を浴びた可能性がある。炉心に立ち入ったのではなく、福島第1原発を取材しただけで、これほどの放射線を浴びることは考えにくい。作中で『関連づける知見はない』との説明も同時にしているようだが、読み手に微量の放射線の影響ですぐさま体調が悪化するとの誤解を与えかねない表現といえるだろう」
===ここまで===

『鼻血原因は「被ばく」…「美味しんぼ」最新号』MSN産経ニュース、2014年5月11日
     http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140511/dst140511180
70008-n1.htm

===ここから(青字強調は当方による)===
 東京電力福島第1原発を訪問後に鼻血を出す描写が議論を呼んでいる漫画「美味しんぼ」(雁屋哲・作、花咲アキラ・画)の連載漫画誌の最新号に、福島県双葉町の井戸川克隆前町長が鼻血の原因をめぐり「被ばくしたからですよ」と語る場面があることが11日、分かった。

 「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の12日発売号では、主人公らとの会話の中で井戸川氏が「福島に鼻血が出たり、ひどい疲労感で苦しむ人が大勢いる」と指摘した上で「今の福島に住んではいけないと言いたい」と発言。

 福島大の荒木田岳准教授が除染作業の経験を基に「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と語る場面もある。

===ここまで===

 疲労感が抜けなかったり、鼻血が出たりする。なぜなら、原発の取材で被爆したからだ!
 という表現がされている、との認識で良いのかな? 作中では、取材した程度で体調不良を起こすという知見はない、との表現もしているようだけれど、作品全体で被爆が原因だと言う表現をしていたら無意味だろう。

 それよりも。
「まず病院に行って診察受けてこい」
 思わずツッコんでしまった。
 ……いや。医師の見解も問う展開だ、と記事にもあるけどさ。

 素人診断で、あるのかどうか分からない『被ばく』が原因だと結論するより、本当に自分と家族の身体が心配なら、専門の医者にかかる方が精神面でも安心できるだろう。
 ただし。
 ・病院で受診して病気か否かを診断されるより、被ばくだ被ばくだと騒ぎたいだけの人ら。
 ・病院と国(あるいは県)が共謀して被ばくを隠蔽しているから、病院は信用できないとしている人ら。
 は除く。こういう人達は『被ばく』と騒ぐことが目的であって、自他が他の病気に罹っていても信用しないものだから。どちらかと言えば、「被ばくしていました。余命○ヶ月です」の言葉こそ、この手の人達が望み、安心する報告かもしれない。

 実際、上述記事でも鼻血が出ていると証言している前町長・井戸川克隆氏は、自身の鼻血写真を公開しているものの、病院に行って診察を受けたとは話していない。
     https://twitter.com/hiroshi5865/status/465079556940914688/
photo/1


 いや。病院に行って、被ばくのための『血液検査』を希望し、断られている。

『井戸川克驕E双葉町長「私は脱毛しているし毎日鼻血が出る。血液検査も断られた」』原発問題、2012年5月8日
     http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/8e2a4898ac4c1c158642ab
f710d3770b

===ここから(赤字強調は当方による)===
この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、いや、調べられないと断られましたよ。
======

『被ばく』に関しては『内部被ばく検査』があり、甲状腺や体幹部の被ばくの度合いを、『ホールボディカウンター』と言う装置で調べる事ができる。

『ホールボディカウンター』放射線リスクリサーチセンター
     http://rrrc-tokyo.jp/
===ここから(赤字強調は当方による)===
◆放射線リスクリサーチセンターは、遮蔽のある椅子型ホールボディカウンターにより、5分間という短時間で、「甲状腺」、「体幹部」の内部被ばく検査を同時に行います。
===ここまで===

 『ホールボディカウンター』による検査は、福島県全体で実施されている。

『週刊ビッグコミックスピリッツ「美味しんぼ」に関する本県の対応について』福島県、2014年5月12日
   http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/01010d/20140512.html
===ここから===
 県では、これまで全ての県民を対象とした「県民健康調査」「甲状腺検査」「ホールボディカウンター」等により、県民の皆様の健康面への不安に応える取組を実施してまいりました。
===ここまで===

 勿論この検査は、氏が前町長を務めていた双葉町においても同様だ。

『放射線内部被ばく検査(ホールボディカウンター)のお知らせ』双葉町、2013年5月7日
     http://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/2723.htm
===ここから===
 双葉町ではこれまで、福島第一原子力発電所の事故に伴う住民の健康不安の解消と健康管理のための放射線内部被ばく検査を妊娠中の方及び高校生以下の方、原発事故後20km圏内にいた方を対象として実施してまいりました。
(中略)
検査内容
  内部被ばく検査(ホールボディカウンター)
===ここまで===

 つまり井戸川氏は、的外れな検査を病院側に希望し、断られただけだ。どうも氏はこの対応を、国の陰謀説と結論している節がありそうだ。
 と言うか、自分が町長をしていた町で、どのような被ばく検査が行われているのか、知らないはずなかろう。いちゃもんをつけるために、意味のない血液検査を申し込んだようにすら勘繰ってしまう。
 ……ひょっとしたら、ホールボディカウンターで異常が出なかったので、不満を持っているのかもしれない。あくまで憶測。

◎他参考
『前双葉町長の井戸川克隆に「鼻血が出るなら病院行け」「検査すべき」の声。美味しんぼに実名で登場で』にんじ報告、2014年5月10日
     http://blog.livedoor.jp/ninji/archives/38026928.html

 さてさて。
 素人知識の中からでも、疲労感や鼻血を伴う症状から疑われる病気、と言うものに思い当たるものがある。
『糖尿病』もしくは『糖尿病と高血圧の合併症』だ。

武田薬品工業株式会社『だるさ・倦怠感をともなう疾患』タケダ健康サイト
     http://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=darusa#anc02
===ここから(青字強調は当方による)===
9.糖尿病
糖尿病はすい臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。(中略)糖尿病が進行すると、だるさや倦怠感、のどが渇いてたくさん水分をとるために尿の量が増えるなどの症状があらわれます。
===ここまで===

『あなたの鼻血は大丈夫!?鼻血を伴う4つの怖い病気!』健康生活
     http://health-to-you.jp/nosebleed/hanadiwotomonaubyouki4136/
===ここから(青字強調は当方による)===
糖尿病が原因で鼻血!?
(前略)
それは、糖尿病にかかると血管がもろくなることが多いからです。血管がもろくなると、ほんの少しの刺激でも鼻血を出してしまいます。その為、糖尿病患者さんの中には、鼻血が頻繁に出ると言う人も、大勢いらっしゃるのです。
===ここまで===

『その鼻血は病気の前兆!?鼻血から考えられる驚きの病について』健康生活
     http://health-to-you.jp/nosebleed/hanadizentyoubyouki8675/
===ここから(青字強調は当方による)===
実は高血圧が原因の鼻血!?

鼻血は誰にでも起こる症状です。しかし、頻繁に鼻血を出す方は、高血圧である可能性も否定できません。また高血圧の方は、鼻血が出ると止まりにくいという特徴があります。中にはかなり大量出血してしまうケースもあります。
===ここまで===

 ……見当違いな薮を突いている気になってきたので、とりあえず結論。

「疲労感や鼻血の原因を『被ばく』にするより、生活習慣から来る病気の可能性を心配しようや」

 特に『美味しんぼ』みたいなグルメ漫画では、主人公達はいつも美味しいものばかり食べているから、糖尿病や高血圧になりやすいと思う。
 たまにはカロリー控えめで、糖尿病や高血圧予防になる食事、みたいなものも特集したかもしれないけれど、そこまでは知らない。もっとも、一品のカロリーは低くても、量を摂れば本末転倒なのは、改めて指摘するまでもないだろう。

 でもまさか、これだけ世間に物議を醸し出しておいて、作品の最後を
「原因は被ばくではなく、過食による糖尿病と高血圧でした」
 なんてオチで締め括ることはあるまい。
 ……あり得ない、よね?
posted by にわか旅人 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月19日

似非科学でごきげん? なクリニック

 ちょいと久し振りに『健康産業流通新聞』の「代替医療の現場から」。
 2009年3月28日と古い記事だけれど、90回目を数えるこのコラムに登場した人物は「三番町ごきげんクリニック」の院長、澤登雅一(さわのぼり・まさかず)医学博士だ。

   三番町ごきげんクリニックHP『院長プロフィール』より
     http://www.kenko.org/about_clinic/profile.html
===引用開始===
医学博士
東海大学医学部血液腫瘍内科非常勤講師
日本内科学会認定内科専門医
日本血液学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定
日本抗加齢医学会専門医
米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医
日本医師会認定産業医
1992年、東京慈恵会医科大学卒業。
血液内科医として、日本赤十字社医療センターにて14年間勤務。
2005年より三番町ごきげんクリニック院長。
===ここまで===

 プロフィールを眺める限り、素人目には1点を除けばかなりまともに見える。
 しかしHPを見れば明らかなように、「三番町ごきげんクリニック」は代替医療専門のクリニックだし、「米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医」という肩書きで、全てを台無しにしてしまった印象がある。
 ……キレーション治療に効果がない事は別のエントリで以前書いた。

 あらかじめ断っておくと、『米国先端医療学会』などとHPで銘打っていても、ACAMはAmerican College for Advancement in Medicineの略で、ゲーリー・ゴードン(Garry Gordon)博士が設立したNPOだ。正式な学会ですらない。
 ACAMは既存の医療をほぼ全面的に否定し、CAM(Complementally Alternative Medicine、代替医療)を推進している組織でもある。
 ……『キレーション療法』で調べると、Garry Gordonの名前がかなり出てくるので、ACAMはキレーション療法推奨で一番手を担っている組織と考えても良いだろう。

 しかもACAMは、キレーション療法に科学的な根拠はなく、「キレーション療法に効果があるような広告」は行わないと、1998年にFederal Trade Commission(FTC、米連邦取引委員会)と和解した経歴も持つ。

Federal Trade Commission “Medical Association Settles False Advertising Charges Over Promotion of "Chelation Therapy" December 8, 1998.
   http://www.quackwatch.org/02ConsumerProtection/ftcchelation.html
(Quackwatch のページより)
===引用開始===
The American College for Advancement in Medicine (ACAM) has agreed to settle Federal Trade Commission charges that it made unsubstantiated and false advertising claims that non-surgical, EDTA "chelation therapy" is effective in treating atherosclerosis, and that the effectiveness of the therapy has been proven by scientific studies.

米国先端医療学会(ACAM)は、アテローム性動脈硬化症の治療効果に、手術を用いないEDTA『キレーション療法』に科学的な研究で効果が証明されたかのような無根拠かつ虚偽の広告を今後行わないと、米連邦取引委員会との間で和解をした。
===ここまで===

 澤登院長がこの事を知っていて、キレーション療法を薦めているのであれば悪辣だし、知らなければ許されるというレベルの話ではない……と思うのは俺の偏見。
 ……ただし広告規制はアメリカの話で、日本は無関係だと言われればそれまで。

 以前のキレーション療法のエントリで色々と調べていた時に、このクリニックと澤登院長にも突き当たっていたので、俺的に「怪しい人物」との先入観がついているのは認める。
 その上で、話を記事に戻す。記事からの引用部は青字にする。

 私のクリニックでは大きく3つのテーマを掲げています。ひとつは血管、2番は体のさびつき(酸化)、3番は栄養バランスです。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす粥状動脈硬化は血管にコレステロールなどがたまって動脈が狭窄し、血管が詰まりやすくなった状態です。

 血管にものが詰まって動脈が狭まり動脈硬化につながるあたりは、俺は専門家ではないので断言はできないけれど、正しいと思われる。
 ……日本赤十字社で血液の専門家として14年勤務していて、それでデタラメを並べるはずないだろう。……という考えからだったのだけれど、某内視鏡の医学博士が専門分野でデタラメを並べていたのを思い出したら、自信がなくなった。

 体がさびつく(酸化する)と老化が進むことはすでに科学的に十分認められています。また、ほとんどの病気の間接的あるいは直接的な原因となることもわかっています。

 「身体の酸化=老化」の図式は、似非科学・似非健康関係のよくあるパターン。「酸化=老化」の例として、新しい鉄釘と赤錆の浮いた鉄釘との比較写真を時々見かける。

 ちょっと考えてみよう。
 ヒトの身体は鉄(Fe)でできているか? 答えはNo。Yesだと思うなら、亜鉛を身体に巻くなり、微弱電流を常時流し続けるなり、pHが10かそこらの塩基性水溶液に漬かっていればよろしい。
 そもそも鉄を例に出して同列に語る自体間違えている。
 ……生命体には新陳代謝もあり、細胞は常に更新されている。この釘に浮いたサビの与太話を信じるヒトは、釘にも新陳代謝があると考えているのか、自分には新陳代謝がないと考えているのか、一体どちらなのだろう?

 ところで、細胞の酸化と老化を比較したデータが出ているとは知らなかったな。その論文をぜひ教えてほしい。

 3番目の栄養バランスに関して今大きな問題は、土壌枯れや農薬、化学肥料などで野菜や果物に含まれる栄養素が以前に比べ非常に少なくなっていることです。例えば50年前と今とを比較すると、ニンジン1本に含まれるビタミンA量は約10分の1に減っています。私たちは1日に食品添加物を1円玉1枚程度の量をとっているといわれます。食品添加物を体内で処理するにはビタミンB群などが多く必要です。つまり、私たちは昔と同じ量を食べてはいては、もはや栄養は不十分だということです。ところが、実際に私たちにどんな栄養素が足りないかは通常の検診ではわかりません。

 ……Don’t fix it unless it is broken. 壊れていないものは直すな。このフレーズが浮かんだ。
 この辺の説明は、澤登氏の妄想全開という感じだな。

 生鮮食品の栄養素が50年程昔と比べて10分の1に減っている、という話は良く聞く。ただしサプリメントの販売を目的とするサイトや提灯記事でだが。もう少し言えば、栄養素の減少の話は、根拠のないでまかせだ。

 栄養素減少の与太話は、俺の調べた範囲では、1936年6月の『Cosmopolitan』の記事が出所のようだ。
“’Dead Doctors’ doesn't die.” National Council Against Health Fraud Newsletter, Jan/Feb 1998.
   http://www.ncahf.org/nl/1998/1-2.html
===引用開始===
It turns out that the "document" is nothing more than the reprinting of a highly speculative article about a passing fad written by a Florida farmer in the June, 1936, issue of Cosmopolitan magazine as requested by Florida's Senator Fletcher.

その『記事』は、Fletcherフロリダ州知事の要請を受けたフロリダ州の農家が、1936年6月のCosmopolitanに掲載した流行に追従した記事であり、正確性の非常に低い記事以外の何物でもない。
===ここまで===

 「食品添加物を分解するのにビタミンB群がうんたら〜」の下りは初耳、かつ意味不明。
 ……分解・吸収されなければ、そのまま体外に排出されるので、なぜ体内で一生懸命分解しなくてはならないのだろう? 食物繊維などの『難消化性』のものは、分解されずに排出されるのを知らない……とか?

 さて。
 出だしから疑問満載のこの3つのテーマを実践するために、「ごきげんクリニック」では点滴療法・サプリメント療法が主軸として行われている。その代表的なものが、『キレーション療法』と『ビタミンC大量点滴療法』だ。

 キレーション療法は既に取り上げているので、ここでは省略する。
 『ビタミンC大量点滴療法』は、分子矯正医学(Orthomolecular Therapy)や『メガビタミン』で知られる似非科学だ。

私がビタミンC大量点滴療法を知ったのは、2005年にアメリカで開催されたACAM(アメリカ先端医療学会)でした。(中略)私はずっとガンの医療に従事していたので、ビタミンC大量点滴療法の発表を聞いたとき、ガンの標準的治療法の欠点を補う治療法だと直感しました。

 ここで出てきたACAM。
 ……直感で新規の医療方法を採用されては困る。せめて査読のある論文で調査してほしい。そう思うのは俺だけ?

優先すべきは標準的治療です。なぜならばビタミンC大量点滴療法よりも標準的治療のほうが、治療効果に対する科学的根拠が高いことは事実だからです。私のクリニックでは、ガンが進行して標準的治療では難しいという方や有効な治療法がないという方を除いては、標準的治療法との併用を原則としています。

 まともな医療も提供しているのか。
 うがった見方をすれば、「効果のないビタミンCの点滴だけで、医療ネグレクトで訴訟を起こされるのを防ぐため」とも取れる。
 ……これで治る患者が出たら、標準的な治療も同時に行っていた事には触れないで、「ビタミンC大量点適法でガンが治りました」と大きく宣伝するのかな?

 私自身はクリニックでガンの患者さんにビタミンC大量点滴療法を提供するだけでなく、所属する東海大学血液腫瘍内科で、再発悪性リンパ腫に対するビタミンC大量点滴療法の第一相臨床試験を行っています。

 体験談の収集ではなく、きちんとした方法で治験を集めているらしい。
 それならそれで良いのだけれど、果たして有意義なデータが蓄積できるのやら。
 ……肯定的なデータだけでなくて、「○○人を対象に試験を行った。有意差は確認できなかった」の否定的なデータも『有意義』に入れるのは言わずもがな。

   Wikipedia『治験』
     http://xurl.jp/jiq
===引用開始===
第T相試験(フェーズ T)
自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討することを主な目的とした探索的試験である。(中略)抗がん剤などの投与自体に軽い手術や長期間の経過観察や予め副作用が予想されるものは、外科的に治療の終わった患者(表面的には健常者)に対して、補助化学療法としての試験を行うことがある。
===ここまで===

 学問の自由なので、研究すること自体の否定はしない。ただし結果が良好であれ空振りであれ、ちゃんと論文にまとめて提出してほしい。
 ……どこかの講演会で「かれこれこういう研究をしています。良好な結果が出ています」だけの話だけで終わらせずに、さ。

 さてさて。
 インタビューによれば「三番町ごきげんクリニック」で提供している医療にもまともな医療はあるようだが、HPを見る限りでは「かなり怪しい」治療法を色々と提供している「怪しいクリニック」という印象しかない。

 困ったことに、この手の怪しい医療は、なぜかメディアへの露出が多いのだよな。いわゆる『業界紙』の『健康産業流通新聞』以外では、2008年3月25日にはTBSの『これが世界のスーパードクター8 !』にも出演したらしい。
     http://tvtopic.goo.ne.jp/program/77/12117/168846/0/0/0/index.html

 放送は見ていないので内容については触れないが、ガンや循環器系の病気に悩むヒトがこれを見たら、あっさり引っかかってしまうのではないかと不安を感じる。

 「効果があるかどうかは判らないけれど、試してみないよりはマシ」と考えるのならば、それはそのヒトの自由なので、『キレーション療法』でも『ビタミンC大量点滴療法』でも受ければ良いだろう。
 だけど効果がないと報告は上げられている訳で……。
 ……そんな似非医療にお金を注ぎ込むよりも、高めのレストランで食事するなり旅行するなり、別の事に費やす方が精神的に良いと思うのだが、どうだろう?
posted by にわか旅人 at 00:59| Comment(1) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月25日

秋葉原の献血センター

 ちょいと時間が経ってしまったけれど。

   矢吹美貴『メイドさんいる?アキバ献血ルーム支える男性リピーター』読売新聞、2009年2月2日
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000029-yom-soci(リンク切れ)
===全文掲載===
 献血者数は近年、全国的に減少が続き、特に冬場は落ち込む。
 そんな中、東京・千代田区のJR秋葉原駅近くにある「アキバ献血ルーム」が盛況だ。開所以来の3年間で、献血者数を1・5倍に伸ばす勢い。アキバの街に足しげく通う男性たちが熱心な「リピーター」となり、血液の需要を支えている。

 秋葉原電気街の中心部に立つオフィスビルの1階。木目調のテーブルと約30席のいすが並ぶ待合室は週末、献血を待つ人で満席になる。本棚はアキバらしく漫画本約800冊でぎっしり。これほどの数になるのは、献血者自身が寄贈してくれるからという。

 先月下旬、土曜日。漫画を開いて順番を待っていた千葉県船橋市の新聞販売店長、佐藤智一さん(29)は「ゲームを買うついでによく寄るんです」と笑顔。献血歴16回のうち13回がアキバルームでの献血だった。

 同ルームが開所したのは2005年6月。「すべてはあれから始まった」と東京都赤十字血液センターの矢沢幸雄広報係長(50)は振り返る。06年3月の1か月間、ルームの宣伝のため、近くのフットケアサロンの女性に来てもらい、献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。

 日本赤十字社本社には「品位がない」と不評の声もあったが、反響は大きく、ネットで知った男性たちが有志を募り、約60人がいっぺんにやってきたことも。メイドのサービスはその時だけだったが、今も「メイドさんは?」と訪ねて来る人がいるという。

 他の献血ルームでも手相やタロット占い、メンタルセラピーなどの無料イベントを行い、献血者を募っているが、アキバでは月1回、手相占いをするだけ。それでも、05年度に約2万2100人だった献血者は、06年度約3万人、07年度約3万4600人と増加。最近ではますます勢いがつき、昨年夏には採血ベッドと問診室を増設したほどだ。

 特徴は男性の比率の高さ。日赤によると、都内の献血者の男女比は6対4ほどで推移しているが、アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。200と400ミリ・リットルのうち、400を選ぶ人が91%(07年)を占め、都内平均を8ポイントも上回っている。買い物や旅行のついでに立ち寄る人が多く、献血者の住所は北海道から沖縄まで。全国でも著名な血液センターになった。

 2か月に1度、買い物に来る度に立ち寄るという群馬県太田市の男性会社員土岐操さん(35)は「人とかかわるのは苦手だけど、献血なら深くかかわらなくても社会貢献できるから」。週末ごとに開かれる声優やアイドルらの無料ライブを見に来る東京都江戸川区の男性会社員(29)は「午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。寝ているだけで良いことをした気分になれる」と話した。
===ここまで===

 秋葉原の献血センターと言えば、JR秋葉原駅とその周辺が改修されるより前、公園横のプレハブ小屋(だったっけ?)を『献血センター』と言っていた頃から、たまに立ち寄っていた。新旧のセンターで合わせて10回近く秋葉原で献血しているはず。
 だけど「足しげく」は通っていない。2008年は年末の1回しか献血に行っていないし、場所もなぜか池袋の献血センターだ。

>献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。
 2006年の3月頃は最初の採血の段階で一部の数字が悪く、センターに行っても献血できずにいたのだよなぁ……。
 ……メイドに誘われ、ふらふら中に入っていった記憶はある。残念ながらマッサージはなかった。

   過去ログ
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/19464693.html
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36732609.html

>特徴は男性の比率の高さ。(中略)アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。
 煩悩全開?
 でもまぁ、輸血用の血液はいつでもどこでも足りないようだし、献血自体悪い事ではないし、問題なし。
 ……献血をHIV他感染症のチェックに使う人は除外する。

>午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。
 何と言うか……秋葉原に来る人達の特徴を良く表しているなぁ、と感心。
 ……俺はイベントには行かないけどな。

 さて。
 昨年末は400mL献血だったので、次回献血ができるのは今年3月になってから。
 PCの周辺機器を買うかどうか迷い中だけど、秋葉原に行く事があったら、久々にここの献血センターにでも行ってみようかな?
posted by にわか旅人 at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月11日

自閉症の原因にワクチンは関係ない

 前回紹介したムーパパ氏のブログだが、2009年1月下旬に削除されてしまった。かれこれ3年更新せずに放置していたから、プロバイダの方で削除したのだろうか。
 ……当ブログでも取り上げている『ナチュラルクリニック代々木』の話もあり、色々と参考にしたかっただけに残念な事だ。

 さて。
 前回は自閉症とキレーション治療の関係について、つらつらと書き連ねてみた。その中で、「自閉症の原因は水銀の蓄積である」旨の風説が流布されていると、ちらと述べた。
 この時は、「予防接種ワクチン(に使われている水銀)が自閉症の原因だ」と主張するサイトはいくつか見つけていたものの、主旨から外れていたので詳しくは調べていなかった。
 それが今月になり2件の関連するサイトが出てきたので、とりあえず紹介する事にした。3つ目は、『忘却からの帰還』で取り上げていた元記事。
 ……NATROM氏のブックマークに感謝。

  『ワクチンと自閉症:多くの仮説があるが何の相関もない』食品安全情報blog、2009年2月2日
     http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090202#p1
  『「自閉症とMMRワクチンの関連を示す」論文のデータがフェイクだった by Times』忘却からの帰還、2009年2月9日
     http://transact.seesaa.net/article/113887944.html
  Brian Deer “MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism”
The Sunday Times, February 8, 2009.
     http://thetim.es/1qK1KNN

 これらによると、だ。
 ワクチンが自閉症の原因だと発表したのはAndrew Wakefieldと研究チームで、その論文は1998年2月の『The Lancet Medical Journal』にて掲載された。
 予防接種を受けた12人中8人の子供の家族が、自閉症の原因はMMR(新三種混合)ワクチンの接種後数日で、自閉症の症状が出てきたと言うものだ。

 実はこの論文、Lancet誌は後日取り消している。
  『英医学雑誌が「ワクチンと自閉症の関連示した論文の掲載は誤り」と発表』 A Forward-
looking Child Psychiatrist
、2004年3月5日
     http://bit.ly/1jEG77Q

 しかしながら、Lancet誌のこの論文が火付け役となり、自閉症の原因は予防接種ワクチンに在りとする「いわゆるカルト」の土壌ができあがったのだろう……とは、俺の勝手な想像。
 ……死に直結しない自閉症を避けるために、子供の生死に関わるリスク回避を怠る行為は、優先順位の選択ではなくて虐待の一種だろ? しかもこれは1児童・1家族の問題でなく、地域全体の問題にもなりかねない……「反社会的な宗教団体」という事で、ここではカルトと言わせてもらった。

 「ワクチン有害説」「ワクチン否定論」の走りとなったWakefieldの論文に話を戻す。
 対象が12人と少数なだけでも信頼性は薄いと思うのだが、Deerの記事によると、元となった12人のデータが、実はねつ造だったらしい。
 WakefieldらがLancet誌に掲載した12人の症状と、病院側で調査した12人の症状は異なっていたと言うのだ。論文ではワクチン接種後に自閉症の症状が出たと書いてあったのが、病院の調査では、1人を除きワクチンを接種する前から症状は出ていたそうだ。
 ……Wakefieldはねつ造については否定しているが、2004年のBBC Newsの記事によると、ワクチンで自閉症になったと訴訟中の家族から研究費用をもらっていたようなので、どの程度の信頼性があるのやら……。

   “MMR study doctor calls for probe” BBC News, February 22, 2004.
     http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/3512079.stm

 とは言え。
 ワクチンと自閉症とは無関係だとする論文は、Wakefieldの後にもいくつも出ていたのに、「ワクチン原因説」を信じる人はいる。今さら元の論文がデマだと知れたところで、その人達がこれまでの信仰を変えたりはしないだろうな。
 ……そしてそれに便乗して、キレーション治療など効果の期待できない「いかがわしい医療」で商売する医師・医学博士の跳梁跋扈も。

 最後に。
 前回のエントリでは、「子供が自閉症になった原因が、自分達の遺伝的特質にあるのを認めたくないから、自責感を避ける方便に水銀に原因を押し付けている」という旨の一文を書いた。

 『忘却からの帰還』では、「ワクチン否定論者」がワクチン否定論を信じたがる別の説明をしている。
===引用開始===
人間の精神は、世界はランダムであると考えるよりも、神秘的で目に見えない力が秘かに働いていると信じたがる。そして、あらゆるデータに、人々は誤ったパターンを見出し、株式市場にトレンドを見出し、なじみの人間に陰謀を見出す。コントロールを失うと、たとえそれが空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求め、合理的な人々が実際には存在しないパターンを見出すようになる。
   (中略)
このような人間の推論傾向を思えば、「たまたま、自分たちの子供が自閉症の遺伝要因を持っていた」と考えるよりも「製薬会社の製造したワクチンによって、自分たちの子供が自閉症になった」と考える方が自然である。
===ここまで===

 ……なるほど。陰謀論者の思考の可能性もあるか。
 ただし陰謀論に踏み込んだ話は、個人的には勘弁してほしいところ。
 ……巡回先の似非科学批判のブログに出没する陰謀論者のコメント内容が、俺には理解不能なので。
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2009年01月01日

自閉症とキレーション治療

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて。
 読んでいて少々気になるブログを見つけた。似非科学や似非医療に引っかかった人で、自閉症の子供を持つ父親(ムーパパ)のブログだ。

自閉症のサプリメント
   http://diary.jp.aol.com/agknumd7/

 藁にもすがりたい気持ちから似非科学に引っかかったと言うより、科学リテラシーの著しい欠落が原因で引っかかってしまったという印象を受けた。本人に自覚はないのだろうが、洗脳され搾取されていく様が痛々しい。
 ……2006年1月の更新が最後になっているが、果たして元気でいるのだろうか?

 良い歳をした大人が、知識不足から変なものに引っかかるのは、半分自己責任のようなものだろう。問題は、似非科学に引っかかった親のせいで、子供が虐待される事だ。
 ……殴る蹴るだけが虐待ではなく、医学的根拠のない試験の結果を元に、これまた医学的根拠のない商品を飲食させるというのも、虐待の一種だろ?

 虐待云々の話は、とりあえずここでは触れないとして。
 ムーパパが子供の治療の「つもり」で取り組んでいる1つが『キレーション療法』だ。

 『日本キレーション治療普及協会』の説明によると、だ。
   http://www.chelation.jp/therapy/therapy.html
===引用開始===
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と呼ばれる合成アミノ酸をビタミンやミネラルと共に定期的に点滴する治療方法です。EDTAが金属イオンをキール(ギリシャ語でカニのはさみ)のように掴みとり結合する性質から、キレーションという名前がついたと言われています。

EDTAキレーション治療は、有害金属を取り除く効果があり、抗酸化作用により血管を若返らせ、細胞を活性化する効果があります。抗加齢医学の領域でキレーション治療が注目される理由として、動脈硬化治療効果や有害金属除去による様々な変性疾患の予防と治療効果が期待できる点が挙げられます。
===ここまで===

 キレーションの名前の由来については間違っていない。
 キレートと言うのは、1つの金属イオンに対し2箇所以上で塩になる場合だったような……記憶が曖昧。

 キレーションにより有害金属を取り除くとあるが、キレート剤が有害金属(何をもって「有害」とするのかは不明)と選択的に結合し、体外に排出されるという仕組みに、根拠のある文献は俺がざっと調べた範囲では、鉛以外には見当たらなかった。
 ……鉛中毒患者の治療には使用されているようだが、鉛以外の重金属中毒の治療にも有効と示唆する文献は見つけられなかった。

Ogawa M, Nakajima Y, Kubota R, Endo Y. « Two Cases of Acute Lead Poisoning due to Occupational Exposure to Lead.” Clinical Toxicology, 2008 Apr; 46(4):332-5.
   http://mo-v.jp/?e3db

 ましてやキレーションによる抗酸化作用や、細胞を活性化させるという説明に、根拠の有無を問うまでもない。

 さて。
 このキレーション治療は、ムーパパの例のように、身内(特に子供)に自閉症を持つ家族にかなり広まっているらしい。自閉症の原因が重金属(水銀、Hg)の蓄積によるものと信じているようだ。
 ……水銀原因説を唱えているのは、俺の見たところ「怪しい」サイトが多い。

 自閉児の親からすれば、人並みにしてやりたいという気持ちもあるだろうし、その気持ちを否定するつもりはない。藁にもすがる思いで、この手の耳に心地良く聞こえる似非医療に手を出す気持ちは……残念ながら親ではないので共感できない。
 ……自閉症は先天性のものだそうで、親の自責感を避ける方便に水銀に責任を押し付けるのであれば、なおさらに親の気持ちに共感はできない。

 自閉症の原因はともかく。
 万が一キレーション治療で自閉症が改善されるのであれば、結果を裏付けるデータを取り、正規の医療につなげれば良い。
 しかし実際は、親(あるいは家族や本人)の弱みに付け込んだ商売なので、知見データなどあるはずがなく、自閉症児を持つ家族を称する人の体験談が目につく。

 科学的な根拠がないという事は、平たく言えば、安全性も危険性も確認されていない「医療の真似事」な訳で、実際、キレーション治療は「安全」とは言い難いようだ。キレーション治療が直接の原因ではないが、処方ミスによる死亡例が子供(2歳と5歳)で2件、大人で1件ある。
 ……5歳児の方は自閉症があったという話だから、親が治療目的でキレーション治療を受けさせていたのでは、とは俺の勝手な憶測。

“FDA Links Child Deaths to Chelation Therapy. Drug used to treat lead, mercury poisoning; often used for autism” MSNBC March 2, 2006.
  http://www.msnbc.msn.com/id/11640868/
Centers for Disease Control and Prevention “Deaths Associated with Hypocalcemia from Chelation Therapy --- Texas, Pennsylvania, and Oregon, 2003—2005” March 3, 2006. / 55(08); 204-207
   http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5508a3.htm

 報告によると、子供2人の死因となった処方ミスとは、同じEDTA塩(?)でもNa塩かCa塩かの違いで、どちらも医療施設には普通にある薬品らしい。ただしNa2EDTAは、子供の重金属中毒には使われないらしい。
 ……キレーション療法ではCaEDTAの方を使うようだが、どちらのEDTAにせよ、水銀中毒とその解毒作用に、科学的な根拠はない。

 「EDTAによる水銀の解毒作用」に科学的な根拠はないが、「水銀と自閉症」の関係を「否定する」資料なら見つかった。

Patrick Ip, Virginia Wong, Marco Ho, Joseph Lee, and Wilfred Wong, “Mercury Exposure in Children With Autistic Spectrum Disorder: Case-Control Study” Journal of Child Neurology, Vol. 19, No. 6, 431-434 (2004)
   http://jcn.sagepub.com/cgi/content/abstract/19/6/431

 こちらの資料によると、2000年に5ヶ月間に渡るコホート調査を行っている。
 対象としたのは82人の自閉症児(平均年齢7.2歳)で、55人の定型発達児(平均年齢7.8歳)の、毛髪と血液中の水銀量を計測・比較している。
 自閉症児の血液中の水銀量が平均19.53 nmol/Lなのに対し、定型発達児は17.68 nmol/L。毛髪分析では自閉症児が2.26 ppmなのに対して定型発達児2.07 ppmと、数値は誤差の範囲内であるとしている。
 つまり、水銀と自閉症に関連はないという結論だ。
 ……2004年の文献なので、新しい文献が出ている可能性はある。

 ちなみに毛髪検査に医学的な根拠はない。

 そもそも、なぜ「水銀が体内(主に脳)に蓄積すると自閉症になる」という与太話が出回っているのか、その出所が不明瞭なのだよな。
 ……定型発達者と比較して、自閉症者の脳から有意差のある水銀が測定された、という報告はないようだ。

 検索してみると、日本では2004年3月にTBSの『報道特集』で自閉症の治療としてキレーション治療が紹介されたようだ。
 ……あらかじめ言うまでもなく、自閉症を真面目に取り扱う組織からは、放送内容を否定されている。

NPO法人東京都自閉症協会『自閉症と水銀中毒について―キレート療法は有効か』
   http://www.autism.jp/etc_suigin.html
千葉県自閉症協会『TBSテレビ報道特集「自閉症の原因は水銀?」について』2004年3月14日
   http://www.interq.or.jp/japan/aschiba/tbs_autism_mercury.html
矢崎史郎『自閉症と水銀−TBS報道特集を斬る−』
   http://www.geocities.jp/symyky1019/Autism-mercury.htm

 TBSが取り上げる前でも、キレーション治療が自閉症に有効だとの与太話はあった訳で、似非医療としてのキレーション治療は、1960年代まで遡る。
 ……60年代において既に、キレーション治療推奨者らが主張する効果はないとの報告は上げられているし、何年か毎にこまめにキレーション療法の効果を否定する報告は提出されている。

Green, Saul “Chelation Therapy: Unproven Claims and Unsound Theories” Quackwatch
   http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/chelation.html
American Heart Association “Questions and Answers about Chelation Therapy”
   http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3000843

 ただし90年代辺りまでは、キレーション治療は心臓病などの疾患に効果があるとしていたようで、自閉症との関係は言われていなかったように見受けられる。
 ……1989年にFDAとAmerican Heart Associationのレポートから、『10大健康詐欺』の1つとしてキレーション治療が取り上げられたのを境に、自閉症治療に移行したのではないかと、俺の勝手な憶測。

 キレーション治療が自閉症の治療(他に解毒作用)に効果があると主張するのであれば、キレーション療法を推奨する団体や医師・医学博士は両手でも足りない程いるのだから、誰かが文献にまとめて提出すれば良い。
 にも関わらず、キレート療法の効果と安全性についての研究をしている業者はいないようで、太っ腹にもThe National Institutes of Health (NIH)が研究費用をねん出したらしい。

Atwood KC, Woeckner E, Baratz RS, Sampson WI. “Why the NIH Trial to Assess Chelation Therapy (TACT) should be abandoned.” Medscape Journal of Medicine, 2008 May 13;10(5):115.
     http://mo-v.jp/?e3dd

 Atwoodらは、始めからキレーション療法の有効性の研究をする必要はないと説いていたらしいけれど、キレーション療法を信じる側の勢いを止める事は出来なかったということか。
 この調査は2009年に終わる予定だ。

 これ以上続けると、自閉症とは関係がなくなってくるので終わりにする。

 とりあえず。
 素人の俺が調べても、これだけ資料が出てくるのだから、キレーション治療がいかに胡散臭い、もっと言ってしまえば「いかがわしい」治療なのかは判りそうなものだ。
 それでもこの治療法に手を出す自閉症児を持つ親は、十分な情報が得られないからではなく、進んで自分の子供を人体実験にしているか、虐待しているように見える。

 一番悪いのは、そういう親の弱みに付け込んで、期待すらできない医療やサプリメントを売り物にしている業者だとしても、ね。
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2008年09月16日

水素水で美容商品開発?

 この1年程、多忙のために展示会にまったく足を運べずにいる。

 2008年9月3日の『健康産業新聞』のコラム「話題追跡」で、今回行き損ねた『ダイエット&ビューティーフェア2008』についてちょっと触れていた。
===引用開始===
 先月27日に閉幕した「ダイエット&ビューティーフェア2008」では、水素化粧品をはじめ、水素水を浸したコットンをパックに使用する新たな施術を提案する企業、水素水をスパ向けに提案する企業――など、水素水の美容用途での商品開発が活発化していることがうかがえた。これまでの水素水や水素サプリメント、化粧品など美容商材が加わることで、水素マーケットの相乗的な拡大が期待されている。
===ここまで===

 俺的には、「水素水」は「水素原子が安定状態で単体で存在し、優先的に活性酸素と結合して水になる」という似非科学の「活性水素」とほぼ同義なので、どうしても否定的になってしまう。
 ただし「水素水」とは、水素を溶解させた水の事で、「活性水素」とは別物だ。
 ……水素の溶解度は知らないが、さほど大きくないと思うのだが……とにかく頭の中で整理しておかないとな、うん。

 さて。
 この水素水がどうやら健康に良さそうだ、という話を持ち出してきたのは、日本医科大学の太田成男教授だ。

読売新聞『水素水に記憶力低下抑制効果、日医大教授がマウスで確認』2008年7月19日
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm(リンク切れ)
===全文掲載===
 水素水を飲むことで、記憶力(認知機能)の低下を抑えられることを日本医大の太田成男教授らが動物実験で確認した。

 認知症の予防や治療にも道を開く成果で、科学誌ニューロサイコファーマコロジー電子版に発表した。

 ストレスによって記憶力が低下することは知られている。研究チームは、マウスを狭い空間に閉じ込め、餌を与えないなどのストレスを加えたうえで、記憶力が、水素が大量に溶け込んだ水と通常の水を飲ませた場合でどのくらい違うか、10匹ずつ、三つの方法で6週間かけて比較した。

 その結果、いずれの場合も水素水を飲ませた方が記憶力が顕著に高く、ストレスのないマウスとほぼ同等だった。記憶をつかさどる脳の領域(海馬)における神経幹細胞の増殖能力も同様の傾向だった。

 研究チームは昨年、水素が活性酸素を取り除き、脳梗塞による脳障害を半減させることを確認。認知症は活性酸素などによって神経細胞が変性する病気とされるが、太田教授は「水素水を飲まないマウスの海馬には活性酸素によって作られた物質が蓄積していた。水素水が活性酸素によって低下した神経細胞の増殖能力を回復させ、記憶力低下も抑制したと考えられる」と話している。
===ここまで===

 記事で取り上げている水素水は、飲用つまり内用で使われているのであって、化粧品やらスパ等の外用での有効性には触れていない。
 ……しかもこの研究は記憶力に関するもので、ダイエットや美容に関係する話ですらない。

 念のため、『ニューロサイコファーマコロジー』に掲載された論文の概要も読んでみた。

Nagata K, Nakashima-Kamimura N, Mikami T, Ohsawa I, Ohta S. “Consumption of Molecular Hydrogen Prevents the Stress-Induced Impairments in Hippocampus-Dependent Learning Tasks during Chronic Physical Restraint in Mice.” Neuropsychopharmacology. 2008 Jun 18.
http://xurl.jp/gzc

 概要には何匹のマウスを使ったか、マウスの体重で何ml/kgあたりの水素水を与えたか、実験は何日行ったのか等の説明はない。水素を飽和状態まで溶解させたとあるけれど、空気の分圧の関係で水素はすぐに抜けてしまうと思うのだが……どう解決しているのかの記載もない。
 ……あくまで素人考えなので、俺の素朴な疑問が、実験にどれだけ影響するものなのかは知らない。

 ともかく、だ。
 概要によれば、ストレス下にあるマウスに水素水を飲ませると、記憶力がストレスを受けていないマウス並になったとある。ストレスを受けていないマウスに水素水を飲ませても、記憶力に変化はなかったという下りは、新聞記事の方にはない。

 さてさて。
 概要からは水素水を外用に用いたと、俺には読み取れないのだよな。
 まあ、この手の美容や健康関連の業者は、間違えても効果云々を口にする訳にはいかない。もっと平たく言えば、薬事法で認められている以上の効果を謳えないし、効果があってもいけない。動物実験のレベルで、ましてや外用ではなく内用の結果であっても、「○○○○大学の△△△教授が□□□□学会で発表しました」という箔があれば、利用できる範囲で利用するし商品化にもする……のだろう。
 ……こういう一種の詐欺まがいな行為が業界として健全なのか、業界を健全にするのかどうかの是非は、ここでは触れずにおく。

 水素水を題材に、どんな怪しい商品を作ろうが、仮に構わないとしても……化粧品やスパに使うのは失敗だと思うだけどね。上の方で述べたけれど、空気分圧の関係で、製造時に水素が飽和状態になっていても、運送時で水素が抜け切ってしまう怖れがなきにしもあらず、コットン等なら開封直後で水素は確実に抜けてしまう訳で。
 ……何年か後に、水素水化粧品で宣伝通りの水素が検出されなかったと、公取委から排除命令が出なければ良いな、と。

 ……ちなみに、日本医科大の太田教授については、『PSJ渋谷研究所X』の方で詳しく触れている。
   PSJ渋谷研究所X『水素水と認知症?』2008年7月19日
     http://shibuken.seesaa.net/article/103164964.html

 水素水の基本を、こちらのサイトでまとめている。
   瀬名NEWS『水素水研究の基本を理解するためのリンク集』2008年8月11日
     http://news.senahideaki.com/article/103365233.html

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2008年01月20日

ハーバライフ製品で肝臓障害

 『独立行政法人 国立健康・栄養研究所』のHPで、ハーバライフ社の製品が原因による肝毒性の調査報告が、2008年1月17日付で発表された。[1]

===引用開始===
ヨーロッパの肝臓専門の科学雑誌Journal of Hepatologyの2007年10月号に、ハーバライフ社(サプリメントや食品を販売している会社)の製品摂取と肝障害の関連を示唆する2つの研究論文が掲載されました。これを受けて、2008年1月14日、フィンランド食品安全局(EVIRA:Finnish Food Safety Authority)は、ハーバライフ社に評価のための詳細な追加情報の提供を求め、フィンランドで販売されているハーバライフ製品の調査を行うことにしています。
===ここまで===

 ここではハーバライフ社を「サプリメントや食品を販売している会社」としか述べていないので、少し追加する。

 ハーバライフ社では販売方式を「ダイレクト・セリング」と称している[2]が、これはいわゆるマルチ商法―法律では『特定商取引に関する法律』で「連鎖販売取引」に区分される―で、ハーバライフ社はマルチ商法の主催企業だ。

===引用開始(2008年1月19日時)===
ハーバライフ・オブ・ジャパン株式会社
所在地:〒107-8546 東京都港区赤坂2-9-11
配送センター:〒437-0066 静岡県袋井市山科2819
電話:03-5549-0111(会社代表)
設立:1992年11月25日
資本金:3億9,000万円
代表取締役社長:ウィリアム・ラーン
   (中略)
販売方式:ダイレクト・セリング
===ここまで===

 また、フィンランド食品安全局はハーバライフ社に詳細な追加情報を求めたとあるが、当のハーバライフ社(アメリカ本社なのかフィンランド支社のかは不明)は以前にも協力要請を受けても拒否したという経緯がある。[3]
 ……理由については色々と考えられるが推測の域を出ないので、ここでは触れないでおく。

 さて。
 ハーバライフ社の製品と肝毒素との関連を示唆する論文2本だが、スイスとイスラエルの2ヵ国での調査によるものだ。医療関係の専門家ではないので、病名には触れない。

●イスラエルでの事例[4]
 2004年にハーバライフ社製品を飲用して急性肝炎を発症した4件の事例を元に、イスラエル健康省(Ministry of Health)がイスラエル国内の全病院に対し調査を行った。
 結果、ハーバライフ社製品の使用者12名が、原因不明の肝臓障害を起こしていたことが判明。11名は肝炎、1名は肝機能停止による移植手術を要したそうだ。
 この論文では最後に、ハーバライフ社製品の飲食と急性肝炎の相関関係は明らかであり、消費者、特に肝臓に病気を持つ消費者は、商品の飲食に注意するように、と締めくくっている。

 ……病院送りになった12人のうち3人が、回復後にハーバライフ製品の飲食を再開、2度目の肝炎になりかけたそうで、もう何と言うか……。

●スイスでの事例[5]
 ハーバライフ社製品と肝炎の関係調査のため、SchoepferとEngelらはスイス国内の全ての公立病院に質問状を送った。12件の事例の回答があり、ハーバライフ社製品による被害と判断される事例は10だった。うち1人は肝機能の停止により移植手術を要したそうだ。
 この論文では、ハーバライフ社製品は重篤な肝臓毒の可能性があるとし、内容物の詳細な分析と、公的機関の事後対応の強化が必要であると述べている。

==========
 イスラエルとスイスの報告を合わせると、計22名が肝炎による治療を病院で受け、うち2名は肝臓移植が必要なほどの重篤な状態だった、と……。肝臓移植患者の片方、おそらくイスラエルの患者は、移植後も回復せずに死亡している。[3]
 ……因果関係のはっきりしていない被害者も大勢いるな、この分だと。

 論文では、1日にどの程度の量を飲食していたかの記載がないが、肝炎を発症するまで11ヵ月ほどかかっている(イスラエルの事例)ので、ひょっとしたらラベルにある目安量を食べていたのかもしれない。
 それでも3~17種類食べていたようで、そりゃあ具合も悪くしそうだと、素人ながらに納得。


◎参考インターネット◎
[1] 『フィンランド食品安全局(EVIRA)がハーバライフ社製品との因果関係が疑われる肝毒性を調査(080117)』独立行政法人 国立健康・栄養研究所、2008年1月19日
     http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail983.html
[2] ハーバライフ・オブ・ジャパン株式会社HP『会社概要』
     http://www.herbalife.co.jp/hl_about/about1.html
[3] C. P. Day “Slimming at all costs: Herbalife® -induced liver injury.” Journal of Hepatology 47 (2007) 444-446
     http://urx.nu/8gBd
[4] Elinav E, Pinsker G, Safadi R, et. al “Association between consumption of Herbalife nutritional supplements and acute hepatotoxicity.” Journal of Hepatology, 2007 Oct;47(4):514-20. Epub 2007 Jul 26.
     http://1.usa.gov/1jsCotM
[5] Schoepfer AM, Engel A, Fattinger K, et al. “Herbal does not mean innocuous: ten cases of severe hepatotoxicity associated with dietary supplements from Herbalife products.” Journal of Hepatology, 2007 Oct;47(4):521-6. Epub 2007 Jul 24.
     http://1.usa.gov/1qCw5O3

◎その他参考◎
・国立医薬品食品衛生研究所 安全情報室『EVIRAはハーバライフ社製品との関連が疑われている肝毒性を調査』食品安全情報 No. 2/ 2008 (2008.01.16), pp34-35
http://hfnet.nih.go.jp/usr/annzenn/image/080117/080117-1.pdf
・”STOP PRESS: Liver Damage associated with Herbalife use:” Health Span, September 4, 2007.
http://www.healthspanlife.co.za/news-room.html
・”Herbalife's South Africa CEO responds reassuringly:” Health Span, September 4, 2007.
http://www.healthspanlife.co.za/news-room.html
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2007年12月18日

脂肪溶解注射『メソセラピー』にご注意

 脂肪を溶解する薬液を患部に注射し、その部分の脂肪やセルライトを除去。手軽に部分痩せのできる美容法。

 ……が売り文句の美容整形の医療がある。
 リポセラピー(Lipotherapy)、リポディソルブ(Lipodissolve)、あるいはメソセラピー(Mesotherapy)などと呼ばれる美容法だ[1, 2]。
 日本では『脂肪溶解注射』と『メソセラピー』が一般的かもしれない。

 ちょっと乱暴になるが、『日本メソセラピー協会』なるものが設立されているのもあるので。
 「美容を目的に、脂肪やセルライトを溶解する薬液を皮下注射する医療」
 を、このエントリでは『メソセラピー』で一括する。

 さて。
 メソセラピーは注射なので、医師でないと扱えない。美容外科や美容クリニックで施術してもらえる。それ以外の場所で施術する施設と人物は、医師法違反の可能性があるので近づいてはいけない。
 ……できるなら国民の義務として、警察に通報してほしいところだ。

 病院で扱う治療法だから、効果を期待できる痩身技術だと思われるだろう。
 ……が、「病院だから」「効果」があると「言い切れない」のは、以前別の場所で書いた。[3]

 病院で採用される治療法は、そこの医師が自身で判断・採用するものであり、国や地元の保健所があれこれ口出しできるものではない。

 つまり。
 「効果も何も期待できないが、保険対象外の治療なので、好きなだけぼったくりのできる 医療」を採用している病院・クリニックが実在する可能性はある訳だ。
 ……保健内診療と保険外診療で、医師の取れる金額にどれだけの差があるのか。そこまでは知らない。

●歴史
 この医療法を提唱したのは、フランスのミッシェル・ピストール(Michel Pistor, 1924-2003)医師だ。
 1948年〜1952年の間に、この医療法の土台が形成され、1987年にはフランスで正式な医療として採用されるに至っている。メソセラピーの学部もあるとの話だ。[1, 4]

 メソセラピーを推奨するサイトでは、ピストール博士が「美容法として提唱した」と表現しているが、大 き な 間 違 い だ 。
 あるいは 意 図 的 に 誤 解 を 招 く 書 き 方 を し て い る 。

 元々のピストール博士の研究は、「耳鳴りや疼痛・慢性痛、リンパ腺異常」の局所的な治療であり、1952年に発表された最初の論文も、疼痛治療に関する内容だ。[2, 5]

 美 容 と は 無 関 係 だ 。

 疼痛治療から脂肪溶解への方向転換がいつ頃からなのかは定かでない。
 ともかく、メソセラピーが美容法としての取り沙汰されるようになったのは、ここ数年での動きだ。

 疼痛治療としてはいくつもの論文が発表されてきているこの研究も、美容法としての論文はほとんど提出されていない。
 それどころか、アメリカでは2004年頃からメソセラピーの効果を疑問視する声や、マイコバクテリア感染症の報告と警告も、専門誌ばかりでなくメディアでも取り上げられ始められている。[1, 6, 7]

 海外での動きを知ってか知らずか、日本では2004年11月、メソセラピーを「肯定的に」広めるために『日本メソセラピー協会』を称する団体が設立された。[8]
 ただし『日本メソセラピー協会』は社団法人やNPO、医師らで立ち上げた団体ではない。株式会社J・B・Aの1部門だ。

●メソセラピーの効果
 メソセラピーとは、脂肪を溶解させる薬液を皮下注射し、脂肪細胞を死滅(ないしは脂肪を吐き出させ)、血流に乗せて体外へ排出させる、というものだ。
 ただし1回では効果が期待できないので、2週間〜1ヶ月に1度の割合で何度か通うことになる。

 皮下注射なので、メタボリックシンドロームに言われる内臓脂肪の除去や体重の減少に効果はないが、部分痩せやセルライト除去に効果がある、としている。
 ……ただし体重の減少にも効果があると謳うサイトも多々ある。

 メソセラピーの効果が体重にまで及ぶのかどうか、それすらもはっきりしていないのだから、実際の効果が不明瞭なのだろうとの想像はつく。

 この予想がなくとも、メソセラピーの理論は、素人目にはかなりこじつけているようにしか思えないのだよな。

 脂肪を溶解すると言われる注射には、主成分にレシチンが使われる。[1, 2, 4, 5, 9]
 これ自体は、卵黄や大豆に含まれる成分で、食品加工業でも乳化剤として使われる食品添加物だ。別に怪しい成分ではない。健康食品としては、脂肪燃焼や脳の働きを良くするとかの文言でのサプリメントがある。
 ……あくまで食品なので、効果を期待してはいけない。

 これを皮下注射? こういう使い方をする成分ではないだろ?

mesotherapy.jpg

 見た感じでは、レシチンを注射する事で、脂肪を乳化させるのが目的のようだ。
 だけど脂肪細胞内に蓄積された脂肪を乳化させるには、薬液が細胞内に入っていかないとならない訳で……ピンポイントで細胞を1つ1つ狙っていくのでもない限り、薬液が無駄になるとしか思えないのだが……。
 ……何かの偶然で薬液が脂肪細胞に入ったとしても、乳化するとは到底思えないのだけどね、直感的に。

 仮に。
 「浸透圧で脂肪が脂肪細胞からにじみ出てくるので、脂肪細胞は小さくなるし、脂肪も乳化するのだ」
 などと中学生でも笑うおかしな理屈を展開するようなら、話は簡単。
 こいつは医者じゃない。

 で、更に10万歩ほど譲って、脂肪細胞内の脂肪が、細胞の外に出て乳化されて、血液に入ったとして、だ。
 どうやって体外に排出されるのだ?
 メソセラピーの薬液を製造・販売する企業の主張だと、「血流に混じった脂肪は、普通に新陳代謝される」そうだが。[1]
 ……結局は身体の別の場所で吸収されて、戻ってくるという事だよな。

 俺みたいな素人だからこう考えるのであって、「メソセラピーは美容の医療として幅広く認知されている」という根拠があれば、俺が笑われるだけで済むのだけど……メソセラピーを肯定する科学的な根拠は、ほとんどなかったりする。

●注射液の内容
 注射液の内容は、各種のビタミン剤やハーブエキス、レシチンなどのリン脂質の混合物という話だ。しかし薬液の製造元や商品毎に内容が異なるため、何が充填されているか正確な内容については不明だ。[2, 4, 5, 7]
 一部ではホメオパシーのレメディすら使われているとか。[9]

 英語版のWikipediaでは、良く使用される成分のリストが掲載されている[4]。一部医薬品のようだが、専門家ではないので1つ1つの検証は手に余る。食品添加物など医薬とは関係のない成分などもあるようだ。

 先にレシチンが使われると書いたが、その一種であるホスファチジルセリンが実は良く使われる薬剤らしい。[1]

 ちなみに、実際に医薬品として認可されている成分もある事はある。しかしその効果も、「脂肪溶解に効果がある」という名目では許可されていない。

 「脂肪を溶解する効果がある」として、医薬品の申請が取れているものは、2007年12月現在でも存在しない。

●メソセラピーの安全性
 メソセラピーを推奨するサイトや企業(病院)の多くは、「メソセラピーは従来の脂肪吸引と比べて手軽で、なおかつ安全である」と主張している。
 ひどいのになると、世界の多くの国で効果と安全性が確認され、ヨーロッパや南米など20近い国々で脂肪吸引に替わる新技術になりつつある、とまで謳っている。
 ……薬液の内容物すら定かでない代物が、果たして安全なのか?

 「メソセラピーは安全だ。なぜなら、我々の施術を受けて、被害者が出たとの報告は受けていないからだ」[1]
 これが大概のメソセラピー従事者に共通する『安全性』の根拠だろう。

 メソセラピーでは数千人の人体実験を行ってきた。
 何かしらの事故が起きたとしても、それは病院の殺菌状態が悪かったか、施術後に感染した可能性もある。そこまで面倒は見きれない。[1]
 こういう理屈だ。
 ……人体実験(臨床試験ではない)をしている段階で、話にならない。

●メソセラピーによる健康被害
 メソセラピーによる健康被害は、残念ながら実は報告されている。幸い日本での出来事ではなく、ベネズエラのカラカス市での調査だ。[6]

 2002年3月〜2003年12月までの間にメソセラピーを受け、皮膚と柔部組織に感染症を起こしたケースがある。
 そのうちの患者49人の皮膚組織と、メソセラピーに使用された薬品15種類を培養し、非結核性抗酸菌のマイコバクテリアの存在を確認。患者と薬品から出たマイコバクテリアの遺伝子を比較したところ、49人のうち81.6%のマイコバクテリアは、薬品についていたマイコバクテリアと同じだったというものだ。

 この報告では結論として、「皮膚や柔部組織にマイコバクテリア感染があり、従来の抗生物質が効果の見られない患者には、メソセラピーを受けた経歴がないか注意する必要がある」としている。

 ……これは充分に健康被害と呼んで良い……よな?

●FDA (Food and Drug Administration) からの警告
 アメリカの整形外科医からなる団体、ASAPS(The American Society for Aesthetic Plastic Surgery、『米国美容整形外科協会』で良いのかな?)が重い腰を上げたのは、今年2007年5月14日になっての事だ。[10, 11]
 ASAPSの発表は、安全性と効果の研究が進むまで、メソセラピーそのものに警戒するようにとのものだ。

 その理由として、メソセラピーは
 ・手法が科学的に確立されていない。
 ・効果や安全性についてのデータがない。
 ・注射する内容物も詳細が不明である。
 ・主な副作用として、細菌感染、肉芽腫、および局所的な細胞の壊死がある。
 などが挙げられている。

 脂肪溶解の薬液で主に使用されるレシチンの一種、ホソファチジルセリンには、脂肪溶解の効果があるとの説明を許可された医薬品ではないとして、アメリカのFDAが2007年9月に警告を発した。[12, 13]

 FDAの警告内容は、メソセラピーに用いるホスファチジルセリンを主成分とした薬品は、医薬品としての登録はされてない。効果の検証がされていないばかりでなく、未承認の医薬品が未承認の医療に使用されている状態であり、消費者に対し安全を保証できるものではない、としている。[13]

 ASERF (The Aesthetic Surgery Education and Research Foundation、訳は『美容外科教育研究基金』かな)がFDAから、メソセラピーの安全性の評価試験を行う許可を取り付けたとの発表がされたのは、FDAの警告が発表されたのと同じ9月の事だ。[14]

 試験はFDA監視の元、46週間の長期を予定している。
 一部には期待を寄せるコメントなどもあるが……まあ効果はないだろう、というのが俺の予想。

 ちなみに。
 FDAの報告の前から、ブラジル、カナダ、イギリスでは同様の警告が数年先に出され、「脂肪を溶解するという触れ込みでホスファチジルセリンを主成分とした美容注射」は 禁 止 されている。

 指摘するまでもなかろうが。
 俺の調べた限り、日本においてはメソセラピーを警戒するよう呼びかけている団体は皆無だ。


 溜まった脂肪は簡単には取り除けない。
 とても当たり前の事なのに、どうして手軽な痩身法に手を出すのかねぇ?
 好きな物を好きなだけ食べて、日がな一日ゴロゴロして、それで痩せられる方法があると思っているのだから、もう何と言うか……表現は自重しておく。

 要は、仮に効果があるとしても、だ。
 「見栄えのためなら命だって惜しくない」
 という覚悟のあるヒト向けの美容法だな。


◎参考インターネット◎
[1] Marnell Jameson “Weighing in on Lipolysis” Los Angeles Times, December 3, 2007.
   http://lat.ms/1jsDEgx
   http://www.lipotreatmentfacts.org/downloads/LATimes_12-2007.pdf
[2] Lisa Doty “Technology Report: Mesotherapy” American Society of Dermatologic Surgery, January 2006.
   http://www.asds.net/TechnologyReportMesotherapy.aspx
[3] にわか旅人『もう少し調べてみた(後編)』
   http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/31341883.html
[4] Wikipedia “Mesotherapy”
   http://en.wikipedia.org/wiki/Mesotherapy
[5] Rotunda AM, Kolodney MS. “Mesotherapy and phosphatidylcholine injections: historical clarification and review.” Dermatologic Surgery. 2006 Apr; 32 (4): 465-80.
   http://1.usa.gov/1qCx6Wm
[6] Rivera-Olivero IA, Guevara A, Escalona A, Oliver M, et al. “Soft-tissue infections due to non-tuberculous mycobacteria following mesotherapy. What is the price of beauty” Enfermedades infecciosas y microbiología clínica. 2006 May; 24 (5): 302-6.
   http://1.usa.gov/1qCxaFO
[7] Maria Puente “Critics say mesotherapy offers slim chance” USA Today, August 4, 2004.
   http://usat.ly/1qK3rLd
[8] 株式会社J・B・A『会社概要』
   http://www.jba-group.co.jp/company/outline/index.html
[9] Vedamurthy M. “Mesotherapy.” Indian Journal of Dermatology, Venereology, and Leprology. 2007 Jan-Feb; 73 (1): 60-2
   http://1.usa.gov/1qCxdS0
[10] American Society for Aesthetic Plastic Surgery “American Society for Aesthetic Plastic Surgery Warns Patients to Steer Clear of Injection Fat Loss Treatments” May 14, 2007.
   http://bit.ly/1jEIMyh
[11] Plasmetic.com “ASAPS Warns against Mesotherapy, Injection Lipolysis.” May 15, 2007.
   http://bit.ly/1qCxioI
[12] Department of Health & Human Services Warning Letter
   http://www.lipotreatmentfacts.org/downloads/FDAWarningLetter.pdf
[13] LipoTreatmnetFacts.org
   http://www.lipotreatmentfacts.org/index.php
[14] American Society for Aesthetic Plastic Surgery “Investigational New Drug Application for ‘Fat Melting’ Injections Cleared by FDA.” September 4, 2007.
   http://www.surgery.org/press/news-release.php?iid=483

◎その他参考◎
・非結核性(非定型)抗酸菌症
   http://health.goo.ne.jp/medical/search/10730500.html
・日本メソセラピー協会HP
   http://mesotherapie.jp/index.html
・気になる医学『脂肪吸引・脂肪溶解注射(メソセラピー)』
   http://www.k-igaku.com/liposuction/
・メソセラピー事典
   http://mesotherapy.ezfuture.net/
・スマートリポ・メソセラピー・脂肪溶解注射の情報サイト『脂肪溶解注射「メソセラピー」って?』
   http://smart-lipo.jp/meso_about.html
・日本脂肪溶解オペレーションセンター
   http://shibouyoukai.com/about/index.html
・Injectablesafety.org “Consumer Safety Alert on Fat Dissolving Injections.”
   http://www.injectablesafety.org/newsroom/pr_10082007.php
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2007年12月15日

賢脳??サプリ『レシテネ』

 そろそろ終末色濃厚……と言うか、ほぼ確定……になってきた感のマルチ商法、株式会社サンヨーメガには、薬事法特商法無視で勧誘していた携帯音楽プレーヤー『エッセスリムβ』『ラトレ』以外にも商品がある。

   月刊ネットワークビジネス『サンヨーメガ、営業自粛 アフターサービス部門は継続』2007年11月12日
     http://www.network-b.com/news+article.storyid+406.htm
===引用開始(赤字強調は当方による)===
美容器具を主力商材に、ネットワークビジネスを展開してきたサンヨーメガ(本社神戸市、三浦洋社長)が10月16日付で営業活動を自粛していたことが明らかになった。当面は、中途解約や返品対応などのアフターサービス部門と、07年12月に発売した健康食品のリピート注文の受付のみを存続させて事業を継続する方針だ。
===ここまで===

 主力商材―普通は主力「商品」と言わないかと常々疑問なのだが―は、美容器具ではなく、単なるリラクゼーション機器の『LATRE(ラトレ)』だ。
 サンヨーメガ社のHPでもそう説明している。
     http://www.sanyo-mega.co.jp/latre/

 「07年12月に発売した健康食品」は、「06年12月」の間違いだ。
 ちなみに商品は、「神津健一(ニセ)医学博士が手ずから開発した『K.リゾレシチン』を配合した賢脳サプリメント」と豪語する『レシテネ』だ。

 さて。
 『レシテネ』の原料『K.リゾレシチン』は以前まとめようとした事があったのだが、ブログに出さないままお蔵入りになってしまった。
 先日別エントリのコメントで『K.リゾレシチン』について少しだけ触れたので、改めて書き直してみた。

●『レシテネ』って何よ?
 販売社の株式会社サンヨーメガのHPには、最近まで説明があったのだが、2007年12月15日現在、そのページは『準備中』となっている。11月中旬には既に『準備中』となっていたのは確認している。
     http://www.sanyo-mega.co.jp/lecithene/

 資料がないと話にならないので、当時ネット上で配布されていたパンフレットの一部をアップする。

●『レシテネ』パンフレット#1

Lecithene_01-3.jpg

====引用開始==
脳の約3分の1以上は、リン脂質(レシチン)でできています。
レシテネはK.リゾレシチン(酵素分解低分子レシチン)に
PSをプラスした総合賢脳食品です。
脳のα波増加でリラックス&集中力アップ。
脳内のホルモンを活性化することで、
健全・健康なリラックス状態に。
===ここまで===

●脳の1/3はレシチンでできている?
 脳の1/3近くがレシチンでできていると言うが、残念ながら俺の力では、これを裏付けるソースは発見できなった。
 ……ざっと検索した程度では見つけられないとは、どれだけ深くに沈んでいる貴重な文献なのかね。

 Wikipediaによると、脳は成人で1.2〜1.6kgだそうだ。[1]
 そして同じWikipediaの内容を信じるのであれば、体重60kgのヒトで、レシチンは600g程[2]。

 確かに600gあれば、脳細胞の1/3〜1/2近くは占められるだろうけど、この計算だと身体の他の部分にレシチンは「存在しない」事になるのだよな。
 ……体重の1%しかないものが、脳に集中しているって……?

 「脳の約3分の1以上は、リン脂質(レシチン)でできています」
 の説明には元から胡散臭さを感じていたけれど、でまかせと見て良さそうだ。

●リゾレチシンは珍しいのか?
 レシテネに使われる『K.リゾレシチン』は、パンフレットの説明によるとかなり特殊な代物の印象を与える。

 しかし何かが特別だとすればその特許製法程度のもので、リゾ化したレシチンは別段珍しいものではない。
 この特許製法ですら、「神津健一氏が開発した」とは虚偽ではないかと俺は疑っている。
 根拠については、別のエントリで書こうと思う。

 ナガセケムテックス株式会社(京都府福知山市)では、乳化剤として酵素分解した大豆由来リゾレシチンを製造・販売している。勿論、食品添加剤としても使用可能だ。
     http://www.nagasechemtex.co.jp/products/enzyme.html

 つまりリゾレシチンという物質は、珍しくも何ともない代物だ。

●リゾレシチンで賢くなる?
 パンレットにある『PS』とは、ホスファチジチルセリン(phosphatidylserine )のことだ。

 万が一、仮に『レシテネ』に脳の活動に影響する成分があるとすれば、K.リゾレシチンではなく、このホスファアジチルセリンだろう[3]。
===ざっとした訳===
 大豆レシチンのトランス型ホスフォアジチル化ホスフォアジチルセリン(SB-tPS)が老齢ないし薬物で記憶低下させたげっ歯目の学習能力を向上させるのは、周知の事である。本研究において、この物質の健康な成体げっ歯目における学習能力にも効果があるのか、50mg/kgあたり34日間経口投与して試験を行った。
   (中略)
 これらの結果から、継続してのSB-tPS投与により、老齢化のラット同様、健常な成体のラットの学習能力も向上すると考えられる。
===ここまで===

 大豆由来のホスファチジルコリンがネズミの学習能力向上に効果がありそうだ、というのは判った。
 ヒトに対しての知見の報告はないようだ。[4]

 「『K.リゾレシチン』だから」という理由付けは成り立たない。

●α波と記憶力に関係はあるのか?
 残念でも何でもないが、まず、α波が出るのと集中力や記憶力の向上に関係性はない[5, 6, 7, 8, 9]。

 目を瞑ればα波は勝手に増えるし、目を閉じたり何か活動していればα波は減る。
 ある種の痴呆では、α波が大量にみられる場合もあるようだし。[7]
 ……いくらα波をほしいと言っても、痴呆になっての話ではないだろう。

 そもそも、集中力の度合いの測定方法などない。
 ……というか、そのようなものがあると、聞いたことすらないし、検索しても出てこない。

●『レシテネ』の「どこ」が良いなのかね?
 駆け足で疑問を並べてみたが、ほんの6行しかない説明文なのに、これだけいい加減とデタラメさ加減が判るあたり、『レシテネ』が「いかがわしい」説明で販売されている商品なのは良くわかる。

 普通の『健康食品』なのだろうけど、どうしても怪しさが際立ってしまう一品だよな。
 ……まぁ、『エッセスリムβ』とか『ラトレ』を販売しているサンヨーメガ社の商品で、認定しているのがあの『予防医学・代替医療振興協会』で、推奨しているのがニセ医学博士の神津健一氏だからねぇ。


◎参考インターネットサイト◎
[1] Wikipedia 『脳』
   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3
[2] Wikipedia 『レシチン』
   http://bit.ly/1jsG6DG
[3] Kataoka-Kato A, Ukai M, Sakai M, Kudo S, Kameyama T. “Enhanced learning of normal adult rodents by repeated oral administration of soybean transphosphatidylated phosphatidylserine.” Journal of Pharmacological Sciences, 2005 Jul; 98 (3): 307-14. Epub 2005 Jul 9.
   http://1.usa.gov/1qCy6di
[4] 独立行政法人 国立健康・栄養研究所『α-グリセリルホスホリルコリン(α-GPC)』
   http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail962.html
[5] Wikipedia『脳波』
   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%B3%A2
[6] Wikipedia『アルファ波』
   http://bit.ly/1qCydFy
[7] 「脳波」と「事象関連電位」
   http://www2f.biglobe.ne.jp/~yasuq/eeg.htm
[8] 脳波の手習いシリーズ
   http://bit.ly/1jsGCS5
[9] 健康ネット『脳波とは』
   http://bit.ly/1jsGQJ9
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2007年10月12日

こんな病院には行きたくない

 『健康産業流通新聞』に、「代替医療の現場から」というコーナーがある。
 以前、このコーナーで紹介された人に突っ込みを入れた事がある。
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/35126700.html

 2007年9月28日版で、連載72回目として、千葉県習志野市で『アウェアクリニック津田沼』を経営する豊田茂芳(とよだ・しげよし)医師のインタビュー記事が掲載された。
 なかなかに頭の痛くなる……というか中身が別宇宙に存在する……代替医療を複数採用している医師なので、紹介しておく。

 以下、青字部分は記事からの引用だ。漢数字は英数字に、機種依存文字は文字化けしない文字に置き換えてある。

 まず、記事にある豊田医師のプロフィールから。
豊田茂芳(とよだ・しげよし)
1990年琉球大学医学部卒。東京慈恵会医科大学麻酔科助手、米国アルバート・アインシュタイン医科大学麻酔科留学、富士市立中央病院麻酔科医員などを経て1999年より津田沼中央病院麻酔科医員。2003年にアウェアクリニック津田沼開院。医学博士、日本麻酔学会指導医、日本ペインクリニック学会専門医、米国麻酔学会会員、日本ホメオパシー医学会認定医、アントロポゾフィー医学のための医師会会員など。

 このプロフィールを読む限りでは、20世紀の終わりまではまっとうな医療に携わっていたようだ。
 ……どこで代替医療とかホメオパシーに躓いたのやら。

 アウェアクリニック津田沼で採用している代替医療は、インタビュー記事で何種類か紹介されている。

●中医学
 これについての説明はなかったが、大学時代に運動をやっていて、それで『気功』に興味を持ったとか何とか……。

 中医学(=東洋医学?)と言っている時点で、医者としてどうかと思ってしまうのは……まぁ俺の偏見だ。

 葛根湯には年に2〜3袋世話になっているので、漢方薬は今のところ否定しないでおく。
 ……自己診断で効いたと思った事はないけどな。

 ただしツボだとか気功だとか鍼灸だとかを持ち出すような医者には、即効「ヤブ」の評価をつける事にしている。
 ……まずは査読のある研究データがあるかどうか、勉強してから言え。漢方薬についてもな。

●ホメオパシー
 ホメオパシーは日本語で“類似療法”と訳されます。花粉症に対して極微量の花粉を注射して治す減感作療法というのがありますが、それに近い考え方といえばわかりやすいかもしれません。いわば毒をもって毒を制するもので、その毒にあたるのが「レメディ」と呼ばれる薬です。これを身体に影響のないレベルにまで何百倍にも希釈してから投与するので副作用の心配はありません。

 ……えっと……これで金を取るのか?
 「身体に影響のないレベル」と、自分からホメオパシーに効果はないと言っているのに……何て奴だ。

●パッチフラワーレメディ
 パッチフラワーレメディは、心の平安を取り戻したり、否定的な感情に対処したりするために、野生の花や草木から作られた液体状のエッセンスを用います。水に4滴入れたものを1日4回以上飲みます。

 これがどういうものか判らなかったので、google検索してみた。
 『バッチフラワー協会』というものが出てきた。
     http://www.bachflowerassoc.com/index.html

 『パッチ』ではなく『バッチ』だそうだ。

 Wikipediaでの『バッチフラワー』の説明。
     http://bit.ly/1qCzRqM

 ……宗教だ。

 そして追加で頭の痛くなる論文を発見した。
 ……清泉女子大学の廣部千恵子(ひろべ・ちえこ)なる人物の論文だ。
     http://ci.nii.ac.jp/naid/110004814127/
===ここから===
Dr. Edward Bach Remedy is widely used in the world. However, the Remedy is not so used effectively as he did in his lifetime. Using Bi-Digital O-Ring Test (BDORT), the human nature hidden beneath the subconsciousness can be easily identified. As for "New Bach Flower Body Maps" reported recently, mosaics are mapped on the body. The verification for mosaics was also made. Mosaics determined by BDORT were quite different from those reported in the book which were determined by changes of aura.

(にわか旅人訳)
Dr. エドワード・バッチ・レメディは世界中で広く使われている。しかしながら、レメディは彼が存命時の頃ほど効果的に使用されていない。Bi-Digital O-Ring Test(BDORT、バイデジタルOリングテスト)を用いることで、ヒトの潜在意識に隠れた本質は容易に解析できる。最近になり発表された『新バッチフラワー・ボディ・マップ』によると、モザイクが人体に描かれている。モザイクによる検証も同様に行われている。BDORTにより作成されたモザイクは、オーラの変化を元にした一連の書籍の報告と異なっていた。
===ここまで===

 ……Oリングテストにオーラかよ……。

 キリスト教関係の大学で教える科学の内容は、俺が学生の頃学んできた科学とかなり異なると聞いたことならある。
 しかし、ここまでとは予想外。「宗教だ」との最初の感想は的を射ていたけどな。

●前世療法
 軽い催眠状態に誘導して、その人の潜在意識に働きかけて前世の記憶を呼び起こします。前世でどんなことを感じていたか、あるいは前世の人生の重要な場面や死の直面を体験したりして、その人生がどんな課題を持っていたのかなどを探ります。最後に前世の人生体験を総括し、それが今の人生にどういう影響を与えているかに気づいてもらいます。

 ……どこからどう突っ込めばいいのやら……。
 このようなものを診療に用いる時点で、医師として終わっていると感じるのだが……。

●インナーチャイルドセラピー
 インナーチャイルドとは「内なる子ども」という意味で、その人の心の中に存在する傷ついた子ども、あるいは幼少時のその人自身を指します。軽い催眠状態にして、子どもの頃の体験を再現し、その頃の気持ちを理解します。それを元にしながら、大人になった自分と一つになるように導いていきます。

 前世療法よりはマシに聞こえる。……が、それだけ。
 どこをどう突っ込めばいいのか判らないのは同様。

●アントロポゾフィー(シュタイナー)医学
 アントロポゾフィーとは「人智」という意味です。自然のプロセスに則った考え方をしていて、宇宙観、身体観を見えない領域にまで広げています。(中略)人体を4層に分ける考え方があります。一番下のある層が「物質的肉体」、その上に身体の各部をつなぎ合わせている「エーテル体」、さらに共感と反感、感受性を持つ「アストラル体」、そして「最上層」が個我です。

 ――最上層が「個我」です――のタイプミスだと思うのだが……その辺りはともかくとして。
 ……どの辺りか「自然のプロセスに則った考え方」なのやら……。まぁこの人の場合、頭の中身は別の宇宙にあるから、そこの宇宙では理に適っているのかもしれない。

 『アントロポゾフィー』で検索したら、wikipediaが出てきた。
     http://bit.ly/1jsJxdA

 ……哲学? 宗教?
 どの辺りに『医』を付けられる学問なのか、説明してもらいたい。

 治療では、その人に最も適したレメディを用いるほか、音楽療法や絵画療法などの芸術療法、運動治療の一種であるホイリュトミー療法などを行います。レメディは、ホメオパシーで使う薬に近いものです。

 『ホイリュトミー療法』は2007年10月12日時点では、google検索では1つもヒットがない。
 ……いったいどういう療法なのだ??

 これらの他にも、高周波発生装置でヒーリング音楽を流し、アルファ波を出させるとか……もう何と言うか……本 当 に 医 者 か ?
     http://licenseif.mhlw.go.jp/search/search.do

 はい、医者ですよ……と。
 ……頭痛ぇ……。

アウェアクリニック津田沼HP
     http://aware-clinic.kansya.org/
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2007年10月06日

ESSIAC、エイジアック

 「利権を失うことを怖れた医師会から弾圧された悲劇の薬」「従来の生物学・医学を根本から覆す奇跡の薬剤」などと詭弁をうたったニセ抗がん剤・がん治療法、無根拠な健康法は巷にまん延している。
 その中の1つに『Essiac』という代物がある。

 カタカナ読みすると「エッシアク」「エシアック」「エジアック」とも読めるが、とりあえずここでは『Essiac Research』の読みに従い『エイジアック』としておく。[1]

●『エイジアック』とは?
 『エイジアック』は4種類のハーブ(うち1種類は、日本では医薬品に該当)からなるハーブティーだ。[1, 2]

   シープヘッドソーレル(ヒメスイバ全草、Rumex acetosa)
   スリッパリーエルム・バーク(アカニレの樹皮、Ulmus fulva)
   バードック・ルート(ゴボウの根、Arctium lappa)
   インディアンルバブ・ルート(ダイオウの根、Rheum palmatum)。

 それぞれのハーブには「こういう効果、ああいう作用がある」との眉唾物の俗説や伝承の枚挙にいとまはない。
 1つ1つ並べてるより、ここでは『エイジアック』そのものが焦点なので、ハーブについては触れずにおく。

 この4種類のハーブのうち、ルバブ(ダイオウ)の根部が医薬品に該当する。[3]

 日本では医薬成分(専ら医薬品として使用される成分本質(原材料))が、1種類でも含まれていると「医薬品」と判断され、いわゆる健康食品(ここで言うならハーブティー)として販売することはできない。[3]

 「医薬品」なら、薬剤師が噛んでいれば販売できるだろう、と思うかもしれない。
 しかし「医薬品」として販売するには、その前に医薬品としての登録が必要だ。
 『エイジアック』には医薬品としての認可は下りていないので、「医薬品」としても販売する事はできない。

 ……俺の限られた知識の範囲では、『エイジアック』を日本国内で法に触れずに流通させる方法は存在しない。

 ちなにみ『エイジアック』は、アメリカにおいても、医薬品としての申請は却下されている。そのため、現在では健康食品(ハーブティー)として販売されている。[4]
 発祥地のカナダでは、国内での販売は許可されていないし、政府からの特別な許可を得ないと臨床試験もできない状況にある。[2]

●『エイジアック』の開発者?
 1924年、カナダのオンタリオ州の1病院で看護婦をしていたRene M. Caissie(リーン・M・ケイス、1888〜1978)が、職場の病院でがん患者に与えたことから、『エイジアック』は始まった。
 『エイジアック』の名は、ケイスのCaisseを逆読みしたものだ。

 元々『エイジアック』は、言い方はおかしいがカナダの原住アメリカ人の民間療法で処方されていたお茶だ。ケイスがどのような経緯からこの処方を入手したのかは不明だが、このお茶を彼女が担当していた乳がん患者に与えたところ、がんが完治したというのが、そもそもの始まりのようだ。[5]
 その後、ケイスは胃がんの自分の叔父にもこのお茶をあてがったとされている。叔父氏が回復したかどうかは不明だ。

 ともかく。
 ケイスは1924年から、『エイジアック』でがん患者を治療し、数多くのがん患者を治癒に貢献したとされている。一説には、末期がん患者を数千人治癒させ、80%の患者に対し効果があったとも言われている。[1]

 『エイジアック』の処方は、1978年にケイスが死亡する前に、オンタリオ州にあるRasperin Corporation of Torontoに売却され、以来この企業がEssiacの正式な製造販売権を主張している。[2]

●『エイジアック』の作用の仕方
 ケイスと『エイジアック』を飲用した患者らの説明によると、『エイジアック』の効果は飲み始めてからほんの数回で効果が現れるそうだ。[2]

 まず、ガン細胞が大きく膨れ、硬化する。
 それからガン細胞は柔らかくなり、もしガン細胞が表皮の近くに発生しているのなら、大量の膿と肉状のものが噴き出す。
 以後、がん細胞は完全になくなっている、というのだ。[2]

 ケイスはこう理由付けている。
 理由はわからないとしていながらも、ケイスは『エイジアック』にはがん細胞を発生した元の箇所に移動・集中させ、縮小させた後、体外に排出させる効果がある、と主張していた。[2]

 『エイジアック』には特別な淹れ方があるようだが、日本で販売できない商品の扱い方を語っても仕方ないので、調べる手間は省いた。

●『エイジアック』の試験結果
 かれこれ数千人のがん患者の治癒に貢献したと称する割には、『エイジアック』の動物ないしヒト細胞試験(in vitro)、あるいは臨床試験(in vivo)の報告は、2007年10月においても非常に少ない。

 そればかりか、ケイスが各患者(年齢・性別・患部・病状別)に対し、どのように『エイジアック』を処方したのか、その資料すら存在しない。[2]

 その理由は、「治癒した」「回復した」との報告は、ほとんどが地元新聞による報道であり、ケイス本人からは、『エイジアック』のがん治療に関する報告は1つも上げられていないからだ。[2, 4]

 1982年、カナダでは86人のガン患者が、それぞれの担当医師の要請を受け、『エイジアック』の臨床評価が行われた。この評価は、患者の診察表からの分析ではなく、報告書を提出した担当医師の記述を基にしている。[2, 6]
 結果は以下の通り。

   病状に影響なし    47人
   評価できない     8人
   死亡         17人
   見た目効果あり    1人
   鎮痛剤の量が減少   5人
   観察すべき反応    4人
   安定           4人

 『観察すべき反応』『安定』と評価された8人のうち、3人はその後病状の進行が確認され、2人は死亡、3人が依然『安定』と判断された。ただし『安定』の3人も、『エイジアック』の使用後には従来の治療に戻っており、調査した組織は『エイジアック』の飲用により病状が改善されるという証明は得られなかった、と結論している。

 1983年、前述したRasperin Corporation of Torontoはカナダの健康福祉局健康保護課(Health Protection Branch, Health and Welfare Canada)からの要請により、『エイジアック』の抗がん性の試験を米国国立願研究所(National Cancer Institute、NCI)にて行っている。[2]
 その結果、リンパ球腫瘍(Lymphocytic Leukemia P388)のマウスに対する抗がん性は確認できなかったとされている。

 それどころか、処方にある最高値の濃度の『エイジアック』を投与したマウスは、「死に至った」という報告すらある。[6]

 MedLineで検索して見つかるわずかな資料を見ても、『エイジアック』の評価は決して高くはない。
 ……というか、リスクの方が高いようにも読み取れる。

 最近の試験としては、2006年にKulpとMontgomeryらのグループが、エストロゲン受容体陽性および陰性のヒトの乳がん細胞を用い、『エイジアック』がガン細胞の増殖抑制効果があるかの試験管試験(in vitro)を行なっている。[7]
 概要を読む限りにおいては、更なる調査が必要とはしていても、『エイジアック』は乳がんに関しては、ガン細胞の増殖を抑制するどころか、逆に促進する恐れがあるとしている。

●藁にもすがりたい気持ちは判らなくもないけど
 たまたま『エイジアック』で検索したところ、あるブログを見つけた。[8]
 その中に『エイジアック』を使っていた旨の記述がある。2002年3月4日〜。

 例え善意からでも、藁にもすがりたい人達にこういう代物を勧める連中に、怒りとか憎しみとか感じてしまうのは……俺の問題か。


◎参考インターネット◎
[1] Essiac Research HP
     http://homepage1.nifty.com/essiac-re/index.htm
[2] Quackwatch “Unconventional Cancer Treatments. Chapter 4: Herbal Treatments” August 3, 1998.
     http://bit.ly/1qIYAtJ
[3] 『物の成分本質(原材料)について』
     http://bit.ly/1qIYja5
[4] National Cancer Institute “Questions and Answers About Essiac and Flor * Essence” July 26, 2007.
     http://1.usa.gov/1jDgiVt
[5] American Cancer Society “Essiac Tea” June 26, 2007.
     http://bit.ly/1qIYp1t
[6] BC Cancer Agency “Essiac/ Flor Essence” February 2000
     http://bit.ly/1jDgdkL
[7] Kulp KS, Montgomery JL, Nelson DO, Cutter B, et al. “Essiac and Flor-Essence herbal tonics stimulate the in vitro growth of human breast cancer cells.” Breast Cancer Research and Treatment, 2006 Aug; 8(3): 49-59. Epub 2006 Mar 16.
     http://1.usa.gov/1qIY5zG
[8] 奇跡を信じて〜あとがき〜
     http://www.enpitu.ne.jp/usr6/66095/
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2007年07月08日

ある自然療法医は嘘をつく

  現在、我々が口にする農作物に含まれるビタミン・ミネラルは、数十年前の農作物の1/10、いや1/100以下の量しかない。これは一か所の農地で何年・何十年も同じ作物を育成している事、そして化学肥料や農薬の使用により、土中のミネラルが破壊され、減少しているためだ。
  いかに我々が大量の野菜と果物を摂取しようと、ヒトの胃の容量には限界のあるため、かつてのような十分な量のミネラルを摂取する事はできない。
  つまり、我々は満腹でありながらも、少しずつ餓死へと向かっているのだ。
  それを防ぐためにも、我々は積極的にミネラルを摂取しなくてはならない。しかしそれとて、最近の化学薬品で汚染されたミネラルでは危険だ。
  人類が誕生する以前、現代よりも生命に満ち溢れていた時代の土壌から取り出したミネラル、これこそが現代に生きる我々が健康で長生きするための唯一の方法だ。


 これと同じでなくても、似たようなニュアンスの説明はよく聞くし見かける。
 そしてミネラル不足解消の救いと紹介されるのが、「天然自然な土壌から抽出した60種(物によっては70種以上)のミネラルが溶けている」という触れ込みの、ガラス容器に入った黄色とも茶色とも見える『ミネラル水』だ。
 ……そうそう。
 「従来の化学薬品から作られたミネラルと違い(植物性だから、コロイド化させているから、のオプションあり)吸収性に断然に優れている」の一言も忘れてはいけない。

 さて。
 さしたる科学知識がなくとも「胡散臭そうだ」と判断の付けられるこの与太話を世界中に広めたのが、アメリカ人の獣医にして自然療法医のジョエル・D・ワラック(Joel D. Wallach)博士だ。

●ジョエル・D・ワラック(Joel D. Wallach)
 この人物を説明するには、ただのミネラル水より『コロイドミネラル』『植物ミネラル』とすると通りが良いかもしれない。

 ワラック氏はアメリカのみならず、『コロイドミネラル』で悪名を馳せる人物だ。19世紀辺りであればSnake Oil Salesman(日本でなら『ガマの油売り』と言ったころか)として成功していたかもしれない。実際、オーストラリアのある専門家は、そのように評している[1]。

 ワラック氏は1964年にミズーリ州立大学(University of Missouri)で獣医免許(Doctorate in Veterinary Medicine; D.V.M.)を取得した[2]。
 1960年代の後半はセントルイス動物園で獣医として勤務。

 やがて観察していたサルから、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)の原因が脂肪酸とセレン(Se)の欠乏にあるとの仮説を立てたのだが、当時から、嚢胞性線維症は遺伝子の欠損が原因と推測されていたものだ。生化学(遺伝子学)が未発達だったため、問題の遺伝子は発見されていなかったが[1]。
 それでも、わずかながらの研究者の関心は引いた。
 結果、嚢胞性線維症はセレン不足とは無関係であると確認され、さらに後年になり、嚢胞性線維症の原因である遺伝子が発見され、ワラック説は完全な誤りである事が決定的になった[1]。

 これを期に、ワラック氏は科学的な研究からは身を引き、自然療法医へと方向を変えた。まっとうな学会から科学的な根拠を求められる心配をせずに、自説の研究を人体で進めることができるからだ[1]。

 そして1982年に、オレゴン州のNational College of Natural Medicineで、自然療法医(Doctorate in Naturopathic Medicine; N.D.)を取得した[2]。

 ワラック氏は今日においても、嚢胞性線維症の原因がセレン不足にあると主張し、その他の数多くの病気はミネラルの補給により予防・治療が可能だと、世界中を講演して回っている[1]。
 ただしその目的は、科学的に否定された自説の正当性を(科学的根拠なしに)主張し続けるためではなく、自身が主催するマルチレベルマーケティング(MLM、Multi-Level Marketing、連鎖販売取引、いわゆるマルチ商法)企業の下位会員を集めるためだ[2]。

 講演内容はビタミンとミネラルの関係を説いた生化学もので、この両社の関係を理解すれば、誰よりも長く健康で生きられる秘密らしい[2]。

 生化学の体裁を取り繕ってはいるが、現代科学とは相容れない似非科学な内容、というのが健全な科学知識を持つ人達の評価だ[3]。

●死んだ医者は嘘つかない(Dead Doctors Don’t Lie)
 サポーター(会員、信者とも言う)の信仰を得るため、ワラック氏の商品を扱う企業(代理店含む)では、講演を収録したテープ(最近はCD)を販売している。
 そのタイトルが『死んだ医者は嘘つかない(Dead Doctors Don’t Lie)』だ[3, 4]。

 名前の由来は「……だけど生きている自然療法医は嘘をつく」と自虐的な意味合いを込めたもの……ではない。
 「アメリカの医師の平均寿命は、一般的なアメリカ人の平均寿命よりもずっと短い。そんな自分の健康すら守れない医師達に、一般人の健康など守れるはずがない。人の生命を守るのが医師だと言うが、医師の短命さを見れば、それが嘘なのは一目瞭然だ。死んだ医者は嘘をつかない」
 という主張からのタイトルだ[3, 4]。

 ワラック博士の主張の最たるものは、「ヒトもその他の動物も、数多くの病気に苦しめられている。その原因は、食料に含まれるミネラル不足によるもので、十分なミネラルを摂取すればもっと長生きできる」というものだ[1, 3-6]。

 が、それらの主張の多くは、科学的・医学的な根拠が示されていない、もしくは明確に誤りであると証明されている。タイトルの由来となった医師の平均寿命が一般のそれよりも低いというワラック氏の主張も、否定されている(医師の寿命は一般人より高いと確認されている)[3]。

 ワラック氏の主張は、自分に都合の良い似非科学の布教だけではない。

 1991年、ワラック氏は「先天性の病気を、微量のミネラルの使用により予防できる事を発見」し、ノーベル医学賞にノミネートされた[1, 3-5]。
 この言い分はワラック氏の『植物性ミネラル水』『コロイドミネラル』の信奉者が頻繁に使用するものだ。
 が、これはでまかせだ。
 ノーベル協会(Nobel Committee)では候補者の名前を開示しないので、候補者自身ノミネートされたかどうか、知る方法はない。ワラック氏本人、もしくはその取り巻きが『推薦状』を送り、『ノーベル賞候補』と広めたと思われる[7]。
 言うまでもなく、そのような『候補者』を、ノーベル協会は検討対象としていない。ワラック氏の場合、『ノーベル賞候補』の主張に関し、ノーベル協会がわざわざ手間隙かけて公式の場で否定している[1, 3, 7]。

●被害者は既に出ている?
 この手の似非科学(医療・健康話・宗教でも可)に関わる人物から、時々このような意見が出てくる。
  「これを使った(信じた)事で、自分は健康になった(救われた)。信じる・信じないはともかく、被害に遭った人がいないのだから、それでいいではないか」

 残念ながら、そうはいかない。

 1995年の話だ。
 National Council Against Health Fraud (NCAHF)に、ある報告が届けられた。ワラック氏がサンフランシスコの病院で治療した患者が、キレーションセラピーで「毒殺」されたのではないか、というものだ[7]。
 患者は以前から心臓に疾患を抱えており、キレーションセラピーのために月に1、2回ワラック氏のいる病院を訪れていたそうだ。
 さらにこの人物は、一見すると『泥水』のような液体も服用をしていた。この液体の正体は不明だが、FDAから高濃度の毒物を含むという理由で禁止された飲み物と似ていたようだ[7]。

 死亡した患者は火葬にされたため、死因がワラック氏の医療行為なのか、持病によるものなのか、追求することはできない。しかしワラック氏は獣医で自然療法医であり、ヒトに医療を行う資格を持つ医師ではない。医師法違反の疑いは否定しきれない[7]。

 この報告を『被害』とするのは、正直難しい。
 しかしワラック氏が、違法(かそれに近い)行為を働いていたのは確かと見て良いだろう。


 ……ワラック氏(博士と呼ぶもおこがましい)はこの辺にしておく。
 コロイドミネラルの話を続けると長くなるので、その話は別の機会に。


◎参考インターネット
[1] Stuart Adams “Youngevity Australia, Colloidal Minerals & Dr Joel Wallach” Nutra-Smart.net, February 27, 2007.
    http://nutra-smart.net/al.htm
[2] Wikipedia “Joel D. Wallach”
    http://en.wikipedia.org/wiki/Joel_D._Wallach#Sites_run_by_Wallach
[3] James Pontolillo “Colloidal Mineral Supplements: Unnecessary and Potentially Hazardous,” Quackwatch, December 11, 1998.
    http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/DSH/
colloidalminerals.html
[4] 『死んだ医者は嘘をつかない』
    http://luckydia.web.fc2.com/genki/wallach.html
[5] エンジェビティ株式会社HP
    http://www.engevity.co.jp/index.htm
[6] Robert Todd Carroll “Joel D. Wallach, ‘The Mineral Doctor’" the Skeptic’s Dictionary, December 12, 1998.
    http://www.genpaku.org/skepticj/deaddocs.html
[7] “Dead Doctors Don’t Lie! But This Living Veterinarian Does!” NCAHF News, March- April, 1996. Vol. 19 (12).
    http://www.ncahf.org/nl/1996/3-4.html
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2007年05月18日

中国産ジエチレングリコール(3)

 中国のニセグリセリン(中身はジエチレングリコール、有毒)がパナマで医薬品に処方され、365人もの死者(死因確認の取れているのは100人)を出した事件の続き。
 3回目。

 元記事は会員登録(無料)しないと読めない。
   Walt Bogdanich, and Jake Hooker “From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine.” New York Times, May 6, 2007
     http://nyti.ms/1qH0kne
===Page 3 of 7===
 中国の捜査官によると、それからしばらくしてWang容疑者は更なる利益を求め、より安価な代替シロップの発掘を開始したそうだ。希望する無臭のシロップは、科学書の中にあった―それがジエチレングリコールだ。
 捜査官によれば、その当時の医薬品品質のシロップはトン当たり15,000元、アメリカドルにして約$1,815だったのに対し、この物質はトン当たり6,000~7,000元、$725~$845で販売されていたのだ。

 Wang容疑者は、今回のシロップをQiuihar Pharmaceutical社へ出荷する前に、味見を行うことはしなかった。
 捜査官はこう付け加えている。
 「容疑者はこの物質が危険なのを知っていたが、それに致死性があることまでは知らなかった」

 件の製造会社では、この有毒シロップで5つの医薬品を製造した。胆嚢疾患用のAmillarism Aアンプル、子供用の特殊浣腸薬、動脈疾患用の点滴薬、静脈の鎮痛剤、そして喘息薬だ。

 2006年4月、広東省広州の中国南部では最新鋭の病院で、Amillarism Aの使用が始まった。中には既に重篤状態の患者もいたが、1ヶ月そこそこで、この薬品を使用して少なくとも18人が死亡している。

 Zhou Jianhong氏(33)によると、彼の父は4月19日に初めてAmillasin Aを服用している。その1週間後、父は危篤となった。「最期の時は家いたいものだ」Zhou氏は言う。「だから私は父を退院させた」
 彼の父は翌日に亡くなっている。

 「誰もが医薬品業界に投資したいと考えているし、この業界は成長している。だけど法整備が追いついていない。我々の安全を守る法律が必要だ」
 Zhou氏の発言だ。

 この医薬品による死者は過疎地の者もいるため、最終的な死亡者数は不明確だ。

 四川州の小さな町に住むZhou Lianghui氏は、彼の妻の死因がAmillasin Aの服用にあると、地元公的機関では認めてもらえないと言う。しかしZhou氏(38)は、亡妻の服用した薬品のロット番号が、医薬品局から警告印を付けられたものと一致したと主張している。

 「北京に住んでいるのなら、ここのような小さな町での出来事は想像できないかもしれない」Zhou氏は電話によるインタビューで、こう告げている。「空は高く、皇帝陛下は遠い。ここには法律の通用しない問題はいくらでもある」

 医薬品への毒物混入を政府が食い止められなかったこの事件は、この年のスキャンダルの一つに数えられている。昨年5月、中国のWen Jiabla(温家宝)首相は、「医薬品市場は混沌の最中にある」として、死亡事件の調査を命じた。

 同じ頃9,000マイル(約1万4千500km)離れたパナマでは、長い雨季の始まったところだった。風邪と咳を憂慮した政府の保健機関は、咳止めと抗ヒスタミン剤の製造を開始した。糖尿病の人も飲めるよう、咳止めは無糖にした。

 バルセロナから到着した貨物船Tobias Maersk号には、ほぼ透明淡黄色の47バレルのシロップが積まれていた。このシロップと医薬品が混合されたのだ。出荷伝票によれば、シロップは純度99.5%のグリセリンだ。

 この証明書が捏造だと判明するまでに、数ヶ月と数多くの人命が費やされた。

奇病
 昨年9月初旬、パナマ市の公共病院で医師らは、患者達の通常ならざる症状を目の当たりにしていた。

 最初はギラン・バレー症候群(稀な神経疾患で、発症初期に虚弱感や足に痺れが起きる)と思われた。この虚弱感は人によっては強くなり、腕部から胸部に広がり、時には全身麻痺や呼吸困難に陥る時もある。

 新規の患者にも麻痺はあるが、身体上部への広がりはない。しかもギラン・バレー症候群と一致しない症状に、排尿がなくなるという点があった。

 もっとおかしいのは、発症者の数だ。医師らが一年を通じて見かけるギラン・バレー症候群患者は8人ほどだ。それがわずか2週間で、それに匹敵する数の患者が現れたのだ。

 医師達は伝染病の専門家で、トライアスロンとチェスの達人でもあるNestor Sosa医師の協力を要請した。

 Dr. Sosaの、かつては世界で最も不健康な場所と言われたパナマでの医療は長く、経験に富んでいる。1800年代にパナマでは、黄熱病とマラリアが猛威を奮い、パナマ市の10分の1を殺したと言われている。米国がこの蚊を媒介にする病気を駆逐していなければ、フランスのパナマ運河建設には死者の山が築かれていただろう。

 ギラン・バレー症候群と目された病気は、Dr. Sosaには心配だった。
 「これは本当に異常事態だ。疫病がこの病院に広まりつつある」

 この奇病による死亡率は約50%にも上る為、Dr. Sosaは事態収拾のための医師団の編成と指揮を要請してきた病院経営者に、警報を出した。ドクターに要求された任務―原因追及のための時間とのつらい競争―これこそが彼が喜んで引き受けたものだ。

 この事件の数年前、Dr. Sosaはある医師グループが疫病の原因を突き止めるのに協力している。この疫病の原因は、げっ歯類を媒介にするハンタウイルスだった。

 「私は患者の面倒を見てきたが、全力を尽くさなかったのではないか。そう感じる時がある」
 次こそは違ってみせると、彼は誓っていたのだ。

 Dr. Sosaは24時間体制の『戦略会議室』を病院内に設置した。ここで医師達は、手がかりを得るための記録や理論を比較検討するのだ。
===ここまで===

 2006年5月頃の為替相場は……確か1ドル¥115位だったか?
 となると、医薬品グリセリンで1トン当たり約¥21万、工業用で¥83,000~¥97,000か……。
 パナマ政府がいくらで購入したかはさておき、まさか書類から贋物だったとは、まず思いつかないよな。

 さて、今回の内容によると、容疑者は「グリセリンの替わりに、ジエチレングリコールを出荷した」と読める。
 対して、先日紹介した朝日新聞の記事では、「グリセリンにジエチレングリコールを混ぜて製造していた」という書き方だ。
     http://bit.ly/1jAC3W1

 「New York Timesによると」と前振りをしているのだから、要約するにしても正確に書いてほしいよな。
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2007年05月12日

中国産ジエチレングリコール(2)

 前回に引き続き、中国のジエチレングリコールを入れたニセ医薬品の話。
 今回は2ページ目。

Walt Bogdanich, and Jake Hooker “From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine.” New York Times, May 6, 2007
     http://nyti.ms/1qH0wmn
===Page 2 of 7===
 「これでも過小な報告だ」
 Dr. Bennishはジエチレングリコール中毒につき、そう語る。限られた資材に不健康な国民を抱える貧しい国の医師は、毒薬でも疑問を抱かないかもしれない。
 「医療機関に来ないで亡くなられる人がほとんどだ」

 見かけも特徴も本物とほとんど違いがなく、そのくせ比較的安価なグリセリンの偽物の製造者は、国境越えての配送を追跡する困難さ故にほとんど特定されることがなく、立件される事はさらに少ない。
 「これは真に国際的規模で立ち向かうべき問題だ」
 そう言うのは、世界保健機構(WHO)の北京代表Dr. Henk Bekedamだ。

 70年前、ジエチレングリコールで風味付けされた医薬品により、アメリカでは100人以上の死者が出ている。当時で医薬品規制が最も厳しくなされ、後のFDAの設立にも繋がった事件だ。

 FDAは中毒事件の真相究明に世界中を駆け巡ったのだが、得られたものは少ない。

 10年前、ハイチで少なくとも88人の子供が死亡した事件がある。FDAは満州・大連(ターリエン)まで毒物のルートを追跡した。しかし疑惑の工場の訪問には、繰り返し中国担当官に妨害されている。これは当時の報告書からの記述によるものだ。
 1年以上経過してようやく許可が下りた時には、その工場は移転し、資料は全て破棄された後だった。

 「我々が接触した中国人担当は、この事件と関わりを持つことを非常に嫌がっていた」
 北京のアメリカ大使館駐在員は、非公開の電話インタビューでそう証言している。
 「我々は他のグリセリンについても、出荷地を特定できるとの楽観はできない」

 事実タイムズ紙では、ハイチの中毒事件に関与していたとされる中国企業が、50トンの偽グリセリンを1995年にアメリカに出荷した記録を見つけている。その一部は捏造が判明する前、アメリカ国内の企業Avatar Corporation社に販売されていた。

 「我々のところで発見できたことを神に感謝する」
 Avatar社のバルク医薬品及び非医薬品製品販売のシカゴエリア総責任者のPhil Tern氏は、こう述べている。FDAによると、この取引は気づかなかったとの事だ。

 中国政府は国内の医薬品業界の正常化を誓っているが、その理由の一部は、ばら撒かれているニセ医薬品に対する批判が世界中に広がっているからだ。WHOによれば、12月に2人の医薬品取締官高官が、医薬品認定の贈賄罪で逮捕されている。加えて440ものニセ医薬品工場が昨年閉鎖されている。

 しかしながら、パナマでの死亡事件に関与した中国企業を捜査した中国担当者は、「違法性は認められない」との判断を下している。「中国の医薬品規制は『ブラックホール』だ」と、この北京に拠点を持つCNSC Fortune Way社と取引のある業者は証言している。

 このような環境から、Wang Guiping、9学年教養しかない化学本を手にした元洋服屋は、医薬品業界の中間業者として易々と潜り込むことが出来たのだ。そして贋物の流通こそが、手早く利益を得る方法だと、先達の仕事から素早く学んだのだ。

 その時からだ、中国で死者の出始めたのは。

法の網を潜り抜ける
 Wang容疑者は中国東部の長江三角州の工業地帯で、長年洋服屋を営んできた。地元の村人によると、彼はただの職人で終わることを善しとしていなかったそうだ。彼は地元に芽生えたいくつもの小さな化学品製造工場から、化学品の取引に目を付けたのだ。

 「あいつは自分が何をしたのか知らなかった」Wang容疑者の兄、Wang Guoping氏は、はインタビューで答えた。「あいつは化学を知らない」

 しかし、法の目を潜り抜ける方法は知っていたのだ。

 Wang Guiping(41)は、ヒトの服用は勧められない安価な工業用シロップを、医薬品レベルのものと交換すれば、より大きな利益が得られると考えた。報告によると、医薬品購入業者を騙す為に、彼は免許と分析記録を捏造している。

 Wang容疑者が捜査官に後日供述したところによると、試験的に少量を服用して、この代替品を使用しても影響のない事を確認したそうだ。彼はある元洋服屋の人間を実験台に使っていたのだ。

 その人物が服用し、異常のない事を確認してから出荷したと言う。

 このシロップを2005年初頭に使用した企業の一つが、黒竜江(ヘイロンチャン)から北東へ1,000マイル(1,600km)離れたところのQiqihar社の第2医薬品工場だった。購買担当が Wang容疑者のウェブに掲載されているのを見つけたのだ。
===ここまで===

 中国政府が自国企業擁護のため、立ち入り検査を拒否し続けていたという話は、このニュースを扱っているブログの幾つかで指摘されていた記憶がある。
 しかし、人体実験をしたというのはなかったな。
 ……自分の身体で実験しないで、他人を使ってというところが、もうね……。

 しかもこの安全性試験(と呼ぶもおこがましい行為)は、ヒトを一人だけ使っての確認試験だ。
 本来医薬品の用途であれば、整備された環境の元で膨大な数の臨床データを取るものだが、この記事を読む限りではそのような調整は「何一つ」されていない。
 ……これで「安全を確認した」とは、この人物の無知を笑うどころか、背筋に冷たいものを感じる。

 何せこれ以下の行為が、健康食品や似非科学商品の世界で、日本でも日常的に使われているからな。
 「100%自然由来だから、安全です」
 「元は食品として流通しているから、どれだけ服用しても副作用はありません」
 「医薬品ではないので、摂取量の上限はありません。できるだけ沢山摂るようにしましょう」
 ……etc. etc.。同様のトークなら、健康食品の展示会に行けばいくらでも聞ける。
 あ、「どこかの有名人が使っているから」と言うのもあるか。

 無知とは恐ろしいわ。
 ……人の事言えないけど。
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2007年05月09日

中国産ジエチレングリコール(1)

 日本のメディア(新聞・テレビ等)では取り上げそうにないので、とりあえず拾ってみた。

 パナマでは昨年、シロップの風邪薬を服用した子供が続々死亡した事件があった。
 その原因が、風邪薬に使われていた原料がグリセリンではなく、ジエチレングリコールだった、とまでは判明していたが、どこかに流れてきたものかは判明していなかったようだ。
 今回、New York Timesの記者が調査したところ、ジエチレングリコールのメーカーが、中国の医薬品製造業許可証を持っていない工場だったという事だ。

   Walt Bogdanich, and Jake Hooker “From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine.” New York Times, May 6, 2007
     http://nyti.ms/1qH0SJH
     http://nyti.ms/1qH0wmn
     http://nyti.ms/1jACQGl
     http://nyti.ms/1jACUWC
     http://nyti.ms/1jACXBZ
     http://nyti.ms/1qH14sr
     http://nyti.ms/1jAD40i

 この記事については、『朝鮮日報』が簡単な紹介をしている。
   チョン・ビングン『中国産毒性物質、風邪薬として売られていた』朝鮮日報、2007年5月7日
     http://www.chosunonline.com/article/20070507000034

 が、かなり大雑把な内容なので、俺なりにちょい原文を読んでみた。
 ……真面目な話、ひどい話だ。

 全部印刷するとA4で20枚を越える分量なので、とりあえず最初の記事だけ訳してみた。
 翻訳ツールは使っていないので、精度と日本語については余り追求しないように。

===ここから(Page 1 of 7)===
 まず、肝臓が機能しなくなる。次いで、自律神経系がおかしくなる。麻痺が全身に広がり、時には補助がなくては動けない。最終的には、ほとんどが死に至る。

 死者のほとんどは子供で、何ら疑いを持たずにいた親の手による毒殺だ。

 シロップ状の毒薬、ジエチレングリコールは、近代社会からは切り離すことのできない溶媒で、一部の不凍液の主要材料だ。

 その反面、これは毒物でもある。これによる死者は、何も事故によるものと限らない。

 この毒物は長年に渡り、咳止め、解熱剤、注射用の薬品など、ありとあらゆる種類の医薬品に注入されてきた。それも、一般的には医薬品、食品、歯磨き粉等々に使用する、より安全だが高価な甘味のある溶媒(主にグリセリン)を、偽物と交換して利益を得ようとする何者かの手によって、だ。

 毒シロップはこの20年間で、世界で8件の大きな中毒事件の原因となっている。この件を調査する人たちは、数千人が死亡していると予想している。多くの場合、毒物の正確な出所は確認されていない。しかし記録と聞き込みによれば、過去4件中3件については、この毒物はニセ医薬品の主流源、中国からのようだ。

 パナマは一番最近、犠牲となった国だ。昨年、政府はそれと知らずにジエチレングリコールを26万本の風邪薬に混入させてしまい、悲惨な結果を迎えることとなった。この毒物による死者の家族からの報告は365件を数え、今のところ100件で確認が取られている。
雨季に入り遺体の腐敗がこれ以上進行する前に、調査員達は犠牲者の確認を急いでいる。

 パナマでの死亡事件は、99.5%純粋グリセリンと称し、輸出していた中国の企業に直結した。

 46バレルの毒シロップが、世界を半周する毒のパイプラインを通過して届いたのだ。集配記録と政府関係者のインタビューにより、New York Timesはパナマのコロン港から、スペインはバルセロナの商社を通過し、北京、そして始まりの地の長江三角州の近隣の、地元の者が化学工業団地(Chemical Country)と呼ぶ地へと辿り着いた。

 偽グリセリンは、3つの大陸にある3つの商社を経由していながら、どの企業においてもシロップがラベル通りの商品か確認を取っていなかった。その傍ら、商品の品質を示す試験成績証明書は繰り返し偽造され、製造者名及び仕入先名は削除されていた。結果として、誰が、どこで製造したのか知る由もなく、シロップを購入していたのだ。この情報があれば商社は、タイムズ紙の記者が見つけたように、製造元が医薬品原料製造許可を取っていないと知る事ができただろう。

 昨年のパナマとそれ以前に中国で起きた2件の中毒事件の例から、世界に冠たる低価格製品の供給元として急成長している中、中国の安全基準がおざなりにされているのが伺える。またこれは、国から国へ渡る商取引の看視が行き渡らず、偽医薬品の蔓延を許しているのかの証左でもある。

 先週アメリカのFDAは、国内の医薬品製造会社と供給元に対し、ジエチレングリコールに警戒するよう呼びかけた。この警告では特に中国を名指しはせず、本国のグリセリンが汚染されていると信じる理由もないとしている。それでもなおFDAは、グリセリンの取引にはジエチレングリコールのテストをする事、そしていかにしてグリセリンが汚染されるかを調べるよう促している。

 中国は既にアメリカの機関から、ペットフード及び飼料に、工業用化学物質のメラミンの混入した小麦グルテンを輸出していたと指摘されている。FDAでは、国内でのペットの死因が中国産小麦グルテンにあると突き止めてからは、その商品の輸入禁止措置を行っている。

 パナマと中国を以外では、毒シロップはハイチ、バングラディッシュ、アルゼンチン、ナイジェリア、そしてインドでは2度、大量中毒事件を引き起こしている。

 バングラディッシュでは、1992年に7銘柄の解熱剤からこの毒物を検出しているが、それとて数え切れない数の子供が死亡してからの事だ。マサチューセッツ州の実験室にて、発展途上国で小児科の医師を営むDr. Michael L. Benninが、スーツケースに入れて持ち出した汚染シロップのサンプルを分析することで、ようやく汚染が確認されたのだ。Dr. Benninは1995年、バングラディッシュ疫病の論文をBritish Medical Journal (BMJ)に書いており、その中で「この分量での処方で販売されれば、死者の数は数千数万に上るに違いない」と述べている。
===ここまで===

 どうも日本語の表現がおかしいな。やはり技量不足は否めない。この分だと、途中で挫折するかもしれない……。

 と、ここまでやったところで、予想外にも朝日新聞が報道しているのを見つけた。
   朝日新聞『中国製医薬品とペットフードから毒性物質 365人死亡』2007年5月9日
http://www.asahi.com/international/update/0509/TKY200705090303.html
===引用開始===
江蘇省にある化学薬品会社がグリセリンに安価なジエチレングリコールを混ぜて製造していたという。
===ここまで===

 ……ほぅほぅ。タイムズ紙ではBeijingとあったけれど、『江蘇省』の事か。

 ……って、待て。
 「ジエチレングリコールを混ぜて製造していた」とは、タイムズ紙のどこを読んでそうなった?!
 俺の読んだ限りでは、「混ぜて使っていた」との記載はなかったぞ。
 ……う〜む。これは最後までやらないと駄目なのかぁ???
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2007年03月24日

2007年初の献血

 今年初の献血に行ってきた。
 昨年末にも一度行ってきたのだが、その時はALT値が高いという理由で、献血できなかった。とりあえず今回は無事にパス。

 受付の人が漏らしたところによると、色々と献血に際しての規制が加わったせいで、血を集めるのに苦戦しているそうだ。
 ……そういや、先日もこんな記事が出ていたな。

  毎日新聞『献血:初の500万人割れ 若者離れ加速』2007年3月10日
     http://bit.ly/1qH3zuQ
===全文掲載===
 1年間の献血者数(延べ人数)が昨年、初めて500万人を下回ったことが厚生労働省の調べでわかった。少子化などで若者による献血が減少する一方、安全対策の強化で献血対象者を一部制限していることも影響。このままでは、将来、必要な献血量が確保できなくなる恐れもある。厚労省と日本赤十字社は、献血可能な年齢(16歳以上)に達していない小学生から献血への関心を高める取り組みをするなど、献血者の確保に躍起になっている。
 厚労省によると、献血者数は漸減傾向にあり、昨年は約498万8000人(速報値)と、前年の約532万人を大幅に下回った。特に減少が著しいのが10〜20代の若年層。20代は94年に206万7500人で、献血が最も多い世代だったが、昨年は119万人となり、30代の136万人を下回った。10代も94年には96万2500人だったが、昨年は38万人まで落ち込んだ。少子化に加え、寝不足や食生活の偏りが目立つ高校生の健康を心配し、集団献血に消極的な学校が少なくないことが背景にあるという。
 安全対策の強化も結果的に減少の要因となっている。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を巡り、日本人初の感染者の渡航歴をもとに80〜96年の間、英国に1日以上滞在していた人の献血制限を05年6月から実施。この制限の影響で1年間に献血者が推定約14万人も減少したとみている。
 厚労省は減少傾向を食い止めるため、05年度から将来の献血を支える「献血構造改革」を開始。5年先をめどに▽10〜20代の献血者数を40%に増やす(05年度33%)▽集団献血協力企業の倍増(同2万4220社)▽年に複数回献血するリピーターを全体の35%まで増やす(同27.5%)−−目標を立てている。
===ここまで===

 ……俺みたいなおっさんでなく、10代20代の若い人がもっと献血してくれるといいのだけどねぇ。

 話を変える。
 最近の『献血カード』は、二つ折りの紙からカードに変更されている。
 過去データも参照できるようになっていて、以前「献血10回目だ〜」などと書いた内容が、実は11回目だったとか……。
 ……便利になったものだ。

 ところでカードの採用は、タッチパネル式の問診票を導入したのと同じだったっけ?

 日経新聞『タッチして問診票』2006年8月20日
===引用開始(記事原文の漢数字は英数字にしている)===
 献血に行くと、まずタッチパネルで問診票に記入。病歴や3日前までの投薬の有無、海外渡航先や時期など14項目の質問が次々と画面に現れ、「はい」「いいえ」などの選択肢を直接、指で触れる。
 日本赤十字社は今年から、問診票をタッチパネルで作成するシステムを全国約200カ所の血液センターや献血ルームに計230台導入した。
===ここまで===

 献血は趣味ではないので、2006年の献血は400mlを2回のみと、かなり控えめだ。
 実のところ、献血センターには昨年だけで3回か4回行っている。ところが一部の項目が基準値をオーバーしてしまい、2回に1回の確率で献血を拒否されてしまったのだな。
 ……健康診断では、内臓に異常はないので、原因は不明。この1年で一気に体重が増えたから、その影響か?

 俺の体調はさておき。
 1年間にできる献血の回数も、この数年でかなり制限されるようになってきた。
 前述の新聞記事にもあるように、英国に特定の年に滞在した人は献血できないし、海外から帰国後最低1ヶ月は献血できない、とある。
  東京都赤十字血液センター
     http://bit.ly/1qH3DL7

 俺が初めて献血した前世紀では、確か献血してから1ヵ月後には献血できたと記憶している。帰国後1ヶ月未満でも献血できた。
 ここ最近(多分2、3年での事)では、男の場合は12週間、女なら16週間、間を置かないと献血できなくなっている。これは200mlと400mlの献血の場合。
 血漿成分と小血小板の場合は、男女とも8週間の間を取らないとならない。
 ……これはつまり、献血できるのは年に3、4回しかないという訳で……リピートする人の足を遠のけさせていないか?

 エイズやらB型C型肝炎やら狂牛病やら、日本でのヒトの発病例はないけれど鳥インフルエンザだとか、色々と安全策の強化は必要だ。
 でも、それが理由で必要量の血液を集められないとしたら、本末転倒でないかい?
 ……じゃあ、安全基準の線をどこで引けば良いのか、となると答えはないのだけれどね。
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2007年01月21日

納豆ダイエット、鎮火化?

 先週だか先々週だかの辺りから、何やら「納豆ブーム」が起きている。
 1日2パック食べると、ダイエットになるのだそうだ。
 納豆は嫌いではないけど、3パックを1セットで売られてしまうと、手が出せなくなるのが現状。
 ……1年で何パック賞味期限を切らせていることか……。
 気が付いたら、賞味期限が切れて半年以上、なんて事もあったな。
 ……と言うか、最後に買ったのは去年の初夏頃だったと記憶しているが……食べたのだっけ?

 冷蔵庫の中身の心配はさておき。
 どうせ今月中に消えてなくなるだろう一過性の流行の火付け役は、言わずと知れた(?)『あるある大辞典2』だ。
     http://www.ktv.co.jp/ARUARU/

 この番組で行われている一連の実験が、小学生の観察日記にも遠く及ばないいい加減なものであるのは、いちいち指摘するまでもない。
 科学的根拠があると言い切れない(時には似非科学丸出し)な理屈、少なすぎる被験者数、不透明な実験内容、そしてなぜか被験者全員に良好な結果が出て万々歳。いかにも「結果があって当然」な番組構成だ。
 「1から99までがヤラセ、1の事実をスパイスにしたバラエティ番組」と理解して見るなら笑えるけれど、真に受ける人がかなりいるのが問題。

 2006年の夏頃まで放送していたTBSの『ぴーかんバディ』の「白いんげん」の事件から、何も学べていないのだな。
 「体調不良を起こした訳ではないから、同じに見るべきではない」との反論もあるだろうけど。

毎日新聞『<納豆>TV番組でダイエット効果紹介、売り切れ相次ぐ』2007年1月10日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070110-00000147-mai-soci
===引用開始===
 「納豆を食べればダイエットできる」とテレビ番組が紹介し、全国各地の小売店で納豆の売り切れが相次いでいる。メーカー各社は増産を急ぐが、依然として品薄の状態が続き、新聞に「おわび広告」を掲載するメーカーも出るなど異常な事態となっている。
 7日放映のフジテレビのバラエティ番組が、納豆を2週間食べ続け体重を減らした男女の事例を紹介。納豆のイソフラボンが体内の特定のホルモンを増やし、ダイエット効果を生むとする。
===ここまで===

読売新聞『納豆品薄、TV効果で増産追いつかず』2007年1月13日
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20070113gr03.htm
===引用開始===
 7日夜のテレビ番組で、「ダイエット効果がある」と取り上げられた納豆の売り上げが急増し、全国の小売店で品薄状態になっている。
 放送翌日には品切れ店が続出、全国の納豆生産量の約5割を占めるとされる茨城県では中小メーカーにも新たな注文が舞い込み、増産に追われている。
 番組はフジテレビ系列の「発掘!あるある大事典2」。「朝晩に1パックずつ納豆を食べると効果的」などと紹介した。
===ここまで===

 とは言え、この納豆ブームも、もうそろそろお終りだ。

読売新聞『納豆ダイエット実験ねつ造…手口悪質、番組打ち切りも』2007年1月20日
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070120i314.htm?
from=main3

===引用開始===
 「ダイエット効果がある」として納豆を取り上げ、全国の小売店での品薄騒動を引き起こしたフジテレビ系のテレビ番組「発掘!あるある大事典(2)」を制作した関西テレビは20日、記者会見を開き、実験が「ねつ造」だったことなどを明らかにして陳謝した。
(中略)
 しかし実際には、ダイエット効果の根拠となる「中性脂肪値」などを測定しておらず、番組で表示された数値は架空のものだった。アメリカの研究者のコメントも勝手に作成し、また、「やせた」とされるアメリカ人の比較写真も、被験者と無関係だった。
 この番組については、12日に週刊誌から放送内容を疑問視する指摘があり、制作会社に聞き取り調査をしたことから「ねつ造実験」が判明した。
===ここまで===

朝日新聞『「あるある大事典」の納豆ダイエットで捏造 関西テレビ』2007年1月20日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200701200283.html
===引用開始===
 フジテレビ系の生活情報番組「発掘!あるある大事典2」で、納豆のダイエット効果を紹介した7日放送分にデータ捏造(ねつぞう)などの問題が判明し、制作した関西テレビ(大阪市)が20日、発表した。番組では、納豆を食べた被験者の中性脂肪値が正常値になったとコメントし、字幕で数字をつけて紹介。だが実際には測定しておらず、他の実験でも測定や検査をしないまま、架空の数字を番組で流していた。会見した千草宗一郎社長は「放送局としての信頼を著しく損ない、視聴者の信頼を裏切ることになり、誠に申し訳ない」と謝罪した。
(中略)
 番組は、同局から制作を受注した「日本テレワーク」(東京)がさらに別のプロダクションに再発注して制作されたという。
 関西テレビは、被験者は実際に体重が減ったとし、「部分的には事実と異なる内容を放送してしまったが、番組全体については学説に基づいて制作した」としている。
===ここまで===

 何と言うか。
 実験の捏造も何も、『あるある大辞典』の頃から実験がいい加減なもの(ヤラセ)であるのは、とうに認知されていると思っていたけどな。
 ……このようなもので『捏造』呼ばわりしては、韓国の某博士とか、早稲田の某博士に対し、失礼だと思うぞ。

 製作者側は「学説に基づいて作成した」などと言っているけど、まさか「取材での実験は、科学的な検証として有効である」などと考えていた訳ではないだろうな? さんざんあちこちの大学や研究者と話をしてきているのだから、自分達の実験がいかにいい加減なものか、理解してやっていたはずだ。
 それを今頃、実験内容を脚色したのは今回が初めて、みたいな態度を取られてもねぇ……。
 ……製作者側にしても、今まで普通にやってきたヤラセが、いきなり「捏造」呼ばわりされたのは、青天の霹靂ではなかったのかな?

 とりあえず、『あるある大辞典2』は謝罪文をHPで掲載している。
     http://www.ktv.co.jp/070120.html
 2月が終わる前には外されているだろうけどね。
 ……『ぴーかんバディ』の白いんげんに関する謝罪文は、大体2週間程度で外されている。

 まぁ、この「納豆ダイエット」とやらがどれだけいい加減な代物か、今更言っても後出しジャンケンにしかならないから、俺から突っ込みは入れない。
 こちらのサイトで色々と突っ込んでいるしね。
   教養ドキュメントファンクラブ
            http://homepage1.nifty.com/sagi/index.html

 それでも一言。
 先日行きつけのスーパーに買い物に行った時、納豆が完売していたのは少しショックだった。買うつもりはなかったのにしても。
 ……ご近所の皆さん、あなた達もですか……
posted by にわか旅人 at 15:54| Comment(2) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月18日

エッセスリムβ(ブラボー)

 『モーツァルト効果』と『耳介療法』について記事を書いたが、実はこの2つは、株式会社サンヨーメガ(以下、サンメガ社)のメイン商品『エッセスリムβ(ブラボー)』に関係する話だったりする。

 別にサンメガ社のディストリビューター(DT)ではないし、サンメガ社のHPを見てもエッセスリムの詳細に関する記述がない。外部の者からすると、まったくもって謎の商品な訳だ。
 マルチ商法に興味はないし、サンメガ社のDTになるつもりもさらさらないのだが、『ネットワークビジネスリスク研究所 掲示板』でのやり取りで、多少の情報が集まったのでまとめてみようと思う。
 ……この記事は『エッセスリムβ』の広告ではない。念のため。

 まず、サンメガ社のHPから、エッセスリムの製品情報を見てみる。
     http://www.sanyo-mega.co.jp/esseslim/
===サンメガ社HPより引用(2006年11月14日現在)===
ESSE SLIM β(エッセスリム ブラボー)とは
あなたが望む美と健康はここから始まります。

もっと美しくなりたい、いつまでも健康でいたい…これは、私たちの永遠の願い。あなたを深いヒーリングの世界へと誘いながら、輝く美と健康、そして、素晴らしい未来を創造します。

“癒し”は美と健康のための大切な源です。
自由にイメージしたり、開放感を感じたり…五感を心地よく刺激すると心身ともに癒され、人間はよりポジティブな方向へと進んでいきます。無理なく自然なライフスタイルを送ることが、美と健康への最高の源となります。

ESSESLIMβがリラクゼーション効果と潜在意識の開発をもたらします。
ヘッドホンステレオを楽しむ感覚で
イヤーセットを耳に装着するだけなので場所や時間を選びません。お部屋でくつろぎながら、家事をしながら、あるいは通勤の途中でも、日常的に気軽に楽しく続けられます。サブリミナルウェイブのシャワーを浴びたあなたは、ゆりかごに抱かれた赤ちゃんのようなやすらいだ気分で楽しく変身してゆくことでしょう。
===ここまで===

 意味不明だ。これのどこが『製品情報』だって?
 ……公式HPですら意味不明な商品を、よくも36万円(税別)も払って買おうという気になるものだ。
 まぁ、サンメガ社のDTとして活動するつもりなら、特定負担として購入が義務付けられているから仕方ないか。

 ちなみに、『ダイレクト・マーケティングフェア2006』で『エッセスリムβ』のカタログを入手している。かなり意訳した英訳文を付けている以外、内容はサンメガ社のHPと同じだ。

 さて、サンメガ社DT氏(以下、D氏)の話によると、エッセスリムとは『健康美容機器』だそうだ。以前の脱税記事で『美容機器』『健康機器』と書かれていたのを、単純にくっ付けただけだ。
 エッセスリムには2つの特徴があり、それぞれに複数の効果がある。あちらの掲示板でのD氏の発言をまとめてみる。
 1. エッセスリムには様々な脳波の周波数に対応した音楽(全6曲)が収録されている(モーツァルト効果)。
   a. この6つの音楽には、周波数に応じたヒーリング効果がある。
   b. この音楽には、脳波のα(アルファ)波とθ(シータ)波の中間の7.8Hz辺りの周波数を誘導して、右脳を活性化する効果がある。
   c. 6曲が対応する脳波のそれぞれの周波数のデータはあるが、一般は閲覧禁止である。
   d. 『モーツァルト効果』の研究者には、埼玉医科大学短期大学の和合治久教授がいる。

 2. エッセスリムには耳から微弱電流を流すパルス機能がある(耳介療法)。
   a. エッセスリムの微弱電流には、加齢による神経の歪みを矯正する効果がある。
   b. パルスによって刺激された自律神経が正常な形に近づくので、ダイエットやシェイプアップに効果がある。
   c. パルスによって自己治癒力(自然治癒力のことか?)が向上する効果がある。
   d. 自己治癒力が向上したデータはあるが、非公開である。
   e. エッセスリムと同様の理論から発達した機器が、アメリカでは医療機器として使用されている。
   f. 『耳介療法』は日本の医療機関でも採用されているので、効果の実証された医療である。
   g. 『耳介療法』の研究者には、関西鍼灸大学の吉田宗平教授がいる。

 何度読み返してみても、半分以上が意味不明だ。

 とりあえず、D氏の名誉のために書いておく。
 D氏によれば、商品やビジネスについての説明はサンメガ社の社員(クローザー)が行うので、DTの仕事は紹介と時間のセッティングだけで、説明義務は負わない。薬事法や特商法に抵触せずに説明するのは、プロのクローザーに任せるのがIDDシステムであり、DTは商品の『良さだけ』を伝えるのが仕事だ。
 だから、件の掲示板で薬事法・特商法ばりばりの説明をする事なるが、見逃してもらいたい。
 ……との話だ。
 一応サンメガ社の『会員規約(2006年2月1日〜)』には、「取引に関する重要事項は懇切丁寧に説明し、相手の理解を得ること」とあるのだけどね。それは言うまい。

 商品の良さを伝えるにしても、その商品が「何なのか」を知らないで、何をどう伝えられるというのかねぇ?
 商品の背景にある理論は似非科学、根拠の提示ができるはずもなく、主宰企業(サンメガ社)からの公式資料があるのでもなさそうだ。そのくせサンメガ社の会員規約では、説明はサンメガ社発行の最新の印刷物と同じ表現でなくてはならない、としている。紹介の席で体験談を語れば薬事法・特商法に抵触する可能性すらある訳で(ついでに会員規約で禁止されている)……。
 どう説明すればいいのやら……想像すらできない。

 それはさておき。
 商品を理解する一番の早道、かつ確実に正確な情報が得られるのは、取扱説明書や仕様書だと、おそらく誰もが同意することだろう。
 HPでどれだけ正体不明な商品説明を重ねても、これだけは曖昧な説明で誤魔化すことはできないからな。それにサンメガ社の数少ない公式資料だ。
 かなり正確なところが判明するはずだ。
 と、思いきやD氏からは公表を拒絶されてしまった。
 ……『会員規約』違反と思われる説明は平然と行うくせに、サンメガ社からの資料の発表は拒否するDTって……。
 別にD氏が規約違反を犯していると、断言している訳ではない。サンメガ社の最新の印刷物とやらの内容は知らないからな。
 ちゃんと規約に従った説明だったのだろう……うん。

 さて、結論だ。
 『モーツァルト効果』『耳介療法』が似非科学の代物であるのは、以前の記事で紹介した通りだ。ここでの『耳介療法』は、パルスを使うところからも判るように、はり師(又は医師)の資格を要する医療の方ではない。
 という事で、エッセスリムが『似非科学』な商品だというのは、これで判明した。取扱説明書なりサンメガ社の最新の印刷物でも手元にあれば、もっと詳しく判るのだろうが、カタログからは何も判らない怪しい商品だ。
 ……D氏の説明でも、『似非科学』だとの推測は容易だけど。
 と言うか、『健康機器』『美容機器』と名前の付いた時点で、『似非』とは判り切ったことか。
 このような代物を36万円で買わせようと思ったら、似非化学を持ち出して「いかにも科学的」感をかもし出し、科学的にツッコミをされたらはぐらかしと曖昧表現でかわす。
 そういう説明をしないと売れないか。

 ……あ、一つだけ確実と言えるものがあるな。
 36万円(税抜)もする音楽機器、という点だ。
 値段相応の機能が付いているかどうか……そこまでは知らない。
posted by にわか旅人 at 16:52| Comment(10) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月14日

植物性ミネラル水って何?

 実は、食品化学新聞社(http://www.foodchemicalnews.co.jp)から、毎週『健康食品新聞』のサンプルが配送されてくる職場にいる。
 ……俺の名前宛でなくて、何年か前に退職した人宛にね。
 名前からして胡散臭く感じるなら、その勘は……正しい。
 全部の記事が「怪しい」訳ではないけれど、広告記事になると途端に「怪しい」キーワードが出てくる新聞社だ。

 2006年10月11日版の記事から(怪しいと感じた部分には、赤色を付けさせてもらった)。
 ……半分近く赤くなるとはどういう事だ。

===全文掲載===
ライフタイムバリュー 植物性ミネラル水を上市 高吸収率を特徴に販売

 ライフタイムバリュー(東京都新宿区、電話03・5366・3393)は、米国・ユタ州のジュラ紀の地層から採掘した堆積層(ヒューミックシェール)から抽出した「プラントミネラル」(946ml、6300円)、「プラミン」(946ml、6800円)、「ミネラルガーデン」(946ml、1万2000円)の輸入・販売を開始した。これらの商品は同社の主力商品として位置づけられている、電話注文のほかインターネットホームページhttp://www.ltv.co.jpを介しての注文により販売する。
 これらの商品の特徴は、「植物ミネラル」を含有していることである。「植物ミネラル」とは、植物が土壌から金属性ミネラルを取り上げ、光合成を介してミネラルの分子を赤血球の7000分の1の大きさにまで分解し、マイナスの電荷を与えたものである。水に溶けるという性質を持つことから、これを摂取すると98%が体内に吸収される。また、マイナスイオンを帯びているため、体内のプラスイオンを打ち消し、細胞の酸化を防ぐことが期待できる。
 各製品には1L中に亜鉛やカルシウムをはじめとする70種以上のミネラルが合計2万mg含まれている。原液タイプの「プラントミネラル」ほか、プラム味を付けた「プラミン」、ザクロやブルーベリーなど30種類以上の無農薬野菜・無農薬果汁を独自製法でブレンドした「ミネラルガーデン」など清涼飲料水として商品を充実させている。中でも「ミネラルガーデン」は植物由来のビタミンや酵素、抗酸化物質が豊富に含まれていることからより多くの機能が期待できる飲料として販売を進める。
 「プラントミネラル」の製造で大きな役割を果たす堆積層(ヒューミックシェール)は、今から6000万〜1億2700万年前の土壌が氷河期に入った後に炭化することなく植物有機化した状態のまま形成された地層である。これまでの研究により古代植物が地中の微生物により分解されながら自然にキレート化されたものであることが判っている。親水性であるため湧水でろ過することで豊富な植物性ミネラルを抽出できる。また特殊フィルターを用いた逆浸透膜圧方によりコロイドミネラルが1L中に20000mgに調整することが出来る。
 製造元の米国・ヤングジュビテイ社の工場では医薬品製造工程に近いレベルの清潔さと性能を持った設備でボトリング。米国のほか、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドへ供給し、全世界で約30万人のユーザーを獲得している。今回、日本のライフタイムバリューと通信販売契約を締結し、一層の供給増を目指している。
 米国では近年、アスリートと植物性ミネラルの関係が話題となり、大量の発汗による円滑なミネラル補給飲料として同品に注目が集まっている。
===ここまで===

 赤字を付けた部分全てが『似非科学』な理屈だと確信している訳ではないが、『マイナスイオン』とか『プラスイオン』は、ある意味『似非科学』台頭の地位を築いている代物だ。
 金属イオンに負の電荷を与えてマイナスイオンって……金属原子MのイオンM^+1に負の電荷(e^-1)を与えてマイナスって……
   M^+1 + 2e^-1―――→ M^-1
 という理屈か?
 ……中学生の理科から出直して来い。
 これは言い過ぎだとしても、だ。
 金属イオンに負の電荷を与えれば、ごく普通に金属原子として析出されないか?
  例)Cu^+2 +2e^-1 ―――→ 2Cu ↓
 NaやMgのようにイオン化傾向の大きい元素は、この反応には当てはまらないかもしれないけどな。
 ……と言うかそれ以前に、金属イオンやSOx、NOxらはプライスイオンだと言って嫌っているのが『マイナスイオン信者』じゃないのか?

 話は変わって。
逆浸透膜圧『方』とは何だ? 誤字? 『力』『法』どちらかの間違い? そしてなぜか突然、『コロイドミネラル』と言う単語が出てくる謎。
 ……ついでに説明の内容自体も謎だ。

 アスリートと植物性ミネラルの関係が、アメリカで話題になっているかどうかはともかく。
 プロ・アマ問わず、アスリートと言うのはかなりの運動を毎日こなしているものだ。であれば、円滑なミネラル補給というのは、ひょっとしたら大事なのかもしれない。
 それに対して、アスリートが要求する『円滑なミネラル補給』とやらが、日常生活の運動量程度の(平たく言えば運動不足を指摘される)一般人に、どれだけ必要なのかねぇ?
 『運動しなくてもアスリートと同程度の運動能力(基礎体力、新陳代謝、反射能力、筋肉、技術)が身に付き、同程度のエネルギーが消費される』のであれば、買って飲んでみる価値はあるかもしれないけど……。
 なぜ注目が集まるのか、その理屈が意味不明だ。

 ……気が向いたら、他の赤字部分も調べてみるか。
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2006年08月10日

アロエベラジュースにベンゼン

 2006年7月28日とちょっと古くなってきた話だけど。
 発ガン物質のベンゼンが健康飲料のアロエベラから検出されたとして、厚労省が販売元の株式会社ディーエイチシー(東京都港区、以下DHC)に自主回収を要請したそうだ。
   厚生労働省医薬食品局食品安全部『清涼飲料水中のベンゼンについて

 このプレスリリースを見た時の最初の感想は、「あぁ、とうとうやっちゃったか」だ。
 実はアロエベラ飲料について、昨年DHCのカスタマーセンターに問い合わせていたりするのだな。『沖縄産アロエベラ100%使用』と謳った製品に、本当に他の物を入れていないのか、質問してみたのだ。何せ箱裏の表示成分にはアロエベラ搾汁液以外に、クエン酸、ビタミンC、保存料(安息香酸ナトリウム)も入っていたので。
 ……完全に嫌味だな。クレーマー扱いされたかもしれない。
 回答は「表記通り100%の沖縄産アロエベラを使用し、食品衛生法に基づいて製造しています。成分については、箱の裏に書いてある成分表示にある通りです。製法の詳細については、企業秘密のためお答えできません」というものだ。
 この時に、どこか胡散臭さを感じてしまったのだな。謳い文句と成分表示の違いについて、答えをはぐらかされたと感じたので。
 だから「いつか何か事故起こすぞ、ここ」と予想していた部分はあったのだ。
 ……記事を詳しく読んで、見当違いしていたのだ、と理解したが。

 誤解しないでもらいたいが、今回DHCの製品からベンゼンが検出されたのは、製造時に原料が混入したのでも、ずさんな管理のために事故が発生したのでもない、と言う事だ。
 厚労省のプレスリリースにあるように、ベンゼンが生成されるのは、アスコルビン酸と安息香酸が限られた条件下にある時だ。その条件については記載がないから、人為的に回避できるものなのかどうかはわからない。記事を読んだ範囲では、今回の件でDHCに落ち度はなく、「たまたま不運だった」と受け取れる。
 アロエベラを原料にした健康飲料は他にも多数の企業(厚生労働省は31製品を調査している)が販売しており、ベンゼンが検出される可能性は、どこも等しいのかもしれない。
 ビタミンC(アスコルビン酸)と安息香酸は、ごく普通にどこの清涼飲料水メーカーでも使用している添加剤だ。それが紫外線などの外部要因が、アロエベラの特定困難な成分と反応し、ベンゼンを発生させてしまったのだろう。
 まぁ、3検体の平均が73.6ppbと他社製品と比べて群を抜いて高いのは、梱包なのか容器なのか製法なのか原因はわからない。とにかく、他社製品よりベンゼンの発生しやすい状態にあった、という事だろうな。
 それはさておき。
 ジュース中のベンゼンの含有量73.6ppbは、即座に健康被害に繋がるものではないようなので、取り立てて心配する必要はなさそうだ。
 もう少し詳しい解説を読みたいのなら、こちらをどうぞ。↓
   FOOD SCIENCE 『松永和紀のアグリ話●発ガン物質ベンゼンよりも知りたい高含有アロエの安全性
   幻影随想『酸化防止剤神話:医学のおとぎ話
   DHC『アロエベラ回収について

 余談だが。
 正直な話、先の回答以外の面においても、DHCには良い印象を持てずにいる。
 理由は2つある。
 一つは、毎月送られてくるカタログの内容だ。カタログは、職場の女性が何か商品を購入し、発送先を職場にしたせいで毎月送られてくるものだ。このこと自体は、その人が発送を止めるよう要請すれば良いだけの話で別に問題ではない。本人が発送を止めさせずにいるのは、本人の勝手だからどうこう言うつもりはない。
 カタログ自体は資源ゴミにまとめて出してしまうので構わないのだが、商品の広告内容が気に食わない。『他社の商品と比べて優位である』と誤認させる内容のオンパレードなのだ。ついでに言えば、ゲルマニウムやら何やらと、似非科学のトークが少なからず登場し、しかも科学的に証明されているような記載すらされている時がある。だから野次馬根性でアロエベラについて質問して、あのような回答をされたりしたのだが。
 ……結果、持っていた悪印象はより強化されている。
 2つ目の理由は、DHCのような薄利多売のドラッグストアに出入りする原料業者の話からだ。業界の暴露話にも繋がるので詳細は明かせないが、良い評価はされていなかった、とまでは言っても良いか。残念ながらこの手の裏話の真偽は確認のしようがない。
 ……何と言うか……アロエベラについてカスタマーに問い合わせてからと言うもの、DHCって黒に近いグレーの印象が付いて離れないのだよな……。

posted by にわか旅人 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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