2006年10月07日

耳介(耳ツボ)療法

 今回も『ネットワークビジネスリスク研究所 掲示板』からの話で恐縮だが、『耳介療法』という単語が出てきた。
 この言葉を紹介してくれた人の説明はこうだ。
 「『耳介療法』とは、1957年にフランスのポール・ノジェという人物が発表し、オキュロセラピーという名前で知られている。これは耳つぼを刺激することで、さまざまな疾患に影響を与える。刺激を与える手段には鍼や灸があり、電磁パルスもこの中に含まれる。特にパルスを用いたものには『電磁耳介療法』と名前が付いている。またアメリカでは、医療機器として実際の治療に採用されている」
 瞬間的に「似非科学(医療)」だと閃いた。
 なので、調べてみることにする。

 「そもそも『耳介』って何よ?」の疑問から、まずは解決しないと。
 耳介とは、要は『耳』の事。軟骨と皮膚から構成されて、ヒト以外の動物では集音機能に優れているものも多いらしい。(1)
 集音機能はヒトの場合劣るようだけど、なくても良いというものでもない。
 確か耳の集音機能は、耳で空気の振動(つまり音)を捉えて、その奥にある鼓膜に振動を伝えるもの、だったと記憶している。だから事故などで耳が取れてしまった人は、聴力に問題が発生するとかしないとか。
 ソースは覚えていない。

 となれば、『耳介療法』とは、耳の疾患のための医療だと取れる。
 『耳介療法』の情報をくれた人の説明には、「耳つぼに刺激を与える」とあるから、元を辿れば中国の鍼灸に通じるものがあるようだ。実際、調べた範囲で「ツボ」を上げていたものも見かけたし、『耳ツボ療法』と言い表しているサイトも見かけた。

 さて、「ツボ」と言えば鍼灸を思い浮かべるのだけど、鍼を人体に刺すのは立派な加療行為だ。
 日本では『はり師』という免許を持っていないと開業できない事になっている。これは国家資格の一つで、文部科学大臣または厚生労働大臣の認定した学校で、基礎医学など所定の学課を最低3年履修しないと、受験資格が得られないという厳しいものだ。(2)(3)
 この学課の中には、ツボの一つ一つの名称や位置、どのような場合に効果が見込めるかの知見の授業も、当然含まれるのだろう。

 とは言え、効果については色々と言われているようだ。
 なぜか臨床試験で肯定的な報告は見つけられなかった。「耳にあるツボ」に限った報告では、例えば、
 慢性痛に悩む36人を2グループに分け、治療を受ける群とコントロール群とで比較したところ、有意性は確認できなかった。(4)
 とか、
 Cervical Somatic Pain(頸肩部の筋筋膜疼痛=肩こり……でいいのかな?)に悩む62人の男女を2グループに分け、通常の治療と、通常の治療と鍼治療を加えた二重盲検試験を行ったところ、有意差は確認できなかった。(5)
 などのものだ。
 ここまでの話なら、効果には疑惑は多分にあるけれど、加療行為に当たるとして規制のある技術職だと判断できる。
 これらの臨床試験には、どうやら鍼が使われているようで、微弱電流やパルスは使われていないようだ。パルスを用いた臨床試験は、今のところ見つけられずにいる。

 ところが『耳介療法』、つまり「耳にあるツボ」限定になると、話はかなり怪しくなる。
 『耳介療法』の提唱者は、1957年のフランスの神経科医ポール・ノジェ(Paul Nogier)で正しいようだ。ノジェは慢性痛に悩んでいた患者が、はり師の治療を受けて快癒したのを見て、鍼灸に興味を持ったらしい。そして研究を続けていくうちに、ヒトの耳介の形が逆さの胎児に似ていることから、耳介が人体の模倣であり、耳介を通じて様々な効果的な医療行為が行える、として『耳介療法』を開発したようだ。(6)(7)
 ……どこをどう突っ込めばいいのやら……。
 つまり何だ。
 犬の耳介は犬の退治に似ているし、猫の耳介は猫の退治に似ている……と。こういう事だな。
 耳介がそれ程に重要なら、ピアスの穴を開けるのは致命的な外傷になると思うのだけどね。なにせ貫通だ。
 それと胎児は普通、頭が下を向いているものだ。「耳の形が下向きの胎児の形に似ている」というのはおかしな表現でないかい?
 ……こんなところかな。

 好意的に受け止めるなら、この時点でのノジェは、鍼を使用する代替医療として語っていたようだ。電流やパルスなどに触れていた形跡はない。
 ……パルスって、どこから出てきた言葉よ?

 パルスを使っての『耳介療法』の出所はともかく、この方法を使っての施術者(という表現で良いのかな?)の免許を発行する国家資格は存在しない。
 ではどういうところがあるのか、と『耳介療法』で検索したところ、『日本遠赤療術学院・日本遠赤療術協会』のサイトが見つかった。
 この中に、『耳介療法士会』というのがある。受講費用90万円(消費税含まず)、28単位、受講日数のべ10日程。(8)
 ……はり師の受験資格を得るだけでも3年間の授業と単位が必要だというのに、受講費用はさておき何とまあお手軽な。
 このようなものと同列にされては、はり師やきゅう師の人たちはさぞかし迷惑なことだろう。

 ここまでくれば、『耳介療法』なるものが『似非科学(医療?)』であるという根拠としては十分だ。
 ところで『耳介療法』は英語圏では『Auriculotherapy(オリキュロセラピー)』と呼ばれるようだ。これは電流を流すタイプのもので、耳に鍼を刺すのは別に『Ear Acupuncture(イヤー・アキュパンクチュア)』と呼ぶらしい。
 とは言え、AuriculotherapyとEar Acupunctureを混同しているものも多々あるので、確実な住み分けが出来ているようではなさそうだ。

 最後に、「Auriculotherapyを採用した医療機器」は、今回調べた範囲では見つけられなかった、と報告しておく。


◎参考インターネット
1) Wikipedia 外耳
   http://bit.ly/1jDbWxB
2) 社団法人全日本鍼灸マッサージ師会
   http://www.zensin.or.jp/03_shikaku/shikaku.html
3) あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律:
   http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO217.html
4) Melzack R, Katz J. “Auriculotherapy fails to relieve chronic pain. A controlled crossover study.” JAMA 1984 February 24, 251(8): 1041-3:
   http://1.usa.gov/1jDc6oS
5) Ceccherelli F, Tortora P, et al, “The therapeutic efficacy of somatic acupuncture is not increased by auriculotherapy: a randomised, blind control study in cervical myofascial pain.” Complementary Therapy in Medicine, (2006 March 14 (1)): 47-52:
   http://1.usa.gov/1qIUMZo
6) オリキュロセラピー(耳介療法)
   http://homepage3.nifty.com/office-triumph/Auriculotherapy.html
7) Wikipedia: Auriculotherapy
   http://en.wikipedia.org/wiki/Auriculotherapy
8) 日本遠赤療術学院・日本遠赤療術協会
   http://www.e-ryoho.co.jp/refarence/ref%20right.htm
posted by にわか旅人 at 21:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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