2007年07月30日

某学位商法の客員教授の話

 何日か前の記事だが、Degree Mill(学位商法、以下DM)の蔓延に対し、文科省がようやく重い腰を上げたようだ。

   読売新聞『全大学教員対象、海外から授与された「ニセ学位」実態調査』2007年7月23日
   http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070723i105.htm?from=main1
===全文掲載===
 教育活動の実態がないにもかかわらず、大学として博士号などのニセの学位を授与する海外の団体が増えているとして、文部科学省は、ニセの学位を持つ大学教員の実態調査に乗り出した。

 対象は国公私立すべての大学で、同省では、秋ごろに結果をまとめ、公表したいとしている。
 同省が「ニセ学位」を授与している疑いがあるとしているのは、アメリカ、中国、イギリス、オーストラリアに所在地を設定しているが、それぞれの国から大学と認定されていない団体。国内の各大学に対して、教員がこれらの団体が授与した学位を経歴に使用していないかや、この学位を基に採用されたり、昇進したりしていないかを尋ねる。
 同省によると、アメリカでは、大学と名乗る団体で取得した学位を就職などに悪用するケースが相次いでおり、こうした団体は「ディグリーミル(学位工場)」と呼ばれている。国内でも、国会などで、ニセ学位とみられる学位を持つ大学教員の存在が指摘されていた。
===ここまで===

   日経新聞『文科省、「学位商法」の調査開始・全国の大学対象に』2007年7月23日
   http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070723STXKA040022072007.html
===全文掲載===
 研究や教育活動の実体が確認できず、実在するかどうかさえはっきりしない海外の大学で取得した“学位”が、日本国内で大学教員の採用の際などに悪用されている実態を把握するため、文部科学省は23日までに、国公私立大の人事部局を対象にした全国調査に乗り出した。今秋にも結果を公表する。
 こうした海外の大学は「ディグリーミル(DM、学位工場)」などと呼ばれ、米国では取得した博士号などの学位を就職に悪用するケースが問題化。国内でも最近になって大学案内の教員紹介などで、DMとみられる大学・研究機関の学位が十分にチェックされないまま掲載されている事例が表面化している。
 調査は(1)教員の採用、昇進の審査でDMとみられる機関の学位が重要な判断材料になった例(2)入学案内やホームページなどでこうした学位を公表している例――などについて、該当する教員数などの報告を求めている。
===ここまで===

 教員・教授らのこういう実態が明らかになっていくのは、歓迎したい。

 だけど大学側がDMを使う教授の博士号を経歴から消すだけで、後は知らんぷりを決め込む事も実際ある訳で、そういうのは困るな。
 実態が明らかなったら、DMを使っていた人物らにはそれなりの処罰を、大学側に期待したいものだ。

 話は変わる。

 とあるDMに客員教授として名前を出している人物と話をした事がある。
 その業者名を出すと、芋づる式に俺の名前まで辿られる恐れがあるので(それだけマイナーなDM)、業者名とその客員教授の名前は非公開にしておく。

 そのニセ大学の名前を業者A(『大学』とは付けない)、教授をB氏として、簡単に説明する。

 業者AのHPを見ると、トップページからして「怪しい新興宗教」色のある説明があるのだが……この辺はとりあえず脇に置いておいて。

 業者AはHPでこう述べている。
 1. 米国カリフォルニア州にて米国教育法人として設立し、キャンパスがある。
 2. 日本国内に『日本本校』が存在する。
 3. 学士・修士・博士課程があり、学位を発行している。
 4. 授業は郵便又はEメールによる通信教育である。
 5. 学士は社会活動・社会貢献なども考慮し、最短2年で取得が可能である。
 6. 学長はMLM(マルチレベルマーケティング、マルチ商法)の研究で、経済学博士を授与されている。
 7. 教養(選択)科目に恐ろしく程度の低い(←これは俺の私見)『英会話』がある。

 以下が、俺が簡単に調べて判明した事柄を並べてみた。とりあえず、上述のA社のHPでの主張に対応させてみた。

 1. 登記があるのは『教育法人』ではなく、『企業』登記だと思われる。
   キャンパスの住所は、同じ住所の同じ階に複数の企業名が検索できることから、「秘書代行サービス」が考えられる。「雑居ビルの1室」か「私書箱」の可能性も否定できない。
   と言うか、日本人向けの大学、かつ講師陣が日本在住なのに、どうして米国で法人を取り、それを自慢する必要があるのかねぇ?

 2. 日本本校の所在地は、学長が経営する企業と同じ住所(それも地方)である。
   B氏は東京在住、本業も都内で営んでいるので、それだけでもどうやれば講義を行えるのか、ぜひ説明してほしいものだ。

 3〜5. 文部科学省の認可を受けた正規の大学……どころか学校ですらない。そのようなところから出された学位に、紙切れ以上の価値はない。

 6. どこの大学の出した『経済学博士』なのかが不明。自分の経営するDMの経済学博士なら、自作自演もいいところ。

 7. 米国に教育法人があるなら、なぜTOEFLでなくてTOEICなのだ?
   科目がTOEICレベルに合わせた内容なのか、その点数を狙う内容なのかは不明だし、TOEFLとTOEICの点数の比較も経験則になるので正確ではないが……一番レベルの高い科目でも、TOEFLで400〜450のレベル。コミカレに引っかかれば「御の字」というところか。

 B氏との話を少しだけ追加する。

 俺がB氏の名前をHPで見かけた時は、無承諾で名前を使われているのか、DMとは知らずに使われているのか、そのどちらかだろうと甘く考えていた。
 そう、甘かったのだな。
 B氏本人、DMという単語は知らないようだったが、自分が「大学とは銘打っても、教育機関としての実体のない組織」の片棒を担いでいる自覚はあった。
 そのDMで、誰かが無駄金と時間を費やす可能性については、何ら考慮も憂慮もなかった。

 B氏の自己弁護としては、このような内容だ。
 自分は授業を行ったことはないし、教えられる場所も人員(教員と学生の両方)もいない。勿論、給与をもらったこともない。

 受講者がいなかったから、講義をしていなかったから、を言い訳にはできないだろう。

 来年度には文科省の承認が取れるよう、色々と活動(講演?)をしていると学長から聞いている。

 B氏は近い将来、このDMが正式な大学になると本気で信じていた節がある。
 その意味では、B氏も被害者の可能性はあるのだが、余り同情はできない。

 カリフォルニアにあるキャンパスについては、いい加減な事を聞かされていたようだ。
 日本とアメリカの大学の制度は違うのは知っていたが、まさかカリフォルニア州のキャンパスが大学として設立しているのではなく、どこかのビルの秘書代行かその類似だとは、聞かされていなかったようだ。

 できるならDMから手を切ってもらいたいのだが、少し話をしただけで諦めた。
 元々B氏と学長の付き合いは、俺との付き合いよりも長い訳で、学長と俺のどちらを信用するかと問えば、それは言わずもがな。人間関係のしがらみもあるだろうし。

 ……今回は顔見知りが関わっているからか、今一つ覇気に欠けるな。
posted by にわか旅人 at 22:50| Comment(3) | TrackBack(1) | 悪徳商法追放 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 にわか旅人様

DMに関しての
政府の調査ようやく
表(新聞等)で
取り上げられてきました。


神津氏(大本命との事) ならびに
M氏のような信者(関連性の調査)にも
手が伸びるようです。

 また、
官僚の中にも
DM紛れ込んでいます。

 なんたることぞと
色々出てきますよ。

秋に向けて。



相当な勢いで排除するとの事。


Posted by 白い医者 at 2007年08月02日 16:53
おひさしぶりです。トラックバックさせていただきました。

なにはともあれそれなりにマスコミにもとりあげられるようになり、これから表面的な部分は淘汰されていくでしょうが、そもそもこの問題は日本のモラルハザードに直結している問題のようにも見て取れます。自分のブログにも書きましたが、そういうことをする人はアメリカにも日本にもいるわけですが、それが露見した際に毅然とした対応をとったアメリカの大学と、潔く「悪いことをした」と認めた教員と比べて、「大乱闘」(いまもやってるのかな?)をやらかした日本の大学の教員と、だんまりを決め込むという大学側の対応がいかにも対照的です。

さらにこういった問題が処理される際にケースを問わず必ず問題になるのは「規制されれば地にもぐる」ということです。実は Degree Mill の最大のマーケットは教育関連ではないと言われています。そのあたりは今でも地にもぐっていますが、これからはさらに地中深く潜るんじゃないかな、と個人的に思っています。まあ、表向き直接的な社会的影響は大きくない部分なのかもしれませんが、例えば「実はニセ博士のおじいちゃん」の元でも子は育つわけで、結局そういったあたり、モラル的にはまだまだなような気がします。
Posted by CAT0857 at 2007年08月03日 10:42
>白い医者さん
コメントありがとうございます。

DMを仮に犯罪として取り締まるとしても、適用されるのは軽犯罪法の第1条の15辺りではないでしょうか。罪としては大きいものにはならないと思います。

そのような捜査に警察と税金を注ぎ込むよりも、そういう人らを採用した組織の自浄作用に期待したいです。
あちこちの大学では、DMの教授は経歴からDMを外すだけ、後は知らんぷりの体質では、自浄作用を期待するのは難しいでしょうけど。


>CAT0857さん
コメントとトラックバックありがとうございます。

>実は Degree Mill の最大のマーケットは教育関連ではないと言われています。

どうもそのようです。
私はこれまで、主な市場は教育・公務員・健康産業辺りだと思っていました。しかし最近になり、DMはもっと奥の深いところ、表には出てこない『カルト』にはびこっているのではないかと、考えるようになりました。

このエントリにある某DMの学長は、私的には怪しい宗教関係者ですし、この人物の筋を辿っていくと、実はパシフィックウエスタン大学の神津健一氏に行き着きます。
「最高ですかー?」の足裏氏と光合堀菌の研究所所長も、PWUの博士号を持つ『怪しい』宗教の教祖でした。

これだけの例を持って断じるのは早計なのは理解しています。
その上での私の考えですが、カルトの教祖にしてみれば『○○大学の博士号』というのは、信者を集めるのと信用を得るのに、ちょっとした費用で購入できる都合の良い道具なのだと思います。
信者からすれれば、重要なのは教祖が「博士である」あるいは何らかの「権威の裏付け」を持っている事が重要であり、その権威が本物であろうがDMであろうが関係ないようですから。

DM教授の指導を受けたトンデモ理論の学生が社会に出てから及ぼす悪影響と、カルトの蔓延のどちらが長期的に見て被害として大きいのか、私に予想はつけられません。
Posted by にわか旅人 at 2007年08月04日 16:51
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Excerpt: 当初DegreeMillネタを扱いはじめた理由は日本での認知度のあまりに低かったので、その問題に関する情報提供をしようと思ったことなんだよね。日本のエラい人が平気で経歴に入れていたり、大学で教員として..
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