2009年08月23日

ゼロ(零)磁場

 地殻変動による断層同士がぶつかり合う事で互いの磁気を打ち消し、磁気が低くなっている土地がある。そのような土地はエネルギーが低いと思われがちだが、ある特殊なエネルギーが形成・蓄積されている。
 古来より聖地、あるいは癒しの地として知られる場所がそれであり、有名な場所ではフランスのルルド、中国の蓮華山、日本なら長野県の分抗峠が該当する。それらの土地のエネルギーが蓄えられた水が、「奇蹟の水」「神秘の水」として知られるのは周知の通りである。
 この癒しのエネルギーを蓄えている土地を、磁気の低い(あるいは無い)事から『ゼロ磁場』と言う。


 「蓮華山やルルド地方に断層なんかあるのか?」というのが俺の疑問だったりする。
 しかし『ゼロ磁場』とそこの水の奇蹟的な効果を信じる信者は、疑問を抱いたりしない。
 ……カルトは教えを疑う事を禁じるようだし。

 本人が宗教だと理解して一人細々と信仰するなら放っておいても害はないが、市などの自治体がさも真実のように取り上げるのは問題だろ?

 長野県伊那市のHPより。
   『分杭峠(気場)』2007年4月27日
     http://www.inacity.jp/view.rbz?nd=95&of=1&ik=1&pnp=38&pnp=
76&pnp=95&cd=157

===引用開始(赤色強調は当方による)===
☆☆ ゼロ磁場(気場とは?) ☆☆

【断層断面図ゼロ零磁場(断層)の機能】

 分杭峠は中央構造線という大断層の上にあります。断層には地表面のズレとしての段差並びにゼロ零磁場があり、人間に例えると皮膚の経絡(けいらく)・経穴(つぼ)と同様に気の通る道並びに気の出口・入口であると考えることが出来ます
 断層の両側から押し合う力によって、断層には全般的にエネルギーの蓄積があり、また局部の突出部にはエネルギーのないゼロに近い場所(零場)もあり得ると推定出来ます。零は文字どおり「なにも無い、零」でありますが、(+)回転と(-)回転が一対になった素粒子状のスピン対(気)は零にならず、逆に零場に次第に蓄積される傾向があると判断できます
 断層付近には、放射線の強い場所や地磁気変化の著しい場所があります。実験によると、サイ(気)はラジウム等放射性物質原子の原子核内の不安定な中性子に直接働きかけて、y線などのエネルギーを放出して、より安定的なラドン等になる(ラジウム崩壊)性質があります。
 気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています。ラドン温泉などとして知られる低線量放射線は、免疫の機能を高め、自然治癒力を増進させるもので、健康に良いと言われています
===ここまで===

 『ゼロ零磁場』と『サイ(気)』について説明しているらしいのだが、何度読み返しても意味不明だ。
 ……「考えることが出来ます」「推定出来ます」「判断できます」「考えられています」と、歯切れの悪い説明しかできない事は理解した。

 スピンに触れているから、つい『ゼロ零磁場』とは原子核のスピン(核磁気モーメント、核スピン)の事かと誤解しそうだが、「スピン対は零にならない」「対は零場に蓄積される」で意味が判らなくなる。
 と言うか、真面目に物理化学を勉強している人なら、鼻で笑う与太話だろ、これ。俺は笑えないが。
 ……「零場」なんて単語はないし、スピン対が「気」のはずもない。「蓄積」されるのはゴミデータとデータ取り(の準備)に費やす時間と、無駄になる紙の束ぐらいのものだ。

 更に意味不明なのが、「実験によると、サイ(気)は放射性元素の不安定な中性子に働きかける」の下りだ。

 どういう実験で「気」を確認したのか、と初歩的にツッコむならば、だ。
 「気」によって、半減期が短縮されたのを確認したと見るべきだろうな、うん。物理化学だけでなく、地質学や考古学あたりの年代測定に半減期を用いる学問にも影響が出るから、ぜひとも論文にまとめて提出してもらいたいものだ。
 ……放射線治療後にも使えるな。医療にも大貢献だ。こんなネットの一角で実験で確認したなんて言っている場合じゃないぞ。

 放射性元素の中性子は、不安定でも何でもない。
 原子核での陽子と中性子の比率が歪なために中性子が飛び出し、原子番号の低い元素になるという話であって、中性子が何か変なエネルギーを出して、陽子・中性子の数も変わらずに安定した元素なり同位体になる訳ではない。
 ……比率が歪というのも正確な表現でないので心苦しいところだ。

 「気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています」というのも意味が判らない。
 ……意味が判らないと、何回言わせたいのだろう?

 不安定な物質を「安定」させているのに、どうして「崩壊」するのさ? 放射線のある温泉が健康に良いような話は時々耳にするけど、それが「気」の起こす「異常現象」なのか?
 ……「気」が異常の原因なら、健康に良いというのと矛盾するだろ?

 軽くツッコミを入れてみたものの、『ゼロ零磁場』『サイ(気)』とある時点で、似非科学なのは述べるまでもない。

 これがどこかの企業のHPならまだしも(それでもネタとしての需要はある)、市がHPに堂々と載せているのだから、伊那市が他にも変なものに手を出していないか、ちょっとどころではなく酷く心配になった。
 ……ざっと見た限り、EM菌入りの団子を川に投げ入れる活動や、「ありがとう」と声をかけて水質の改善を図るとか、波動転写器で分杭峠の「気」を転写した水を販売する、とかはしていないようだ。


 いや、甘かった。
 市が販売しているのではないのが幸い(?)、『ゼロ磁場の秘水』と名前で既に販売されている。
   零磁場ミネラル株式会社HP
     http://zerojiba.jp/

 この企業は波動転写器を使った水は販していないようだ。
 ……しかし「気」やら「スピリチュアル」やらの怪しい単語の数は、伊那市のHPの比ではない。

 勿論、波動信者が目を付けないはずがない。
   分杭峠(ぶんぐいとうげ)ゼロ磁場の情報サイト
     http://bungui.fineup.net/

 管轄(?)の市が「気」やら「ゼロ零磁場」なる似非科学をHPに載せているのは、似非科学・オカルト信者にどう映っているのだろう?
 「市がHPに掲載しているのだから、ゼロ磁場水と気と波動は科学的に正しいと認められたのだ」かな?


◎参考◎
 ゼロ磁場ショップ〜イヤシロチ〜
   http://www.honmono-ariake.com/
 NMR超基礎編
   http://www.chem-station.com/yukitopics/nmr-kiso.htm
 Wikipedia 『放射性物質』
   http://xurl.jp/1t1a
 Wikipedia 『同位体』
   http://xurl.jp/2t1a
posted by にわか旅人 at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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