2007年05月12日

中国産ジエチレングリコール(2)

 前回に引き続き、中国のジエチレングリコールを入れたニセ医薬品の話。
 今回は2ページ目。

Walt Bogdanich, and Jake Hooker “From China to Panama, a Trail of Poisoned Medicine.” New York Times, May 6, 2007
     http://nyti.ms/1qH0wmn
===Page 2 of 7===
 「これでも過小な報告だ」
 Dr. Bennishはジエチレングリコール中毒につき、そう語る。限られた資材に不健康な国民を抱える貧しい国の医師は、毒薬でも疑問を抱かないかもしれない。
 「医療機関に来ないで亡くなられる人がほとんどだ」

 見かけも特徴も本物とほとんど違いがなく、そのくせ比較的安価なグリセリンの偽物の製造者は、国境越えての配送を追跡する困難さ故にほとんど特定されることがなく、立件される事はさらに少ない。
 「これは真に国際的規模で立ち向かうべき問題だ」
 そう言うのは、世界保健機構(WHO)の北京代表Dr. Henk Bekedamだ。

 70年前、ジエチレングリコールで風味付けされた医薬品により、アメリカでは100人以上の死者が出ている。当時で医薬品規制が最も厳しくなされ、後のFDAの設立にも繋がった事件だ。

 FDAは中毒事件の真相究明に世界中を駆け巡ったのだが、得られたものは少ない。

 10年前、ハイチで少なくとも88人の子供が死亡した事件がある。FDAは満州・大連(ターリエン)まで毒物のルートを追跡した。しかし疑惑の工場の訪問には、繰り返し中国担当官に妨害されている。これは当時の報告書からの記述によるものだ。
 1年以上経過してようやく許可が下りた時には、その工場は移転し、資料は全て破棄された後だった。

 「我々が接触した中国人担当は、この事件と関わりを持つことを非常に嫌がっていた」
 北京のアメリカ大使館駐在員は、非公開の電話インタビューでそう証言している。
 「我々は他のグリセリンについても、出荷地を特定できるとの楽観はできない」

 事実タイムズ紙では、ハイチの中毒事件に関与していたとされる中国企業が、50トンの偽グリセリンを1995年にアメリカに出荷した記録を見つけている。その一部は捏造が判明する前、アメリカ国内の企業Avatar Corporation社に販売されていた。

 「我々のところで発見できたことを神に感謝する」
 Avatar社のバルク医薬品及び非医薬品製品販売のシカゴエリア総責任者のPhil Tern氏は、こう述べている。FDAによると、この取引は気づかなかったとの事だ。

 中国政府は国内の医薬品業界の正常化を誓っているが、その理由の一部は、ばら撒かれているニセ医薬品に対する批判が世界中に広がっているからだ。WHOによれば、12月に2人の医薬品取締官高官が、医薬品認定の贈賄罪で逮捕されている。加えて440ものニセ医薬品工場が昨年閉鎖されている。

 しかしながら、パナマでの死亡事件に関与した中国企業を捜査した中国担当者は、「違法性は認められない」との判断を下している。「中国の医薬品規制は『ブラックホール』だ」と、この北京に拠点を持つCNSC Fortune Way社と取引のある業者は証言している。

 このような環境から、Wang Guiping、9学年教養しかない化学本を手にした元洋服屋は、医薬品業界の中間業者として易々と潜り込むことが出来たのだ。そして贋物の流通こそが、手早く利益を得る方法だと、先達の仕事から素早く学んだのだ。

 その時からだ、中国で死者の出始めたのは。

法の網を潜り抜ける
 Wang容疑者は中国東部の長江三角州の工業地帯で、長年洋服屋を営んできた。地元の村人によると、彼はただの職人で終わることを善しとしていなかったそうだ。彼は地元に芽生えたいくつもの小さな化学品製造工場から、化学品の取引に目を付けたのだ。

 「あいつは自分が何をしたのか知らなかった」Wang容疑者の兄、Wang Guoping氏は、はインタビューで答えた。「あいつは化学を知らない」

 しかし、法の目を潜り抜ける方法は知っていたのだ。

 Wang Guiping(41)は、ヒトの服用は勧められない安価な工業用シロップを、医薬品レベルのものと交換すれば、より大きな利益が得られると考えた。報告によると、医薬品購入業者を騙す為に、彼は免許と分析記録を捏造している。

 Wang容疑者が捜査官に後日供述したところによると、試験的に少量を服用して、この代替品を使用しても影響のない事を確認したそうだ。彼はある元洋服屋の人間を実験台に使っていたのだ。

 その人物が服用し、異常のない事を確認してから出荷したと言う。

 このシロップを2005年初頭に使用した企業の一つが、黒竜江(ヘイロンチャン)から北東へ1,000マイル(1,600km)離れたところのQiqihar社の第2医薬品工場だった。購買担当が Wang容疑者のウェブに掲載されているのを見つけたのだ。
===ここまで===

 中国政府が自国企業擁護のため、立ち入り検査を拒否し続けていたという話は、このニュースを扱っているブログの幾つかで指摘されていた記憶がある。
 しかし、人体実験をしたというのはなかったな。
 ……自分の身体で実験しないで、他人を使ってというところが、もうね……。

 しかもこの安全性試験(と呼ぶもおこがましい行為)は、ヒトを一人だけ使っての確認試験だ。
 本来医薬品の用途であれば、整備された環境の元で膨大な数の臨床データを取るものだが、この記事を読む限りではそのような調整は「何一つ」されていない。
 ……これで「安全を確認した」とは、この人物の無知を笑うどころか、背筋に冷たいものを感じる。

 何せこれ以下の行為が、健康食品や似非科学商品の世界で、日本でも日常的に使われているからな。
 「100%自然由来だから、安全です」
 「元は食品として流通しているから、どれだけ服用しても副作用はありません」
 「医薬品ではないので、摂取量の上限はありません。できるだけ沢山摂るようにしましょう」
 ……etc. etc.。同様のトークなら、健康食品の展示会に行けばいくらでも聞ける。
 あ、「どこかの有名人が使っているから」と言うのもあるか。

 無知とは恐ろしいわ。
 ……人の事言えないけど。
posted by にわか旅人 at 15:56| Comment(4) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
誰もが何かしらについては無知だろうし 無知は罪じゃないと思うケド、
無知の認識欠如は罪デスね┐(´-`)┌
気をつけよぅ。。。と思いマス☆ミ
Posted by BABY☆ at 2007年05月13日 02:44
>BABY☆さん
コメントありがとうございます。

私も日々、自分の無知無能に呆れて過ごしています。
もっと良い言い方、やり方があるだろうと。

展示会だけでなく、メーカーの直営店でも見かけるのですが、「自然由来だから安心・安全」と信じる社員・店員は少なくありません。
せめて関連法規と、高校生レベルの化学・物理・生物の教科書か参考書を読み直すぐらいしてくれと……。

……これでも要求は少ないと思っているのですが、それでも望みすぎなのでしょうかね。
Posted by にわか旅人 at 2007年05月15日 00:19
相変わらず中国は「やって」くれますね。
エセディズニーよりも深刻な問題だと思うのですが。
かの容疑者、もうコレは無知ではなく「嘘」だと思います。
Posted by さすらいねこ at 2007年05月15日 04:58
>さすらいねこさん
コメントありがとうございます。

私も、ディズニーのニセモノより深刻な問題だと思います。
今回取り上げた記事は、『たまたま』出所が個人まで特定できた訳ですが、以前から「中国発のニセ医薬品原料」は出回っているのは、ご存知でしょう。
そしてそのニセモノにより、中国国内だけでなく世界のあちこちで死者が出ています。パナマはほんの一例です。

こういう人間が免許を偽造し、易々と業界に入り込めてしまう体質が、中国の根本にある問題だと思います。
かと言って、がちがちに業界を国で保護すると、かつての日本の『護送船団方式』になってしまうので、それはそれで問題だと思うのですが……。

まず何より先に、国全体でニセモノを排除する重要さを学んでほしいです。
Posted by にわか旅人 at 2007年05月17日 00:02
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