商売のネタ探しか自己啓発か、上司があるセミナーに参加した。
それだけならどうでもいい話なのだが、「ためになる良い話だった」と感心した内容が似非科学だったりすると、目も当てられない。
今回はそんな話。
上司の話から出た講師の名前と日程から判断するに、上司が出席したセミナーはこれのようだ。
サン・アスリート株式会社『究極の予防医学。健康志向の方!「食育」「栄養学」「ボディケア」を学ぶ方 必見です!』2009年10月2日
http://www.sunathlete.com/comming/post_53.html
===引用開始===
今回、人間の基礎の基礎である、継続的な健康(未病)を維持するために
予防医学の第一人者であります。
あの堀口医院の理事長(前院長)であります医師
堀口 裕(ひろし) 先生をお招きいたします。
(中略)
堀口先生は
病気には成らないで欲しい・・・いつもそういわれております。
色々な方向を研究された結果
マイナスイオンが人体の細胞を活性化させた結果に
免疫力向上や血行改善を促進してゆくと言われます。
===ここまで===
……よりにもよって、と言うか、今さら『マイナスイオン』かよ!?
上司の理数系知識が低いのは前々から知っていたが、ここまで酷いとは予想外だった。
……いや。
「乳酸菌発酵の食品なのに、殺菌したら乳酸菌を入れた意味がなくなるじゃないか! なんでこんな事をするんだ! 理解できない?!」
と某乳酸菌発酵食品を批判していたくらいだから、予想してしかるべきだったかもしれない。
……殺菌すると、菌に分解・生成された化合物が元の物質に戻ると思っていたらしい……それ何て言う『ゴールド・エクスペリエンス』? そもそも乳酸菌のほとんどは胃で殺菌されるのに、それすら知らないっていうのが……。
こんな上司が『陽イオン』『陰イオン』の単語を知るはずもなく……と言うとバカにしている感があるが、本当に知らなかったのだから仕方ない……「『マイナスイオン』は化学で使う単語ではありませんよ」と俺が説明をしたら、無視……どころか肉体言語込みで逆ギレされた。
肉体言語の詳細はエントリの主旨から逸れるので省くとして、マイナスイオンの健康・医療効果で上司ががなり立てた内容は、似非科学・マルチ商法批判サイトや掲示板で見かける信者の発言とそっくりだ。
……実際はチンピラごろつきの口調で罵倒されたのだが、見苦しいので変えてある。
曰く。
・「マイナスイオンがインチキなら、医療機関で使うはずがない。医療機器として認可されているのだから、マイナスイオンには効果がある」
・「堀口医院その他、マイナスイオン治療器を使っている病院では、患者が列を作って待っている。それ程効果のある治療法だ。疑うなら病院に行って見てくればいい」
・「大手メーカーもマイナスイオンの装置を作っている。存在しないと言うなら、大手メーカーが作るはずない」
・「マイナスイオンが存在しないと言うなら、存在しないことを証明しろ。できたらノーベル賞ものだ」
etc. etc…
こうも見事にはまられると、
「たった1回のセミナーで、ここまで洗脳されるか! 恐るべし、洗脳セミナー!!」
……と、笑えない冗談を飛ばすしかない。
さて。
どうすれば上司に、マイナスイオンに根拠はないと理解させられるか?
カルトやマルチ商法にはまった人への対処としてよく言われているのは、
1. 話は聞いても相手(会員になる・セミナー出席・商品の購入)はしない。
2. 共通の友人(がいれば)に、注意するよう連絡を入れる。
3. 当人の熱が冷めて元に戻ったら、受け入れる心構えをしておく。
……だったかな?
つまり今は放置して、遠巻きに「これっておかしくないか?」と自覚するのを待つしかない訳だ。
ところが、だ。
不可抗力とは言えかなり悪い選択をしてしまった。
マイナスイオン批判の資料を見られてしまったのだな。
菊池誠『「ニセ科学」入門』大阪大学サイバーメディアセンター
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/
nisekagaku_nyumon.html
資料としてプリントアウトしたものを机の上に置いておいたら、それを上司に見られてしまった。不本意ながら、結果としては否定する資料を見たのと同じ。
……タイトルだけで上司はブチ切れ、肉体言語に走ったから中味は読んでいないと思う。
こっちを見られたら、もっと大変だったかもしれない。
菊池誠『科学者はマイナス・イオンブームの何に困惑させられたのか』大阪大学サイバーメディアセンター
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/texts/minus_ion.pdf
『ニセ科学』YouTube
『まん延するニセ科学』YouTube
そもそも中学生レベルの理科でも、マイナスイオンの説明がおかしいのは十分理解できるはずだ。
ところが、
「堀口先生は工学部を卒業してから、医学部に入り直して医者になった。中学生レベルの理科の知識しかないくせに、マイナスイオンの研究を長年続けている先生に難癖をつけるのか」
と意味不明な理由を付けたのが上司だ。
……いえいえ。中学生レベルの科学を求められているのは貴方です。
さてさて。
俺がマイナスイオンを批判したにあたり、怒り心頭の上司が難問……というかイチャモン・難癖を吹っかけてきた。
曰く。
・堀口先生は何年もマイナスイオンを研究し、装置を開発してきた。だからお前はそれを否定する研究をして「マイナスイオンが存在しない」という論文を提出しろ。
・「(中高生の)教科書に書いてある」「○○○からの引用」などの根拠は、間違えている恐れがあるから使うな。自分で実験・研究した内容だけで語れ。
etc. etc….。
「悪魔の証明」を求めるのは良くある話だが、教科書まで否定して「実験で証明しろ」と来たのは新しい。
……「何百何千人が追試を行って、少しずつ修正した内容をまとめたのが教科書なのに、それを否定するなんてどこの原始人?」「厨ニDQN乙」と、どこかの巨大掲示板に書くような台詞が浮かんだのは秘密だ。
「何一つ証明できないくせに、何年も研究している人を批判するとは、一体何様のつもりだ!」
の一文は、上記「曰く」で並べた文言の後に必ず付いてきている。
……前後がつながらないのはお約束……? 証明するのはこっちではなくて、「先にマイナスイオンの健康効果を堀口先生する方が先」だと言ったら、肉体言語を食らった。
今回が初めてではないものの、この上司、つくづく科学リテラシーを持ち合わせていないのだな、と絶望的な気持ちになった。
……まぁ、職場では研究・開発の人が呆れ返る科学の基礎を平気で質問する人物なので、科学リテラシー云々を話すだけ無駄な相手だ。
このままでは愚痴で終わってしまうので、「否定できるならしてみろ」と、上司がセミナーかどこかでもらってきた資料を並べてみる。上司によると、「マイナスイオンを証明する」資料らしい。
……否定ではなくて、科学的に「おかしい」と指摘しただけなんだけどね。
(1) 『電子の基礎知識』カンゲンイオン医学研究会資料
(2) 堀口昇、堀口裕、二見英揚、植松美紀、仁木麻早、佐藤有『赤血球細胞内検査・血液検査に基づく新陳代謝検査法の開発と「新陳代謝スケール」の作成』医療と検査機器・試薬 30(3):
299-314, 2007.
(3) 堀口昇、時代強、堀口裕『HIV/AIDSに対する還元電子治療成績』化学療法の領域、2008年10月号別冊(原著:Antibiotics & Chemotherapy, 24 (10): 93-103, 2008)
(4) 堀口裕『心拍スペクトル解析から検討したマイナスイオンの自律神経への影響』全国マイナスイオン医学会誌、4 (1): 40-44, 2000.
(5) 『カンゲンイオンの効果 いつまでも健康でいたい』カンゲンイオン医学研究会、2005. 3-4
(6) カンゲンイオン医学会誌、7 (7): 2004.
(7) 『Miエナジー ET-21』取扱説明書
(8) 『Miエナジー使用マニュアル』カンゲンイオン医学研究会、2005. 2-3.
(1)の『電子の基礎知識』については、以前『水商売ウォッチング』の掲示板で触れた事がある。
……よそ様の掲示板なので手加減していたのと、書き込みに不慣れだった時分なので、今読み返すと全身を掻き毟りたくなる。言いたかったことの半分も語れていない。
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=19152&
form=tree
(2)〜(8)の文献・資料については、機会を見つけてまとめられればと思う……のだけど、エントリのタイトル通り「いまさら?」感がしないでもない。
例えば(2)の『赤血球細胞内検査(以下略)』文献では、
「この検査法は『人の病気は細胞に起こり、細胞の酸性・酸化の亢進が正常なエネルギー産生を阻害する』という考え方に基づいている」
と冒頭で断っているくらいダメダメなものだ。中味はまともに試験したようなのに、出だしから科学論文じゃないって。
……後の資料も推して知るべし。
さてさてさて。
職場であれば、上司がマイナスイオン商品を取り扱いたいと稟議を出したところで、上層部で止められる公算が大きい。被害があるとすれば、直下の俺が八つ当たりされる程度だろう。
しかし俺が問題と感じるのは、上司が自称(裏を取るつもりはない)するに、上司は町内会会長と、中学生の野球チーム(全国大会出場経験有り)の監督をしている、というものだ。
『水からの伝言』みたいに、おかしな経路で教育に入っていかないか。それが心配だ。
……マイナスイオンはとっくに社会に溶け込んでいる、という異論は認める。
2009年11月26日
この記事へのトラックバック


こりゃ逆に動画を見せた方が良いと思うなぁ、権威に盲目になってるだけなんだから権威に否定して貰えばいい(´ー`)
あと肉体言語を繰り出されたらそのまま診断書貰って精神的に追い込まれたと会社を訴えようぜ(´ー`)労務問題にしてやろう
そして、セルミ医療器は業者一覧にも載っていません。他の製造業者なのかも知れませんけれど、一応参考までに。
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/whatsnew/companylist/companyframe.html
で、この番号でgoogle検索をかけると、電位治療器基準案というページが見付かりました。
http://docs.google.com/viewer?a=v&q=cache:zsrrctKCU3oJ:search.e-gov.go.jp/servlet/Public%3FCLASSNAME%3DPcm1030%26btnDownload%3Dyes%26hdnSeqno%3D0000011930+21500BZZ00602000&hl=ja&gl=jp&pid=bl&srcid=ADGEESiZr3Pe15zm7mti1VCExPPlu0-GPlie0yEcV7_4phBSzoHHNJqOxOTKZuJ1vsO8uDDWTVUPOxNxU-HkwTtOzQ-ssEmcv-if6DAG8n_o-m3p1x0v33iOrkpoEsluyXmVDCdIVCI7&sig=AHIEtbQCy-yx0LH3Fm6ld1uvpk6gXceaWw
付帯的な機能リスト 機能名称:出力チャンネル数 機能の定義:出力回路数
機器そのものの承認ではなく、あくまで機能のごく一部に過ぎない模様ですね。
しかも、検索結果からはこの番号で日本で医療機器としての承認を受けたという触れ込みで中国に進出しているらしい事が伺えます。
セルミ医療器は薬事法違反で業務停止命令を受けた前科持ちの企業ですけれど、更に規模を拡大して再犯に及んでいるとは・・・
これ、まかり間違って会社が販売に手を出して医療機関に流してしまうと、薬事法違反で取り締まられた場合に堀口一族もろとも会社が社会的制裁意を受ける危険性がありますよね。
また、セルミ医療器(株)は第二種医療機器製造販売業の許可を取得しており、セルミ医療器(株)第一工場は医療機器製造業の許可を取得しています。
監督権者である香川県は何をしているやら・・・。
スミレと申します。
私は現在千葉県のマリヤクリニック(柏崎良子医師)の下で
栄養療法( 分子整合医学 )の治療をやっている者です。
重度の低血糖症があり食事や栄養療法で治していく方針で、
経過を見ながら信じて励んでいます。
あの、、、少し質問があります!
お手数ですがどうか教えて下さい!
実は友達が“ ナチュラルクリニック ”の事についてこの前に私に聞いてきました。
ここのクリニックの神津先生やあのサプリメントレシチンについて
です。
彼女は神津先生は正論的でこのサプリメント(レシチン)も効果があり、良さそうだからここで治療をしたいと言いました。
私の方もこのクリニックに関しては全く知らないし、マリヤクリニックの方もまだ治療中だから勧めることは出来ません。
どうかナチュラルクリニックについて教えてくれないでしょうか?
どうかお願いします! ( ペコリ )
それでは。。。
セルミは50億も金を集めトンズラしかけてます。
現社長の島田豊慈は悪党です。
セルミは50億も金を集めトンズラしかけてます。
現社長の島田豊慈は悪党です。
セルミは50億も金を集めトンズラしかけてます。
現社長の島田豊慈は悪党です。
http://nagoya.zunou.biz/teachers/mouri.html