2009年11月26日

いまさらマイナスイオン

 商売のネタ探しか自己啓発か、上司があるセミナーに参加した。
 それだけならどうでもいい話なのだが、「ためになる良い話だった」と感心した内容が似非科学だったりすると、目も当てられない。
 今回はそんな話。

 上司の話から出た講師の名前と日程から判断するに、上司が出席したセミナーはこれのようだ。

   サン・アスリート株式会社『究極の予防医学。健康志向の方!「食育」「栄養学」「ボディケア」を学ぶ方 必見です!』2009年10月2日
     http://www.sunathlete.com/comming/post_53.html
===引用開始===
 今回、人間の基礎の基礎である、継続的な健康(未病)を維持するために
 予防医学の第一人者であります。
 あの堀口医院の理事長(前院長)であります医師
 堀口 裕(ひろし) 先生をお招きいたします。
     (中略)
 堀口先生は
病気には成らないで欲しい・・・いつもそういわれております。
 色々な方向を研究された結果
 マイナスイオンが人体の細胞を活性化させた結果に
 免疫力向上や血行改善を促進してゆくと言われます。
===ここまで===

 ……よりにもよって、と言うか、今さら『マイナスイオン』かよ!?
 上司の理数系知識が低いのは前々から知っていたが、ここまで酷いとは予想外だった。
 ……いや。
 「乳酸菌発酵の食品なのに、殺菌したら乳酸菌を入れた意味がなくなるじゃないか! なんでこんな事をするんだ! 理解できない?!」
 と某乳酸菌発酵食品を批判していたくらいだから、予想してしかるべきだったかもしれない。
 ……殺菌すると、菌に分解・生成された化合物が元の物質に戻ると思っていたらしい……それ何て言う『ゴールド・エクスペリエンス』? そもそも乳酸菌のほとんどは胃で殺菌されるのに、それすら知らないっていうのが……。

 こんな上司が『陽イオン』『陰イオン』の単語を知るはずもなく……と言うとバカにしている感があるが、本当に知らなかったのだから仕方ない……「『マイナスイオン』は化学で使う単語ではありませんよ」と俺が説明をしたら、無視……どころか肉体言語込みで逆ギレされた。

 肉体言語の詳細はエントリの主旨から逸れるので省くとして、マイナスイオンの健康・医療効果で上司ががなり立てた内容は、似非科学・マルチ商法批判サイトや掲示板で見かける信者の発言とそっくりだ。
 ……実際はチンピラごろつきの口調で罵倒されたのだが、見苦しいので変えてある。

 曰く。
 ・「マイナスイオンがインチキなら、医療機関で使うはずがない。医療機器として認可されているのだから、マイナスイオンには効果がある」
 ・「堀口医院その他、マイナスイオン治療器を使っている病院では、患者が列を作って待っている。それ程効果のある治療法だ。疑うなら病院に行って見てくればいい」
 ・「大手メーカーもマイナスイオンの装置を作っている。存在しないと言うなら、大手メーカーが作るはずない」
 ・「マイナスイオンが存在しないと言うなら、存在しないことを証明しろ。できたらノーベル賞ものだ」
 etc. etc…

 こうも見事にはまられると、
 「たった1回のセミナーで、ここまで洗脳されるか! 恐るべし、洗脳セミナー!!」
 ……と、笑えない冗談を飛ばすしかない。

 さて。
 どうすれば上司に、マイナスイオンに根拠はないと理解させられるか?

 カルトやマルチ商法にはまった人への対処としてよく言われているのは、
 1. 話は聞いても相手(会員になる・セミナー出席・商品の購入)はしない。
 2. 共通の友人(がいれば)に、注意するよう連絡を入れる。
 3. 当人の熱が冷めて元に戻ったら、受け入れる心構えをしておく。
 ……だったかな?

 つまり今は放置して、遠巻きに「これっておかしくないか?」と自覚するのを待つしかない訳だ。

 ところが、だ。
 不可抗力とは言えかなり悪い選択をしてしまった。
 マイナスイオン批判の資料を見られてしまったのだな。
   菊池誠『「ニセ科学」入門』大阪大学サイバーメディアセンター
     http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/
nisekagaku_nyumon.html


 資料としてプリントアウトしたものを机の上に置いておいたら、それを上司に見られてしまった。不本意ながら、結果としては否定する資料を見たのと同じ。
 ……タイトルだけで上司はブチ切れ、肉体言語に走ったから中味は読んでいないと思う。

 こっちを見られたら、もっと大変だったかもしれない。
   菊池誠『科学者はマイナス・イオンブームの何に困惑させられたのか』大阪大学サイバーメディアセンター
     http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/texts/minus_ion.pdf

   『ニセ科学』YouTube
     

   『まん延するニセ科学』YouTube


 そもそも中学生レベルの理科でも、マイナスイオンの説明がおかしいのは十分理解できるはずだ。
 ところが、
 「堀口先生は工学部を卒業してから、医学部に入り直して医者になった。中学生レベルの理科の知識しかないくせに、マイナスイオンの研究を長年続けている先生に難癖をつけるのか」
 と意味不明な理由を付けたのが上司だ。
 ……いえいえ。中学生レベルの科学を求められているのは貴方です。

 さてさて。
 俺がマイナスイオンを批判したにあたり、怒り心頭の上司が難問……というかイチャモン・難癖を吹っかけてきた。

 曰く。
 ・堀口先生は何年もマイナスイオンを研究し、装置を開発してきた。だからお前はそれを否定する研究をして「マイナスイオンが存在しない」という論文を提出しろ。
 ・「(中高生の)教科書に書いてある」「○○○からの引用」などの根拠は、間違えている恐れがあるから使うな。自分で実験・研究した内容だけで語れ。
 etc. etc….。

 「悪魔の証明」を求めるのは良くある話だが、教科書まで否定して「実験で証明しろ」と来たのは新しい。
 ……「何百何千人が追試を行って、少しずつ修正した内容をまとめたのが教科書なのに、それを否定するなんてどこの原始人?」「厨ニDQN乙」と、どこかの巨大掲示板に書くような台詞が浮かんだのは秘密だ。

 「何一つ証明できないくせに、何年も研究している人を批判するとは、一体何様のつもりだ!」
 の一文は、上記「曰く」で並べた文言の後に必ず付いてきている。
 ……前後がつながらないのはお約束……? 証明するのはこっちではなくて、「先にマイナスイオンの健康効果を堀口先生する方が先」だと言ったら、肉体言語を食らった。

 今回が初めてではないものの、この上司、つくづく科学リテラシーを持ち合わせていないのだな、と絶望的な気持ちになった。
 ……まぁ、職場では研究・開発の人が呆れ返る科学の基礎を平気で質問する人物なので、科学リテラシー云々を話すだけ無駄な相手だ。

 このままでは愚痴で終わってしまうので、「否定できるならしてみろ」と、上司がセミナーかどこかでもらってきた資料を並べてみる。上司によると、「マイナスイオンを証明する」資料らしい。
 ……否定ではなくて、科学的に「おかしい」と指摘しただけなんだけどね。

 (1) 『電子の基礎知識』カンゲンイオン医学研究会資料
 (2) 堀口昇、堀口裕、二見英揚、植松美紀、仁木麻早、佐藤有『赤血球細胞内検査・血液検査に基づく新陳代謝検査法の開発と「新陳代謝スケール」の作成』医療と検査機器・試薬 30(3):
299-314, 2007.
 (3) 堀口昇、時代強、堀口裕『HIV/AIDSに対する還元電子治療成績』化学療法の領域、2008年10月号別冊(原著:Antibiotics & Chemotherapy, 24 (10): 93-103, 2008)
 (4) 堀口裕『心拍スペクトル解析から検討したマイナスイオンの自律神経への影響』全国マイナスイオン医学会誌、4 (1): 40-44, 2000.
 (5) 『カンゲンイオンの効果 いつまでも健康でいたい』カンゲンイオン医学研究会、2005. 3-4
 (6) カンゲンイオン医学会誌、7 (7): 2004.
 (7) 『Miエナジー ET-21』取扱説明書
 (8) 『Miエナジー使用マニュアル』カンゲンイオン医学研究会、2005. 2-3.

 (1)の『電子の基礎知識』については、以前『水商売ウォッチング』の掲示板で触れた事がある。
 ……よそ様の掲示板なので手加減していたのと、書き込みに不慣れだった時分なので、今読み返すと全身を掻き毟りたくなる。言いたかったことの半分も語れていない。
     http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=19152&
form=tree


 (2)〜(8)の文献・資料については、機会を見つけてまとめられればと思う……のだけど、エントリのタイトル通り「いまさら?」感がしないでもない。
 例えば(2)の『赤血球細胞内検査(以下略)』文献では、
 「この検査法は『人の病気は細胞に起こり、細胞の酸性・酸化の亢進が正常なエネルギー産生を阻害する』という考え方に基づいている」
 と冒頭で断っているくらいダメダメなものだ。中味はまともに試験したようなのに、出だしから科学論文じゃないって。
 ……後の資料も推して知るべし。

 さてさてさて。
 職場であれば、上司がマイナスイオン商品を取り扱いたいと稟議を出したところで、上層部で止められる公算が大きい。被害があるとすれば、直下の俺が八つ当たりされる程度だろう。
 しかし俺が問題と感じるのは、上司が自称(裏を取るつもりはない)するに、上司は町内会会長と、中学生の野球チーム(全国大会出場経験有り)の監督をしている、というものだ。
 『水からの伝言』みたいに、おかしな経路で教育に入っていかないか。それが心配だ。
 ……マイナスイオンはとっくに社会に溶け込んでいる、という異論は認める。
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2009年08月23日

ゼロ(零)磁場

 地殻変動による断層同士がぶつかり合う事で互いの磁気を打ち消し、磁気が低くなっている土地がある。そのような土地はエネルギーが低いと思われがちだが、ある特殊なエネルギーが形成・蓄積されている。
 古来より聖地、あるいは癒しの地として知られる場所がそれであり、有名な場所ではフランスのルルド、中国の蓮華山、日本なら長野県の分抗峠が該当する。それらの土地のエネルギーが蓄えられた水が、「奇蹟の水」「神秘の水」として知られるのは周知の通りである。
 この癒しのエネルギーを蓄えている土地を、磁気の低い(あるいは無い)事から『ゼロ磁場』と言う。


 「蓮華山やルルド地方に断層なんかあるのか?」というのが俺の疑問だったりする。
 しかし『ゼロ磁場』とそこの水の奇蹟的な効果を信じる信者は、疑問を抱いたりしない。
 ……カルトは教えを疑う事を禁じるようだし。

 本人が宗教だと理解して一人細々と信仰するなら放っておいても害はないが、市などの自治体がさも真実のように取り上げるのは問題だろ?

 長野県伊那市のHPより。
   『分杭峠(気場)』2007年4月27日
     http://www.inacity.jp/view.rbz?nd=95&of=1&ik=1&pnp=38&pnp=
76&pnp=95&cd=157

===引用開始(赤色強調は当方による)===
☆☆ ゼロ磁場(気場とは?) ☆☆

【断層断面図ゼロ零磁場(断層)の機能】

 分杭峠は中央構造線という大断層の上にあります。断層には地表面のズレとしての段差並びにゼロ零磁場があり、人間に例えると皮膚の経絡(けいらく)・経穴(つぼ)と同様に気の通る道並びに気の出口・入口であると考えることが出来ます
 断層の両側から押し合う力によって、断層には全般的にエネルギーの蓄積があり、また局部の突出部にはエネルギーのないゼロに近い場所(零場)もあり得ると推定出来ます。零は文字どおり「なにも無い、零」でありますが、(+)回転と(-)回転が一対になった素粒子状のスピン対(気)は零にならず、逆に零場に次第に蓄積される傾向があると判断できます
 断層付近には、放射線の強い場所や地磁気変化の著しい場所があります。実験によると、サイ(気)はラジウム等放射性物質原子の原子核内の不安定な中性子に直接働きかけて、y線などのエネルギーを放出して、より安定的なラドン等になる(ラジウム崩壊)性質があります。
 気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています。ラドン温泉などとして知られる低線量放射線は、免疫の機能を高め、自然治癒力を増進させるもので、健康に良いと言われています
===ここまで===

 『ゼロ零磁場』と『サイ(気)』について説明しているらしいのだが、何度読み返しても意味不明だ。
 ……「考えることが出来ます」「推定出来ます」「判断できます」「考えられています」と、歯切れの悪い説明しかできない事は理解した。

 スピンに触れているから、つい『ゼロ零磁場』とは原子核のスピン(核磁気モーメント、核スピン)の事かと誤解しそうだが、「スピン対は零にならない」「対は零場に蓄積される」で意味が判らなくなる。
 と言うか、真面目に物理化学を勉強している人なら、鼻で笑う与太話だろ、これ。俺は笑えないが。
 ……「零場」なんて単語はないし、スピン対が「気」のはずもない。「蓄積」されるのはゴミデータとデータ取り(の準備)に費やす時間と、無駄になる紙の束ぐらいのものだ。

 更に意味不明なのが、「実験によると、サイ(気)は放射性元素の不安定な中性子に働きかける」の下りだ。

 どういう実験で「気」を確認したのか、と初歩的にツッコむならば、だ。
 「気」によって、半減期が短縮されたのを確認したと見るべきだろうな、うん。物理化学だけでなく、地質学や考古学あたりの年代測定に半減期を用いる学問にも影響が出るから、ぜひとも論文にまとめて提出してもらいたいものだ。
 ……放射線治療後にも使えるな。医療にも大貢献だ。こんなネットの一角で実験で確認したなんて言っている場合じゃないぞ。

 放射性元素の中性子は、不安定でも何でもない。
 原子核での陽子と中性子の比率が歪なために中性子が飛び出し、原子番号の低い元素になるという話であって、中性子が何か変なエネルギーを出して、陽子・中性子の数も変わらずに安定した元素なり同位体になる訳ではない。
 ……比率が歪というのも正確な表現でないので心苦しいところだ。

 「気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています」というのも意味が判らない。
 ……意味が判らないと、何回言わせたいのだろう?

 不安定な物質を「安定」させているのに、どうして「崩壊」するのさ? 放射線のある温泉が健康に良いような話は時々耳にするけど、それが「気」の起こす「異常現象」なのか?
 ……「気」が異常の原因なら、健康に良いというのと矛盾するだろ?

 軽くツッコミを入れてみたものの、『ゼロ零磁場』『サイ(気)』とある時点で、似非科学なのは述べるまでもない。

 これがどこかの企業のHPならまだしも(それでもネタとしての需要はある)、市がHPに堂々と載せているのだから、伊那市が他にも変なものに手を出していないか、ちょっとどころではなく酷く心配になった。
 ……ざっと見た限り、EM菌入りの団子を川に投げ入れる活動や、「ありがとう」と声をかけて水質の改善を図るとか、波動転写器で分杭峠の「気」を転写した水を販売する、とかはしていないようだ。


 いや、甘かった。
 市が販売しているのではないのが幸い(?)、『ゼロ磁場の秘水』と名前で既に販売されている。
   零磁場ミネラル株式会社HP
     http://zerojiba.jp/

 この企業は波動転写器を使った水は販していないようだ。
 ……しかし「気」やら「スピリチュアル」やらの怪しい単語の数は、伊那市のHPの比ではない。

 勿論、波動信者が目を付けないはずがない。
   分杭峠(ぶんぐいとうげ)ゼロ磁場の情報サイト
     http://bungui.fineup.net/

 管轄(?)の市が「気」やら「ゼロ零磁場」なる似非科学をHPに載せているのは、似非科学・オカルト信者にどう映っているのだろう?
 「市がHPに掲載しているのだから、ゼロ磁場水と気と波動は科学的に正しいと認められたのだ」かな?


◎参考◎
 ゼロ磁場ショップ〜イヤシロチ〜
   http://www.honmono-ariake.com/
 NMR超基礎編
   http://www.chem-station.com/yukitopics/nmr-kiso.htm
 Wikipedia 『放射性物質』
   http://xurl.jp/1t1a
 Wikipedia 『同位体』
   http://xurl.jp/2t1a
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2009年03月22日

今更ながら似非科学批判批判

 かれこれ1年近くになるのかな?
 一時期、似非科学を批判するあちこちのブログで、『似非科学批判批判』が話題になった。
 「一見科学的な説明に見えるが、突き詰めれば既存の科学とは相容れない(もしくはあからさまに矛盾している)説明をしている商品や理論」を、「いや、その説明はおかしい。既存の科学では、かれこれこのように証明されている」と批判するのを 似 非 科 学 批 判とするなら、『 似 非 科 学 批 判 批 判 』は「似非科学を批判する行為を批判する行為」と言えるだろう。

 文末に「だろう」と付けたのは、似非科学批判批判について触れているブログをいくつか巡り、似非科学批判批判者のコメントを読んでもみたところ、俺の読解力と理解力の低さからか、「具体的に何を問題として、似非科学批判を批判しているのか」、俺には理解できないからだ。

 専門知識がある訳でもなく、『似非科学批判』の真似事しかできない俺の知能では、コメント欄での議論の深さと早さに参加する機が得られず、ROMするしかなかったのが実際で、ほとぼりが冷めてかなり経つ今なら、自分のブログでこそこそ書く程度であれば人目につかずに済むだろうとの希望的予測から、春を寝過ごしたカエルのタイミングで口を出してみる事にする。

 過去ログから。
 『健康産業新聞』が『似非科学批判批判』している記事に、俺なりにツッコミを入れたものだ。
   過去ログ『健康産業界の偽科学への主張?』2007年3月25日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36822643.html

 過去ログ内でも「何が言いたいのか判らない」と書いているし、改めて記事を読み直しても「で、何が言いたいの?」という疑問符が真っ先に出てくる。
 ……似非科学な商品とそれらを製造・販売する企業が多い健康業界だから、似非科学を支持するためにも『似非科学批判批判』な記事を書く責任がある、というのは判る。

 記事を書いた人物が、マイナスイオンや波動を似非科学と知っているのかどうか、は多分重要ではない。
 ……この新聞社の記者・元記者の何人かと面識があるが、あくまで会話の印象で語るのならば、科学・似非科学の区別がついていなさそう……ではあった。怪しい売り文句だと薄々感じていても、仕事だから仕方ないという諦観もあると思う。

 その記事の問題点は、既に当時にツッコミを入れているので、ここで蒸し返すつもりはない。しかし改めて『似非学批判批判』という観点で読み返すと、「似非科学を批判する人を批判する」側に観察できる独特の主張が見える。

===引用開始===
未科学を偽科学と批判するグループの、事を性急に断じてしまう考え方こそが、非科学的といわざるをえない。
   (中略)
要は科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる。してみれば、このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる。
===ここまで===

1. 似非科学批判批判の特徴 その1
 似非科学批判を一からげにして語るため、どの似非科学批判を批判しているのかが判らない。

 「未科学を偽科学と批判するグループ」というのが、一体どこのグループを指しているのかは知らない。まずそのようなグループの存在を俺は知らないし、巡回ルートにあるそれぞれのブログも、各自がめいめい勝手に似非科学批判を行っており、グループを構成などしていない。

 となれば、この記事で批判されている「未科学を偽科学と批判するグループ」というのは、記事を書いた本人(と、記事を掲載した新聞社の関係者ら)の妄想の中にのみ存在する対象であり、そのような妄想内のグループを批判するなど、競泳用のプールに釣り糸を垂らすぐらいに無意味だとしか、俺には表現のしようがない。
 ……勿論、俺がそういうグループの存在を知らないだけの可能性はある。

 俺からの視点で『似非科学批判を批判』する側は、「科学的に誤った情報を、科学と称して垂れ流している」という『問題点』の部分はすっ飛ばし、「似非科学だと批判されたから、批判し返す」という脊髄反射をしているように見える。
 ……批判を投げ返した先には誰もいないのだが、『似非科学批判批判』にとっては受け取る人のいる・いないは重要ではなく、むしろ「批判し返した」という事実が重要なようだ。

 批判の批判を受け取る相手がいないのだから、更なる反論があるはずもない。それをもって「このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる」と、勝手な勝利宣言をしている。
 ……壁に向かってぶつぶつ独り言を唱えるのなら、壁相手に勝利宣言するのが筋でないかい?

2. 似非科学批判批判の特徴 その2
 現段階では証明されていない『未科学』と、誤りと証明できる『似非科学』とを混同する。
 少なくとも俺の巡回ルートのブログで、『未科学』=『似非科学』(記事中では偽科学)と一緒くたにしている人はいないし、俺も一緒くたにしたエントリは書いていない……つもりだ。
 後の研究により証明・解明されるのを待つものを『未科学』とするならば、既に数多くの追試を経て証明されている『科学』と明らかに食い違う「科学めいた言説」を垂れ流しているのが『偽科学』『似非科学』として良い。

 具体例になるかな?
 水(H2O)は水素(H2)と酸素(O2)の化合物であり、溶媒として使用できるが、情報を記憶する媒体としては使用できない。この辺りは『科学』として認めてもらえるだろう。

 水に水素を溶かし、記憶力の低下したマウスに投与したところ、記憶力が回復した。これは過去ログでちょっと取り上げた内容だ。事の真偽はこれから行われるかもしれない追試で確認されると期待している。
 これは今後の研究結果を待つものなので、『未科学』と分類できるだろう。

 水に「ありがとう」など綺麗な言葉をかけると氷の結晶は綺麗になり、「ばかやろう」などの汚い言葉をかけると結晶は汚くなる。
 「水からの伝言」で有名(?)なセリフらしい。
 水が情報(この場合、言語)を理解する事はない。またどれだけ優秀な専門家が努力しても、水に記憶力があると証明する事もできない。ただ単に発言するだけなら構わないが、それをあたかも『科学』のように見せかけた実験を行い、結果の写真(何百枚もの写真から目的に適ったものを取捨選択)を出しているので、『似非科学』と分類できる。

 この事例2つをもって、全ての『未科学』と『似非科学』の違いを語れる訳ではないが、おおよその違いは理解できるかと思う。現在未科学とされているものが、後年『科学』となるか『似非科学』となるかは不明だが、『似非科学』が『科学』になる事はまずないと断言できるだろう。

 このように『未科学』と『似非科学』は似て非なるものなのだが、『似非科学批判批判者』の特徴の1つが、この2つを並べて同義に語っている事だ。
 「科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる」の部分に、それが表れている。

3. 似非科学批判批判の特徴 その3
 「似非科学でも、誰かに迷惑がかかる訳ではない/救われている人がいる」

4. 似非科学批判批判の特徴 その4
 「こんな似非科学、基礎教養程度の知識があれば引っかかる人はいない。引っかかる方の自己責任だ」

 #3と#4の主張も時々見かける気がするのだけれど、今回取り上げた過去ログとは関係なさそうなので、別の機会に回す。いつになるかは判らない。
 ……まだ考えがまとまっていないし。
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2008年10月05日

樹液シートで足裏から毒素排出

 肩こりや慢性的な倦怠感、その他の体調不良の原因の多くは、体内に蓄積された毒素によるものだ。体調を良くするためには、この毒素を体外に排出する必要がある。排出のための最適な器官が、「第2の心臓」と言われる足の裏だ。
 毒素は全身のつぼが集中する足の裏を通じ、体外に排出されるが、その排出能力を一層高めるのが、ハーブ、天然岩石の粉末その他、各種の天然素材のパワーを閉じ込めた「樹液シート」だ。
 寝る前に樹液シートを足裏に貼ると、シート内の天然成分が足裏のつぼを刺激し、毒素を体外に吸い出してくれる。
 その効果の程は、翌朝にシートがどれほど変色しているかを見てみれば明らかだ。シートを変色させたのが、体外から排出された毒素だ。


 俺の回りでは2、3年前に話題になり、今や聞くことのなくなった似非科学商品に『樹液シート』なるものがある。『足裏シート』や他の呼び名もあるらしいが、ここではとりあえず「就寝前に足裏に貼ると、寝ている間に足裏から毒素を吸い出す」という触れ込みの健康グッズを『樹液シート』で統一しておく。

 実は『樹液シート』をネタで買った事がある。ハーブとトルマリン粉末か何かが入っていて、マイナスイオンの効果でナンチャラという触れ込みのあった商品だ。
 使ってみたところ、確かに一夜明ければ樹液シートの色は変わっていた。でも身体の調子や気分が良くなったという事はない。
 それどころか、「これって汗を吸って色が変わっただけだよなぁ」と、染み出てきた液体と糊で汚れた足裏を見つめ、朝から空しい気分になってしまったのは良い思い出……か?
 ……あくまで俺の体験談。ひょっとしたら、プラシーボ効果で気分の良くなれる人がいるかもしれない。

 そもそも、ここで言われる「毒素」が不明なのだよな。
 重金属だとかホルムアルデヒドだとか、その他にも幾つもの「いわゆる毒物」の名前なら時々聞いたけれど、実際に足裏から排出されたというデータは、少なくとも俺が見て回った樹液シートのパッケージにはなかった……と思う。
 ……まぁ、毒素は肝臓で無毒化されて、ほとんどは尿や便で排出されるのだから、排泄器官でもない足裏から、そのような物が出てくると考える方がどうかしている。

 マツキヨで買った樹液シートの経験が、果たして価格に見合う価値があったのかどうかはともかく。
 ……同じ箱の中身で、左右に貼ったシートの色が違っていた時は吹いた。

 ネタで購入した樹液シートが、同じ商品でありながら左右で違う色になった事で、販売していた企業に電話をした。念のため言っておけば、クレームではない。返品はしなかったし、返金も要求していない。1消費者として至極ていねいに、とても当たり前の質問をしただけだ。

 まず先に。
 本当に毒素が排出されているなら、左右で色が大きく変わるとはちょっと考えにくい。左右で蓄積されている「毒素」が別々な訳ないだろうしね。片方が赤茶色、もう一方が抹茶色だったかな?
 左右の色の違いの理由を問い合わせたところ、「わかりません」の回答だった。

 次に。
 俺の知識では、体内の毒素は肝臓で無毒化されて体外に排出されるはず。なぜ足の裏から毒素が排出されるのか、その毒素の種類についても、問い合わせてみた。
 出てきた回答は……「わかりません」「知りません」あたりの要領を得ないものだったと記憶している。
 ……いやいや。毒素を足裏から吸い出していると、パッケージに書いていたのはあんたらだろうが……。
 まぁこれで笑える回答が出ていたら、速攻でブログネタにしていたかもしれない。

 さて。
 余りにもあからさまな似非科学……と言うか「おもしろ似非健康グッズ」な乗りに、当時はこのブログで取り上げる気もなれなかったのだが、この手の商品が海外に輸出されていると遅ればせながら知ったので、慌ててエントリを書いてみることにした。
 メインのソースはQuackwatchと、そこに貼られているリンクだ。
   Stephen Barrett “The Detox Foot Pad Scam” Quackwatch, August 23, 20008.
     http://www.devicewatch.org/reports/kinoki.shtml

 ……「おもしろ似非健康グッズ」と書いたが、あくまで、この手の商品には何ら医学的・科学的な根拠がなく、悪くてもせいぜい足が糊でかぶれる程度の効果しか期待できないと理解して、購入するならの話だ。何らかの効果を期待して、受けている治療を拒絶するような人が万が一にもいる可能性を考慮すると、「おもしろ」いと言っていられないのが現状だろう。

 話を戻す。
 全米で一番有名な『樹液シート』……なのかどうかは知らないが、後で紹介する記事でも名前入りで報道されていた位だから、それなりの知名度はあるのだろう……が「Kinoki Foot Pads」という商品だ。
     http://www.buykinoki.com/
 ……2008年10月5日現在、Kinoki社の「Foot Pads」はオーダーフォームしかないが、9月下旬までは商品の画像も紹介されていた。

 そしてこちらが、Amazonで販売している『樹液シート』
     http://xurl.jp/0nd
 ……購入は自由だけど、お金の無駄なのであまりお薦めはしない。
 とりあえず「Foot Pads」と「樹液シート」が同じ種類の商品を指していると理解してもらえれば良い。

 とは言え。
 この手の商品を肯定する人達からすれば、「アメリカにも輸出されているのだから、効果は本物だ」と胸を張って俺の発言は誤りだと指摘したくなるかもしれない。
 ……樹液シートの効果を云々する前に、足裏から排出される『毒素』と、排出のメカニズムをきっちりと説明してもらいたいものだ。

 しかし肯定する人達には残念な事に、この手の商品が似非科学であると、あちらのTV番組でも報道されるに至っている。
   John Stossel “Ridding Yourself of Toxins, or Money? Company Says Kinoki Foot Pads' Capture Toxins From Your Body'” ABC News, April 11, 2008.
     http://abcnews.go.com/Health/Stossel/Story?id=4636224&page=1
 と言うか、俺の知る範囲では日本では話にも上がっていないのに比べれば、あちらの食いつきはなかなかに良い。

 しかもKinoki社は一方的に否定する報道をされたのではなく、毒素その他を排出する根拠を教えてほしいとの要望に、科学的根拠のある資料を出さなかったし、インタビューにも応じなかったと言うのだから、どのように解釈されても仕方あるまい。
 ……似非科学な商品の常として、科学的根拠を問われると、意味不明な大量の体験談ばかり出してくる日本の業者とは少し違うかも。

 似非科学に対する日米の企業とマスコミの対応の差はさておき。
 俺が販売会社に問い合わせても詳細の不明だった「毒素」だが、上述の報道では、重金属他、23種類の溶媒を含めた成分分析をしたとある。
 ……訳はうまくないが、意味は通じると思う。
===引用開始===
The lab tested for a lot of things, including heavy metals like arsenic and mercury and 23 solvents, including benzene, tolulene and styrene and found none of these on the used pads.

訳)研究室でヒ素や水銀などの重金属、及びベンゼン、トルエン、スチレンなど23種類の溶媒の多くの試験を行ったところ、前述のいかなる成分も使用済みシートからは検出されなかった。
===ここまで===

 ……はて?
 樹液シートは体内の毒素(重金属やら何やら)を足の裏から吸い出すのだよな? それがまったく検出できなかったって? それじゃあ、いったい何を吸い出しているのだ?
 ……やっぱり、汗……しかないわな。

 そしてABC Newsでの報道の後、とあるラジオ局でも似たような調査を行ったらしい。下記の引用文はQuackwatchからのもの。
===引用開始===
she had her husband wear pads overnight and then too them to a laboratory for testing. The lab found that the heavy metal content of the used pads were the same as that of an unused pad, which meant that the pads don't "suck out any toxins." Then she held an unused pad over a pot of boiling water. The steam caused the pad to turn black, indicating that the dark color that results from wearing a Kinoki pad is caused by a chemical in the pad that reacts to moisture.

訳)彼女(ラジオの人)は夫にシートを一晩貼り付けさせた後、研究所で分析した。研究室では使用済みシートと未使用シートの重金属の濃度に変化を観察できず、これはすなわち、シートが「毒素を吸い出して」などいないという意味である。次いで彼女は、未使用のシートを沸騰したお湯を入れたやかんにかざしてみた。蒸気によりシートが黒く変色したことで、Kinoki社の樹液シートが変色するのは、中の成分が湿気と反応するからだと結論できた。
===ここまで===

 ……化学反応での何でもなく、乾燥した粉末に水分が加わると、粘度と色が出てくるのと同じ理屈だと思うぞ。別の樹液シートを使用した経験から言って。

 さてさて。
 このエントリの頭から断言している事だけれど、化学名すらはっきりしない「毒素」が足裏から排出されるなどまずあり得ないし、足裏がそんなに大事なら、一部の身体障害者らは毒素を排出できずに毎日生死の境をさ迷っている訳で……と言うか、肝臓なんかいらないだろ。

 別のエントリでも書いたことを、ここでもう一度書いておく。
 ……肝臓以外の個所で解毒できる器用な人達は、それのできない不器用な人達に肝臓を譲ってくれ。
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2008年06月14日

Qビットテクノロジー

 『健康産業流通新聞』の2008年4月8日号にて、空水光研究所株式会社の所長、齋藤英彦氏の「Qビットテクノロジー」なるものが紹介された。
 これはどういう代物かというと、
「食材や花や土や機械などさまざまものにQビットエネルギーを照射することで鮮度を保ったり、異臭を除去したり、毒性を取り除いたり、性能や効果を高めたりできます。実際に2〜3日しか持たない魚を冷凍せずに1ヶ月持たせたり、1週間で腐り始めるイチゴを6ヶ月間保存したり、なかなか困難なダイオキシンで土壌汚染された土地を浄化したり、たとえばプラセンタの異臭を機能性を落とさずに脱臭したり、硬い肉をやわらかく甘く熟成させたりとQビットテクノロジーは生命や物質に対して影響を与えます」
 だとか。

 ヒトにとって都合の良い効果だけを持つものなどないので、この説明を読んだ時点で胡散臭いと判断できる。記事を読み進めたところ、なかなかに香ばしかったので紹介する。

●Qビットテクノロジーとは
 QビットのQは、Quantum量子のQから取ったもの。ビットは単位。で、量子レベルのエネルギーという事で、『Qビットエネルギー』と名づけたのだとか。
 そして『Qビットエネルギー』を出す技術が『Qビットテクノロジー』である、と。

 ……量子レベルのエネルギーって……。J(ジュール)cal(カロリー)W(ワット)などの単位で表せないものを、そのまま受け入れる訳にはいかないなぁ

 これだけでは判りにくいので、記事から引用する。
===ここから===
地球のあらゆる物質、あらゆる生命体は原子でできています。原子は原子核、陽子、中性子、電子、中間子などでできています。これらが量子と言われているものです。この量子レベルに自然と共生するエネルギーを与えることができれば、健康被害や環境破壊を抑えることができるのではないかと思ったのです。
===ここまで===

 この説明だけで、少なくとも俺の住む世界の住人ではないのは判明した。
 ……原子に陽子・中性子・電子以外に、「中間子など」という別物が混じっているって、どういう世界よ。しかもこれらが一緒くたで「量子」って……。

 エネルギーはどこまで行ってもエネルギー、「自然と共生する」などという都合の良い選択性など持ち合わせてはいない。
 なものだから、エネルギーを(仮に)与える事ができたとしても、健康や環境に影響は与えられない。
 ……なんだろう、「原子力エネルギー」と「風力エネルギー」は異なる「エネルギー」だと言ってはばからない人達と同じ匂いを感じる。

===引用開始===
生命は地球の磁場の力と太陽のエネルギーの創造物ではないでしょうか。だとすれば地球が出している電磁波と太陽の出している電磁波を融合させたエネルギー発生装置を作ろうと考えたわけです。
===ここまで===

 生命の起源については色々と議論が交わされていて、まだ結論が出ていないと記憶している。「電磁波による生命発生」説は初耳だ。
 ……しかしまぁ、トンデモな新仮説として読む分には面白いけれど、実用化を目指すとはね。

===引用開始===
Qビットエネルギーは生命が欲しがっている微振動なのです。すべてのものは微振動でできているのです。生命があるのも生命を活性化している微振動があるからです。
===ここまで===

 ここで言っている『微振動』とは、オカルトの『波動』の事だ。「ニュートン以来の物理学では、水の記憶や波動のことはわからない」という下りもある。

 ……って言うか、生命の説明が二転三転しているってどういうことだ。

●Qビットテクノロジーのメカニズム
 予想はできるだろう。一言で言って、「未だ解明されていない」。
 ……と言うか、解明できる代物ではないし、解明したいのであれば、別の宇宙に行く方が早い気がする。

 あくまで解明できていないのは理論の部分で、実用できる代物は開発できているという主張だ。
 ……ぃゃぃゃぃゃ。そんな簡単に量子をどうこうできるのなら、何千億円もかけて粒子加速器を建設する必要がないだろ? それこそどこかの研究室に持ち込めば、ロイヤリティ1%でも10億円単位が寝ていても転がってくるって……。

 まぁもっとも、その技術の基礎が、
 「鉱石や色の層を作り微量なエネルギーを発生させています」
 では、中味は推して知るべし。

===引用開始===
これだけではありませんが様々な工夫をして人体や生命、肉や魚や野菜、水や土、機械などを活性化しているのです。
(中略)
化学の世界とは異なる世界が広がっています。化学の技術で作られた物質が地球環境を破壊していることが多いのですが、このQビットテクノロジーは自然と共生する量子レベルのエネルギー技術といえるかもしれません。
===ここまで===

 Qビットテクノロジーは化学ではないと認めたか。しかしどういう訳か、量子物理学でなら説明できると言いたいらしい。
 ……化学や物理学のかなり難しいレベルまで習得していないと、量子物理学には手が出せないと思うのだが……。

 Qビットテクノロジーには色々と工夫はしているようだが、根底にある技術は『カラーセラピー』の本を読んで開発した『カラーエネルギーチップ』らしい。それを産後、寝たきりになった奥さんに使用し、3年後には起き上がれるまで回復したのを見て、
 「自分の技術には何か生命を活性化する力が確実にあると感じた」
 のだそうだ。
 ……「使った」「治った」「効いた」の典型的な『3た論法』。体験談が科学的な根拠とならないのは言わずもがな。

●医療現場でのQビットテクノロジー
 冗談抜きで危なくないか?
 高額な玩具程度なら、ネタと理解して購入する分には何も言わないでおく。だけど効果があるとは到底思えない代物を、生死に関わるかもしれない医療現場に持ち込むのは問題があると思う。
 ……勿論、きちんとデータが採取されていて、それを元に医療現場で使っているなら、それは俺の早計でしかないが。

===引用開始===
量子レベルのエネルギーを出すことで分子、細胞を調整する働きがあります。医療の現場でも使われています。東洋医学に詳しい落合歯科医院の落合先生は治療の現場で活用しています。手術のときも、止血などに有効だといっています。他にも何十人もの医師が利用しています。
===ここまで===

 『落合歯科医院』は検索すると何軒も出てきた。東京、栃木、厚木、秩父などなど。ただし『Qビットテクノロジー』に関係した治療を行っている医院は見つけられなかった。
 ……どこの落合歯科医院かは知らないが、付き合いで「有効だった」とのリップサービスを受けて、それを真に受けた可能性もありそうだ。

●CO2の節減とエコにも有効
 Qビットテクノロジーを利用すると、ほぼ全ての社会問題が解決できるらしい。

===引用開始===
おそらくこの技術でほとんどのことで電気代、つまりCO2削減ができると考えています。ボイラーやエンジンに取り付けることもできます。Qビットエネルギーを照射した断熱塗料藻ロケットにも使われるなど評価は高く、建物に塗るだけでCO2の削減効果があります。
===ここまで===

 更にはコンピュータ関係の放熱問題も改善できるし、機械の性能もアップ。つまり処理速度は上がるし、メモリとハードの容量は増えるというのかな? 車に取り付ければ燃費が向上するし、燃焼した際に出るNOxは少なくなるし、車の騒音すら軽減できる。冷蔵庫に取り付ければ氷点下に温度設定しても凍らないし、多少高い温度に設定しても腐敗せずに熟成するのだとか。
 ……どう手を付ければいいのやら……。ここまで来ると、大言壮語をにやにやして読んでいくしかない。

●量子物理学は宗教です
 こう言っているのは俺ではなく、記事の斎藤英彦氏だ。

===引用開始===
量子物理学の世界は粒子の不可解な動きの解明ですから、古代の医学や、般若心経ともつながっています。量子的レベルで見れば人も物もつながっていて、ある意味宇宙はひとつの生命体だと、量子物理学は科学的に示唆してくれます。
===ここまで===

 俺の読解能力に難があるのかもしれない。
 「量子物理学は難解だから、古代の医学や宗教と同類だ」と言っているように読めてしまう。
 ……まぁこの人の言う『量子物理学』が、俺の住むこの世界の同名の学問とは別物だというのは判っていたけれど、信仰の対象としていたとは……!

 さて。
 ここまでの記事の引用分だけでも、『Qビットテクノロジー』が似非科学……と言うには稚拙すぎる気がするが……なのは火を見るよりも明らかなのだが、この技術を利用した冷蔵庫がある。
     http://www.q-bit.jp/eco.html

 説明は似非科学だけれど、実際は別の方法で説明できる技術で、実際に省エネルギーな商品なら良い。
 だけど現物も余計な玩具を付けただけの、文言通りの節約ができない代物という可能性の方が高そうだ……と、効果のない節電器や燃費向上グッズを見てきた俺の経験則から話。
 ……科学的な説明が出鱈目だから、その技術を使用した商品も出鱈目だ、と言っているのではないので、誤解しないように。

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2008年05月17日

重力子(グラビトン)

重力子(じゅうりょくし、Graviton)は、素粒子物理学における4つの力のうちの重力相互作用を伝達する役目を担わせるために導入される仮想的な素粒子。2007年までのところ未発見である。
アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論より導かれる重力波を媒介する粒子として提唱されたものである。スピン2、質量0、電荷0、寿命無限大のボーズ粒子であると予想され、力を媒介するゲージ粒子である。

(Wikipedia 『重力子』[1]より 2008年5月15日)


 素粒子物理学は守備範囲外なので、「ボーズ粒子」とか「ゲージ粒子」とか言われても良く判らないのだが、現在のところ『重力子』はあくまで理論であって、存在は確認されていないというのは判った。
 ……何となく面白そうなので、余裕があったら少し勉強しみたいところだ。

 さて。
 重力子の英語名Graviton(グラビトン)は、似非科学の世界でも使われている。
 が、この宇宙の素粒子物理学とは別の宇宙の話であるのは、これはもうお約束だろう。
 ……ここからのパクリだと言えば、まだ笑って済ませたかもしれない。

●似非科学のグラビトンとは
 国際グラビトニクス協会の説明によると、「重力子(グラビトン)とは、重力波の量子化した状態」[2]だそうだ。

 Wikipediaの説明を理解しているとは言わない。だけどこっちはもっと意味不明だ。
 ……似非科学の世界では、グラビトンを計測ないし確認する方法が確立されているらしい。しかしどこを検索しても、計測機器や方法が見つからないのだよな。

 しかも似非科学の世界では、グラビトンとはたかだか30文字にすら満たない説明で十分な代物、というのが笑える。重力波や量子化の意味の説明もなく、いきなりグラビトンを実用化した商品の話になる。
 ……『グラビトンセラミック』や『結界』の事な。これらは後述する。

 グラビトンの説明がこれだけでは話にならないので、もう少し検索してみた。
 そして見つけたのが、『ニューサイエンス』[3]というサイト。
 ……タイトルからして「いかがわしさ」臭が漂うサイトだし、中味は期待(?)を裏切らない香ばしさだ。

===引用開始===
極端に高い周波数の重力波(グラビトン)は、光速より30ケタ以上も速く、宇宙の中心まで一瞬で届き、結界をつくれば、海の中に赤潮ができず、魚類は活き活きし、陸上は森林、野菜が成長し、ダイオキシンを減少させることができます。
===ここまで===

 この時点でオカルトか三流SFだと判りそうなものだけど……これって洒落か釣りだろ? 光速を超える速度と赤潮は、どう見てもつながらないし。
 ……え? 本気で信じているって!?

 この時点で頭がクラクラするのだが、頑張って調べてみる。

●グラビトンセラミック
 これも国際グラビトニクス協会の説明から。
===引用開始===
グラビトンセラミックとは、ファインセラミックに、重力子(グラビトン)を封入した後、特別な方法で波動(周波数)放射を一定に安定させたものであります。
   (中略)
このセラミックを使ったGTW(重力波=Gravitational Waves)によるグラビトンシステムは、従来のマイナスイオン電子で還元する方法とは大きく異なります。このシステムではマイナス電子のように、大きく重い粒子で還元するのではなく、GTP〔グラビトン化した粒子=Gravitonized Particle(10-8 cm以下)〕から放射されるGTWが、原子核内部にある中性子、陽子、そして、クォークにエネルギーを与え、触媒効果により、マイナス電子が逃げられない状態にいたします。これがいわゆるGTPを用いた「還元」方法です。

この方式により、その場、その環境を瞬時に良い状態に変化させ、長期間、長時間に亘り物質の分子・原子構造を、正常かつ最高の状態に保つことができるのです。
===ここまで===

 『波動』が出てきたか。
 この波動は物理の『波動』ではなくて、オカルトの『波動』なのは言わずもがな。

 マイナスイオン電子? ……はあ? 何ですか、それは?

 化学反応の「還元」って、マイナスイオン電子で還元するのだっけ? 「マイナスイオン」の付かない電子を受け止る事を「還元」だと思ったけどな。
 ……そして電子を与えた側は「酸化」される、と。

 対するGTPの還元は、何か謎な『エネルギー』を原子核に与え、マイナスイオン電子が外に出ないようにするとか。
 ……なんだ。つまり反応は起きていないじゃないか。どこが「還元」だよ。そもそも重力波が与えるエネルギーって何よ?

 それにしても、グラビトンの世界では、10-8cmが電子よりも小さい粒子というのが笑える。いや、この文章の流れだと、「大きく重い粒子」は「原子核内部にある中性子〜」かもしれない。
 いずれにせよ、ここで言うグラビトンが、俺の世界の陽子や中性子の軽く1万倍を越えるサイズで、それでもって電子の大きさの計測ができないのにも関わらず「電子よりも小さい」のであれば、俺の住む世界の話ではない。

 そもそも難解な文章……というか理解できないのはなぜだ?
 ……日本語……だよな? 全く理解できないのだが……暗号ですか?

 ここからは『ニューサイエンス』を引用する。
===引用開始===
今まで科学と呼ばれている学問は物質だけの科学と精神だけの科学であって、この二つを合わせた科学はありませんでした。この度私はグラビトンを世界最初に発見して、この二つの科学を統合したのです。私はこの発見によって、アインシュタインの仮説が間違っていることを証明しました。
===ここまで===

 物質だけの科学って何だ? 精神だけの科学って何だ?
 意味不明すぎる。
 まぁ、脳内世界なら哲学的な「宇宙の真理」とやらを見つけるのは自分が最初だし、この宇宙の物理法則も関係ないわな。

===引用開始===
光速は一定ではなく、人間の想念によって変わります。今度地球が昇格(注:船井幸男氏も提唱する優良星人への昇格)すると、光速は現在の3倍になります。
===ここまで===

 ……どうツッコミを入れればいいのやら……これが工学博士だった人のスピーチと言うのが……そりゃ信仰は自由だけどさ。

 『優良星人』……。
 ……こののギャグSFの読みすぎか?

 ……というか、こんなものを『科学』と誤解できる人がいるのは驚き。

===引用開始===
グラビトンを封入した小さなセラミックを四方に置くとその中に結界ができます。私はこれを「グラビトナイズドフィールド」と名づけています。実例としてこれを海の中の四隅に置くと赤潮がなくなります。また陸上ではダイオキシンの量が10分の1に減少します。
===ここまで===

 ……見事に電波です。まずはデータを出せ。話はそれからだ。

 本当にダイオキシン量が1/10に減少するなら、そのデータを持って市役所区役所に持っていけば、焼却場で引っ張りだこになると思うのだけどね。
 ……あ、「実例」と言っているのだから、データはきちんと取っているのか。
 それにしては、どこの焼却場で採用されたとか、どこかの焼却場が採用しているとかの掲載が一つも見つからないのはなぜかな?

●結界
 これまでのところを読めば、『結界』をどのように作るかのイメージは湧くかもしれない。
 グラビトンセラミックを適当な場所に置いても良いし、地面に埋めても良い。肌身に付けていれば、電磁波から身体を守れる。
 ……発がん性がコーヒーと同じ程度の電磁波を怖れる理由が俺には理解できないし、仮にグラビトンセラミックで遮断できるとしても、四方八方から来る電磁波を、身体の一部にしか触れていない物がどう全身を守るというのやら……あぁ、だから『結界』か。

 使い方は簡単。
 3枚以上を任意の場所に置き、それらを直線で結んだ内側が結界になる。建物内なら2階に置けば、地下から屋上までが結界の有効範囲だ 。しかも平地であれば、一辺2kmの範囲まで結界が及ぶのが確認されているとか。
 ……笑わせてくれる。

 だからまずは、結界の効果をどうやって計測したのか、そして計測したデータを出せ。

●カルト? グラビトン教? 宝地院 [5]
 始めから宗教がかった似非科学のグラビトンだが、『グラビトン教』と言っても良さそうな宗教団体……宗教法人ではない[6, 7]……いや、カルトがある。
 福岡県豊前市にある『宝地院』という組織だ。

 見かけは仏教のどこかの系列のような体裁を取っているが、少なくともHPを見る限りでは、開祖や発祥の年代、現教祖、経典、崇拝対象といった宗教団体なら前面に出すべきものが何一つ記載されていない。
 かろうじて『宝地院』のある「求菩提山」が、6世紀に「猛覚魔卜仙」という呪術者によって開山したという下りがあるだけだ。
 ……この呪術者が開祖だとの記載はない。

 それもそのはず。
 宝地院は、『株式会社ミドルウェイ・ジーエスエイチ』[8]と同じ組織だ。
===引用開始===
研究開発については株式会社ミドルウェイ・ジーエスエイチの研究者が主に担当しておりますが、宝地院では宇宙学、地球学などの「ご法話」で真理を説きながら、「高次元医学」「高次元能力」「過去世回帰トレーニング」「検索セミナー」などの勉強会を行いつつ、寺院の伝統を継承し、厳かにその歴史を伝えています。
===ここまで===

 宗教や信仰は当人の自由だし、とやかく言うつもりはない。

 だけどな。
 科学を装っていながら科学でない代物、要するに似非科学な商品を宗教の場で販売するのは、御利益があるとうそぶき高額な壷を売りつけるのより性質が悪いだろ。
 御守りや御札を「売るな」と言うのではない。この手の商品は科学の名前は出していないし、買う方も迷信と納得して買っているはず……だしな。
 似非科学な代物をさも効果があるように謳い、宗教の場で売るのは詐欺目的以外に何があるのかな。
 ……宗教の場に限らず、似非科学な代物を販売するのは詐欺行為と思う。

 しかもこういう苦情[9]まで掲示板で公開されているようでは、詐欺組織という印象しか抱けないのが、俺の正直な感想。
===引用開始===
本人によれば宗教ではなく科学であり、波動・念波・グラビトン・結界の世界のようです。
   (中略)
セラミックにエネルギーを入れてもらったり、結界を張ったり、他の家族に対しても同様の供養等が必要とされました。
医師からは見放されている中で、「必ず治る」と励ましてくれた唯一の存在であったため、理解はできないものの、ありがたい気持ちで信じる努力をつづけました。
しかし、一ヶ月で治るという最初の言葉とは裏腹に回復の兆候はあまり見られないまま、多額のお金が次々に請求されました。多額とはいえ一市民がなんとか出せる10万単位の金額でした。
   (中略)
先日主人に破滅を意味するマイナスのエネルギーが入り、家族全員死ぬという検索結果をその宗教からもらいました。
===ここまで===

 具体的な団体名は上げられていないが、出てくる単語からその宗教の予想はつく。
 ……要するに、こういう事を生業としている組織だ。

●話が逸れた
 グラビトンの説明そのものは、似非科学と言うよりオカルトや宗教の方が近いという感じはする。
 ……しかも中味はおそらくカルトだ。

 科学的な単語をそこかしこに無理矢理に散りばめ、故人とは言え工学博士の言説や活動と関係付けるものだから、騙される人が出るのかもしれない。マルチ商法や投資詐欺が広告塔に著名人を使い、信用を集めるのと一緒だ。
 ……著名人や○○博士推奨という文言が出てきたら、まず問答無用で疑いを持つ事。鉄則。

 ここでは話題にしなかったけれど、グラビトンを謳った商品には、セラミックだけではなく『竹炭』や『活水器』などもある。調べていくと、謎の古代文明『カタカムナ文明』[10]まで芋づる式に出てくる。
 怪しさ・いかがわしさならかなりのものだ。

 ……何と言うか……オカルトを相手に似非科学だと言っている気分になってきたので、今回はこの辺で。


[2008年5月18日追記]
 『宝地院』について継続して調べていたら、天台宗に同名の寺院のある事が判明。
     http://bit.ly/1jEHqDF
 こちらは佐賀県小城市小城町松尾清水にある。

 崇拝対象は清水観音。九州西国33観音霊場の1つにも挙げられている。
     http://www.kokoronotabibito.com/list/reijo.php?no=B-90

 当エントリで取り上げている『宝地院』は、東京・大阪・名古屋・九州(福岡県行橋市)に「本院」があるので、天台宗宝地院とは無関係だ。


◎参考インターネット◎
[1] Wikipedia 『重力子』2008年4月19日の版
   http://bit.ly/1jEHxzd
[2] 国際グラビトニクス協会『グラビトンについて』
   http://www.gravitonics.jp/about/
[3] ニューサイエンス『グラビトン(重力波)結界について』2000年7月20日
   http://www02.so-net.ne.jp/~hal
[4] 株式会社ミドルウェイ・ジーエスエイチ』HPのFAQ
   http://www.gravitonics.com/topics/faq/faq.html#Q.01
[5] 宝地院HP
   http://www.houchiin.com/index.html
[6] 文部科学省文化部総務課『文部科学省所轄公益法人一覧』
   http://211.120.54.153/b_menu/koueki/bunka/04/001.htm
[7] いちらん屋『宗教団体一覧』
   http://ichiranya.com/society_culture/001-religion.html
[8] 株式会社ミドルウェイ・ジーエスエイチ』HP
   http://www.gravitonics.com/index.html
[9] 迷える母『狂信的な息子』お寺ネット 人生相談や先祖・水子供養など相談例 「宗教」についてのご相談です、2005年9月7日
   http://www.otera.net/soudanrei/syuukyou.html
[10] Wikipedia『カタカムナ文明』
   http://goo.gl/9cMtw

◎その他の参考インターネット◎
幸up研究所HP
   http://www.ne.jp/asahi/sachiup/sugimoto/index.html
グラヴィトニクス研究所
   http://thehado.net/0.html
『船井幸雄のいま知らせたいこと 「いま一番知らせたいこと、言いたいこと」 「結界」の技術を知ろう』船井幸雄.com、2005年6月8日
   http://www.funaiyukio.com/funa_ima/index.asp?dno=200506004
『船井幸雄の「この人いいよ!」 (株)コンプラウトの佐藤じゅん子社長を紹介』船井幸雄.com、2007年7月7日
   http://www.funaiyukio.com/konohito/index_0707.asp
『イヤシロチと楢崎皐月』
   http://www.igakutogo.com/narasaki.html
日本脱カルト協会HP
   http://www.jscpr.org/index.htm
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2008年04月18日

雑菌浴『マコモ風呂』

 黒影氏のブログ『幻影随想』の2008年4月12日のエントリが、ちょっとしたホラーだったので紹介。

 『恐怖のマコモ風呂』2008年4月12日
     http://blackshadow.seesaa.net/article/93103924.html
===引用開始===
#(注)このエントリには生理的嫌悪を引き起こすような内容が含まれます。
#そういうものに耐性の無い方は、続きはご遠慮ください。
===ここまで===
 ……という事なので、一度考えてから読むように。

 余り文才に長けていない俺がここで二番煎じするもの何だから、興味のある人にはリンク先の本文で楽しんでもらうとして。

 要するに『マコモ風呂』というのは……こういう事だろ?

 煮物やシチューを作った鍋を2、3日放置しておくと、上汁に薄い膜が出来る時がある。大根の煮物でなら、室温で24時間も放置しておけば観察に耐えるものが作れる。
 煮凝りと異なるのは、「吐き気を催す」形容しがたい異臭のある事だ。これを「発酵」とするか「腐敗」とするかは自由だが、この悪臭に鍋ごと捨ててしまおうと考える人もいるかもしれない。
 『マコモ風呂』とは、この時の鍋の中身(食材「 だ っ た 」部分は除く)を浴槽レベルで再現、鍋でも3日放置すれば洗うのに勇気が要るのを何週間何ヶ月も放置……ではなく保全に尽力し、「健康」の名の下に毎日浸かる行為の事である。


 ……書いていて両肩の辺りがムズムズしてきた。
 まるでStephen Kingの『Creepshow』とか、タイトルは忘れてしまったけれど、隕石に汚染された水を飲んで溶けていく住人の話とか、『Nightmare on Elm Street』のゴキブリホイホイならぬ人間ホイホイとか……80年代のチープ・ホラーばりの気色悪さを思い出してしまった。

 しかし……。
 判ってはいたけれど、教祖様のお言葉は絶対なのだねぇ、と感心した。
 ……いつぞやのドロ水を大金払って飲むなんてレベルではなかった。

 この腐臭漂う雑菌浴を、アトピーの治療に採用している病院がある。黒影氏のところでもリンクが貼ってあるが、一応ここでも貼っておく。

  ナチュラルクリニック21
     http://www.nc-21.net/index.html

 そしてこちらが『マコモ風呂』の説明。
     http://www.nc-21.net/hospitalization-atopy.html
===引用開始===
マコモとは池や川などの水辺に群生するイネ科の大型多年草で、
(中略)
そのマコモを母体にして発生させる微小単細胞生物は「マコモ耐熱菌」と名付けられ、それがマコモ風呂の素です。このマコモ耐熱菌は体内から毒素を排泄させます。
===ここまで===

 念のために断っておくが、「マコモを菌で発酵させる」という話ではない。
 マコモから単細胞生物が「発生する」と主張しているのだ。それが「マコモ耐熱菌」。

 何も無いところに生命が自然発生することはないので注意。
 「マコモ耐熱菌」は架空の産物か、ただの汚染だ。ひょっとしたら製造工程で滅菌処理をしておらず土壌菌が付いたままだとか、『黒穂菌』の可能性もあるかもしれない。
 ……それでも土壌菌や黒穂菌が「自然発生する」ことはないが、妄想は湧くかもしれない。

  Wikipedia 『マコモ』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B3%E3%83%A2
  まこもネット『マコモタケってなんですか?』
     http://www.makomo.net/what/index.htm
  JA長野県『マコモタケを知っていますか? 食べたことは?』2006年9月20日
     http://www.iijan.or.jp/oishii/2006/09/post_364.php
 ……JA長野県の方は後半『耐熱菌』が出てくるので、ソースとして信頼できるのは前半までかと思われる。

 指摘するまでもないけれど、皮膚から毒素が排出されるというのは「典型的な」似非科学。
 そんな簡単に毒素(そもそも何を『毒素』と言っているのか不明)が体外に排出できるのなら、肝臓はいらない。
 ……信者は表皮で肝臓の代用ができるようだから、肝臓を必要な人に譲ってくれ。

===引用開始(は当方にて付けた)===
マコモ湯は原則的に換えません。そうすると人の汗や表皮を分解する発酵菌や皮膚の弱毒菌が繁殖するようになります。
(中略)
これらの菌は皮膚表面の老廃物を分解し、皮膚の治癒を促進します。また、皮膚表面の細菌叢を変化させるようです。 そして皮下に集まる免疫細胞を変化させます。つまり、このお風呂に入ることで、体のリンパ球が体を治す方へ働くのです。なぜならマコモ風呂はその中でバランスが取れているからです。
===ここまで===

 ……雑菌風呂だと認めている。

 老廃物が分解されるよりも、雑菌による感染症の方が俺は怖いな。

  Wikipediaで『皮膚感染』を検索した結果
     http://goo.gl/Uzlfnm

 皮膚の老廃物って、要は垢だろ? 普通に風呂に入って洗えば落ちるわな。
 マコモ風呂よりよっぽど健康的じゃないか?

 「皮膚表面の細菌叢を変化させるようです」と仮定しておいて、その後で「免疫細胞を変化させます」と断定。
 意味ないだろが。

 「なぜならマコモ風呂はその中でバランスが取れているからです
 あくまで俺の主観なのだけど、似非科学やらインチキダイエットの推奨者って、「バランス」という単語が好きだねぇ。そんな曖昧な表現ではなくて、リンパ球とマコモ風呂がどうつながるのか、具体的に示して欲しいわ。
 ……あぁ。マコモ風呂で傷口から侵入した雑菌を、リンパ球で攻撃するという事か。確かにそれならある意味「バランスは取れて」いるな。

===引用開始===
バランスの取れた野菜を食べれば、体もバランスが整います。バランスの取れたマコモ風呂に入るとバランスの取れた皮膚になります。バランスとは自然界のバランスのことです。あなたの体の中にも細菌がいて、それらがバランスが取れていれば病気にはなりませんが、バランスが崩れると、便秘になったり、いろいろ弊害が生じます。
マコモ風呂はそうしたあなたの体を自然のバランスに戻させてくれます。
===ここまで===

 「バランス」のオンパレード。だけど意味不明。
 ……意味不明すぎて、ツッコミが入れられない。

 言える事は一つ。
 食べ物を粗末にするな!!

 さてさて。
 黒影氏のエントリによると、『マコモ』をパクった人物がいるそうだ。
 堀洋八郎……Pacific Western Universityで薬学博士の学位を購入し、『光合堀菌』なるもので『マコモ』をパクり、『次世紀ファーム研究所』というカルトを組織し、『真光元(信者にはマコモと読ませていたとか)』という商品名のサプリを開発・販売、万病に効くと謳い当時12歳だった糖尿病I型の少女を死なせたとして、現在も係争中の人物だ。

  真光元被害者の会HP
    http://homepage2.nifty.com/macomo-higai/
  弁護士紀藤正樹のLINC TOPIC NEWS−BLOG版
    『真光元(しんこうげん)と薬事法』2005年7月22日
     http://kito.cocolog-nifty.com/topnews/2005/07/post_df58.html
    『真光元(しんこうげん)の裏側』2005年7月25日
     http://kito.cocolog-nifty.com/topnews/2005/07/post.html
  健康本の世界『堀洋八郎』
    http://khon.at.infoseek.co.jp/chosha/h144.html
  TEAM酷道
    『「次世紀ファーム研究所」現地レポ(前編)』
     http://www.geocities.jp/teamkokudo/farm1.htm
    『「次世紀ファーム研究所」現地レポ(後編)』
     http://www.geocities.jp/teamkokudo/farm2.htm
 過去ログ
  『『FNN 特命取材班』で学位商法報道』2006年12月23日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/30147267.html

 そこで改めて『真光元』を調べてみたら、面白い事が判明した。
 過去ログのコメント欄に登場した『株式会社 環境保全研究所』が、『ビーワン』という美容液の販売に『真光元』を利用していたのだ。

 過去ログ
  『ダイレクト・マーケティングフェア 2007』2007年10月30日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/63550337.html

     http://www.7272.jp/0928053877/
===引用開始===
アクアバランス憲章
1】ビーワンの優れた蘇生の力を最大限に美として表現する。
2】真光元の光合堀菌の優れた水の浄化の力を最大限に健康に生かす。
3】空気、それは人間に無くてはならない目に 見えない水。
ヘアーリフォーマーから発生する空気の最大限の結合力を生かし美に生かす。
4】自然な働き、素直な力が大いなる力となり人間の知識を超えた表現、
「発毛」その与えられた自然の力を最大限に生かす。

私たち人間が利益と共に発生する
この不思議な媒体を手段として
環境に働く素晴らしい力を、今まで表現し得なかった影に働く力、大いなる徳
それを光に変えて、全ての人が徳を得る行いとして、この憲章が出現したことを理念とし
美・健康・環境の三面美容を提唱するものなり。

平成十三年 五月 一日 吉日
===ここまで===

 ……完全なカルトでしたよ、と。

 環境保全研究所のHPには『マコモ』『真光元』の単語がなかったので、過去のコメントでは気づかずにいた。思っていた以上に胡散臭かったのだな。
 ……こんなものを美容液に使う美容師の気が知れん。

  株式会社環境保全研究所
     http://www.kankyo-hozen.info/
===引用開始===
天然水のエネルギーバランスを整え、水の“記憶”を最大限に利用するというコンセプトから生まれたビーワンシステム。
===ここまで===

 現在は『水伝』的な似非科学な説明に走っている。
 ……いやはや。

 ちなみに。
 『ナチュラルクリニック21』のマコモは、「マコモ(真菰、英:Manchurian Wild Rice、学名Zizania latifolia)は、イネ科マコモ属の多年草。別名ハナガツミ」(Wikipediaより)の事だ。
 『次世紀ファーム研究所』の真光元は、ガマ科植物のヒメガマ(健康本の世界より)の事だ。
 ……だからどうしたというのではなく、『マコモ風呂』の説明でマコモと真光元は別物だと言っているので、違いの説明をしておく。

 しかし何だ。
 俺が『マコモ風呂』で一番恐怖したのは、雑菌の塊が浮いている浴槽とか、嗅ぐと吐き気を催す腐臭とか、雑菌風呂に浸かるイメージではない。
 「 雑 菌 」風呂の「 施 設 」が、「 医 療 現 場 」に、「 医 療 設 備 」として「 用 意 さ れ て 」いる事。
 だったりする。
 ……院内感染が問題になっている昨今、浴槽で雑菌を培養している病院って……正気を疑うわ。
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2007年09月17日

波動アストレア

 先日ふとした機会から、とある機械の説明を受けた。
 その機械の名前は『HADO Astrea(波動アストレア)』
     http://www.hado.com/shopping/new/0705/hadoastrea.htm

 言うまでも無く、『波動』の文字が付いている時点で、怪しさ胡散臭さ全開な代物だ。

 もらったカタログによると、輸入販売元は『株式会社アストレア』らしいが、これは『株式会社アイ・エイチ・エム(以下IHM)』の関連会社(子会社?)だ。

 さて。
 IHMの代表は、江本勝という。
 水に「ありがとう」と綺麗な言葉をかけると綺麗な結晶に、「ばかやろう」などの汚い言葉をかけると汚い結晶になると、世迷言をほざいている御仁だ。
 『水からの伝言』『水は答えを知っている』などの著を出している人物で、江本勝の名前は知らなくても、タイトルだけで「ああ、あのいかがわしくて怪しい人ね」と知り合いが納得した人物だ。
 ……ISBNやアフィを貼る気にすらなれないので、興味あるなら検索でもして探してもらいたい。

 『波動』『江本勝』と出た時点で、『波動アストレア』のいかがわしさを表すには十分なのだろうが、せっかく話を聞いたので、内容を公開しなくては先方に失礼だろう。
 青字が受けた説明の内容だが、メモと記憶が頼りなので、全てを網羅しているわけではない。

 個人を特定されることはないだろうが、念のためどこで聞いたのかは伏せておく。

 『HADO Astra』とは、エネルギー測定とエネルギー改善のための機械です。
 医療機器ではありませんが、これからこの機械の研究が進めば、将来有効な医療機器へとなる可能性があります。

 まずはそのように主張するデータを、言い出した奴から提出しろ。話はそれからだ。

 これは一種のホメオパシーの機械で、ヨーロッパでは500台が既に販売され、使用されている実績があります。
 ヨーロッパでもこのようなあけすけな似非科学に引っかかる人はいるだろう。
 それよりもまず、「販売実績」がどのような意味を持つのか、具体的に説明しろ。

 この機械の元となった研究データは旧ソ連の研究施設のもので、兵士やスパイの洗脳などにも使われました。
 これが旧ソ連の崩壊した理由の一つなのか。
 いかがわしい似非科学に国を上げてうつつを抜かしていると、国が傾くという証言ということで。
 ……ここ最近の日本も胡散臭い似非科学・似非医療がまん延しつつあるからな。人事では済まされないかも。

エネルギー測定
 PCに名前と年齢を入力します。

 個人のデータ取りのためというより、占いに使うのかと思ってしまった。

 付属のヘッドホンを耳に着けると、それを通じて機械(この場合、PC)がエネルギーを測定します。
 見た目20年位前の耳全体を覆うタイプのヘッドホン……。
 ヘッドホンというのは『出力』するのが目的で、『入力』のためではなかったと思うが……。どういう経路でデータを採取しているのさ。

 何よりまず先に、その『エネルギー』の単位を説明しろ。

 測定されたエネルギー状態は1〜6段階の色で示され、エネルギー状態の低いほど、ストレスが少なく良い状態である事を示しています。
 ここでディスプレイに現れるのは、人の各種臓器の画像や全体像やら何やら。実際の被験者のスキャン画像が出てくるわけではない。
 例えば、移植などで腎臓とか片方なくした人の場合、どう取り繕うのか教えて欲しかったな。

 この機械は、身体の220箇所のエネルギー状態を測定します。測定箇所には、各種内臓、血管、神経、眼球、脳、果ては染色体まで検査することができます。
 エネルギー状態の表示として、あちこちに色の着いた点(ドット)が出てくるのは、まあ良しとしよう。
 21対の染色体の画像が出て、その上を点があちこち飛び回っているのを見た時には、笑うのをこらえるのに苦労した。
 どうやって兆単位もある細胞の染色体を、たかが1つの画像上で表現しているというのか。

エネルギー改善
 『HADO Astrea』では測定したエネルギーを、良い状態のエネルギーに改善する機能がいくつかあります。

 エネルギーは『高い』『低い』で表現するもので、『良い』『悪い』ではない。
 ……と言うか、いつになったらその『エネルギー』とやらの説明をするのだ?

 1. 機械でエネルギーを出力し、ヘッドホンを通じて入力します。
 2. Oリングテストでも知られていますが、相性の良い言葉(例えば「ありがとう」)などをキーボードで入力し、そのエネルギーを注入します。


 なぜかこの時のキーワードで「ありがとう」をやけに強調していた。
 だけど内心俺は「くたばれ水伝、くたばれ水伝……」と念仏を唱えていたのは内緒だ。

 3. 付属の容器に、普段使用しているサプリメントなどを入れ、それを電磁波で計測します。それにより、そのサプリメントが本当に必要なのかどうかがわかります。
 ……電磁波……って……。
 この手の『波動』商売では、電磁波は親の仇ぐらいに憎い敵でなかったか?

 4. 最後に情報転写。『HADO Astrea』には数種(数百種だったと思うが、覚えていない)の波動がデータベース化されており、容器に水を入れることで、ホメオパシーのレメディ、いわゆる『波動水』を作ることが出来ます。
 これは想定内。

 で、笑えるのがデータベース。
 普通の計測機器では測定できない物質(例えばリンゴ)の微弱なエネルギー(波動)が、このデータベースには蓄えられているのだとか。
 ……測定できないものを、どうやって測定し、それをデータベース化した、ってのかねぇ?

 さてさて。
 2007年9月10日〜9月12日までの3日間、東京国際展示場で『Diet & Beauty Fair 2007』が開催された。
 怪しい企業がそこかしこに跳梁跋扈する展示会なのだけど、この機器とそっくりなものを見かけてしまった。

 KDD株式会社 医療事業部
     http://www.kdd1.com/clinick.html

 に「これって『波動アストレア』と同じ?」
 プ「違います。アストレアさんより新しいし、機能も追加されています」
 に「どういう機能?」
 プ「(自慢そうに)エネルギーの注入による回復の機能があります」
 に「それって、アストレアにもありますね」
   (と言いつつ、アストレアの説明を受けた時のノートを見せる)
 プ「(アストレアと同じに見られたのが矜持に触れたのか、ちょっと強気に)付属のコップに試料を入れると、それを測定して……」
 に「ああ、マッチングテストですか。それもありますね」
   (と、その旨の記載箇所を指差し)
 プ「……」

 ……言葉がなくなったのか落ち込んだのか、哀愁を漂わせ始めてしまったプレゼンター氏。

 に「あ。でも御社の装置、測定箇所が250もあるのですね。アストレアは220ですよ」
   (やはりメモを見せて)
 プ「(いきなり元気復活)そうでしょ〜。うちのこれはアストレアさんより最新ですから、性能は上なんですよ」
 に「画像も綺麗ですものね」
 プ「なんなら、体験されていきますか?」

 ……上機嫌に胸を張るプレゼンター氏。
 楽しい人だ。

 体験は辞退させてもらった。
posted by にわか旅人 at 16:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月04日

『岩盤浴』は登録商標…らしい

 『岩盤浴』というのがある。
 板状にした自然岩を下から電気で加熱、その上に寝転がって汗を流す……というのが大雑把な表現かな? つまり、お湯や蒸気を使わないサウナか。

 これ自体なら、使う人の好き好きなのでどうこう言うつもりはない。

 しかしどういう訳か、『岩盤浴』は『マイナスイオン』と『遠赤外線』『デトックス』という似非科学キーワードとセットになり『健康』商売のネタにされている傾向がある。

 ちなみに『遠赤外線』そのものを、似非科学と呼んでいるのではない。
 『遠赤外線』に付属してくっ付いてくる『健康』『マイナスイオン』『デトックス』の辺りを似非科学としているので、誤解のないよう。

 さて。
 『岩盤浴の健康効果』なるものをいかがわしいキーワードで装飾して、世間に広めようと画策している中心人物が、俺の調べたところだと『岩盤浴』の『自称・伝道師』五味常明(ごみ つねあき)医学博士だ。
 別の記事で触れたことのある御仁だ。
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/20115018.html

 こちらが五味氏の『五味クリニック』HP内にある『岩盤浴』に関するQ&A。
     http://www.ganbanyoku.silk.to/

 同HPからの、五味氏のプロフィール。
     http://www.gomiclinic.com/sub/profile.html

 医大を卒業しているし、厚労省の『医師等資格確認検索』にも引っかかるから、医師なのは確かだけど、医学博士はどこで取ったのだ?

 この五味氏が今年になり発足させた組織が、『特定非営利活動法人 日本岩盤浴協会』だ。
   日本岩盤浴協会HP
     http://www.jspso.org/

 2007年2月12日の協会発足会の五味氏の講演内容から。
     http://www.ganbanyoku.silk.to/gb0026.html
     http://www.t-ganbanyoku.com/sub/img/dr_gomi.pdf
===引用開始===
例えば「なぜ岩盤浴ではダイエットになるのか」「なぜ、岩盤浴の汗はサラサラなのか?」「いい汗をかくと、どんなメリットがあるのか」「岩盤浴は本当に自然治癒力が高めるのか」等の素朴な疑問に分かりやすく答える医科学的な説明が必要なのです。

そこに、岩盤浴の伝道師と揶揄された私の出番があったのです。

岩盤浴が汗との関係で若い女性に支持された背景には、私がさまざまなメデアで「岩盤浴でかく汗の効用」を平易な言葉で伝えてきたことも一因です。

しかし、今まで私が説明した効用は、そのほとんどが「仮説」です。その一部は実験的に実証された部分もありますが、岩盤浴の生理学作用や医学的効能についてはほとんど検証されていないというのが現状です。
===ここまで===

 上記引用部分の太字青地は、こちらで着けた。

 「ほとんどが仮説である」と言っておきながら、テレビやHPであれだけ岩盤浴の効果・効能を謳っていた訳か。

 「一部は実験的に証明された」と言っても、どこかの査読のある雑誌などに論文として提出したわけではなさそうだ。PubMedで、それらしい論文は見当たらない。
     http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez

 五味氏の言う「わかりやすい医学的な説明」の例として、上述のQ&Aから少し編集してみた。

・岩盤浴は「遠赤外線」と「マイナスイオン」の両方が放射されているので、その相乗効果によって様々な生理活性が起きている。

・大粒の水は、汗だと「ムダ汗」であり、血液だと「ドロドロ血液」である。

・マイナスイオンは「界面活性作用」があり、水のクラスターを微小にする。
・マイナスイオンは皮脂の酸化を予防し、皮脂腺の詰まりを改善する。

・遠赤外線は「共鳴振動作用」があ。これは水の粒が大きくなるのを防ぐ他、皮脂腺の分泌機能も盛んにする。
・遠赤外線のうち4〜14ミクロン(単位不明)のものは、生体に優しい「育成光線」である。

・有害金属は体脂肪と結合し、「燃えない脂肪」になる。岩盤浴はこの「燃えない脂肪」を「燃える脂肪」に変える。
・岩盤浴は、体内に蓄積された有害金属を体外に排出させると「医学的に証明されている」。

・腎臓よりも汗腺からの方が水銀の排出には効果的である。水俣病の患者の治療の時にも、発汗により水銀を排出させていた。

・発汗のトレーニングを重ねることで、汗腺は必要なミネラルは体内に戻し、有害物質は体外に排出する『選択性』を習得し得る。

・岩盤浴はNK細胞を活性化させ、免疫力を向上させる。
・岩盤浴の遠赤外線は、卵子の移動を助けるので、不妊症が改善する可能性がある。

 俺のような素人にも判るここまでいい加減な事を、よくもまあ平然とHPで「医学的な説明(一部「仮説」との断り有)」と謳えるものだ。
 ……これで医師とか医学博士とか……本当か?

 それに、薬事法第66条に抵触していないか?
     http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.html
===ここから===
第六十六条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
===ここまで===

 「検証されていない」もので、どうやって『安心』『安全』『健全』という3フレーズを主張するつもりなのかね?
 悪い意味で巷に氾濫するこのフレーズを使ってか?

 現代医学では、医薬品に副作用があるのが判っています。副作用は患者にとり不快で、時には生死に関わる危険性もあります。副作用のない医療を、私どもは試行錯誤して探してきました。
 その結果見つけたのが、岩盤浴です。
 岩盤浴に副作用はありません。
 なぜなら、臨床試験による統計は取っていないので、副作用の有無は確認していないからです。プラシーボ効果を期待しての商品なので、副作用や危険性はないと考えています。

 安心・安全・健全に利用でき、あらゆる病状の改善に効果を期待できます。
 見て下さい、この体験談の数々を。効果がなかった、悪化したという体験談は、岩盤浴が原因だとは言えませんし、岩盤浴の評価を押し下げるものなので掲載していません。勿論、病院で従来の治療を受けて改善した人もいるでしょぅが、岩盤浴の効果を強調するためにも、加療されていた旨は削除しています。一部は架空の人物の体験談も含んでいます。あ、実在する人物の名前を借り、作り上げた体験談もあります。でも、あなた方に本当に必要なのは、科学的に検証された結果ではなく、岩盤浴への信仰です。岩盤浴の素晴らしさを知るあなた方なら、多少の捏造など重箱の隅を突くようなものでしょ?

 こういう事を平然と言ってのける医者には、一言。
 「辞めてしまえ、医者なんか」

 話を少し戻す。
 『』を太字赤にしているのには理由がある。
 『日本岩盤浴協会』という『』の付かない組織が、別にあるからだ。
   日本岩盤浴協会HP
     http://www.musiclabo.com/radium/index.htm

 『日本岩盤浴協会』は任意団体であり、NPO法人の資格を持つ組織ではない。
 しかし、HPによると『岩盤浴』の商標を取得している組織のようだ。

 そして堂々と、
===引用開始(2007年8月3日)===
特許庁が管轄する商標法は、模倣品の
保有と使用を認めていません。
日本岩盤浴協会
なる団体の名称は
日本岩磐浴協会
の類似商号です。
===ここまで===

     http://www.musiclabo.com/radium/onyoku/onyoku1.htm
===引用開始(2007年8月3日)===
日本岩磐浴協会
日本岩盤浴協会
この1字加えたソックリさんは、違法です。
===ここまで===
 と謳っている。

 『岩盤浴協会』では地磁気学・古地磁気学について詳しく説明しているのだが……いかんせん俺の地学の知識が追いついていないので、まともなのか胡散臭いのか判断がつけられない。

 それを踏まえた上で、経験則で言わせてもらうなら。
 『日本岩盤浴協会』は「胡散臭いかも」で保留。
 『日本岩盤浴協会』は似非科学推奨団体で確定。
 このようなところか。
 ……『日本岩盤浴協会』の方は、詳しく調査すれば、違う結果になるのかもしれないけどね。
posted by にわか旅人 at 21:37| Comment(4) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月14日

植物性コロイドミネラル

 幼稚園児だった頃の話だ。
 俺にそんな時期があったのか、とか、何十年前の話だとか、そういう突っ込みはなしで。

 泥団子を作った思い出がある。
 乾いた砂場の砂では粘度がないので、つなぎに泥水を使う。
 バケツに砂と水を入れ、かき混ぜるだけ。
 実に簡単な手順だが、幼稚園児のやる事だから。
 ……このいたいけな遊びが、後の俺の進路の選択に一役買っていたどうか……は別の話。

 この泥水を放置しておくと、当然ながら砂利(と泥)が底に沈み、ゴミと変な灰色になった水が上に来る二分化が起きる。水の色は、使った砂利や土の色で茶色やこげ茶色、極端な時は赤くなったりもする。

 そしてこれまた当然だが、幼稚園児ですらその上澄み水を飲もうとは考え付かないものだ。
 ……まして傍に親がいて、自分の子供がそんなものを飲もうとすれば、叱り付けてでも止めるだろ?

 実はこれが、基本的な『植物性ミネラル水』『コロイドミネラル水』の製法だ。衛生上の製造工程や材料の選択に違いがあるとは断っておく。

 つまりこれは、「あれ」だ。
 「土砂を水に漬けて、その上澄みを販売しています」
 ……問答無用で胡散臭い。と言うか、飲むと腹を壊しそうだ。
 正に文字通りの「 泥 水 商 売 」。

 ちなみに、この代物の呼び名は色々ある。
 『植物性ミネラル』『植物コロイドミネラル』『コロイドミネラル』など。アメリカ、オーストラリアで販売されている同様の代物は、概ね『コロイドミネラル、Colloidal Mineral』だ。
 ここからは『コロイドミネラル』で統一する。

●2種類のミネラル:金属性と植物性
 ミネラルというのは、無機の単体ないしは無機化合物の結晶を指す。つまり、一般的な有機物に含まれる元素(炭素C・水素H・窒素N・酸素O)を除いたもの全ての元素の事だ[1, 2]。

 栄養学的には、日本では厚生労働省によって、ヒトに欠かせない栄養素としているものが16種類ある。
 そのうちの7種(ナトリウムNa、マグネシウムMg、リンP、硫黄S、塩素Cl、カリウムK、カルシウムCa)は『主要ミネラル』と言われ、1日の摂取量100mg以上とされている。
 残る9種(クロムCr、マンガンMn、鉄Fe、コバルトCo、銅Cu、亜鉛Zn、セレンSe、モリブデンMo、ヨウ素I)は『微量元素』と言い、1日の摂取量が10mg未満とされている1, 2]。

 以上がざっとしたミネラルの説明だ。
 この中には「ミネラルの由来が植物性(自然・天然のオプションあり)ならば安心・安全」などとの文言と、「60種類やら70種類やらのミネラルが、ヒトの生存に必要だ」との記載は含まれていない。

 ところが『コロイドミネラル』を販売する業者に任せると、上の説明に下のようなオマケが付いてくる。

 ミネラルは、その由来により『金属性』と『植物性』に分けられる[3, 4]。

 『金属性ミネラル』とは、人体に害を及ぼすタイプのものだ。市販・あるいは普通に食事で摂取するミネラルが相当し、吸収率は8〜12%と効率が悪い。にがり、海水塩、海洋深層水もこの部類に含まれる。水俣病の原因となった水銀も、この金属性ミネラルだった[3, 4]。

 『植物性ミネラル』とは、人体に害を及ぼさない「植物由来」のミネラルである。粒子が細かいため、ガラスを通り抜けるほどの超微粒子で、血管の隅々にまで行き渡り、100%に近い吸収性を持つ[3, 4]。

 言うまでもないが、『金属性』と『植物性』とを分類する定義のようなものは見つけられなかった。
 ……あるはずないけど。

●ヒューミックシェール(Humic Shale)?
 コロイドミネラルは、アメリカはユタ州で発掘されるヒューミックシェール(腐植頁岩、Humic Shale)から抽出されたものだ。ヒューミックシェールとは、ジュラ紀(サイトによっては白亜紀)―ミネラルが豊富で生命に満ち溢れていた時代―の植物が、化石や石炭とならずに堆積したもので、当時のミネラルを大量に含んでいる[3]。

 まず。
 コロイドミネラルを紹介するサイト以外で、『Humic Shale』『腐植頁岩』と続けて使用しているところはない。

 『腐植(Humic)』は名前から判るように、植物などの有機物が腐敗(微生物による分解)した時の最終生成物(フミン質)の事だ[5]。
 『頁岩(Shale)』は、微小な泥(1/16mm以下)が水中で水平に積もった堆積岩の事で、薄く何層にも割れるという特徴を持つ[6]。

 確かに、骨や歯などの硬い部分が鉱物に置換され、残ったものが化石な訳だが、『稀に』炭化した植物が鉱物に置換されず、残っている場合もあるらしい[7]。
 それにShaleの層は、木の年輪に見えなくもない。それを誤解しているのかな?

 ……腐植物が堆積して頁岩になったのであれば、それはただの『頁岩(Shale)』、コロイドミネラル業者が親の仇のように嫌う『金属性ミネラル』なのだけどね。

 ヒューミックシェールがいつの時代の産物であろうとも、化石化していようが石炭になっていようが、ただの泥炭・汚泥になっていようが、言えることが1つある。
 水と混ぜればドロ水。それ以上でも、それ以下でもない。

 と言うか、有機物部分が鉱物に置換されずにいれば、ドロ水どころではなくて生ゴミを漬けた水そのものでないか?

●コロイドミネラルの製法[8, 9]
 1. ジュラ紀(業者によっては白亜紀)の地層から、腐植頁岩(ヒューミックシェール、Humic Shale)を発掘、粉砕、粉末化する。
 2. 粉末化した頁岩をステンレス製の樽(Vat)に入れる。
 3. 樽を低温の純水に浸漬する。
 4. 3〜4週間静置した後、吸引ろ過をして溶液を取り出す。

 これが大雑把な『コロイドミネラル』の製法だ。
 もっと簡単に言うと、
  「掘り返した土砂を粉砕して、水に漬ける。水が茶色になったら出来上がり」
 となる。

 やはりどう見ても「ドロ水の上澄み」にしか見えない。

 なにしろコロイドミネラルの原料は、地面から掘り返した土砂だ。それを洗浄せずに使う(土砂から不要な土砂を洗い落とすと何が残る?)のだから、どれだけ工場の衛生管理が行き届いていようが、最終製品は「洗浄せずに製造した泥水」だろ、これは。

●常識的な疑問「ドロ水は飲んで安全?」
 コロイドミネラルを販売する業者は安全だと主張しているが、その根拠が似非科学なミネラルの説明だけで、安全性試験の報告は見つかっていない。

 仮にコロイドミネラル水に細菌による汚染がないとしても、だ。
 泥水中には多種のミネラルが溶解している。これらのミネラルの中には、微量でも体外に排出されにくいものもあるかもしれないし、言うまでもなく長期に大量に飲用すれば、どのような成分でも危険になる[8]。
 さらに問題なのは、溶解している成分の中に、特定できない有機化合物が少なからず含まれている事だ[8]。

 PubMedで見つけた資料によると、『腐植』性の成分(特に石炭やシェールに由来するもの)を含む水は、甲状腺種を誘発する恐れがあると指摘してされている。もっとも、水に溶け出す粒子の種類にもよるだろう、との後述はされてはいる[10]。

 言うまでもないが、正常な悟性の持ち主ならば、ドロ水を飲もうとは考えないものだ。余程世間一般から隔絶された家庭ないし原始人的な社会で育ったのでない限りは。

 ドロ水を啜らないとならない程生活に困窮しているのか、治療法のない病気などで追い詰められた状況にあるのだろうか。

 なぜ高額な費用をかけて、有り難がって啜るのだろうね?


◎参考インターネット
[1] Wikipedia『ミネラル』
     http://bit.ly/1qFmNB8
[2] 「健康食品」の安全性・有効性情報『ミネラルについて』
     http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail655.html
[3] アジアロンジェビティ株式会社HP
     http://activemineral.com/
[4] 翔力HP『コロイドミネラルとは』
     http://www.show-riki.com/mineral/htmls/about_mineral.html
[5] Wikipedia『土壌』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E5%A3%8C
[6] Wikipedia『頁岩』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%81%E5%B2%A9
[7] Wikipedia『化石』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E7%9F%B3
[8] James Pontolillo “Colloidal Mineral Supplements: Unnecessary and Potentially Hazardous,” Quackwatch, December 11, 1998.
     http://bit.ly/1qGWURa
[9] 株式会社ゼネシスHP
     http://www.geneses.co.jp/index.html
[10] Laurberg P, Andersen S, Pedersen IB, Ovesen L, Knudsen N, “Humic substances in drinking water and the epidemiology of thyroid disease.” Biofactors, 2003; 19 (3-4): 145-53.
     http://1.usa.gov/1qFmSob
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2007年06月25日

微小生命体ソマチット

 ヒトの血液中には、極小な生命体が生存している。この生命体は健常者には無害な活動をしているが、ガンなどの他の病気を抱えているヒトには、免疫機能を低下させる毒素を出し、病気の進行を促す活動を取る。
 血液中のこの生命体の数と変態段階を観察すれば、病気の種類と進行が診察できる。また、この生命体の活動を左右することで、ガン他の病気の治療にも応用できる。

 「まともな」生物の本ならばどこも取り上げないこの『生命体』は、ソマチット(somatid)と呼ばれている。
 Somatid(複数形はsomatids)だから『ソマチッド』と発音するべきなのだろうが、『日本ソマチット学会』の副会長、福村一郎氏にならい「ソマチット」としておく。[1]

●ソマチットとは
 ソマチットとは、ガストン・ネサン(Gaston Naessens)が自ら開発した暗視野顕微鏡『ソマトスコープ(Somotoscope)』でヒトの生きた血液を観察し、発見した生命体だ。[2]
 ネサンによると、ソマチットは外部から侵入した細菌やウイルスの類ではない。元々ヒトの血液中に生息する生命体で、その活動により健康と病気が左右されるとしている。

 ソマチットの生態としてのサイクルは、大別して2種類存在する。
 健康なヒトの中にあるうちは単純な活動しか取らない。健康なヒトの中にあるうちは、『マイクロサイクル』と呼ばれるサイクルを取り、これは3形態しかない。
 しかし環境の悪い(ガンなどの重篤な病気を持つ)ヒトの中にあると、ソマチットは『マクロサイクル』と呼ばれるサイクルに移り、身体に影響を与えていく。こちらはバクテリアや酵母菌、カビに似た形状を含めた16形態がある。

 ソマチットがマクロサイクルに移行するのは、病気により免疫機能が低下し、細胞内の体液の変化が原因だと、ネサンは推測している。このような環境の変化(病気だけでなくストレスも含む)により、ソマチッドは毒素と『トレフォン(trephones)』と命名した成長ホルモンを分泌する。
 これらの物質が正常な細胞の活動の阻害と免疫機能の低下を促進し、病態を進行させるのだ。

 ネサンはさらに、ソマチッドの分泌する毒素とホルモンは細胞分裂にも影響を及ぼし、原始的な細胞を増殖させるとしている。この原始細胞が体内の窒素を取り込み、全身の細胞に「窒素欠乏状態」を作り出し、最終的にはガン細胞になるのだ。
 ガン細胞は『ガン細胞前駆体(co-cancerogenic K factor (CKF))』を生産し、これもまた免疫細胞の活動を阻害する原因となる。

 血液中のソマチットの数と形状を観察すれば、病気の種類と進行を予測・診察することができる、と言うのがネサンの主張だ。

 残念なのは、ソマチットの存在を示唆する研究論文は、査読のある専門誌に提出されていないし、ネサンのガンの発祥理論は、現在の科学とは相容れないものである、という点だ。

●ソマチットの観察(ソマトスコープ)
 Gaston Naessensの発明した暗視野顕微鏡『ソマトスコープ(Somatoscope)』は、従来の光学顕微鏡では着色した「死んだ」細胞を観察するのに対し、着色の必要なしに「生きた」細胞を観察できるという利点がある。
 ソマトスコープで拡大できるのは約3万倍。後発の電子顕微鏡であればもっと高い拡大が可能だが、電子顕微鏡もサンプルの加工が必要なため、観察できるのは「死んだ」細胞となる。
 ソマチットは「死んだ」状態では観測できないので、ソマトスコープはソマチットを観測する有効な手段だ。

 ソマトスコープの原理は、2種類の光波(可視光線と紫外線)を合わせることで、3つ目の、より高い周波数の光波を作り出すことにある。この第3の光波を磁力により分裂させ(Zeemann Effect; ゼーマン効果)、サンプルに当てると、サンプルそのものが光を放つようになる。これにより、これまでの光学顕微鏡の30倍の解像度と拡大率を得られる、という理屈だ。[3][4]

 「死んだ」細胞では活動は観測できなくとも、それなりの残骸ないし形跡は観測できるとするのが妥当だろう。しかし血液(血漿、赤血球)から、そのような生命体の存在を示唆する残滓が観測された報告は上げられていない。

●ガストン・ネサン(Gaston Naessens)
 Gaston Naessensは1924年生まれ、カナダはケベックに住むフランス人の科学者だ。
 一般的な顕微鏡が、サンプルを着色した「死んだ」細胞を観察するのに対し、着色の必要なしに「生きた」細胞を観察できるソマトスコープを開発した人物だ。
 ソマトスコープで「生きた」血液を観察した結果、血液中にこれまで未確認だった生命体『ソマチット』を発見し、それが遺伝子に影響を与える疾患との関係が明らかとなった。
 そしてガンなどの病気を発症した人体のソマチットの活動を抑制し、正常な活動に戻すことで、うまくいけばガン細胞の縮小化にも貢献するだろうと、新薬「714X」の開発をしたのだ。

 ネサンと法廷は、親和性が高い。
 1956年、母国フランスの法廷で、ネサンは無免許での医療活動を行った罪で、有罪判決を受けている。[5]
 1980年代には、カナダで健康系の詐欺容疑で終身刑を求刑されていたが、714Xの使用者が大量に法廷で証言した為、無罪となっている。
 ただし714Xがガン治療に貢献したという、専門家が査読・検証できる知見データは、何一つ提出されていない。[6]

●714-X
 自称・新薬『714-X』は、ガストン・ネサンがガン治療用に開発した商品だ。
 この商品の有効性及び安全性に関するデータは、動物実験も含め2006年7月時点においても、査読のある専門誌では発表されていない[7]。動物実験を行った第三者機関の報告はあるが、結果は陰性、効果は確認できなかったとされている。

 「714X」の商品名は、Gaston Naessansのイニシャルと、生まれた1924年に由来する。『G』はアルファベットの7番目、『N』は14番、そして『X』は24番目による。
 アメリカFDAの分析によると、94%が水、約5%の硝酸塩、1.45%のアンモニウム塩、各1%未満のエタノール、ナトリウム、塩素、そして0.01%未満のカンファー(樟脳)から成る。この樟脳は、Cinnamomum camphoraというシナモンの低木から抽出したものだ。[8]
 Naessensがカンファーを選択したのは、カンファーがガン細胞と特別に引き合う特性を持っていると「信じていた」からであり、科学的な根拠があったのではないようだ。同様の「信じていた」という理由から、細胞の窒素欠乏症対策のために硝酸塩を加え、ガン患者のリンパ腺の回復にとアンモニウム塩を加えている。
 714Xはガン・AIDS・その他の慢性病の治癒効果を謳いカナダ、メキシコ、西ヨーロッパで販売されているが、アメリカのFDAやカナダの医薬局には承認されていない。

 714Xの効果効能を謳った書籍を販売、さらに「714X」を密輸入・販売していたニューヨーク州のWriters & Research Inc.は、未承認医薬品の輸入・販売を行った件でFDAから告訴され、1996年に有罪判決が出されている。[9][10]
 法廷において、Writers & Research Inc.側の弁護士は、「714X」はホメオパシーの薬だと主張している。よってFDAの規則に抵触するものではない、と。
 しかし「714X」のラベル表記『trimethylbycyclonitraminoheptane-chloride』から、これがホメオパシーと判断する事はできないと、その主張は退けられている。
 書籍では「714X」の効果として、エイズ、ガン、リューマチその他の自己免疫疾患の治癒率が75%と謳っていた。この「治癒率75%」の数字は、『日本ソマチット学会』でも副会長の福村一郎氏が「驚異的」と伝えている。

 カナダでは2006年10月2日から、「714X」をSAP (Special Access Program)を通じて入手できるようになっている。これは他に治療法がない場合のみ、つまり気休め的な目的で適用される措置だ。[11]

●日本ソマチット学会(Japan Society of Somatid Science)
 日本では『日本ソマチット学会(Japan Society of Somatid Science)』という組織が2005年3月に設立されている。

 ソマチット学会で行うソマチットの説明は、ネサンが提唱していたものとは微妙以上のずれを持っている。
 ここでの『ソマチット』とは。
 「ヒトの体内に共存し、体内の環境が悪化すると自ら殻を作り出し、その中に閉じこもる事で数千万年を生き永らえる事のできる不死の微小生命体。
 ソマチットの血漿中の増減と、ヒトの免疫力の強弱は比例し、生命活動に大きな影響を持つ。
 さらにはガンの予防・治療にも応用できる可能性があり、昨今の代替医療で注目を寄せられている」

 との事だ。

 DNAの前駆物質の可能性も示唆しているが、『生命体』と言っていながら『物質』と称する辺り、ソマチットが生命なのか物質なのか、明確ではないようだ。

 この組織の理事長は、松永修岳(まつなが しゅうがく)氏、『風水環境科学研究所』の代表も務める人物だ。
 『風水環境科学研究所』でのプロフィールでも、風水や運命学その他の学問(宗教)に手を染めていたかを語っている。[12]


◎参考インターネット
[1] 日本ソマチット学会HP:
     http://www.somatid.net/aisatsu.html#a01
[2] Elizabeth Kaegi “Unconventional Therapies for Cancer: 6. 714-X,” Canadian Medical Journal, June 16, 1998; 158 (12) 1621-1624
     http://www.cmaj.ca/cgi/reprint/158/12/1621.pdf
[3] Norman Allan “Gaston Naessens and 714-X”
     http://www.normanallan.com/Med/714.html
[4] Steven R. Elswick “The Amazing Wonder of Gaston Naessens” Nexus Magazine, February –March 1994.
     http://www.whale.to/v/naessens.html
[5] American Cancer Society “714-X” June 1. 2005.
     http://bit.ly/1qFnryv
[6] National Cancer Institute “714-X (PDQ)” July, 24. 2006.
     http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/cam/714-X/patient
/allpages/print
[7] “Complementary and Alternative Medicine, 714-X Information for Patients.” Dona-Farber Cancer Institute, September 23, 2005.
     http://bit.ly/1jxdUQi
[8] Stephen Barrett “Fanciful Claims for 714X” Quackwatch, March 22, 2002.
     http://bit.ly/1qFnydo
[9] “Court Affirms Conviction for Peddling Phony AIDS Cure.” AIDS Policy and Law, July 25. 1997; 12 (13): 15
     http://1.usa.gov/1qFnB96
[10] Paula Kurtzweil “Promoter of 714X Cure-All Faces Prison for Selling Unapproved Drug” Quackwatch, March 22, 2002.
     http://bit.ly/1qFnH0c
[11] “Federal Court Agrees with 714-X Patients.” National Coalition for 714X, Oct. 2, 2006.
     http://www.coalition-nationale-714x.com/CoalitionLettreMD_20061002en.pdf
[12] 風水環境科学研究所HP:
     http://www.fusui.co.jp/index02.html
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2007年06月13日

ダイオードの光で痩身

 先日の『ビューティーワールド・ジャパン2007』で、リポライト(Lipo Light)という器具が出ていた。
 これは発光ダイオード(LED)の赤色光が、しわのリフティングに有効だとか、痩身に効果あるとか、実際の効果の程は眉をベトベトにして聞きたい内容の代物だ。

 この手の装置を販売する企業は複数あったが、その中の1社が、根拠として『米国形成学会』の論文をプリントアウトし、ブースの一角に貼り付けていた。
 ざっと飛ばし読みしたところ、「低出力レーザーでの『出力vs照射時間』による脂肪細胞に増減があるかを実験したところ、脂肪が溶けて体外に排出されるのが確認された」という内容だ。

   美容・健康ニュース『アンテナ / ダイエットプログラム「リポックス痩身」の販売をエステサロンに向けて開始』2007年5月25日
     http://www.e-expo.net/news/2007/05/20070525_03.html
===引用開始===
(前略)特定波長と強さの分光型ダイオード光機器「Reduction」が脂肪溶解を行い、次いで健康食品5種の摂取によって脂肪の代謝を行い、パラディックスMA変調波機器「LIV」によって脂肪を燃焼・排泄するというもの。

 「Reduction」は、特定波長と出力の分光型ダイオード光が脂肪を99%溶解させるという米国形成学会の論文に基づき開発された。そのメカニズムは、分光型ダイオード光の放射により脂肪細胞を包む細胞膜である“リン脂質”の電子バランスを乱すことで細胞膜に無数の穴が開いた状態になり、遊離脂肪酸を放出させるというもの。
===ここまで===

 『米国形成学会』がどういう謂れのある学会か前知識がなかったので、その時はこの論文の信憑性は保留としておいた。
 最近になり、この論文の事を思い出したので、ちょいと調べてみた。

Neira Rodrigo, Arroyave Jose, Ramirez H, et al. “Fat Liquefaction: Effect of Low-Level Laser Energy on Adipose Tissue.” Plastic and Reconstructive Surgery, 2002 Sep 1; 110 (3): 912-22; discussion 923-5.
     http://1.usa.gov/1jAxwD7
     http://bit.ly/1jAxGKt  

 「635nm、10mVの低出力レーザー(『Low-Level Laser Energy』の訳として妥当かどうか不明)を、12名の健康な女性から採取した細胞サンプルに照射(2分、4分、6分)し、TEMとSEMで観察したところ、6分の照射で脂肪細胞の99%が潰れ、脂肪を排出しているのが確認できた」

 この論文の概要をさらにまとめると、このような感じか。
 ……分光型ダイオード光と、Low-Level Laser Energyって、まったく別物のような気がするのだけど、どうなのだろうね?

 概要を読んだ程度では、俺程度の知識では、実験が目的に沿う内容だったのかどうかは判断できない。
 ……だが。
 この論文は試験管実験(in vitro)の結果だ。
 「This study examined whether 635-nm low-level lasers had an effect on adipose tissue in vivo and the procedural implementation of lipoplasty/ liposuction techniques.(635nm、低出力レーザーがin vivoでも効果があるか、試験した)」
 とあったから、思わず臨床試験の結果かと誤解しかけた。

 知っての通り、ヒトの身体には『皮膚』というバリアーがある。かなり丈夫な代物だ。
 レーザー光が皮膚を通過して、脂肪細胞にまで到達するとは、素人考えでは「とてもでないけれど、無理な話だろ」な話だ。
 ……少なくても、数分間皮膚に当てても外傷のできない程度の出力では、な。

 つまり、生きた人体に使っても効果はないだろう、と俺なりの予想は働く。
 ……実際どうなのかは知らない。

 2002年の論文発表の後、このグループが臨床試験をしたのかどうかは不明だ。
 調べた限りでは、試験管実験以上の進歩はなさそうだ。

Neira R, Toledo L, Arroyave J, et al. “Low-Level Laser-Assisted Liposuction: the Neira 4L Technique.” Plastic and Reconstructive Surgery, 2006 Jan.; 33 (1): 117-27, vii;
     http://1.usa.gov/1qGY1AA

 この概要によると、相変わらず試験管試験(in vitro)で効果が確認されている、としかない。
 他の試験はしていないか、肯定的な結果は出ていないようだ。

 代わりに別のグループが追試を行っているが、こちらは否定的な結果を出している。

Brown SA, Rohrich RJ, Kenkel J, et al. “Effect of low-level laser therapy on abdominal adipocytes before lipoplasty procedures.” Plastics and Reconstructive Surgery; 2004 May; 113 (6): 1796-804; discussion 1805-6.
     http://1.usa.gov/1jAxVFr

 この論文では、低出力のレーザーを正常ヒト白色脂肪前駆細胞(preadipocytes)に照射したところ、コントロールとの違いはなかったとある。他にも何種類かの方法で確認試験を試みているが、いずれも脂肪細胞から脂肪が溶け出すという現象は確認できなかったと報告している。

Medrado AP, Trindade E, Reis SR, Andrade ZA. “Action of Low-Laser Therapy on Living Fatty Tissue of Rats.” Lasers in Medical Science; 2006 Apr. 21 (1): 19-23. Epub 2006 Mar. 25.
     http://1.usa.gov/1jAxYBj

 こちらではラットにレーザー光を当て、脂肪細胞に影響が出ているかどうかの解剖を行っている。
 それによると、だ。
 「変化は褐色脂肪組織に限られ、複数の液胞を持つ型(multivascular)から液胞が一つの型(univascular)に変わっている。レーザーの照射時間の長いものほど、液胞の大型化・単一化は顕著だった」
 「低出力レーザーは、褐色脂肪組織の合体と融合の原因となる。さらに、細胞外基質の毛細血管の拡散と充血を促進している」

 Wikipediaによると褐色脂肪細胞とは、ヒトの幼児や一部の動物の熱生産のための脂肪組織で、主に首の周りと胸郭の血管に位置するものだ。
 成人とは無縁の組織なのか。
 ……そもそも成人にこの組織はあるのか? アンテナが低いだけかもしれないが、聞いたことがない。

 さてさて。
 冒頭でも述べたが、この研究の成果は、展示会で偉そうに説明されていたものだ。
 しかし試験管実験で再現性が証明されず、ラットを用いた動物実験でも褐色脂肪組織にしか変化が出ていない。
 ……果たしてこの研究は、「所詮この程度のもの」だったのか、「まだこの程度しか進んでいない」のか、どちらだろうね?

 と、真面目(?)に書いてきたが、一点見落としていた。
 分光型ダイオードで本当に脂肪を溶解・排出できるのなら、肥満やメタボリック・シンドロームに悩む先進国の医療機関が、とうに取り上げている。

 そのような動きは、少なくとも俺の知る限り皆無だ。
 ……ま、そういう代物だ。


◎参考
Wikipedia『細胞』
     http://bit.ly/1jAyaAz
Wikipedia『脂肪組織』
     http://bit.ly/1qGYiU4
Wikipedia『皮膚』
     http://bit.ly/1qGYkeI
Wikipedia『ダイオード』
     http://bit.ly/ZrHeVc
有限会社アンテナHP
     http://www.lipolight.net/
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2007年06月09日

サンヨーメガ社、LATRE(ラトレ)発売

 マルチ商法(連鎖販売取引)の株式会社サンヨーメガが、新商品を2007年6月1日から発売しているらしい。
   株式会社サンヨーメガHP:
     http://www.sanyo-mega.co.jp/

 メモリ容量が128Mと時代遅れな音楽機器(MP3プレイヤー)という以外、正体不明な自称・健康器具、『ESSESLIM β(エッセスリム ブラボー)』の後継機種、『LATRE(ラトレ)』だ。

===引用開始(2007年6月6日)===
2007-06-01
6月1日 【 LATRE 】 発売
「LATRE」の文字のうち、「 L 」 「 A 」 「 T 」には、Luxury(贅沢な) Aroma(香り) Treatment(処置治療)という意味が込められております。リラクゼーション機能の追及と洗練されたデザイン、軽快な操作性と拡張性のあるプラットホーム、さらに、新規コンセプトを基に開発された数々の優良コンテンツを「LATRE」は、皆様に御提案致します。
===ここまで===

 サンメガ社HPでは、2007年6月9日時、この商品の詳細情報はまだ発表されていない。
 ……と言うか、エッセスリムβの商品説明でも、意味不明なのだけどね。
     http://www.sanyo-mega.co.jp/esseslim/

 さて、この『LATRE』にはどのような機能があるのか、『サンヨーメガ掲示板』の樋口肇氏がちらと説明してくれている。
 ……アクセス制限をまだ受けているのでほとんど見ることは出来ないのだけど、たまたま先日、一時解除されていた。
     http://www2.bigcosmic.com/board/s/board.cgi?id=san0034

===引用開始(2007年6月6日)===
いくつかポイントだけ書きますが・・
・聴覚、触覚、嗅覚、視覚4種同時のリラクゼーションシステム
・楽曲がエライ先生方が研究をして作成
・先生方の名前、顔写真、経歴を公表したパンフレット
・脳トレモード(頭グルグル??)
・ラトレで脈拍を計測してそれに併せてパルス発振
・アロマ機能
・視覚イフェクト
・カラー液晶
・メモリが増えたので100曲以上ダウンロード可(1GB)
・研究所の臨床データをパンフレット掲載
・・・・といったところでしょうか。

それと商品パンフレットがかなり良くできてます。完璧です。
===ここまで===

 ……以前から感じていた事ではあるが……樋口氏は日本語が不自由なのかな? 読み手に理解できる文章を書けない、という点からの判断だ。
 上述の引用箇所からも、「日本語が母国語ではない」または「知的な面での発育不全」な印象を拭えないのだよな。

 未確認情報では、FMラジオも聴けるようだ。
 価格は¥393,750(税込)らしい。

 聴覚は『モーツァルト効果』、嗅覚はアロマテラピー、触覚は……『耳介療法』かな?
 ……視覚は何かの動画かな?

 『実は大した事のない商品』の販促には欠かせない自称「偉い先生」の権威付け。
 ……最低一人はニセ医学博士の神津健一氏だろうし、『予防医学・代替医療振興協会』も絡むと予想すると、他の面々の程度の予想もつけられる。
 この似非科学『教会』の推奨マークも入るだろうな。

 脈拍測定より、血圧測定とか体脂肪測定の方が、いかにも『美容・健康』なイメージを与えると思うのだけど……「偉い先生」のために付けなかったのかな?

 しかし……今時メモリ1GBのMP3プレーヤーかよ。2005年時点で、2GB、4GBが3万円以下で買えるようになっているのにか!?
     http://www.phileweb.com/news/d-av/200509/08/13663.html
 最新の30GBでも、昨今は5万円前後で入手できるらしい。
     http://www.mp3players.jp/

 ところでカラー液晶を付けたと言う事は、動画も観られるのかな?
 今時の家電で観られないとはないだろうけど……エッセスリムβで128Mという、当時ですらちょっと「あり得ない」低スペック商品を出していただけに……否定はできないな。
 ……仮に動画が観られるのなら、1GBのメモリなんてあっという間に足りなくなるぞ。

 商品パンフレットと言えば、エッセスリムβのパンフレットが俺の手元にある。
 ……あれと同程度か、多少毛の生えた程度の代物を持ってきて、多分「完璧です」なのだろうな。
 だとすれば、会員全員、商品紹介の時点で特商法・薬事法・会員規約に違反しなくては一言も話せまい。
 ……まぁ、そんなもの屁とも思わない連中だけど。

 とにかく。
 これで39万円らしい。
 ……「はぁ!?」と耳を疑う価格だ。

 今月15日からの出荷になるそうだから、その後どういうトンデモトークであちこちに迷惑を撒き散らすのだろうなぁ。非常に迷惑だ。

 ちなみに。
 MMOのチャット中、「メモリ1GBのMP3プレーヤー、39万円」と話したら笑われた。「どこの高級品か」と。
 仕方ないので『サンヨーメガ掲示板』を紹介し、『ラトレ』『エッセスリムβ』をどう思うか、感想を聞いてみた。
 「笑うほど怪しい」
 だそうだ。
 ……否定はできんな。まったくもってその通りだから。


◎関連過去記事紹介
『サンヨーメガを脱税で告発』
『モーツァルト効果』
『耳介(耳ツボ)療法』
『耳介(耳ツボ)療法(2)』
『エッセスリムβ(ブラボー)』
『サンヨーメガ関係者の医学博士』
『ナチュラル・クリニック代々木』
『もう少し調べてみた(前編)』
『もう少し調べてみた(後編)』
『量子共鳴分析器(QRS)』(ナチュラル・クリニック代々木で採用している診療器具)
『FNN 特命取材班』で学位商法報道
『予防医学・代替医療振興協会』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(1)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(2)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(3)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(4)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(5)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(6)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(7)』
『サンヨーメガ掲示板観察日記(8)』

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2007年05月25日

量子共鳴分析器(QRS)

 ネットを色々と巡回していたら、面白い物を見つけた。
 『量子共鳴分析器(Quantum Resonance Spectrometer, QRS)』という代物だ。
     http://www.ryoshi.co.jp/sitemap/sitemap.htm

 どうせいつもの『似非科学』な代物だろうとの先入観から、このサイトを色々と見てみた。
 結果は。
 ……混じりっ気なしの『似非科学』でしたよ、と。

 さて。
 そもそもこのQRSとやらが何かと言うと、だ。
===引用開始(『QRSとは』より)2007年5月24日===
QRSは、今から約100年前にアメリカの病理学者であり内科医でもあったアルバート・エイブラムス(Dr. Albert Abrams・1863〜1924年)が、彼の腹部打診法の研究から発見したE.R.A( Electronic Reaction of Abrams・エイブラムスの電子反応=生体反応には、物質を媒体とした物理化学的な反応が起きる以前の、電磁気的な波動現象に基づく何らかの生理的な反応がある)を基本原理としています。QRSとは、この非物質的な生命現象に基づく極く微弱な生理的反応を、音に変換、被検者の生理機能を判定すると共に、その非物質的な情報を生体に入力、生体の持つ自然治癒力の発現を促そうとする装置です。
===ここまで===

 ……何度読んでも意味が判らないのだが……。
 『エイブラムスの電子反応』なんて単語、聞いたことがない。

 「生体反応には、物質を媒体とした物理化学的な反応が起きる以前の、電磁気的な波動現象に基づく何らかの生理的な反応がある」との事だが。
 ここの『波動』を一般的な物理学で使われる『波動』と仮定すると、もはや何が何やら訳がわからない。いや、仮定しなくても意味不明だけどな。
 ……似非科学(かオカルト系)『波動』ならば説明できるが、それはオカルトの『波動』は定義も何もないからであって、よその宇宙の話なぞ俺は知らん。

 「何らかの生理的な反応」って……反応があると判っているなら、観察できるだろうが。

 で、「非物質的な生命現象に基づく」……生命は『物質』なので『非物質的な』の意味がわからない。
 1万歩譲って、仮に電子や波動(中学校の理科で勉強する方)を表現しているつもりでも、それでも間違いなのは変わらない。これらも物質的な現象として、捉える事ができるから。
 ……つ〜〜〜か、非物質って何よ??
 Matter……物質
 Anti-matter……反物質
 Family matter……非物質……なんてね。
 ……判る人いない、って。

 更に判らないのは、何ゆえに「音に変換」?
 グラフとか数値とか、もっと正確・具体的に表現する手段があるだろうに。

 「その非物質な情報を生体に入力、生体の持つ自然治癒力の発現を促す」……も意味不明。
 ……と言うか、来たなホメオパシー、な気分。

 「自然治癒力の発現」。
 ……生きているなら、『発現』などと大げさぶらないでも、自然治癒力は普通持っているわな。

 まぁこの時点(それ以前からという意見もあるだろうが)、ろくに原理の説明がなく、過去の人間の唱えた『なんちゃら理論』だけを持ち出してくる時点で、似非科学だとは容易に予想がつく。
 ……似非科学のキーワード『波動』と『ホメオパシー』があれば、これ以上調べるまでもない。

 とは言え、あまりにも「どこの宇宙の法則ですか?」な内容なので、もう少し読む事にする。
 『QRSの原理』(2007年5月24日時)から引用するが、青字が引用箇所だ。

病気にかかった組織の細胞から出る未知の波動が、健康な人体によって感受(受信)、記録され、それらの波動が健康な人体の組織の性質を変える。

 細胞の組成はそうそう変わらない。つ〜〜〜か、変わらない。変わったら大変だ。
 で、「未知のもの」を原因だとするなら、まずその「未知のもの」を再現可能な方法で観測できる形にしないと話にならない訳で……それが「人体の組織に影響」を与えるのかどうかは、その後の話だ。
 もうちょい言うなら、『波動』とか『記録』なんて怪しい単語を使わなくても、体内に侵入した病原菌(ウイルスでも良いや)が、体内で増殖していくメカニズムで十分に説明できるのだろ、この部分は。
 ……ちと厳しいが『波動』=『ウイルス』、『感受』=『感染』とすれば理解できなくもない……かもしれない。

病気は細胞起源のものだとする昔ながらの理論は時代遅れで廃棄されなければならない。
細胞の分子組成が構造的変化をうけ、特に電子の数と配置が変化をこうむるので、その特徴的影響が後になって顕微鏡で細胞の病気となって見えるようになるにすぎない。


 『病気は細胞起源』説は時代遅れ? いつの時代に、そういう説が栄えた!?
 細胞の分子組成が「何によって」構造的変化を受けるのか、説明がないので文章として説明が不十分で、ついでにおかしい。
 その上で言うのなら。
 電子の数は、イオン化されていない限り、共有結合やその他の結合で最外殻まで一杯になっているものでないのかい?
 配置が変わるのは、電子軌道の都合で錯体の構造が変わるから、ここは妥協の範囲内としよう。
 ……かなり好意的に解釈だなぁ。
 「特徴的影響」の意味がわからん。

分子内逸脱(=Intra-molecule Aberration)と考えているもの(病源)を矯正し、こうしたことが起こることをも防いでくれるような力が存在する。

 分子間力(ファンデルワールス力)は知っているけど、分子内逸脱などという言葉は知らないな。
 つうか、電子だか分子だか病源だか知らないが、「右に行けば健康。左に行けば病気」などと、そんな都合良く身体は反応してくれんぞ。

もしマラリアとか梅毒にかかった組織が放射する波の性格を変えることのできるような、無線放送に似た波動放射器械を考案することができるなら、キニーネとか水銀剤と同じように、効果的にそうした波動を相殺できるだろう。

 キニーネとか水銀剤の有効性は知らないから脇に置いといて。
 マラリアとか梅毒は、身体の一部の組織がかかるのか……細胞1個とか2個とかを「ここはマラリア、あそこから梅毒、そっちは健康」と言えると……凄いな。
 冗談はさておき。
 病気の細胞と健康な細胞があるところへ、病気の細胞にだけ反応する治療法(しかも万病に効果有り)があるなら、今頃世界中の研究者が躍起になって患部をピンポイントする治療法を探したりしていない訳で……。
 まぁこう書くと、「そうなると世界中の医師が仕事にあぶれるので、そうさせないために国と医師協会が妨害活動をしているのだ」などと陰謀説とタイアップしそうだ。
 ……そういう与太話は、ここでは取り上げない。

 他のページも笑いどころツッコミどころ満載なのだが、この辺で止めるとしよう。

 ちなみに。
 ERAの開発者Albert Abramsは、医師を詐称して潜り込んでいた詐欺師だ。学歴に関しても、医学博士を詐称している。
     http://elane.stanford.edu/wilson/Text/26f.html
     http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Abrams

 21世紀にもなって、19世紀末の学歴詐称詐欺師の似非科学を真に受ける連中を、何と表現すれば良いのだ?
 時代遅れにも程があるだろう。
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2007年03月25日

健康産業界の偽科学への主張?

 2007年3月14日『健康産業新聞』の第3面から。記事は紙面で掲載されたので、ネットで確認はできない。
   健康産業新聞HP:http://www.kenko-media.com/health_idst/

===全文掲載(括弧付き青数字は、引用元として当方で付けた)===
主張・科学と未科学の狭間で
 科学と未科学、正確には科学と非科学と書くべきなのかもしれないが、昨今の事件(あるある問題など)を契機に、科学と偽科学というフレーズで健康食品やマイナスイオン、波動問題が取り上げられていることは実に遺憾である。未科学を偽科学と批判するグループの、事を性急に断じてしまう考え方こそが、非科学的といわざるをえない。

 先月28日に、健康食品をめぐる2つの発表が紙面を賑わした。一つはJAMAレポートに公表された「ビタミンサプリメントをとると寿命が縮む」(詳細一面ほか)であり、もう1つは「(食品中から高濃度の)ビタミンCの摂取は白内障の発生を4割抑える」というものである。(1)(2) こうした対立する報道が消費者を混乱させることは間違いないが、現代の消費者はこうした情報を基に自分の生活設計を試みなければならない宿命にあるようだ。だからこそ、「あるあるに多くの視聴者が集まった」とするのが、神里達博さん(朝日新聞「不安な社会の健康番組」)の意見である。(3)(4)(5)

 実はこのJAMAレポート、23万人の調査という前触れだったのに、メタ解析という手法で、様々なデータを集めて分析したものだと言う事が分かってきた。(6)JAMAあるある版といっては失礼だが、本紙でも専門家の取材で、なるほどという部分が少しずつ分かるようになってきた。

 要は科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる。してみれば、このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる。

 健康食品がいよいよ時代のニーズの中核に座ろうとするとき、さまざまな抵抗勢力の洗礼を受けなければならないが、それだけの守りが必要であることをいうことを言っているのかもしれないと肝に銘じたい。
===ここまで===

 主題と内容が噛み合っていない記事なので、何を言いたいのか今一つ……どころか3つ4つ定かでないのだが……
 とりあえず「現時点で科学と認知されていないものに対して、科学的権威は『偽科学』と糾弾し、捏造してでも潰そうとする動きがある。健康産業界は、そのような攻撃からの守りを固めなくてはならない」というものかな?

 実は『健康産業新聞』はこの日の版にて、JAMAで取り上げられた報告には、試験デザインの妥当性に問題があると、1面と10面を使って論文の正当性を否定している。
 ……健康産業にマイナスイメージをもたらす報告だけに、否定しなくてはならない立場なのだろう、とは想像できる。
 しかしこの事実を知らなければ、JAMAが報告の捏造をしたと、受け止められかねない書き方だ。
   The Journal of the American Medical Association (JAMA) HP:
     http://jama.ama-assn.org/

 JAMAが捏造したとの印象操作がなくとも、3面のこの記事はあまりにも問題のある主張と感じたので、チェックを入れておく。

 さて、まず第1に。
 偽科学を批判するグループをどうこう言うのであれば、マイナスイオンでも波動でも良い、追試可能な形での報告を出すのが先だ。
 公開された論文を元に、別のグループが追試をし、叩き、精査し、修正して、元の研究の評価がされるものだ。(7)

 ところが偽科学(俺は似非科学という言葉を使う)の側から、追試可能な論文が提出されることはまずない。
 ちなみにマイナスイオンについては、1997年かその辺りから話が出ていると記憶している(ソースなし)が、10年が経過した現在ですら、少なくとも俺の知る範囲では、科学的根拠のある論文は提出されていない。
 また、公共組織が調査した時にも、業者から提出された資料からは「客観的事実に基づいたものとは認められない」としている。(8)(9)

 今回のJAMAの報告と朝日新聞の報道に対しても、「妥当性に疑問がある」と表明するのであれば、「ビタミンが寿命の延長における有意性を確認できた」という文献を出すのが筋でないかい?

 科学的な検証手順を踏まずに、荒唐無稽な論説を垂れ流すから批判されるのであって、決して「事を性急に断じて」批判している訳ではない。

 第2に、JAMAのレポートについて。
 JAMAのHPでは概要しか読めないが、それでも「メタ分析を行った」との記載は読み取ることができる。
 「23万人を調査したという前触れが、後になってメタ分析だったと分かってきた」などと言っているようでは、この記事を書いた人物が、実は何も調べていなかったのか、悪意を持ってこのように表現を選んだのだと勘繰ってしまう。

 第3。
 「アガリクスの反対バージョン」だと笑っているが、これは『史輝出版』の事を言っているのか?
 だとすれば、これも勉強不足……うがった見方をすれば、これは悪意の印象操作の何物でもない。

 史輝出版の事件、これは医薬品でもないアガリクス(和名ヒメマツタケ)で「ガンが治る」「ガンが消える」などと謳ったタイアップ本を販売し、薬事法違反で関係者が逮捕された事件だ。しかも後日には、体験談の半数がライターによる作り話だったと判明している。(10)(11)
 この事件に関して、先月の2月26日には史輝出版社社長、瀬川博美被告の初公判があった。瀬川社長は「自分もがんになり、罪の大きさを実感している」と起訴事実を認め、執行猶予付きの判決を求めている。(12)
 そして先日3月12日に有罪判決が出、求刑通りの罰金と執行猶予5年の懲役を言い渡された。(13)

 対するJAMAでの報告は、既に提出されていた論文を無作為に抽出したもので、捏造でなければ過剰表現でもない。
 ……史輝出版社での作り話の体験談と無理矢理同列に並べ、「JAMAあるある版」と称し、笑い話にしてしまおうとは、JAMAの報告の信憑性を貶めるための姑息な作為と感じるのは、俺だけか?

 最後に。
 健康食品が時代のニーズにあるかどうかは知らない。
 知らないけれど、「抵抗勢力に対する守りが必要」だと感じるなら、科学的に検証可能な論文を並べて反論すれば良い話でないか?
 そして可能であるなら、明らかに『似非科学』と分類できる代物(マイナスイオン、波動、ゲルマニウム、水クラスター、etc)は、業界から排除するよう働きかければ、「健康産業=怪しい、胡散臭い」と思われる事も少なくなると思うのだけどね。

 全体を眺めてみると、何度読んでも何を主張しているのか、まるで判らないのだが……俺の読解力の問題なのか?
 少なくとも、「科学的な裏づけを欠くものは、健康産業界に不必要だ。業界の健全化のために、排除ないしは、科学的根拠を求めるようにしたい」と言うものではない、のは確かだが。

 一応『健康産業』という、自分の所属する業界を守るための報道のつもりなのだろうが ……この新聞社のこの主張こそが、健康産業界における一番のガンだったりして。


◎参考インターネット◎
(1) 朝日新聞『抗酸化物質入りサプリの一部、死亡率上昇 23万人調査』2007年3月1日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702280387.html
(2) 朝日新聞『白内障予防にビタミンC 食事から多摂取で発症4割減』2007年2月28日
http://www.asahi.com/health/news/TKY200702280218.html
(3) 自然に逆らわず生きたい『関西テレビ「あるある」問題の根の深さ』2007年2月1日
     http://lifestyle-habit.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_6577.html
(4) 自然に逆らわず生きたい『関西テレビ「あるある」問題の根の深さ『その2』』2007年2月2日
     http://lifestyle-habit.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_5ed5.html
(5) 自然に逆らわず生きたい『関西テレビ「あるある」問題の根の深さ『その3』』2007年2月2日
     http://lifestyle-habit.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_96c2.html
(6) Goran Bjelakovic, Dimitrinka Nikolova, Lise Lotte Gluud, et al. “Mortality in Randomized Trials of Antioxidant Supplements for Primary and Secondary Prevention” JAMA.2007;297:842-857.
     http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/297/8/842
(7) Wikipwdia『反証可能性』
     http://bit.ly/1jAGvEd
E8.AA.AC
(8) 東京都『科学的根拠をうたったネット広告にご注意! "「マイナスイオン商品」表示を科学的視点から検証しました"』2006年11月27日
     http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2006/11/20gbr500.htm
(9) 国民生活センター『マイナスイオンを謳った商品の実態−消費者及び事業者へのアンケート、学識経験者の意見を踏まえて−』2003年9月6日
   http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20030905_2.html
   http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20030905_2.pdf
(10) がん治療悪徳事件簿『史輝出版』
   http://cancer.squares.net/?page=%BB%CB%B5%B1%BD%D0%C8%C7
(11) 代替医療関連情報Naotta!『メシマコブでも違法広告史輝出版役員ら7人逮捕』
     http://bit.ly/1jAGGPM
(12) 産経新聞『社長「がんになり罪認識」 アガリクス違法広告事件』2007年2月26日
     http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070226/jkn070226006.htm
(13) 健康産業速報『バイブル本事件、史輝出版・瀬川社長に執行猶予付き有罪判決』2007年3月13日
   http://www.kenko-media.com/hi_newsflash/002609.html
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2007年03月03日

「生命エネルギー」ですと?!

 色々と片づけをしていたら、『健康産業流通新聞』の2007年1月28日版と、1ヶ月以上前の物が出てきた。
 その中に「代替医療の現場から」という片面を丸々使った連載のインタビュー記事がある。読んでいたら頭が痛くなったので紹介する。
 ……どういう理屈かは聞かないこと。

 今回は、「種本武司」氏のインタビュー記事だ。
 この御仁、肩書きは『株式会社キイコーポレーション』(旧、タネ株式会社)という、経営コンサルタント会社の代表取締役だ。
 この企業のHPは、googleでざっと検索しても、それらしいものが見つからないので、この場では紹介できない。

 数字は元記事では漢数字だったが、見にくいので引用中では英数字に換えている。一部の[ ]で囲った部分は、文の前後関係からこちらで補足したものだ。

===引用開始===
――そして43歳のときにコンサルタントの会社を起業されたのですね。
 種本 十数社の大・中小企業の経営戦略、人材育成等のコンサルタントを行いました。川喜多次郎氏の考案したKJ法を経営に持ち込みました。
  (中略)
吐露された言葉だけに目を向けて、それを元に解決しようとしてもだめで、感情、感覚を浄化させ高めなければ根本的解決にはならないということに気づいたのです。そのためには生命エネルギーを上げる必要があるという結論に達しました。
===ここまで===

 「生命エネルギー」などと言い出したところから想像できるだろうが、この種本氏は「波動」にはまった怪しい人物だ。

===引用開始===
――そんなときに波動との出会いがあったのですね。
 種本 会社を黒字にするだけでは社員は幸せにならない、生命力を上げなければならないとの思いを強くしていたとき、「LET」という生命エネルギーを測定する波動測定装置を開発した人と出会いました。
  (中略)
この装置は、頭の中を空っぽにして予断をしないで測定しなければ正確な数値が出ません。私は以前から毎朝、無念無想の瞑想を実践していましたから、比較的早く測定できるようになりました。
===ここまで===

 波動測定装置の「LET」は知らない。とは言え、問答無用で似非科学なのは確定。
 ……測定する側が、無念無想でないと正確な測定のできない機器、って何よ!?

 ……と言うか、この人の波動理論は、インタビューが進むにつれ、オカルトというか怪しい宗教色が濃厚になっていくのが不気味。

 とりあえずこの御仁は、波動つながりで農水省の土壌改良委員会にも協力したそうだ。
 その内容は、3年間かけて、全国の農場試験場の農作物の生命エネルギーを測定する事。
 ……こんなエセ科学に国民の税金使うなよ、農水省。

 波動の数値には、-20から+20まである。
 +16以上の農作物には、治癒能力があるそうなのだが……。

===引用開始===
――(前略)農水省はどうして波動16以上の農作物を食べることを国民に推奨しないのでしょうか。
 種本 波動測定によって食品の生命力を評価するコンセンサスがまだできていないのと、測定精度の標準化の難しさでしょうね。
===ここまで===

 農水省が推奨しないのは、似非科学に騙されない役人が、まだ多くいるということだろう。波動測定器の精度の標準化が難しいなどと、そんな難しい話ではあるまい。

===引用開始===
[人の生命エネルギーは]尿の波動で調べられます。尿はいわば血液の成れの果てですから、それぞれの臓器の波動の情報をもっています。尿を解析すると、臓器の陰陽エネルギーや体液、ホルモン系、神経系、重金属や毒素の残留そして栄養の過不足状態等が数千項目出てきます。
===ここまで===

 先日、健康診断を受けた。その際に尿検査もしたのだよな。
 この御仁の言う通り、尿の波動だけでそこまで判明するのなら、なぜその機器を採用せずに、血液検査やらレントゲンやら、他にも色々受けなくてはならないのかねぇ。
 ……「医師が保険料を国からふんだくるために、波動測定だけで終わってしまう検査機器は採用せずにいるのだ」などと言う人が現れそうだ。

 実際のところ、波動で判るものなど「なにひとつない」と言って良い。
 ……このような代物を信じる人の「科学リテラシーの低さが判る」というのは除く。

 「生命エネルギー」とか言う謎の単語の説明もされている。
===引用開始(当方で適度に改行)===
生命エネルギーは「気」「プラーナ」とも呼ばれます。あるいは免疫力とも言い換えてもよいでしょう。身体の各部分に届けられ、身体、精神、霊性に強く影響します。高い生命エネルギーは、それらのバランスを整え、全体として回復させます。
生命のピラミッドを見てください(図参照)[図はここでは省略する]。
物質としての「肉体」が一番下にあり、その上に活力である「エーテル体」、感情・感覚の「アストラル体」、知性の「低位メンタル体」「コーザル体(魂)」「高位マインド」となり、そして頂上に直感「ブッディ」があります。
物質体とエーテル体の肉体エネルギーが低いと、アストラル体も低いレベルで共鳴を起こします。直感を得た知性であるメンタル体の情報が、低いレベルの感情アストラル体にブロックされて脳に届かず、感情のままに行動して理性がきかなくなってしまいます。
===ここまで===

 SFやらファンタジーで目にする単語のオンパレードなのですが……どこの宗教でしょうか?
 ……思わず「正気ですか?」と新聞に問いかけてしまった。
 ここまでやられると、素人なりの科学知識で突っ込もうにも、突っ込むところすらない。その前に、言っている事が滅茶苦茶なのだが……。

 今まで生命エネルギーと言っておきながら、途中から肉体エネルギーに代わっているのはまだしも(?)、低いレベルで共鳴したアストラル体が、メンタル体の情報をブロックして脳に届かせない……って、今まで生命エネルギーの話していたのに、いきなり肉体に話しが飛躍かよ!? 低いレベルでの共鳴とか、アストラル体とか、その辺りの説明は脇に置く。

 ……宗教と信仰は自由だ。でも、宗教なら科学を持ち込むなよ。科学の体裁すら、この部分では整えていないけどな。

===引用開始===
波動の16以上のものが理想です。
  (中略)
16以上になるには、ミネラルバランスと陰陽の調和が問われるのです。結局、口に入れるものの一つひとつの波動を測定して確かめるしか今のところ方法はありません。しかも、波動の測定は先程も言いましたが、誰もができるわけではない。それが悩ましいところです。
===ここまで===

 「陰陽」を「陰イオン」「陽イオン」と好意的に解釈しても、後の説明が成り立たない。
 どこかの退魔小説物に出てくる「陰陽」を言っているのなら、この御仁の内容はストーリー性に欠ける分、『ファンタジー小説』のそれよりも低レベルの話でしかない。

===引用開始===
「私は病気治しをするのではありません。食事を変え、生命エネルギーが上がれば、病気は勝手に治ってくれます」とお話します。
===ここまで===

 これは薬事法に抵触の可能性がないか?
      薬事法:http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S35/S35HO145.html
===引用開始===
第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
===ここまで===

 この人物のプロフィールを読む限り、医師や薬剤師の類の免許は持っていない。百歩譲って医療関係の免許を持っていたとしても、医薬品・医療機器でもない物に、効果効能を明示するのは違法だ。
 ……違法な発言をそのまま掲載するこの新聞社にも問題が……って、こんな悪い意味で愉快な記事を載せる時点で、問題ありなのは明瞭か。

 一番頭の痛くなったのは、この御仁が波動で推奨する生命エネルギーとやらの向上方法だったりする。
===引用開始===
また、尿が持っている体内情報を転写した水(情報水)をお渡しします。いわゆる新しい尿療法です。この情報水は最適な希釈率の水に薄めて飲んでもらいます。
===ここまで===

 波動関係の人だと判明した時点で、多少のトンデモは覚悟していたけど、これはその想像の上を行った。
 ……尿療法かよ……!! 本物の尿ではなさそうなのが救いか……嫌すぎ。

 尿を原料にした医薬品があるのは、この関連を調べて初めて知った。
   厚生労働省『平成17年度薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会 第1回伝達性海綿状脳症対策調査会』2005年6月16日
     http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/06/s0616-4.html

 とは言え、原料と製品を口にするには雲泥の差がある訳で……「ウナギを刺身にして食べるか、加熱してから食べるか」の比較に近いと感じてしまう……。

 おかしな宗教にはまると、こういう事も「おかしい」と感じなくなるのだな。
 ……正直、不気味さを通り越して、寒いものを感じた。

 日本の『代替医療』の将来は明るい。
 ……はずがなかろう。
posted by にわか旅人 at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月28日

『あるある』放送打ち切り

 ちと遅くなった。
 『納豆ダイエット』で捏造した件で、『あるある大辞典2』が放送打ち切りとなった。

     http://www.ktv.co.jp/070123_02.html
===引用開始(2007年1月23日)===
「発掘!あるある大事典II」の打ち切りについて

関西テレビは1月7日放送「発掘!あるある大事典II」での今回の事態を重く受け止め、この番組の放送を打ち切ることを決定いたしました。視聴者の皆様、ならびに関係者の皆様方の信頼を裏切ることとなり、深く反省し、お詫びいたします。
すでに社内の対策本部において調査を進めておりますが、現在、人選を急いでいる第三者の方々による調査委員会を一刻も早く立ち上げ、今回の事態を惹起した原因を究明するとともに再発防止と信頼回復に向けて全力で取り組む所存です。
===ここまで===

 TBSの『ぴーかんバディ』が、白いんげんで健康被害を起こしてからも2ヶ月程継続したのと比べると、何とも素早い幕の引き方だ。『ぴーかん』はその後、『人間!これでいいのだ』と改名して継続している。
     http://www.tbs.co.jp/program/korede-e-noda.html
 ……HPを見ると、『ぴーかん』よりオカルト色が強くなっている気がする。
 ともかく、この番組、過去の放送をまとめていないのだよな。

 『あるある』に戻る。

 読売新聞『データねつ造、関西テレビが処分発表…番組も打ち切り』2007年1月23日
    http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070123i111.htm
===引用開始===
 関西テレビの千草社長は「番組をこのような形で終えることになり、誠に申し訳なく思っております。現在、原因究明に全力をあげて取り組んでおり、信頼回復に向け、努力致します」とのコメントを出した。
===ここまで===

 前々から科学的な根拠の欠片もないヤラセ番組を垂れ流していた事に関しては、何ら触れていない。どうやら過去の放送については「至って真面目に、科学的根拠に基づいた報道をしてきた」と押し通すつもりなのかな?
 ……どこかの記事に、「過去の放送についても調査する」と見かけた覚えがあるが、どこにいったかな。

 読売新聞『日本テレワーク社長が辞任、関西テレビから下請け』2007年1月24日
   http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070123i115.htm
===引用開始===
 社長を辞任した古矢氏は同日夜、読売新聞の取材に対し、「捏造の事実は全く把握していなかった。20日に聞き、あぜんとした。テレビマンがすることとは思えない。ほかに捏造はないと信じている」と語った。
===ここまで===

 前社長の古屋氏は、自社で製作した番組を見ていないのか、科学的な知識が非常に低いかのいずれか、もしくは両方なのだろう。
 それとも「ヤラセはOK。捏造はNG」という方針かな? この人の「ヤラセ」と「捏造」の境界は定かでないけれど。
 …… 「バラエティ番組なのだから、実験っぽいヤラセは演出であって、『捏造』ではない」という言い訳が出てきそうだ。

 朝日新聞『週明けにも「あるある」調査中間報告 関西テレビ社長』2007年01月28日
http://www.asahi.com/national/update/0127/OSK200701270051.html
===引用開始===
 生活情報番組「発掘!あるある大事典2」のデータ捏造(ねつぞう)問題で、制作した関西テレビの千草宗一郎社長は27日、社内のチームで進めている捏造の経緯などの調査の中間報告を週明けに発表する意向を示した。社外の有識者で構成する調査委員会の顔ぶれも併せて発表するという。
===ここまで===

 ここでどういう発表をされるのか、実に楽しみだ。
 ほぼ全話に及ぶヤラセ行為を、『捏造』とするのか『演出』とするのか。
 『健康バラエティ番組』の中で一番古く市場への影響力もある番組だっただけに、今後の同様な番組の内容を左右するのではないか、などと勝手に考えていたりする。

 発表の内容に関わらず、それでも『健康バラエティ番組』はこれからも続けられるのは予想に難くない。
 ……『ぴーかん』から『これでいいのだ』の例からも判るように、『あるある』がなくなっても、第2、第3の『あるある』が出てくるのは火を見るより明らかな訳で。

 朝日新聞『「TV現場も科学者規範を」 「納豆」問題で学術会議』2007年01月26日
     http://www.asahi.com/culture/update/0126/015.html
===全文掲載===
 テレビ番組の制作現場にも「科学者規範」を――。関西テレビ制作の「発掘!あるある大事典2」のデータ捏造(ねつぞう)問題で、日本学術会議は26日、テレビ番組などで科学実験の計画や実施にかかわる人は同会議の「科学者の行動規範」を守るべきだ、とする金沢一郎会長の談話を発表した。
 同規範は、国内のすべての科学者と技術者が対象で、相次ぐ科学論文の不正を防ぐため、昨秋発表された。研究内容の説明と公開、データの厳正な取り扱い、不正を防ぐ研究環境の確立などを求めている。談話では「国民への影響の大きい番組で捏造などの不正があれば、科学そのものに対する信頼を著しく傷つけかねない」としている。
 一方、日本民間放送連盟(広瀬道貞会長)も同日、加盟するテレビ・ラジオ201社に対し、番組での正確な情報提供やチェック体制の点検などを文書で要請した。また、民放労連(碓氷和哉委員長、組合員1万1千人)も同日、事実関係の徹底的な解明や放送での公表、ゆとりある制作環境などを求める見解を発表した。
===ここまで===

 これからは番組のどこかで、「この番組はフィクションです。登場する地名・人物・団体名は、実在のものとは関係ありません」くらいは出さないと、ヤラセ番組全部が「捏造」とされてしまうかも。

 ここまで行かなくても、せめて「この番組はバラエティです。最新の研究・報告を元に製作していますが、番組内で行った実験及び結果とその内容の正確さについて、一切保証するものではありません」くらいは欲しいよな……番組の前と後ろに。
 ……かなり嫌味だな。
posted by にわか旅人 at 17:09| Comment(3) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月11日

耳介(耳ツボ)療法(2)

 先日『耳介療法』について書いたけど、この似非科学の情報を教えてくれた人物によると、「ポール・ノジェの理論は粉砕されたようには見えない」という見解らしい。この『粉砕』とやらが、俺の以前の記事に対するものなのか、どこかの学会で検証されていないと言いたいのかは不明ではあるが……
 ……あの主張を『理論』と称してはばからないとは……!?
 それはともかく。
 ……科学だと主張したいなら、まず先に検証できるデータを出せよ……。

 ちょっと愚痴っぽくなったので、気を取り直して。
 先日の『耳介療法』から、さらに調査を続けたので報告。

 以前にも紹介したが、アメリカのFood and Drug Administration (FDA)には、医療機器の登録を受け付けるCDRH (Center for Devices and Radiological Health)という部署がある。そこのデータベースから、このような物が出てきた。
     http://www.fda.gov/cdrh/pdf5/K050123.pdf

 P-Stimという器具なのだが、種類は『Electro-Acupuncture Device』、つまり電流を「ツボ」に流す装置のようだ。用途は、ツボに電流を流して耳のツボを活性化させるものらしい。
 ……よく判らない説明だ。
 ただし、『Auriculotherapy』とか『Ear Acupuncture』と呼んではいない。そんなものだから、先の記事を書いた時点では気がつかなかった。

 さて、この器具の製造はNeuroScience Therapy Corp.という企業だが、この名前で検索すると、現在はTalkingStock.com LLC (http://www.talkingstocks.com/index.php)の傘下にあるのが判る。元々ここの子会社として設立されたのか、それとも買収されたのかまでは調べていない。

 とは言え、P-Stimの取り扱いがなくなった訳ではない。
 P-Stimの説明ページはここだ。
     http://www.talkingstocks.com/p/npyc/summary.php

 このページにある説明図を見ると、確かに耳の3箇所に鍼を刺し、電流を流す仕組であるのが確認できる。

 ここまで見ると、先日の『耳介療法』の説明と一致してくるのだよな。
 ・アメリカで医療機器として登録されている。
 ・耳介のツボに電流を通す。
 まぁ、この2点だけなのだが。
 勿論、慢性痛以外の効用や、ノジェが主張した『似非科学』の説明は見当たらない。裏設定では『ノジェの主張』はあるのかもしれないが、そこまで調べる労力は……さすがに持ち合わせていない。
 それにこれは、医師限定で直販される商品だ。
 ……やはり巷の似非系『耳介療法』とは別の代物だな。効果の程は知らないけど。

 ではこの機器に、謳っているような効果はあるのか?
 その効果はまだ実証されていないようだ。

===引用開始===
Neuroscience Therapy Corporation’s products are currently before the FDA for approval. To conduct clinical trials to develop and promote a marketable product identity, expand third-party reimbursement for the product and certify pain management specialists in the proper use of the device.
===ここまで===

 文章になっていないので、正直何を言いたいのか不明だ。
 このような文章を平然とHPに出しているところからして怪しいのだけど、かいつまんでみると、FDAの認可はまだ得ていないようだ。臨床試験を「これから行う」のか、臨床試験用に開発(何を?)すると言っているのだろうか?
 疼痛関係の専門医に販売していくための臨床試験を重ねている途中、と読めなくもないが……読み間違えだな、うん。
 更新していないだけの可能性もあるか……。
 ……読めば読むほど意味不明な文章だ。

 疑問は残るが、申請と許可のところで頭を悩ませる必要はなかった。
 と言うのも、先のFDAの申請書類の上の方に、『Classification: Unclassified』とあるからだ。つまりClass分類の対象外だ。
 これはどういうものかと言うと、FDAの医療機器には、その医療効果の程度に合わせてClass IからClass IIIの3グループに分けられる。Class Iは医療的な効果が最小で、Class IIIでは効果が大きいものになる。この部分は前回の記事でも触れた。

 となれば、だ。
 このP-Stimと言うClassすら付かない医療機器の効果というのは、手術用グローブにも至らない安全な、言い換えれば効果のない代物だ、という事だろう。仮に効果の大きい代物だとすれば、とうにClassが付いているはずだからな。

 まとめると、だ。
 『耳のツボに鍼を当て、電流を流す医療機器』は、アメリカのFDAに登録されたものが存在する。対象となる病状(症状かな?)は、慢性通などの疼痛一般である。
 ただしClassがUnclassifiedとされているように、医療効果は期待薄と思われる。
 俗に言う『耳介療法(Auriculotherapy)』の装置は、耳たぶを電極の付いたクリップで挟み、電流を流す仕組みである。対して医療機器としての装置は、鍼を耳介の複数個所に刺し、電流を流すものである。
 一番大きな違いは、基本のところか。
 Auriculotherapyでは、フランスの医師ポール・ノジェの主張する「人の耳介は、頭を下向きにした胎児の姿をしているから、耳介は人体を模倣する小宇宙である。耳介のそれぞれの器官に該当する位置に針などで刺激を与えることで、さまざまな治療が行える」というものを土台としている。
 しかし医療機器は、中国の鍼灸からのものだ。こちらの理論というか歴史と言うかは膨大なので、説明するのは俺の手には余る。

 『耳介療法』という単語だけだと、どちらを言っているのかわからなくなってきたな……。
 ……まぁ、どっちもどっちなのに変わりはないか。
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2006年10月28日

「海外では医療機器」だから、なに?

 あちこちの『悪徳商法』『似非科学批判』のサイトを巡っていると、「アメリカでは医療機器として認められ、医療現場で使われている」という主張する人を見かける。ここでの『アメリカ』は、フランスでもドイツでも、他の国でも構わない。

 このような「海外では医療機器として認められている」という話は、個人的に『似非療法』の支持者に多いと感じている現象だ。海外では医療機器だから、効果が確認されている医療である、という主旨なのだろう。
 ところで、「登録がある」と「効果がある」がイコールで結ばれないのは、改めて指摘するまでもない。
 ……はずだよな?
 困ったことにこの手の人たちには、普通に考えれば到るはずのこの理屈が通用しない。

 『海外で医療機器としての登録がある』=『その医療機器の効果を証明している』の公式が成り立たないのは、少し考えれば判りそうなものだ。しかしこの手の人たちにはそうでもないらしく「登録があるから効果は認められている」として譲らない。
 それでいながら、「その医療機器の現地での名称は? どのような病状に使われている?」と質問されると、まったく答えられないか「自分にとり機器の名前は重要ではない」と、意味不明な言葉を返してきたりする。
 話にならない、というやつだ。
 実際に効果が確認されている医療機器なら、とうに日本のあちこちの病院やら研究施設やらで研究して、日本でも医療機器として登録しているものではないのか?
 ……日本のお役所仕事がそんなに怠慢だと思っているのかねぇ。医療機器なら輸入の際に関税のかかる利権絡みの仕事になるから……お役所は早いぞ、多分。
 そもそも臨床試験の論文もない医療器具の性能を、どう評価しろと言うのやら。

 これだけでは空論で終わってしまうので、登録の有無とその機器の効果の関係を、少し調べてみた。
 参考にしたのは、アメリカのFDA(Food and Drug Administration)だ。
 医療機器の申請受理と登録は、その中のCDRH (Center for Devices and Radiological Health)で行われる。

 医療機器はClass I〜IIIの3段階に分類されるのだが、その分類は用途と目的、そして患者と使用者(医師や看護師を含むのだろう)への身体的リスクで評価されるようだ。Class Iは最小の患者・使用者へのリスクが少なく、Class IIIだとリスクは大きい。(1)
 このClassの分類は、提出された書類からCDRHが決定するのではなく、既にあるガイドラインに沿って、申請者側がClassを選んで書類を作成・提出するものだ。Classによって提出する書類が一部異なり、特にClass III辺りだと第三者の評価(推薦状?)も必要になるようだ。
 ……臨床試験の報告も必要かと思ったのだが、どうもそれは不要なようだ。調べ方が悪いのかな?
 各Classで提出する書類は、さすがに調べるには手間がかかりすぎるので諦めた。
 しかし医療機器の登録があるからと、全ての医療機器が同列に安全、かつ効果を国で認めたもの「ではない」ようだ。
 安全性は製造者側が持ち、効果については取り扱う側が調べるなり製造者に提出を求めるなりしろ、と言うことかな? 日本のPL法と似たような仕組みか。
 ……量が多いので調べ切れない。
 まぁともかく、アメリカの場合、医療機器のランクは3段階あり、登録の有無が効果を保証したものではない、という確認が取れたので良としよう。

 では、ごくごく普通に思いつく医療機器は、どのClassに落ち着くのだろう?
 追加でちょっと調べてみた。
     手術用グローブ:Class I (2)
     マスク:Class I (手術時に使用する物はClass II)(3)
     手術用のキャップ:Class I (4)
     メス:Class I (5)
     注射器:Class I (採血用はClass II)(6)(7)
 医療目的で使用されるものだけに、当然ながら医療機器(器具?)として登録されていた。
 目的通りの使用であれば、患者や使用者に危害が及ぶようなものではないから、妥当なClassではないのかな。この辺りの評価基準は調べていないので、確実な事は言えない。
 ともかく。
 これらの代物は、アメリカで医療機器として登録があり、医療の現場で使われている。
 でも、どの程度の医療的な効果を期待できるかは、言わずもがなだろう。
 変な細菌・ウイルスが飛び散らない・移動しない・感染しない、そして、させない。確認のしようのない効果だ。
 医療器具の工場を設計・建築し、安全性を調査し、申請書類を作成し、それらにかかる費用を捻出する……という時間と労力と費用については、ここでは触れずにおく。

 「この手術用グローブはアメリカで医療機器として認められ、医療現場で使われている。だから効果のあるものだ」
 「この注射器はアメリカで医療機器として認められ、医療現場で使われている。だから効果のあるものだ」
 「このマスクはアメリカで医療機器として認められ、医療現場で使われている。だから効果のあるものだ」
 ……etc.、etc….
 ……確かに凄いな。こういう理屈で物事を語れる思考を持てるって……。


◎参考インターネット
1) Classify Your Medical Device: http://www.fda.gov/cdrh/devadvice/313.html
2) http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpcd/classification.cfm
3) http://1.usa.gov/1jDb8Jg
4) http://1.usa.gov/1jDbf7A
5) http://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpcd/classification.cfm
6) http://1.usa.gov/1qIU6mS
7) http://www.fda.gov/cdrh/pdf3/k030208.pdf
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2006年10月07日

耳介(耳ツボ)療法

 今回も『ネットワークビジネスリスク研究所 掲示板』からの話で恐縮だが、『耳介療法』という単語が出てきた。
 この言葉を紹介してくれた人の説明はこうだ。
 「『耳介療法』とは、1957年にフランスのポール・ノジェという人物が発表し、オキュロセラピーという名前で知られている。これは耳つぼを刺激することで、さまざまな疾患に影響を与える。刺激を与える手段には鍼や灸があり、電磁パルスもこの中に含まれる。特にパルスを用いたものには『電磁耳介療法』と名前が付いている。またアメリカでは、医療機器として実際の治療に採用されている」
 瞬間的に「似非科学(医療)」だと閃いた。
 なので、調べてみることにする。

 「そもそも『耳介』って何よ?」の疑問から、まずは解決しないと。
 耳介とは、要は『耳』の事。軟骨と皮膚から構成されて、ヒト以外の動物では集音機能に優れているものも多いらしい。(1)
 集音機能はヒトの場合劣るようだけど、なくても良いというものでもない。
 確か耳の集音機能は、耳で空気の振動(つまり音)を捉えて、その奥にある鼓膜に振動を伝えるもの、だったと記憶している。だから事故などで耳が取れてしまった人は、聴力に問題が発生するとかしないとか。
 ソースは覚えていない。

 となれば、『耳介療法』とは、耳の疾患のための医療だと取れる。
 『耳介療法』の情報をくれた人の説明には、「耳つぼに刺激を与える」とあるから、元を辿れば中国の鍼灸に通じるものがあるようだ。実際、調べた範囲で「ツボ」を上げていたものも見かけたし、『耳ツボ療法』と言い表しているサイトも見かけた。

 さて、「ツボ」と言えば鍼灸を思い浮かべるのだけど、鍼を人体に刺すのは立派な加療行為だ。
 日本では『はり師』という免許を持っていないと開業できない事になっている。これは国家資格の一つで、文部科学大臣または厚生労働大臣の認定した学校で、基礎医学など所定の学課を最低3年履修しないと、受験資格が得られないという厳しいものだ。(2)(3)
 この学課の中には、ツボの一つ一つの名称や位置、どのような場合に効果が見込めるかの知見の授業も、当然含まれるのだろう。

 とは言え、効果については色々と言われているようだ。
 なぜか臨床試験で肯定的な報告は見つけられなかった。「耳にあるツボ」に限った報告では、例えば、
 慢性痛に悩む36人を2グループに分け、治療を受ける群とコントロール群とで比較したところ、有意性は確認できなかった。(4)
 とか、
 Cervical Somatic Pain(頸肩部の筋筋膜疼痛=肩こり……でいいのかな?)に悩む62人の男女を2グループに分け、通常の治療と、通常の治療と鍼治療を加えた二重盲検試験を行ったところ、有意差は確認できなかった。(5)
 などのものだ。
 ここまでの話なら、効果には疑惑は多分にあるけれど、加療行為に当たるとして規制のある技術職だと判断できる。
 これらの臨床試験には、どうやら鍼が使われているようで、微弱電流やパルスは使われていないようだ。パルスを用いた臨床試験は、今のところ見つけられずにいる。

 ところが『耳介療法』、つまり「耳にあるツボ」限定になると、話はかなり怪しくなる。
 『耳介療法』の提唱者は、1957年のフランスの神経科医ポール・ノジェ(Paul Nogier)で正しいようだ。ノジェは慢性痛に悩んでいた患者が、はり師の治療を受けて快癒したのを見て、鍼灸に興味を持ったらしい。そして研究を続けていくうちに、ヒトの耳介の形が逆さの胎児に似ていることから、耳介が人体の模倣であり、耳介を通じて様々な効果的な医療行為が行える、として『耳介療法』を開発したようだ。(6)(7)
 ……どこをどう突っ込めばいいのやら……。
 つまり何だ。
 犬の耳介は犬の退治に似ているし、猫の耳介は猫の退治に似ている……と。こういう事だな。
 耳介がそれ程に重要なら、ピアスの穴を開けるのは致命的な外傷になると思うのだけどね。なにせ貫通だ。
 それと胎児は普通、頭が下を向いているものだ。「耳の形が下向きの胎児の形に似ている」というのはおかしな表現でないかい?
 ……こんなところかな。

 好意的に受け止めるなら、この時点でのノジェは、鍼を使用する代替医療として語っていたようだ。電流やパルスなどに触れていた形跡はない。
 ……パルスって、どこから出てきた言葉よ?

 パルスを使っての『耳介療法』の出所はともかく、この方法を使っての施術者(という表現で良いのかな?)の免許を発行する国家資格は存在しない。
 ではどういうところがあるのか、と『耳介療法』で検索したところ、『日本遠赤療術学院・日本遠赤療術協会』のサイトが見つかった。
 この中に、『耳介療法士会』というのがある。受講費用90万円(消費税含まず)、28単位、受講日数のべ10日程。(8)
 ……はり師の受験資格を得るだけでも3年間の授業と単位が必要だというのに、受講費用はさておき何とまあお手軽な。
 このようなものと同列にされては、はり師やきゅう師の人たちはさぞかし迷惑なことだろう。

 ここまでくれば、『耳介療法』なるものが『似非科学(医療?)』であるという根拠としては十分だ。
 ところで『耳介療法』は英語圏では『Auriculotherapy(オリキュロセラピー)』と呼ばれるようだ。これは電流を流すタイプのもので、耳に鍼を刺すのは別に『Ear Acupuncture(イヤー・アキュパンクチュア)』と呼ぶらしい。
 とは言え、AuriculotherapyとEar Acupunctureを混同しているものも多々あるので、確実な住み分けが出来ているようではなさそうだ。

 最後に、「Auriculotherapyを採用した医療機器」は、今回調べた範囲では見つけられなかった、と報告しておく。


◎参考インターネット
1) Wikipedia 外耳
   http://bit.ly/1jDbWxB
2) 社団法人全日本鍼灸マッサージ師会
   http://www.zensin.or.jp/03_shikaku/shikaku.html
3) あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律:
   http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO217.html
4) Melzack R, Katz J. “Auriculotherapy fails to relieve chronic pain. A controlled crossover study.” JAMA 1984 February 24, 251(8): 1041-3:
   http://1.usa.gov/1jDc6oS
5) Ceccherelli F, Tortora P, et al, “The therapeutic efficacy of somatic acupuncture is not increased by auriculotherapy: a randomised, blind control study in cervical myofascial pain.” Complementary Therapy in Medicine, (2006 March 14 (1)): 47-52:
   http://1.usa.gov/1qIUMZo
6) オリキュロセラピー(耳介療法)
   http://homepage3.nifty.com/office-triumph/Auriculotherapy.html
7) Wikipedia: Auriculotherapy
   http://en.wikipedia.org/wiki/Auriculotherapy
8) 日本遠赤療術学院・日本遠赤療術協会
   http://www.e-ryoho.co.jp/refarence/ref%20right.htm
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