2007年07月14日

植物性コロイドミネラル

 幼稚園児だった頃の話だ。
 俺にそんな時期があったのか、とか、何十年前の話だとか、そういう突っ込みはなしで。

 泥団子を作った思い出がある。
 乾いた砂場の砂では粘度がないので、つなぎに泥水を使う。
 バケツに砂と水を入れ、かき混ぜるだけ。
 実に簡単な手順だが、幼稚園児のやる事だから。
 ……このいたいけな遊びが、後の俺の進路の選択に一役買っていたどうか……は別の話。

 この泥水を放置しておくと、当然ながら砂利(と泥)が底に沈み、ゴミと変な灰色になった水が上に来る二分化が起きる。水の色は、使った砂利や土の色で茶色やこげ茶色、極端な時は赤くなったりもする。

 そしてこれまた当然だが、幼稚園児ですらその上澄み水を飲もうとは考え付かないものだ。
 ……まして傍に親がいて、自分の子供がそんなものを飲もうとすれば、叱り付けてでも止めるだろ?

 実はこれが、基本的な『植物性ミネラル水』『コロイドミネラル水』の製法だ。衛生上の製造工程や材料の選択に違いがあるとは断っておく。

 つまりこれは、「あれ」だ。
 「土砂を水に漬けて、その上澄みを販売しています」
 ……問答無用で胡散臭い。と言うか、飲むと腹を壊しそうだ。
 正に文字通りの「 泥 水 商 売 」。

 ちなみに、この代物の呼び名は色々ある。
 『植物性ミネラル』『植物コロイドミネラル』『コロイドミネラル』など。アメリカ、オーストラリアで販売されている同様の代物は、概ね『コロイドミネラル、Colloidal Mineral』だ。
 ここからは『コロイドミネラル』で統一する。

●2種類のミネラル:金属性と植物性
 ミネラルというのは、無機の単体ないしは無機化合物の結晶を指す。つまり、一般的な有機物に含まれる元素(炭素C・水素H・窒素N・酸素O)を除いたもの全ての元素の事だ[1, 2]。

 栄養学的には、日本では厚生労働省によって、ヒトに欠かせない栄養素としているものが16種類ある。
 そのうちの7種(ナトリウムNa、マグネシウムMg、リンP、硫黄S、塩素Cl、カリウムK、カルシウムCa)は『主要ミネラル』と言われ、1日の摂取量100mg以上とされている。
 残る9種(クロムCr、マンガンMn、鉄Fe、コバルトCo、銅Cu、亜鉛Zn、セレンSe、モリブデンMo、ヨウ素I)は『微量元素』と言い、1日の摂取量が10mg未満とされている1, 2]。

 以上がざっとしたミネラルの説明だ。
 この中には「ミネラルの由来が植物性(自然・天然のオプションあり)ならば安心・安全」などとの文言と、「60種類やら70種類やらのミネラルが、ヒトの生存に必要だ」との記載は含まれていない。

 ところが『コロイドミネラル』を販売する業者に任せると、上の説明に下のようなオマケが付いてくる。

 ミネラルは、その由来により『金属性』と『植物性』に分けられる[3, 4]。

 『金属性ミネラル』とは、人体に害を及ぼすタイプのものだ。市販・あるいは普通に食事で摂取するミネラルが相当し、吸収率は8〜12%と効率が悪い。にがり、海水塩、海洋深層水もこの部類に含まれる。水俣病の原因となった水銀も、この金属性ミネラルだった[3, 4]。

 『植物性ミネラル』とは、人体に害を及ぼさない「植物由来」のミネラルである。粒子が細かいため、ガラスを通り抜けるほどの超微粒子で、血管の隅々にまで行き渡り、100%に近い吸収性を持つ[3, 4]。

 言うまでもないが、『金属性』と『植物性』とを分類する定義のようなものは見つけられなかった。
 ……あるはずないけど。

●ヒューミックシェール(Humic Shale)?
 コロイドミネラルは、アメリカはユタ州で発掘されるヒューミックシェール(腐植頁岩、Humic Shale)から抽出されたものだ。ヒューミックシェールとは、ジュラ紀(サイトによっては白亜紀)―ミネラルが豊富で生命に満ち溢れていた時代―の植物が、化石や石炭とならずに堆積したもので、当時のミネラルを大量に含んでいる[3]。

 まず。
 コロイドミネラルを紹介するサイト以外で、『Humic Shale』『腐植頁岩』と続けて使用しているところはない。

 『腐植(Humic)』は名前から判るように、植物などの有機物が腐敗(微生物による分解)した時の最終生成物(フミン質)の事だ[5]。
 『頁岩(Shale)』は、微小な泥(1/16mm以下)が水中で水平に積もった堆積岩の事で、薄く何層にも割れるという特徴を持つ[6]。

 確かに、骨や歯などの硬い部分が鉱物に置換され、残ったものが化石な訳だが、『稀に』炭化した植物が鉱物に置換されず、残っている場合もあるらしい[7]。
 それにShaleの層は、木の年輪に見えなくもない。それを誤解しているのかな?

 ……腐植物が堆積して頁岩になったのであれば、それはただの『頁岩(Shale)』、コロイドミネラル業者が親の仇のように嫌う『金属性ミネラル』なのだけどね。

 ヒューミックシェールがいつの時代の産物であろうとも、化石化していようが石炭になっていようが、ただの泥炭・汚泥になっていようが、言えることが1つある。
 水と混ぜればドロ水。それ以上でも、それ以下でもない。

 と言うか、有機物部分が鉱物に置換されずにいれば、ドロ水どころではなくて生ゴミを漬けた水そのものでないか?

●コロイドミネラルの製法[8, 9]
 1. ジュラ紀(業者によっては白亜紀)の地層から、腐植頁岩(ヒューミックシェール、Humic Shale)を発掘、粉砕、粉末化する。
 2. 粉末化した頁岩をステンレス製の樽(Vat)に入れる。
 3. 樽を低温の純水に浸漬する。
 4. 3〜4週間静置した後、吸引ろ過をして溶液を取り出す。

 これが大雑把な『コロイドミネラル』の製法だ。
 もっと簡単に言うと、
  「掘り返した土砂を粉砕して、水に漬ける。水が茶色になったら出来上がり」
 となる。

 やはりどう見ても「ドロ水の上澄み」にしか見えない。

 なにしろコロイドミネラルの原料は、地面から掘り返した土砂だ。それを洗浄せずに使う(土砂から不要な土砂を洗い落とすと何が残る?)のだから、どれだけ工場の衛生管理が行き届いていようが、最終製品は「洗浄せずに製造した泥水」だろ、これは。

●常識的な疑問「ドロ水は飲んで安全?」
 コロイドミネラルを販売する業者は安全だと主張しているが、その根拠が似非科学なミネラルの説明だけで、安全性試験の報告は見つかっていない。

 仮にコロイドミネラル水に細菌による汚染がないとしても、だ。
 泥水中には多種のミネラルが溶解している。これらのミネラルの中には、微量でも体外に排出されにくいものもあるかもしれないし、言うまでもなく長期に大量に飲用すれば、どのような成分でも危険になる[8]。
 さらに問題なのは、溶解している成分の中に、特定できない有機化合物が少なからず含まれている事だ[8]。

 PubMedで見つけた資料によると、『腐植』性の成分(特に石炭やシェールに由来するもの)を含む水は、甲状腺種を誘発する恐れがあると指摘してされている。もっとも、水に溶け出す粒子の種類にもよるだろう、との後述はされてはいる[10]。

 言うまでもないが、正常な悟性の持ち主ならば、ドロ水を飲もうとは考えないものだ。余程世間一般から隔絶された家庭ないし原始人的な社会で育ったのでない限りは。

 ドロ水を啜らないとならない程生活に困窮しているのか、治療法のない病気などで追い詰められた状況にあるのだろうか。

 なぜ高額な費用をかけて、有り難がって啜るのだろうね?


◎参考インターネット
[1] Wikipedia『ミネラル』
     http://bit.ly/1qFmNB8
[2] 「健康食品」の安全性・有効性情報『ミネラルについて』
     http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail655.html
[3] アジアロンジェビティ株式会社HP
     http://activemineral.com/
[4] 翔力HP『コロイドミネラルとは』
     http://www.show-riki.com/mineral/htmls/about_mineral.html
[5] Wikipedia『土壌』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E5%A3%8C
[6] Wikipedia『頁岩』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%81%E5%B2%A9
[7] Wikipedia『化石』
     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E7%9F%B3
[8] James Pontolillo “Colloidal Mineral Supplements: Unnecessary and Potentially Hazardous,” Quackwatch, December 11, 1998.
     http://bit.ly/1qGWURa
[9] 株式会社ゼネシスHP
     http://www.geneses.co.jp/index.html
[10] Laurberg P, Andersen S, Pedersen IB, Ovesen L, Knudsen N, “Humic substances in drinking water and the epidemiology of thyroid disease.” Biofactors, 2003; 19 (3-4): 145-53.
     http://1.usa.gov/1qFmSob
posted by にわか旅人 at 15:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
llllll(-_-;)llllll
本当に要らない。。。
なんでそんなモノがあるんでしょう↓(._.)ノ・・・))旦~~
困ったヒト達が居るカラですね↓

Posted by BABY☆ at 2007年07月14日 19:41
>BABY☆さん
コメントありがとうございます。

その『困ったヒト達』が跳梁跋扈しているのが、既にお察しとは思いますが、マルチ商法の世界な訳です。

特商法・薬事法無視、「本当に良い物」と称して泥水をマルチ商法で売り歩く連中……を表現する言葉は、悲しいかな私のボキャブラリーにはありません。
Posted by にわか旅人 at 2007年07月18日 21:30
はい(*..)
彼らのコトを表現すると 悪いコトバで表されてしまいマス☆ミ

〔9〕のゼネシスは元FLP副社長サンの会社デス。
マルチから生まれたマルチ君ですね(/_・、)/~~
出来れば何処か他の惑星に行って 楽しく暮らして頂きたいなぁーと思いマス。
Posted by BABY☆ at 2007年07月19日 03:07
>BABY☆さん
ゼネシスの代表取締役、當真健一(とうま けんいち)氏はFLP上がりでしたか。それは知りませんでした。
情報有難うございます。

マルチにはまっている人は、大方が頭の中身がよその宇宙にあるのですが……救いになりませんね。
Posted by にわか旅人 at 2007年07月20日 23:04
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