2007年10月06日

ESSIAC、エイジアック

 「利権を失うことを怖れた医師会から弾圧された悲劇の薬」「従来の生物学・医学を根本から覆す奇跡の薬剤」などと詭弁をうたったニセ抗がん剤・がん治療法、無根拠な健康法は巷にまん延している。
 その中の1つに『Essiac』という代物がある。

 カタカナ読みすると「エッシアク」「エシアック」「エジアック」とも読めるが、とりあえずここでは『Essiac Research』の読みに従い『エイジアック』としておく。[1]

●『エイジアック』とは?
 『エイジアック』は4種類のハーブ(うち1種類は、日本では医薬品に該当)からなるハーブティーだ。[1, 2]

   シープヘッドソーレル(ヒメスイバ全草、Rumex acetosa)
   スリッパリーエルム・バーク(アカニレの樹皮、Ulmus fulva)
   バードック・ルート(ゴボウの根、Arctium lappa)
   インディアンルバブ・ルート(ダイオウの根、Rheum palmatum)。

 それぞれのハーブには「こういう効果、ああいう作用がある」との眉唾物の俗説や伝承の枚挙にいとまはない。
 1つ1つ並べてるより、ここでは『エイジアック』そのものが焦点なので、ハーブについては触れずにおく。

 この4種類のハーブのうち、ルバブ(ダイオウ)の根部が医薬品に該当する。[3]

 日本では医薬成分(専ら医薬品として使用される成分本質(原材料))が、1種類でも含まれていると「医薬品」と判断され、いわゆる健康食品(ここで言うならハーブティー)として販売することはできない。[3]

 「医薬品」なら、薬剤師が噛んでいれば販売できるだろう、と思うかもしれない。
 しかし「医薬品」として販売するには、その前に医薬品としての登録が必要だ。
 『エイジアック』には医薬品としての認可は下りていないので、「医薬品」としても販売する事はできない。

 ……俺の限られた知識の範囲では、『エイジアック』を日本国内で法に触れずに流通させる方法は存在しない。

 ちなにみ『エイジアック』は、アメリカにおいても、医薬品としての申請は却下されている。そのため、現在では健康食品(ハーブティー)として販売されている。[4]
 発祥地のカナダでは、国内での販売は許可されていないし、政府からの特別な許可を得ないと臨床試験もできない状況にある。[2]

●『エイジアック』の開発者?
 1924年、カナダのオンタリオ州の1病院で看護婦をしていたRene M. Caissie(リーン・M・ケイス、1888〜1978)が、職場の病院でがん患者に与えたことから、『エイジアック』は始まった。
 『エイジアック』の名は、ケイスのCaisseを逆読みしたものだ。

 元々『エイジアック』は、言い方はおかしいがカナダの原住アメリカ人の民間療法で処方されていたお茶だ。ケイスがどのような経緯からこの処方を入手したのかは不明だが、このお茶を彼女が担当していた乳がん患者に与えたところ、がんが完治したというのが、そもそもの始まりのようだ。[5]
 その後、ケイスは胃がんの自分の叔父にもこのお茶をあてがったとされている。叔父氏が回復したかどうかは不明だ。

 ともかく。
 ケイスは1924年から、『エイジアック』でがん患者を治療し、数多くのがん患者を治癒に貢献したとされている。一説には、末期がん患者を数千人治癒させ、80%の患者に対し効果があったとも言われている。[1]

 『エイジアック』の処方は、1978年にケイスが死亡する前に、オンタリオ州にあるRasperin Corporation of Torontoに売却され、以来この企業がEssiacの正式な製造販売権を主張している。[2]

●『エイジアック』の作用の仕方
 ケイスと『エイジアック』を飲用した患者らの説明によると、『エイジアック』の効果は飲み始めてからほんの数回で効果が現れるそうだ。[2]

 まず、ガン細胞が大きく膨れ、硬化する。
 それからガン細胞は柔らかくなり、もしガン細胞が表皮の近くに発生しているのなら、大量の膿と肉状のものが噴き出す。
 以後、がん細胞は完全になくなっている、というのだ。[2]

 ケイスはこう理由付けている。
 理由はわからないとしていながらも、ケイスは『エイジアック』にはがん細胞を発生した元の箇所に移動・集中させ、縮小させた後、体外に排出させる効果がある、と主張していた。[2]

 『エイジアック』には特別な淹れ方があるようだが、日本で販売できない商品の扱い方を語っても仕方ないので、調べる手間は省いた。

●『エイジアック』の試験結果
 かれこれ数千人のがん患者の治癒に貢献したと称する割には、『エイジアック』の動物ないしヒト細胞試験(in vitro)、あるいは臨床試験(in vivo)の報告は、2007年10月においても非常に少ない。

 そればかりか、ケイスが各患者(年齢・性別・患部・病状別)に対し、どのように『エイジアック』を処方したのか、その資料すら存在しない。[2]

 その理由は、「治癒した」「回復した」との報告は、ほとんどが地元新聞による報道であり、ケイス本人からは、『エイジアック』のがん治療に関する報告は1つも上げられていないからだ。[2, 4]

 1982年、カナダでは86人のガン患者が、それぞれの担当医師の要請を受け、『エイジアック』の臨床評価が行われた。この評価は、患者の診察表からの分析ではなく、報告書を提出した担当医師の記述を基にしている。[2, 6]
 結果は以下の通り。

   病状に影響なし    47人
   評価できない     8人
   死亡         17人
   見た目効果あり    1人
   鎮痛剤の量が減少   5人
   観察すべき反応    4人
   安定           4人

 『観察すべき反応』『安定』と評価された8人のうち、3人はその後病状の進行が確認され、2人は死亡、3人が依然『安定』と判断された。ただし『安定』の3人も、『エイジアック』の使用後には従来の治療に戻っており、調査した組織は『エイジアック』の飲用により病状が改善されるという証明は得られなかった、と結論している。

 1983年、前述したRasperin Corporation of Torontoはカナダの健康福祉局健康保護課(Health Protection Branch, Health and Welfare Canada)からの要請により、『エイジアック』の抗がん性の試験を米国国立願研究所(National Cancer Institute、NCI)にて行っている。[2]
 その結果、リンパ球腫瘍(Lymphocytic Leukemia P388)のマウスに対する抗がん性は確認できなかったとされている。

 それどころか、処方にある最高値の濃度の『エイジアック』を投与したマウスは、「死に至った」という報告すらある。[6]

 MedLineで検索して見つかるわずかな資料を見ても、『エイジアック』の評価は決して高くはない。
 ……というか、リスクの方が高いようにも読み取れる。

 最近の試験としては、2006年にKulpとMontgomeryらのグループが、エストロゲン受容体陽性および陰性のヒトの乳がん細胞を用い、『エイジアック』がガン細胞の増殖抑制効果があるかの試験管試験(in vitro)を行なっている。[7]
 概要を読む限りにおいては、更なる調査が必要とはしていても、『エイジアック』は乳がんに関しては、ガン細胞の増殖を抑制するどころか、逆に促進する恐れがあるとしている。

●藁にもすがりたい気持ちは判らなくもないけど
 たまたま『エイジアック』で検索したところ、あるブログを見つけた。[8]
 その中に『エイジアック』を使っていた旨の記述がある。2002年3月4日〜。

 例え善意からでも、藁にもすがりたい人達にこういう代物を勧める連中に、怒りとか憎しみとか感じてしまうのは……俺の問題か。


◎参考インターネット◎
[1] Essiac Research HP
     http://homepage1.nifty.com/essiac-re/index.htm
[2] Quackwatch “Unconventional Cancer Treatments. Chapter 4: Herbal Treatments” August 3, 1998.
     http://bit.ly/1qIYAtJ
[3] 『物の成分本質(原材料)について』
     http://bit.ly/1qIYja5
[4] National Cancer Institute “Questions and Answers About Essiac and Flor * Essence” July 26, 2007.
     http://1.usa.gov/1jDgiVt
[5] American Cancer Society “Essiac Tea” June 26, 2007.
     http://bit.ly/1qIYp1t
[6] BC Cancer Agency “Essiac/ Flor Essence” February 2000
     http://bit.ly/1jDgdkL
[7] Kulp KS, Montgomery JL, Nelson DO, Cutter B, et al. “Essiac and Flor-Essence herbal tonics stimulate the in vitro growth of human breast cancer cells.” Breast Cancer Research and Treatment, 2006 Aug; 8(3): 49-59. Epub 2006 Mar 16.
     http://1.usa.gov/1qIY5zG
[8] 奇跡を信じて〜あとがき〜
     http://www.enpitu.ne.jp/usr6/66095/
posted by にわか旅人 at 13:42| Comment(5) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私の母は癌に侵されているのに処方のしようがないなんてあんまりです。
お茶でもなんでもいいから治してあげたい・・・。
Posted by 結局何が効くんだろう at 2010年06月21日 02:12

     「こころの免疫」を強くする

   「からだの免疫」だけに力を注ぐのが「現代医学」です。

  「こころのガン」が「からだのガンにんなる、との「学説」も現れて
 います。 それには悲しみを喜びに・失望を希望に打ち変えてくれる
 こころの「メッセージ」 にすべてをゆだねることです。

       こころを強くする「メッセージ」   
     http://www4.ocn.ne.jp/~kokoro/

              安達三郎(経営コンサルタント) 
Posted by yasuo at 2011年01月08日 21:42
この、エシアックなるものは、下剤効果の有るハーブティーである。
飲んでも死にはしないが、ガンが治るわけが無い、便秘は治るかもしれないが。

ちなみに、ケイスは、このハーブティーを患者に『注射』していたのである。
当然患者は死ぬ、当然ながら同様に注射されたマウスも死ぬ。
Posted by おっさんZ at 2012年08月19日 17:05
結局何が効くんだろう氏の疑問に答えて。

薬草でガンに効くなどという虫の良いものが有る訳も無いが、「抗ガン剤の副作用による苦痛を緩和する漢方薬」や「末期ガンの苦痛を緩和する漢方薬」程度なら無いという訳でも無い、いずれにせよガンが治るわけではないが。

もっとも、効きもしない、延命効果も無い『抗ガン剤』を患者に投与して苦痛を増やすしか能の無い医者にかぎって、「漢方薬は効かない」「漢方薬はプラセボ」と言い張るであろう。
そういう医者に限って、末期ガンの鎮痛にモルヒネを使うのをためらい、患者の苦痛を更に増やすのだ、末期ガンともなれば、モルヒネ中毒の心配など必要ない(数年内に必ず死ぬ患者が麻薬中毒であっても、病院内でかつコントロールされていれば問題ない)のに、だ。

緩和ケアに古臭い治療しか施せずそれ以上の治療を拒否、あるいは「効かない」と言い切る医者なら、他にセカンドオピニオンを求めるべきである。
どうせ治らない以上、例えプラセボであろうとも、残された日々のQOLを少しでも向上させうるのであれば、それを選択しないという医者は「ヤブ医者」確定である。
Posted by おっさんZ at 2012年08月19日 17:19
カナダに長年住んでいますが、ESSIAC普通のスーパーのビタミン剤売り場に売っていますが?

去年から私も体調がかなり悪く、最近飲み始めましたが、すぐに効き目がでてきました。値段的にも安く、これがガンに効いては困る方がいらっしゃるのではないでしょうか?


Posted by カナダのばあちゃん at 2013年09月21日 10:14
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