2006年07月23日

小腸の絨毛とおから(第12話)

 『ぴーかんバディ』第12話、2006年7月15日放送の『超お手軽!おからで上手にヤセる』から。
 料理教室で終始しそうなサブタイトルだ。
 それはともかく。
 おからは豆腐や豆乳を作る際に出る搾りかすで、悪く言ってしまえば産業廃棄物。大部分は焼却されて、一部が飼料に使われているだけらしい。どこかの展示会で出展していた『大豆協会』だか『豆腐協会』だかの人が、おからの消費量の低迷を嘆いていたな。
 最近は目にしないが、元々は食卓におかずとして並んでいるぐらいなのだから、食べられないものではない。カロリー量も少ないので、ダイエットには良い食材だろう。
 という事で、真面目に大豆とおからの講義をするのかと思いきや……
 毎度毎度な内容だったようだ。

===引用開始===
「人間が太ったりやせたりするのは腸の構造が大きく関わっている。その決め手のひとつが、小腸の内壁にある『絨毛(じゅうもう)』の大きさ。
 絨毛が大きくなると表面積が広くなってより多くの栄養分を吸収する。その余分な栄養分が太る原因」
武庫川女子大学 生活環境学部 福田 満教授

===ここまで===

 太ったりやせたりするのは、『摂取したカロリー量vs.消費したカロリー量』の関係が大きいと思ったが……この番組のスタッフが住む宇宙では、この説は通用しないようだ。
 小腸の表面積が大きくなれば、より確実に摂取した栄養分を吸収できるようになるのは当然だな。本来生物は「どれだけ効率よく養分を蓄積できるか」を、個体と言うか種の維持のテーマとして進化してきた面がある。過剰摂取した養分を蓄積する能力も、進化の過程で構築されてきた機能の一つだ。
 だから、「余分な栄養分が太る原因だ」と判っているなら、余分な栄養を摂らなければいいだけの事だ。なぜここで、絨毛の長短による小腸の表面積の話が入るのか、意味がわからない。
 ……どうやら番組の宇宙では、「摂取する栄養分を調節する」より、「絨毛の長さを調節する」方がダイエットには簡単かつ効果的らしい。どうやって摂取するカロリーを減らし、消費するカロリーを増やすかに腐心する俺の住む宇宙とは、次元がかけ離れているな。

===引用開始===
「絨毛(じゅうもう)」とは?
体に必要な栄養を吸収する役割をする、小腸の内壁に生えている毛のようなもの。その数はおよそ1千万本。絨毛の大きさには個人差があります。
絨毛が長い人は、多くの栄養素を体に摂り入れている可能性があるので、同じ量を食べても絨毛が短い人と比べて太りやすいという説があるのです。
===ここまで===

 絨毛の長い短いよりも、消費カロリー量の個人差の大きさの方が、太りやすさの原因だと思うのだが……別宇宙の存在には通じないか。

===引用開始===
絨毛を小さくするのに有効なものは・・・?
「大きくなった絨毛を小さくしてくれる有効な成分は大豆サポニン」
武庫川女子大学 生活環境学部 福田 満教授
 
※あくまで一つの学説です
===ここまで===

 学説の一つとして、受け止めることにしよう。

===引用開始===
論文「肥満マウスにおける大豆サポニンの効果」
前熊本県立大教授の奥田 拓道医学博士(専攻 生化学)らの実験によるもの。
実験の概要は…
中公新書「和漢薬!)生化学が解く薬と健康!)」(中央公論社)に記載。
「大豆サポニンと食物繊維を一緒に摂った方が絨毛を小さくする効果が高まる。大豆サポニンと食物繊維を豊富に含むものは、おから」
武庫川女子大学 生活環境学部 福田 満教授

===ここまで===

 番組スタッフはきちんと文献の紹介すらできないらしい。タイトルくらい間違えずに書けよ……。
 『和漢薬―生化学が解く薬と健康』(奥田拓道、中央公論社、ISBN4121008596)
     http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4121008596.html
 さて、この本のどこが『論文』なのだろう。どこかの学会の要項集でなければ、定評のある科学誌でもない。この奥田拓道という人物の書いた1冊の書物というだけだ。内容の科学的信憑性は、読むまでもなくかなり低い。
 おまけに、出版は1987年11月と、約20年前の事だ。
 出典が20年前だからと軽視するつもりはないが、どう見ても内容を査読・検証する機能のある出版社ではないし、この間に追試の研究がなされた様子もない。学説の一つとしても、説の信憑性はかなり疑わしいとして良さそうだ。
 ……ところで福田満氏、20年近い前の本を持ち出してきて、知識は常に最新のものに更新されているのだろうな?

 そして最後に、「おから」の説明と料理5点の紹介。
 ……小腸の絨毛の長短で番組進めておきながら、ここに来て低カロリーダイエットの内容にすり替えか。

 余談だが、実は「おからクッキー」というものを、どこかの展示会に行った時に触発されてしまい、1ヶ月ほど前に自作してみた。しかし小麦粉の買い足しを忘れていたわ、砂糖を入れ忘れるわと、「おいしい」とはかなり離れた出来。
 番組の内容はともかく、レシピはまともそうなので、機会があれば再挑戦してみるか。でもバターと卵を使う辺り、コレステロール値は高くつきそうだ。

 ……素直に料理だけ案内すればまともそうなのに、どうして訳のわからない『学説』を持ち出してくるのかなぁ? 意図的に信頼性を失う番組作りをしているように思えるぞ。
 番組枠が中味に対して大きすぎるから、こういうおかしな番組になるのでは、とちょっと考えてしまう。
posted by にわか旅人 at 15:14| Comment(1) | TrackBack(0) | ぴーかんバディ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。理論的で素敵ですね。激しく同意。
Posted by sayang at 2006年08月13日 00:23
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