2009年05月19日

似非科学でごきげん? なクリニック

 ちょいと久し振りに『健康産業流通新聞』の「代替医療の現場から」。
 2009年3月28日と古い記事だけれど、90回目を数えるこのコラムに登場した人物は「三番町ごきげんクリニック」の院長、澤登雅一(さわのぼり・まさかず)医学博士だ。

   三番町ごきげんクリニックHP『院長プロフィール』より
     http://www.kenko.org/about_clinic/profile.html
===引用開始===
医学博士
東海大学医学部血液腫瘍内科非常勤講師
日本内科学会認定内科専門医
日本血液学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定
日本抗加齢医学会専門医
米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医
日本医師会認定産業医
1992年、東京慈恵会医科大学卒業。
血液内科医として、日本赤十字社医療センターにて14年間勤務。
2005年より三番町ごきげんクリニック院長。
===ここまで===

 プロフィールを眺める限り、素人目には1点を除けばかなりまともに見える。
 しかしHPを見れば明らかなように、「三番町ごきげんクリニック」は代替医療専門のクリニックだし、「米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医」という肩書きで、全てを台無しにしてしまった印象がある。
 ……キレーション治療に効果がない事は別のエントリで以前書いた。

 あらかじめ断っておくと、『米国先端医療学会』などとHPで銘打っていても、ACAMはAmerican College for Advancement in Medicineの略で、ゲーリー・ゴードン(Garry Gordon)博士が設立したNPOだ。正式な学会ですらない。
 ACAMは既存の医療をほぼ全面的に否定し、CAM(Complementally Alternative Medicine、代替医療)を推進している組織でもある。
 ……『キレーション療法』で調べると、Garry Gordonの名前がかなり出てくるので、ACAMはキレーション療法推奨で一番手を担っている組織と考えても良いだろう。

 しかもACAMは、キレーション療法に科学的な根拠はなく、「キレーション療法に効果があるような広告」は行わないと、1998年にFederal Trade Commission(FTC、米連邦取引委員会)と和解した経歴も持つ。

Federal Trade Commission “Medical Association Settles False Advertising Charges Over Promotion of "Chelation Therapy" December 8, 1998.
   http://www.quackwatch.org/02ConsumerProtection/ftcchelation.html
(Quackwatch のページより)
===引用開始===
The American College for Advancement in Medicine (ACAM) has agreed to settle Federal Trade Commission charges that it made unsubstantiated and false advertising claims that non-surgical, EDTA "chelation therapy" is effective in treating atherosclerosis, and that the effectiveness of the therapy has been proven by scientific studies.

米国先端医療学会(ACAM)は、アテローム性動脈硬化症の治療効果に、手術を用いないEDTA『キレーション療法』に科学的な研究で効果が証明されたかのような無根拠かつ虚偽の広告を今後行わないと、米連邦取引委員会との間で和解をした。
===ここまで===

 澤登院長がこの事を知っていて、キレーション療法を薦めているのであれば悪辣だし、知らなければ許されるというレベルの話ではない……と思うのは俺の偏見。
 ……ただし広告規制はアメリカの話で、日本は無関係だと言われればそれまで。

 以前のキレーション療法のエントリで色々と調べていた時に、このクリニックと澤登院長にも突き当たっていたので、俺的に「怪しい人物」との先入観がついているのは認める。
 その上で、話を記事に戻す。記事からの引用部は青字にする。

 私のクリニックでは大きく3つのテーマを掲げています。ひとつは血管、2番は体のさびつき(酸化)、3番は栄養バランスです。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす粥状動脈硬化は血管にコレステロールなどがたまって動脈が狭窄し、血管が詰まりやすくなった状態です。

 血管にものが詰まって動脈が狭まり動脈硬化につながるあたりは、俺は専門家ではないので断言はできないけれど、正しいと思われる。
 ……日本赤十字社で血液の専門家として14年勤務していて、それでデタラメを並べるはずないだろう。……という考えからだったのだけれど、某内視鏡の医学博士が専門分野でデタラメを並べていたのを思い出したら、自信がなくなった。

 体がさびつく(酸化する)と老化が進むことはすでに科学的に十分認められています。また、ほとんどの病気の間接的あるいは直接的な原因となることもわかっています。

 「身体の酸化=老化」の図式は、似非科学・似非健康関係のよくあるパターン。「酸化=老化」の例として、新しい鉄釘と赤錆の浮いた鉄釘との比較写真を時々見かける。

 ちょっと考えてみよう。
 ヒトの身体は鉄(Fe)でできているか? 答えはNo。Yesだと思うなら、亜鉛を身体に巻くなり、微弱電流を常時流し続けるなり、pHが10かそこらの塩基性水溶液に漬かっていればよろしい。
 そもそも鉄を例に出して同列に語る自体間違えている。
 ……生命体には新陳代謝もあり、細胞は常に更新されている。この釘に浮いたサビの与太話を信じるヒトは、釘にも新陳代謝があると考えているのか、自分には新陳代謝がないと考えているのか、一体どちらなのだろう?

 ところで、細胞の酸化と老化を比較したデータが出ているとは知らなかったな。その論文をぜひ教えてほしい。

 3番目の栄養バランスに関して今大きな問題は、土壌枯れや農薬、化学肥料などで野菜や果物に含まれる栄養素が以前に比べ非常に少なくなっていることです。例えば50年前と今とを比較すると、ニンジン1本に含まれるビタミンA量は約10分の1に減っています。私たちは1日に食品添加物を1円玉1枚程度の量をとっているといわれます。食品添加物を体内で処理するにはビタミンB群などが多く必要です。つまり、私たちは昔と同じ量を食べてはいては、もはや栄養は不十分だということです。ところが、実際に私たちにどんな栄養素が足りないかは通常の検診ではわかりません。

 ……Don’t fix it unless it is broken. 壊れていないものは直すな。このフレーズが浮かんだ。
 この辺の説明は、澤登氏の妄想全開という感じだな。

 生鮮食品の栄養素が50年程昔と比べて10分の1に減っている、という話は良く聞く。ただしサプリメントの販売を目的とするサイトや提灯記事でだが。もう少し言えば、栄養素の減少の話は、根拠のないでまかせだ。

 栄養素減少の与太話は、俺の調べた範囲では、1936年6月の『Cosmopolitan』の記事が出所のようだ。
“’Dead Doctors’ doesn't die.” National Council Against Health Fraud Newsletter, Jan/Feb 1998.
   http://www.ncahf.org/nl/1998/1-2.html
===引用開始===
It turns out that the "document" is nothing more than the reprinting of a highly speculative article about a passing fad written by a Florida farmer in the June, 1936, issue of Cosmopolitan magazine as requested by Florida's Senator Fletcher.

その『記事』は、Fletcherフロリダ州知事の要請を受けたフロリダ州の農家が、1936年6月のCosmopolitanに掲載した流行に追従した記事であり、正確性の非常に低い記事以外の何物でもない。
===ここまで===

 「食品添加物を分解するのにビタミンB群がうんたら〜」の下りは初耳、かつ意味不明。
 ……分解・吸収されなければ、そのまま体外に排出されるので、なぜ体内で一生懸命分解しなくてはならないのだろう? 食物繊維などの『難消化性』のものは、分解されずに排出されるのを知らない……とか?

 さて。
 出だしから疑問満載のこの3つのテーマを実践するために、「ごきげんクリニック」では点滴療法・サプリメント療法が主軸として行われている。その代表的なものが、『キレーション療法』と『ビタミンC大量点滴療法』だ。

 キレーション療法は既に取り上げているので、ここでは省略する。
 『ビタミンC大量点滴療法』は、分子矯正医学(Orthomolecular Therapy)や『メガビタミン』で知られる似非科学だ。

私がビタミンC大量点滴療法を知ったのは、2005年にアメリカで開催されたACAM(アメリカ先端医療学会)でした。(中略)私はずっとガンの医療に従事していたので、ビタミンC大量点滴療法の発表を聞いたとき、ガンの標準的治療法の欠点を補う治療法だと直感しました。

 ここで出てきたACAM。
 ……直感で新規の医療方法を採用されては困る。せめて査読のある論文で調査してほしい。そう思うのは俺だけ?

優先すべきは標準的治療です。なぜならばビタミンC大量点滴療法よりも標準的治療のほうが、治療効果に対する科学的根拠が高いことは事実だからです。私のクリニックでは、ガンが進行して標準的治療では難しいという方や有効な治療法がないという方を除いては、標準的治療法との併用を原則としています。

 まともな医療も提供しているのか。
 うがった見方をすれば、「効果のないビタミンCの点滴だけで、医療ネグレクトで訴訟を起こされるのを防ぐため」とも取れる。
 ……これで治る患者が出たら、標準的な治療も同時に行っていた事には触れないで、「ビタミンC大量点適法でガンが治りました」と大きく宣伝するのかな?

 私自身はクリニックでガンの患者さんにビタミンC大量点滴療法を提供するだけでなく、所属する東海大学血液腫瘍内科で、再発悪性リンパ腫に対するビタミンC大量点滴療法の第一相臨床試験を行っています。

 体験談の収集ではなく、きちんとした方法で治験を集めているらしい。
 それならそれで良いのだけれど、果たして有意義なデータが蓄積できるのやら。
 ……肯定的なデータだけでなくて、「○○人を対象に試験を行った。有意差は確認できなかった」の否定的なデータも『有意義』に入れるのは言わずもがな。

   Wikipedia『治験』
     http://xurl.jp/jiq
===引用開始===
第T相試験(フェーズ T)
自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討することを主な目的とした探索的試験である。(中略)抗がん剤などの投与自体に軽い手術や長期間の経過観察や予め副作用が予想されるものは、外科的に治療の終わった患者(表面的には健常者)に対して、補助化学療法としての試験を行うことがある。
===ここまで===

 学問の自由なので、研究すること自体の否定はしない。ただし結果が良好であれ空振りであれ、ちゃんと論文にまとめて提出してほしい。
 ……どこかの講演会で「かれこれこういう研究をしています。良好な結果が出ています」だけの話だけで終わらせずに、さ。

 さてさて。
 インタビューによれば「三番町ごきげんクリニック」で提供している医療にもまともな医療はあるようだが、HPを見る限りでは「かなり怪しい」治療法を色々と提供している「怪しいクリニック」という印象しかない。

 困ったことに、この手の怪しい医療は、なぜかメディアへの露出が多いのだよな。いわゆる『業界紙』の『健康産業流通新聞』以外では、2008年3月25日にはTBSの『これが世界のスーパードクター8 !』にも出演したらしい。
     http://tvtopic.goo.ne.jp/program/77/12117/168846/0/0/0/index.html

 放送は見ていないので内容については触れないが、ガンや循環器系の病気に悩むヒトがこれを見たら、あっさり引っかかってしまうのではないかと不安を感じる。

 「効果があるかどうかは判らないけれど、試してみないよりはマシ」と考えるのならば、それはそのヒトの自由なので、『キレーション療法』でも『ビタミンC大量点滴療法』でも受ければ良いだろう。
 だけど効果がないと報告は上げられている訳で……。
 ……そんな似非医療にお金を注ぎ込むよりも、高めのレストランで食事するなり旅行するなり、別の事に費やす方が精神的に良いと思うのだが、どうだろう?
posted by にわか旅人 at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月22日

今更ながら似非科学批判批判

 かれこれ1年近くになるのかな?
 一時期、似非科学を批判するあちこちのブログで、『似非科学批判批判』が話題になった。
 「一見科学的な説明に見えるが、突き詰めれば既存の科学とは相容れない(もしくはあからさまに矛盾している)説明をしている商品や理論」を、「いや、その説明はおかしい。既存の科学では、かれこれこのように証明されている」と批判するのを 似 非 科 学 批 判とするなら、『 似 非 科 学 批 判 批 判 』は「似非科学を批判する行為を批判する行為」と言えるだろう。

 文末に「だろう」と付けたのは、似非科学批判批判について触れているブログをいくつか巡り、似非科学批判批判者のコメントを読んでもみたところ、俺の読解力と理解力の低さからか、「具体的に何を問題として、似非科学批判を批判しているのか」、俺には理解できないからだ。

 専門知識がある訳でもなく、『似非科学批判』の真似事しかできない俺の知能では、コメント欄での議論の深さと早さに参加する機が得られず、ROMするしかなかったのが実際で、ほとぼりが冷めてかなり経つ今なら、自分のブログでこそこそ書く程度であれば人目につかずに済むだろうとの希望的予測から、春を寝過ごしたカエルのタイミングで口を出してみる事にする。

 過去ログから。
 『健康産業新聞』が『似非科学批判批判』している記事に、俺なりにツッコミを入れたものだ。
   過去ログ『健康産業界の偽科学への主張?』2007年3月25日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36822643.html

 過去ログ内でも「何が言いたいのか判らない」と書いているし、改めて記事を読み直しても「で、何が言いたいの?」という疑問符が真っ先に出てくる。
 ……似非科学な商品とそれらを製造・販売する企業が多い健康業界だから、似非科学を支持するためにも『似非科学批判批判』な記事を書く責任がある、というのは判る。

 記事を書いた人物が、マイナスイオンや波動を似非科学と知っているのかどうか、は多分重要ではない。
 ……この新聞社の記者・元記者の何人かと面識があるが、あくまで会話の印象で語るのならば、科学・似非科学の区別がついていなさそう……ではあった。怪しい売り文句だと薄々感じていても、仕事だから仕方ないという諦観もあると思う。

 その記事の問題点は、既に当時にツッコミを入れているので、ここで蒸し返すつもりはない。しかし改めて『似非学批判批判』という観点で読み返すと、「似非科学を批判する人を批判する」側に観察できる独特の主張が見える。

===引用開始===
未科学を偽科学と批判するグループの、事を性急に断じてしまう考え方こそが、非科学的といわざるをえない。
   (中略)
要は科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる。してみれば、このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる。
===ここまで===

1. 似非科学批判批判の特徴 その1
 似非科学批判を一からげにして語るため、どの似非科学批判を批判しているのかが判らない。

 「未科学を偽科学と批判するグループ」というのが、一体どこのグループを指しているのかは知らない。まずそのようなグループの存在を俺は知らないし、巡回ルートにあるそれぞれのブログも、各自がめいめい勝手に似非科学批判を行っており、グループを構成などしていない。

 となれば、この記事で批判されている「未科学を偽科学と批判するグループ」というのは、記事を書いた本人(と、記事を掲載した新聞社の関係者ら)の妄想の中にのみ存在する対象であり、そのような妄想内のグループを批判するなど、競泳用のプールに釣り糸を垂らすぐらいに無意味だとしか、俺には表現のしようがない。
 ……勿論、俺がそういうグループの存在を知らないだけの可能性はある。

 俺からの視点で『似非科学批判を批判』する側は、「科学的に誤った情報を、科学と称して垂れ流している」という『問題点』の部分はすっ飛ばし、「似非科学だと批判されたから、批判し返す」という脊髄反射をしているように見える。
 ……批判を投げ返した先には誰もいないのだが、『似非科学批判批判』にとっては受け取る人のいる・いないは重要ではなく、むしろ「批判し返した」という事実が重要なようだ。

 批判の批判を受け取る相手がいないのだから、更なる反論があるはずもない。それをもって「このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる」と、勝手な勝利宣言をしている。
 ……壁に向かってぶつぶつ独り言を唱えるのなら、壁相手に勝利宣言するのが筋でないかい?

2. 似非科学批判批判の特徴 その2
 現段階では証明されていない『未科学』と、誤りと証明できる『似非科学』とを混同する。
 少なくとも俺の巡回ルートのブログで、『未科学』=『似非科学』(記事中では偽科学)と一緒くたにしている人はいないし、俺も一緒くたにしたエントリは書いていない……つもりだ。
 後の研究により証明・解明されるのを待つものを『未科学』とするならば、既に数多くの追試を経て証明されている『科学』と明らかに食い違う「科学めいた言説」を垂れ流しているのが『偽科学』『似非科学』として良い。

 具体例になるかな?
 水(H2O)は水素(H2)と酸素(O2)の化合物であり、溶媒として使用できるが、情報を記憶する媒体としては使用できない。この辺りは『科学』として認めてもらえるだろう。

 水に水素を溶かし、記憶力の低下したマウスに投与したところ、記憶力が回復した。これは過去ログでちょっと取り上げた内容だ。事の真偽はこれから行われるかもしれない追試で確認されると期待している。
 これは今後の研究結果を待つものなので、『未科学』と分類できるだろう。

 水に「ありがとう」など綺麗な言葉をかけると氷の結晶は綺麗になり、「ばかやろう」などの汚い言葉をかけると結晶は汚くなる。
 「水からの伝言」で有名(?)なセリフらしい。
 水が情報(この場合、言語)を理解する事はない。またどれだけ優秀な専門家が努力しても、水に記憶力があると証明する事もできない。ただ単に発言するだけなら構わないが、それをあたかも『科学』のように見せかけた実験を行い、結果の写真(何百枚もの写真から目的に適ったものを取捨選択)を出しているので、『似非科学』と分類できる。

 この事例2つをもって、全ての『未科学』と『似非科学』の違いを語れる訳ではないが、おおよその違いは理解できるかと思う。現在未科学とされているものが、後年『科学』となるか『似非科学』となるかは不明だが、『似非科学』が『科学』になる事はまずないと断言できるだろう。

 このように『未科学』と『似非科学』は似て非なるものなのだが、『似非科学批判批判者』の特徴の1つが、この2つを並べて同義に語っている事だ。
 「科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる」の部分に、それが表れている。

3. 似非科学批判批判の特徴 その3
 「似非科学でも、誰かに迷惑がかかる訳ではない/救われている人がいる」

4. 似非科学批判批判の特徴 その4
 「こんな似非科学、基礎教養程度の知識があれば引っかかる人はいない。引っかかる方の自己責任だ」

 #3と#4の主張も時々見かける気がするのだけれど、今回取り上げた過去ログとは関係なさそうなので、別の機会に回す。いつになるかは判らない。
 ……まだ考えがまとまっていないし。
posted by にわか旅人 at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月25日

秋葉原の献血センター

 ちょいと時間が経ってしまったけれど。

   矢吹美貴『メイドさんいる?アキバ献血ルーム支える男性リピーター』読売新聞、2009年2月2日
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000029-yom-soci(リンク切れ)
===全文掲載===
 献血者数は近年、全国的に減少が続き、特に冬場は落ち込む。
 そんな中、東京・千代田区のJR秋葉原駅近くにある「アキバ献血ルーム」が盛況だ。開所以来の3年間で、献血者数を1・5倍に伸ばす勢い。アキバの街に足しげく通う男性たちが熱心な「リピーター」となり、血液の需要を支えている。

 秋葉原電気街の中心部に立つオフィスビルの1階。木目調のテーブルと約30席のいすが並ぶ待合室は週末、献血を待つ人で満席になる。本棚はアキバらしく漫画本約800冊でぎっしり。これほどの数になるのは、献血者自身が寄贈してくれるからという。

 先月下旬、土曜日。漫画を開いて順番を待っていた千葉県船橋市の新聞販売店長、佐藤智一さん(29)は「ゲームを買うついでによく寄るんです」と笑顔。献血歴16回のうち13回がアキバルームでの献血だった。

 同ルームが開所したのは2005年6月。「すべてはあれから始まった」と東京都赤十字血液センターの矢沢幸雄広報係長(50)は振り返る。06年3月の1か月間、ルームの宣伝のため、近くのフットケアサロンの女性に来てもらい、献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。

 日本赤十字社本社には「品位がない」と不評の声もあったが、反響は大きく、ネットで知った男性たちが有志を募り、約60人がいっぺんにやってきたことも。メイドのサービスはその時だけだったが、今も「メイドさんは?」と訪ねて来る人がいるという。

 他の献血ルームでも手相やタロット占い、メンタルセラピーなどの無料イベントを行い、献血者を募っているが、アキバでは月1回、手相占いをするだけ。それでも、05年度に約2万2100人だった献血者は、06年度約3万人、07年度約3万4600人と増加。最近ではますます勢いがつき、昨年夏には採血ベッドと問診室を増設したほどだ。

 特徴は男性の比率の高さ。日赤によると、都内の献血者の男女比は6対4ほどで推移しているが、アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。200と400ミリ・リットルのうち、400を選ぶ人が91%(07年)を占め、都内平均を8ポイントも上回っている。買い物や旅行のついでに立ち寄る人が多く、献血者の住所は北海道から沖縄まで。全国でも著名な血液センターになった。

 2か月に1度、買い物に来る度に立ち寄るという群馬県太田市の男性会社員土岐操さん(35)は「人とかかわるのは苦手だけど、献血なら深くかかわらなくても社会貢献できるから」。週末ごとに開かれる声優やアイドルらの無料ライブを見に来る東京都江戸川区の男性会社員(29)は「午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。寝ているだけで良いことをした気分になれる」と話した。
===ここまで===

 秋葉原の献血センターと言えば、JR秋葉原駅とその周辺が改修されるより前、公園横のプレハブ小屋(だったっけ?)を『献血センター』と言っていた頃から、たまに立ち寄っていた。新旧のセンターで合わせて10回近く秋葉原で献血しているはず。
 だけど「足しげく」は通っていない。2008年は年末の1回しか献血に行っていないし、場所もなぜか池袋の献血センターだ。

>献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。
 2006年の3月頃は最初の採血の段階で一部の数字が悪く、センターに行っても献血できずにいたのだよなぁ……。
 ……メイドに誘われ、ふらふら中に入っていった記憶はある。残念ながらマッサージはなかった。

   過去ログ
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/19464693.html
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36732609.html

>特徴は男性の比率の高さ。(中略)アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。
 煩悩全開?
 でもまぁ、輸血用の血液はいつでもどこでも足りないようだし、献血自体悪い事ではないし、問題なし。
 ……献血をHIV他感染症のチェックに使う人は除外する。

>午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。
 何と言うか……秋葉原に来る人達の特徴を良く表しているなぁ、と感心。
 ……俺はイベントには行かないけどな。

 さて。
 昨年末は400mL献血だったので、次回献血ができるのは今年3月になってから。
 PCの周辺機器を買うかどうか迷い中だけど、秋葉原に行く事があったら、久々にここの献血センターにでも行ってみようかな?
posted by にわか旅人 at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月24日

『健康本の世界』が削除された模様

 怪しい団体や似非科学・似非健康本とその著者をかなりの数把握している事で、データベースとして重宝していた『健康本の世界』が、2009年2月22日頃に削除されてしまった……ようだ。2月21日では普通に開けたと記憶しているので、削除されたとすれば22日以降だろう。

   『健康本の世界』跡地
     http://khon.at.infoseek.co.jp/

 ……更新中で見えなくなっているだけかもしれないので、とりあえず「ようだ」としておく。

 『健康本の世界』との関連の有無は知らない。
 Wikipediaからはニセ勲章『ザンテ・聖デニス・ギリシャ勲章』の項目が、2009年2月15日から削除対象に上げられている。

   Wikipedia『ザンテ・聖デニス・ギリシャ勲章』
     http://xurl.jp/h0l

 削除の理由は、ソースとしたサイト(の1つがなぜかこのブログ)の中立的視点に問題あり、との事らしい。

 勿論、『健康本の世界』でも当該ニセ勲章を網羅していたので、削除された日にちの近さもあり、何か関係でもあるのかと疑ってしまった。
 ……ざっと調べたところでは、関係はなさそうだ。偶然らしい。

 『健康本の世界』は良くも悪くも、あちこちの業者・個人から削除依頼を受けていたし、管理人氏もいつサイトを丸ごと削除されるか判らないような事を書いていた。その懸念していた日がついに来てしまった、という事かねぇ?
 ……本当に削除されてしまったのなら、とても残念な話だ。
posted by にわか旅人 at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 表現規制 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月11日

自閉症の原因にワクチンは関係ない

 前回紹介したムーパパ氏のブログだが、2009年1月下旬に削除されてしまった。かれこれ3年更新せずに放置していたから、プロバイダの方で削除したのだろうか。
 ……当ブログでも取り上げている『ナチュラルクリニック代々木』の話もあり、色々と参考にしたかっただけに残念な事だ。

 さて。
 前回は自閉症とキレーション治療の関係について、つらつらと書き連ねてみた。その中で、「自閉症の原因は水銀の蓄積である」旨の風説が流布されていると、ちらと述べた。
 この時は、「予防接種ワクチン(に使われている水銀)が自閉症の原因だ」と主張するサイトはいくつか見つけていたものの、主旨から外れていたので詳しくは調べていなかった。
 それが今月になり2件の関連するサイトが出てきたので、とりあえず紹介する事にした。3つ目は、『忘却からの帰還』で取り上げていた元記事。
 ……NATROM氏のブックマークに感謝。

  『ワクチンと自閉症:多くの仮説があるが何の相関もない』食品安全情報blog、2009年2月2日
     http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090202#p1
  『「自閉症とMMRワクチンの関連を示す」論文のデータがフェイクだった by Times』忘却からの帰還、2009年2月9日
     http://transact.seesaa.net/article/113887944.html
  Brian Deer “MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism” The Sunday Times, February 8, 2009.
     http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article5683671.ece

 これらによると、だ。
 ワクチンが自閉症の原因だと発表したのはAndrew Wakefieldと研究チームで、その論文は1998年2月の『The Lancet Medical Journal』にて掲載された。
 予防接種を受けた12人中8人の子供の家族が、自閉症の原因はMMR(新三種混合)ワクチンの接種後数日で、自閉症の症状が出てきたと言うものだ。

 実はこの論文、Lancet誌は後日取り消している。
  『英医学雑誌が「ワクチンと自閉症の関連示した論文の掲載は誤り」と発表』A Forward-looking Child Psychiatrist、2004年3月5日
  http://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/C174902512/E367309562/index.html

 しかしながら、Lancet誌のこの論文が火付け役となり、自閉症の原因は予防接種ワクチンに在りとする「いわゆるカルト」の土壌ができあがったのだろう……とは、俺の勝手な想像。
 ……死に直結しない自閉症を避けるために、子供の生死に関わるリスク回避を怠る行為は、優先順位の選択ではなくて虐待の一種だろ? しかもこれは1児童・1家族の問題でなく、地域全体の問題にもなりかねない……「反社会的な宗教団体」という事で、ここではカルトと言わせてもらった。

 「ワクチン有害説」「ワクチン否定論」の走りとなったWakefieldの論文に話を戻す。
 対象が12人と少数なだけでも信頼性は薄いと思うのだが、Deerの記事によると、元となった12人のデータが、実はねつ造だったらしい。
 WakefieldらがLancet誌に掲載した12人の症状と、病院側で調査した12人の症状は異なっていたと言うのだ。論文ではワクチン接種後に自閉症の症状が出たと書いてあったのが、病院の調査では、1人を除きワクチンを接種する前から症状は出ていたそうだ。
 ……Wakefieldはねつ造については否定しているが、2004年のBBC Newsの記事によると、ワクチンで自閉症になったと訴訟中の家族から研究費用をもらっていたようなので、どの程度の信頼性があるのやら……。

   “MMR study doctor calls for probe” BBC News, February 22, 2004.
     http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/3512079.stm

 とは言え。
 ワクチンと自閉症とは無関係だとする論文は、Wakefieldの後にもいくつも出ていたのに、「ワクチン原因説」を信じる人はいる。今さら元の論文がデマだと知れたところで、その人達がこれまでの信仰を変えたりはしないだろうな。
 ……そしてそれに便乗して、キレーション治療など効果の期待できない「いかがわしい医療」で商売する医師・医学博士の跳梁跋扈も。

 最後に。
 前回のエントリでは、「子供が自閉症になった原因が、自分達の遺伝的特質にあるのを認めたくないから、自責感を避ける方便に水銀に原因を押し付けている」という旨の一文を書いた。

 『忘却からの帰還』では、「ワクチン否定論者」がワクチン否定論を信じたがる別の説明をしている。
===引用開始===
人間の精神は、世界はランダムであると考えるよりも、神秘的で目に見えない力が秘かに働いていると信じたがる。そして、あらゆるデータに、人々は誤ったパターンを見出し、株式市場にトレンドを見出し、なじみの人間に陰謀を見出す。コントロールを失うと、たとえそれが空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求め、合理的な人々が実際には存在しないパターンを見出すようになる。
   (中略)
このような人間の推論傾向を思えば、「たまたま、自分たちの子供が自閉症の遺伝要因を持っていた」と考えるよりも「製薬会社の製造したワクチンによって、自分たちの子供が自閉症になった」と考える方が自然である。
===ここまで===

 ……なるほど。陰謀論者の思考の可能性もあるか。
 ただし陰謀論に踏み込んだ話は、個人的には勘弁してほしいところ。
 ……巡回先の似非科学批判のブログに出没する陰謀論者のコメント内容が、俺には理解不能なので。
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2009年01月01日

自閉症とキレーション治療

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて。
 読んでいて少々気になるブログを見つけた。似非科学や似非医療に引っかかった人で、自閉症の子供を持つ父親(ムーパパ)のブログだ。

自閉症のサプリメント
   http://diary.jp.aol.com/agknumd7/

 藁にもすがりたい気持ちから似非科学に引っかかったと言うより、科学リテラシーの著しい欠落が原因で引っかかってしまったという印象を受けた。本人に自覚はないのだろうが、洗脳され搾取されていく様が痛々しい。
 ……2006年1月の更新が最後になっているが、果たして元気でいるのだろうか?

 良い歳をした大人が、知識不足から変なものに引っかかるのは、半分自己責任のようなものだろう。問題は、似非科学に引っかかった親のせいで、子供が虐待される事だ。
 ……殴る蹴るだけが虐待ではなく、医学的根拠のない試験の結果を元に、これまた医学的根拠のない商品を飲食させるというのも、虐待の一種だろ?

 虐待云々の話は、とりあえずここでは触れないとして。
 ムーパパが子供の治療の「つもり」で取り組んでいる1つが『キレーション療法』だ。

 『日本キレーション治療普及協会』の説明によると、だ。
   http://www.chelation.jp/therapy/therapy.html
===引用開始===
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と呼ばれる合成アミノ酸をビタミンやミネラルと共に定期的に点滴する治療方法です。EDTAが金属イオンをキール(ギリシャ語でカニのはさみ)のように掴みとり結合する性質から、キレーションという名前がついたと言われています。

EDTAキレーション治療は、有害金属を取り除く効果があり、抗酸化作用により血管を若返らせ、細胞を活性化する効果があります。抗加齢医学の領域でキレーション治療が注目される理由として、動脈硬化治療効果や有害金属除去による様々な変性疾患の予防と治療効果が期待できる点が挙げられます。
===ここまで===

 キレーションの名前の由来については間違っていない。
 キレートと言うのは、1つの金属イオンに対し2箇所以上で塩になる場合だったような……記憶が曖昧。

 キレーションにより有害金属を取り除くとあるが、キレート剤が有害金属(何をもって「有害」とするのかは不明)と選択的に結合し、体外に排出されるという仕組みに、根拠のある文献は俺がざっと調べた範囲では、鉛以外には見当たらなかった。
 ……鉛中毒患者の治療には使用されているようだが、鉛以外の重金属中毒の治療にも有効と示唆する文献は見つけられなかった。

Ogawa M, Nakajima Y, Kubota R, Endo Y. « Two Cases of Acute Lead Poisoning due to Occupational Exposure to Lead.” Clinical Toxicology, 2008 Apr; 46(4):332-5.
   http://mo-v.jp/?e3db

 ましてやキレーションによる抗酸化作用や、細胞を活性化させるという説明に、根拠の有無を問うまでもない。

 さて。
 このキレーション治療は、ムーパパの例のように、身内(特に子供)に自閉症を持つ家族にかなり広まっているらしい。自閉症の原因が重金属(水銀、Hg)の蓄積によるものと信じているようだ。
 ……水銀原因説を唱えているのは、俺の見たところ「怪しい」サイトが多い。

 自閉児の親からすれば、人並みにしてやりたいという気持ちもあるだろうし、その気持ちを否定するつもりはない。藁にもすがる思いで、この手の耳に心地良く聞こえる似非医療に手を出す気持ちは……残念ながら親ではないので共感できない。
 ……自閉症は先天性のものだそうで、親の自責感を避ける方便に水銀に責任を押し付けるのであれば、なおさらに親の気持ちに共感はできない。

 自閉症の原因はともかく。
 万が一キレーション治療で自閉症が改善されるのであれば、結果を裏付けるデータを取り、正規の医療につなげれば良い。
 しかし実際は、親(あるいは家族や本人)の弱みに付け込んだ商売なので、知見データなどあるはずがなく、自閉症児を持つ家族を称する人の体験談が目につく。

 科学的な根拠がないという事は、平たく言えば、安全性も危険性も確認されていない「医療の真似事」な訳で、実際、キレーション治療は「安全」とは言い難いようだ。キレーション治療が直接の原因ではないが、処方ミスによる死亡例が子供(2歳と5歳)で2件、大人で1件ある。
 ……5歳児の方は自閉症があったという話だから、親が治療目的でキレーション治療を受けさせていたのでは、とは俺の勝手な憶測。

“FDA Links Child Deaths to Chelation Therapy. Drug used to treat lead, mercury poisoning; often used for autism” MSNBC March 2, 2006.
  http://www.msnbc.msn.com/id/11640868/
Centers for Disease Control and Prevention “Deaths Associated with Hypocalcemia from Chelation Therapy --- Texas, Pennsylvania, and Oregon, 20032005” March 3, 2006. / 55(08); 204-207
   http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5508a3.htm

 報告によると、子供2人の死因となった処方ミスとは、同じEDTA塩(?)でもNa塩かCa塩かの違いで、どちらも医療施設には普通にある薬品らしい。ただしNa2EDTAは、子供の重金属中毒には使われないらしい。
 ……キレーション療法ではCaEDTAの方を使うようだが、どちらのEDTAにせよ、水銀中毒とその解毒作用に、科学的な根拠はない。

 「EDTAによる水銀の解毒作用」に科学的な根拠はないが、「水銀と自閉症」の関係を「否定する」資料なら見つかった。

Patrick Ip, Virginia Wong, Marco Ho, Joseph Lee, and Wilfred Wong, “Mercury Exposure in Children With Autistic Spectrum Disorder: Case-Control Study” Journal of Child Neurology, Vol. 19, No. 6, 431-434 (2004)
   http://jcn.sagepub.com/cgi/content/abstract/19/6/431

 こちらの資料によると、2000年に5ヶ月間に渡るコホート調査を行っている。
 対象としたのは82人の自閉症児(平均年齢7.2歳)で、55人の定型発達児(平均年齢7.8歳)の、毛髪と血液中の水銀量を計測・比較している。
 自閉症児の血液中の水銀量が平均19.53 nmol/Lなのに対し、定型発達児は17.68 nmol/L。毛髪分析では自閉症児が2.26 ppmなのに対して定型発達児2.07 ppmと、数値は誤差の範囲内であるとしている。
 つまり、水銀と自閉症に関連はないという結論だ。
 ……2004年の文献なので、新しい文献が出ている可能性はある。

 ちなみに毛髪検査に医学的な根拠はない。

 そもそも、なぜ「水銀が体内(主に脳)に蓄積すると自閉症になる」という与太話が出回っているのか、その出所が不明瞭なのだよな。
 ……定型発達者と比較して、自閉症者の脳から有意差のある水銀が測定された、という報告はないようだ。

 検索してみると、日本では2004年3月にTBSの『報道特集』で自閉症の治療としてキレーション治療が紹介されたようだ。
 ……あらかじめ言うまでもなく、自閉症を真面目に取り扱う組織からは、放送内容を否定されている。

NPO法人東京都自閉症協会『自閉症と水銀中毒について―キレート療法は有効か』
   http://www.autism.jp/etc_suigin.html
千葉県自閉症協会『TBSテレビ報道特集「自閉症の原因は水銀?」について』2004年3月14日
   http://www.interq.or.jp/japan/aschiba/tbs_autism_mercury.html
矢崎史郎『自閉症と水銀−TBS報道特集を斬る−』
   http://www.geocities.jp/symyky1019/Autism-mercury.htm

 TBSが取り上げる前でも、キレーション治療が自閉症に有効だとの与太話はあった訳で、似非医療としてのキレーション治療は、1960年代まで遡る。
 ……60年代において既に、キレーション治療推奨者らが主張する効果はないとの報告は上げられているし、何年か毎にこまめにキレーション療法の効果を否定する報告は提出されている。

Green, Saul “Chelation Therapy: Unproven Claims and Unsound Theories” Quackwatch
   http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/chelation.html
American Heart Association “Questions and Answers about Chelation Therapy”
   http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3000843

 ただし90年代辺りまでは、キレーション治療は心臓病などの疾患に効果があるとしていたようで、自閉症との関係は言われていなかったように見受けられる。
 ……1989年にFDAとAmerican Heart Associationのレポートから、『10大健康詐欺』の1つとしてキレーション治療が取り上げられたのを境に、自閉症治療に移行したのではないかと、俺の勝手な憶測。

 キレーション治療が自閉症の治療(他に解毒作用)に効果があると主張するのであれば、キレーション療法を推奨する団体や医師・医学博士は両手でも足りない程いるのだから、誰かが文献にまとめて提出すれば良い。
 にも関わらず、キレート療法の効果と安全性についての研究をしている業者はいないようで、太っ腹にもThe National Institutes of Health (NIH)が研究費用をねん出したらしい。

Atwood KC, Woeckner E, Baratz RS, Sampson WI. “Why the NIH Trial to Assess Chelation Therapy (TACT) should be abandoned.” Medscape Journal of Medicine, 2008 May 13;10(5):115.
     http://mo-v.jp/?e3dd

 Atwoodらは、始めからキレーション療法の有効性の研究をする必要はないと説いていたらしいけれど、キレーション療法を信じる側の勢いを止める事は出来なかったということか。
 この調査は2009年に終わる予定だ。

 これ以上続けると、自閉症とは関係がなくなってくるので終わりにする。

 とりあえず。
 素人の俺が調べても、これだけ資料が出てくるのだから、キレーション治療がいかに胡散臭い、もっと言ってしまえば「いかがわしい」治療なのかは判りそうなものだ。
 それでもこの治療法に手を出す自閉症児を持つ親は、十分な情報が得られないからではなく、進んで自分の子供を人体実験にしているか、虐待しているように見える。

 一番悪いのは、そういう親の弱みに付け込んで、期待すらできない医療やサプリメントを売り物にしている業者だとしても、ね。
posted by にわか旅人 at 19:47| Comment(1) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月05日

樹液シートで足裏から毒素排出

 肩こりや慢性的な倦怠感、その他の体調不良の原因の多くは、体内に蓄積された毒素によるものだ。体調を良くするためには、この毒素を体外に排出する必要がある。排出のための最適な器官が、「第2の心臓」と言われる足の裏だ。
 毒素は全身のつぼが集中する足の裏を通じ、体外に排出されるが、その排出能力を一層高めるのが、ハーブ、天然岩石の粉末その他、各種の天然素材のパワーを閉じ込めた「樹液シート」だ。
 寝る前に樹液シートを足裏に貼ると、シート内の天然成分が足裏のつぼを刺激し、毒素を体外に吸い出してくれる。
 その効果の程は、翌朝にシートがどれほど変色しているかを見てみれば明らかだ。シートを変色させたのが、体外から排出された毒素だ。


 俺の回りでは2、3年前に話題になり、今や聞くことのなくなった似非科学商品に『樹液シート』なるものがある。『足裏シート』や他の呼び名もあるらしいが、ここではとりあえず「就寝前に足裏に貼ると、寝ている間に足裏から毒素を吸い出す」という触れ込みの健康グッズを『樹液シート』で統一しておく。

 実は『樹液シート』をネタで買った事がある。ハーブとトルマリン粉末か何かが入っていて、マイナスイオンの効果でナンチャラという触れ込みのあった商品だ。
 使ってみたところ、確かに一夜明ければ樹液シートの色は変わっていた。でも身体の調子や気分が良くなったという事はない。
 それどころか、「これって汗を吸って色が変わっただけだよなぁ」と、染み出てきた液体と糊で汚れた足裏を見つめ、朝から空しい気分になってしまったのは良い思い出……か?
 ……あくまで俺の体験談。ひょっとしたら、プラシーボ効果で気分の良くなれる人がいるかもしれない。

 そもそも、ここで言われる「毒素」が不明なのだよな。
 重金属だとかホルムアルデヒドだとか、その他にも幾つもの「いわゆる毒物」の名前なら時々聞いたけれど、実際に足裏から排出されたというデータは、少なくとも俺が見て回った樹液シートのパッケージにはなかった……と思う。
 ……まぁ、毒素は肝臓で無毒化されて、ほとんどは尿や便で排出されるのだから、排泄器官でもない足裏から、そのような物が出てくると考える方がどうかしている。

 マツキヨで買った樹液シートの経験が、果たして価格に見合う価値があったのかどうかはともかく。
 ……同じ箱の中身で、左右に貼ったシートの色が違っていた時は吹いた。

 ネタで購入した樹液シートが、同じ商品でありながら左右で違う色になった事で、販売していた企業に電話をした。念のため言っておけば、クレームではない。返品はしなかったし、返金も要求していない。1消費者として至極ていねいに、とても当たり前の質問をしただけだ。

 まず先に。
 本当に毒素が排出されているなら、左右で色が大きく変わるとはちょっと考えにくい。左右で蓄積されている「毒素」が別々な訳ないだろうしね。片方が赤茶色、もう一方が抹茶色だったかな?
 左右の色の違いの理由を問い合わせたところ、「わかりません」の回答だった。

 次に。
 俺の知識では、体内の毒素は肝臓で無毒化されて体外に排出されるはず。なぜ足の裏から毒素が排出されるのか、その毒素の種類についても、問い合わせてみた。
 出てきた回答は……「わかりません」「知りません」あたりの要領を得ないものだったと記憶している。
 ……いやいや。毒素を足裏から吸い出していると、パッケージに書いていたのはあんたらだろうが……。
 まぁこれで笑える回答が出ていたら、速攻でブログネタにしていたかもしれない。

 さて。
 余りにもあからさまな似非科学……と言うか「おもしろ似非健康グッズ」な乗りに、当時はこのブログで取り上げる気もなれなかったのだが、この手の商品が海外に輸出されていると遅ればせながら知ったので、慌ててエントリを書いてみることにした。
 メインのソースはQuackwatchと、そこに貼られているリンクだ。
   Stephen Barrett “The Detox Foot Pad ScamQuackwatch, August 23, 20008.
     http://www.devicewatch.org/reports/kinoki.shtml

 ……「おもしろ似非健康グッズ」と書いたが、あくまで、この手の商品には何ら医学的・科学的な根拠がなく、悪くてもせいぜい足が糊でかぶれる程度の効果しか期待できないと理解して、購入するならの話だ。何らかの効果を期待して、受けている治療を拒絶するような人が万が一にもいる可能性を考慮すると、「おもしろ」いと言っていられないのが現状だろう。

 話を戻す。
 全米で一番有名な『樹液シート』……なのかどうかは知らないが、後で紹介する記事でも名前入りで報道されていた位だから、それなりの知名度はあるのだろう……が「Kinoki Foot Pads」という商品だ。
     http://www.buykinoki.com/
 ……2008年10月5日現在、Kinoki社の「Foot Pads」はオーダーフォームしかないが、9月下旬までは商品の画像も紹介されていた。

 そしてこちらが、Amazonで販売している『樹液シート』
     http://xurl.jp/0nd
 ……購入は自由だけど、お金の無駄なのであまりお薦めはしない。
 とりあえず「Foot Pads」と「樹液シート」が同じ種類の商品を指していると理解してもらえれば良い。

 とは言え。
 この手の商品を肯定する人達からすれば、「アメリカにも輸出されているのだから、効果は本物だ」と胸を張って俺の発言は誤りだと指摘したくなるかもしれない。
 ……樹液シートの効果を云々する前に、足裏から排出される『毒素』と、排出のメカニズムをきっちりと説明してもらいたいものだ。

 しかし肯定する人達には残念な事に、この手の商品が似非科学であると、あちらのTV番組でも報道されるに至っている。
   John Stossel “Ridding Yourself of Toxins, or Money? Company Says Kinoki Foot Pads' Capture Toxins From Your Body'” ABC News, April 11, 2008.
     http://abcnews.go.com/Health/Stossel/Story?id=4636224&page=1
 と言うか、俺の知る範囲では日本では話にも上がっていないのに比べれば、あちらの食いつきはなかなかに良い。

 しかもKinoki社は一方的に否定する報道をされたのではなく、毒素その他を排出する根拠を教えてほしいとの要望に、科学的根拠のある資料を出さなかったし、インタビューにも応じなかったと言うのだから、どのように解釈されても仕方あるまい。
 ……似非科学な商品の常として、科学的根拠を問われると、意味不明な大量の体験談ばかり出してくる日本の業者とは少し違うかも。

 似非科学に対する日米の企業とマスコミの対応の差はさておき。
 俺が販売会社に問い合わせても詳細の不明だった「毒素」だが、上述の報道では、重金属他、23種類の溶媒を含めた成分分析をしたとある。
 ……訳はうまくないが、意味は通じると思う。
===引用開始===
The lab tested for a lot of things, including heavy metals like arsenic and mercury and 23 solvents, including benzene, tolulene and styrene and found none of these on the used pads.

訳)研究室でヒ素や水銀などの重金属、及びベンゼン、トルエン、スチレンなど23種類の溶媒の多くの試験を行ったところ、前述のいかなる成分も使用済みシートからは検出されなかった。
===ここまで===

 ……はて?
 樹液シートは体内の毒素(重金属やら何やら)を足の裏から吸い出すのだよな? それがまったく検出できなかったって? それじゃあ、いったい何を吸い出しているのだ?
 ……やっぱり、汗……しかないわな。

 そしてABC Newsでの報道の後、とあるラジオ局でも似たような調査を行ったらしい。下記の引用文はQuackwatchからのもの。
===引用開始===
she had her husband wear pads overnight and then too them to a laboratory for testing. The lab found that the heavy metal content of the used pads were the same as that of an unused pad, which meant that the pads don't "suck out any toxins." Then she held an unused pad over a pot of boiling water. The steam caused the pad to turn black, indicating that the dark color that results from wearing a Kinoki pad is caused by a chemical in the pad that reacts to moisture.

訳)彼女(ラジオの人)は夫にシートを一晩貼り付けさせた後、研究所で分析した。研究室では使用済みシートと未使用シートの重金属の濃度に変化を観察できず、これはすなわち、シートが「毒素を吸い出して」などいないという意味である。次いで彼女は、未使用のシートを沸騰したお湯を入れたやかんにかざしてみた。蒸気によりシートが黒く変色したことで、Kinoki社の樹液シートが変色するのは、中の成分が湿気と反応するからだと結論できた。
===ここまで===

 ……化学反応での何でもなく、乾燥した粉末に水分が加わると、粘度と色が出てくるのと同じ理屈だと思うぞ。別の樹液シートを使用した経験から言って。

 さてさて。
 このエントリの頭から断言している事だけれど、化学名すらはっきりしない「毒素」が足裏から排出されるなどまずあり得ないし、足裏がそんなに大事なら、一部の身体障害者らは毒素を排出できずに毎日生死の境をさ迷っている訳で……と言うか、肝臓なんかいらないだろ。

 別のエントリでも書いたことを、ここでもう一度書いておく。
 ……肝臓以外の個所で解毒できる器用な人達は、それのできない不器用な人達に肝臓を譲ってくれ。
posted by にわか旅人 at 15:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月16日

水素水で美容商品開発?

 この1年程、多忙のために展示会にまったく足を運べずにいる。

 2008年9月3日の『健康産業新聞』のコラム「話題追跡」で、今回行き損ねた『ダイエット&ビューティーフェア2008』についてちょっと触れていた。
===引用開始===
 先月27日に閉幕した「ダイエット&ビューティーフェア2008」では、水素化粧品をはじめ、水素水を浸したコットンをパックに使用する新たな施術を提案する企業、水素水をスパ向けに提案する企業――など、水素水の美容用途での商品開発が活発化していることがうかがえた。これまでの水素水や水素サプリメント、化粧品など美容商材が加わることで、水素マーケットの相乗的な拡大が期待されている。
===ここまで===

 俺的には、「水素水」は「水素原子が安定状態で単体で存在し、優先的に活性酸素と結合して水になる」という似非科学の「活性水素」とほぼ同義なので、どうしても否定的になってしまう。
 ただし「水素水」とは、水素を溶解させた水の事で、「活性水素」とは別物だ。
 ……水素の溶解度は知らないが、さほど大きくないと思うのだが……とにかく頭の中で整理しておかないとな、うん。

 さて。
 この水素水がどうやら健康に良さそうだ、という話を持ち出してきたのは、日本医科大学の太田成男教授だ。

読売新聞『水素水に記憶力低下抑制効果、日医大教授がマウスで確認』2008年7月19日
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm(リンク切れ)
===全文掲載===
 水素水を飲むことで、記憶力(認知機能)の低下を抑えられることを日本医大の太田成男教授らが動物実験で確認した。

 認知症の予防や治療にも道を開く成果で、科学誌ニューロサイコファーマコロジー電子版に発表した。

 ストレスによって記憶力が低下することは知られている。研究チームは、マウスを狭い空間に閉じ込め、餌を与えないなどのストレスを加えたうえで、記憶力が、水素が大量に溶け込んだ水と通常の水を飲ませた場合でどのくらい違うか、10匹ずつ、三つの方法で6週間かけて比較した。

 その結果、いずれの場合も水素水を飲ませた方が記憶力が顕著に高く、ストレスのないマウスとほぼ同等だった。記憶をつかさどる脳の領域(海馬)における神経幹細胞の増殖能力も同様の傾向だった。

 研究チームは昨年、水素が活性酸素を取り除き、脳梗塞による脳障害を半減させることを確認。認知症は活性酸素などによって神経細胞が変性する病気とされるが、太田教授は「水素水を飲まないマウスの海馬には活性酸素によって作られた物質が蓄積していた。水素水が活性酸素によって低下した神経細胞の増殖能力を回復させ、記憶力低下も抑制したと考えられる」と話している。
===ここまで===

 記事で取り上げている水素水は、飲用つまり内用で使われているのであって、化粧品やらスパ等の外用での有効性には触れていない。
 ……しかもこの研究は記憶力に関するもので、ダイエットや美容に関係する話ですらない。

 念のため、『ニューロサイコファーマコロジー』に掲載された論文の概要も読んでみた。

Nagata K, Nakashima-Kamimura N, Mikami T, Ohsawa I, Ohta S. “Consumption of Molecular Hydrogen Prevents the Stress-Induced Impairments in Hippocampus-Dependent Learning Tasks during Chronic Physical Restraint in Mice.” Neuropsychopharmacology. 2008 Jun 18.
http://xurl.jp/gzc

 概要には何匹のマウスを使ったか、マウスの体重で何ml/kgあたりの水素水を与えたか、実験は何日行ったのか等の説明はない。水素を飽和状態まで溶解させたとあるけれど、空気の分圧の関係で水素はすぐに抜けてしまうと思うのだが……どう解決しているのかの記載もない。
 ……あくまで素人考えなので、俺の素朴な疑問が、実験にどれだけ影響するものなのかは知らない。

 ともかく、だ。
 概要によれば、ストレス下にあるマウスに水素水を飲ませると、記憶力がストレスを受けていないマウス並になったとある。ストレスを受けていないマウスに水素水を飲ませても、記憶力に変化はなかったという下りは、新聞記事の方にはない。

 さてさて。
 概要からは水素水を外用に用いたと、俺には読み取れないのだよな。
 まあ、この手の美容や健康関連の業者は、間違えても効果云々を口にする訳にはいかない。もっと平たく言えば、薬事法で認められている以上の効果を謳えないし、効果があってもいけない。動物実験のレベルで、ましてや外用ではなく内用の結果であっても、「○○○○大学の△△△教授が□□□□学会で発表しました」という箔があれば、利用できる範囲で利用するし商品化にもする……のだろう。
 ……こういう一種の詐欺まがいな行為が業界として健全なのか、業界を健全にするのかどうかの是非は、ここでは触れずにおく。

 水素水を題材に、どんな怪しい商品を作ろうが、仮に構わないとしても……化粧品やスパに使うのは失敗だと思うだけどね。上の方で述べたけれど、空気分圧の関係で、製造時に水素が飽和状態になっていても、運送時で水素が抜け切ってしまう怖れがなきにしもあらず、コットン等なら開封直後で水素は確実に抜けてしまう訳で。
 ……何年か後に、水素水化粧品で宣伝通りの水素が検出されなかったと、公取委から排除命令が出なければ良いな、と。

 ……ちなみに、日本医科大の太田教授については、『PSJ渋谷研究所X』の方で詳しく触れている。
   PSJ渋谷研究所X『水素水と認知症?』2008年7月19日
     http://shibuken.seesaa.net/article/103164964.html

 水素水の基本を、こちらのサイトでまとめている。
   瀬名NEWS『水素水研究の基本を理解するためのリンク集』2008年8月11日
     http://news.senahideaki.com/article/103365233.html

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2008年08月19日

「血液サラサラ」で実刑判決

 apj氏の『Archives 書くことは考えること』の2008年8月18日のエントリを読んでいて、1年以上前の記事を思い出した。

   読売新聞『血液サラサラは顕微鏡で細工、元営業マンが商法を暴露』2007年6月29日(リンク切れのためURLは表示しない)
===引用開始===
 「血液がサラサラになる」と健康効果をうたい、高額のブレスレットを売りつけていた元営業マンが読売新聞の取材に応じ、「セールストークには科学的な根拠は何もない」と詐欺的商法の内幕を語った。
   (中略)
 男性によると、入社後すぐに3日間の研修でノウハウをたたき込まれた。血液をガラス板に挟んで顕微鏡にかけ、映像をモニター画面に映す。血液の多い部分に焦点を合わすと、「ドロドロ」に見える。ガラス板を指先で軽く押し、血液を薄く広げると、「サラサラ」の血液のように映る。

 男性はペン型の小型採血器を使って自分の指から100回以上採血し、手を血だらけにしながら練習を重ねた。この段階で嫌気がさして辞めた同僚もいた。

 上司から厳しく指導されたのは、医師法や、薬事法違反での摘発逃れのやり方だ。小型採血器は客自身に使用させる。営業マンが客から採血すれば医師法違反になるからだ。薬事法に抵触する「効く」「治る」などの効能を口にしない。巧みに不安をあおり、「ブレスレットをつけた方がいいですね」と助言する形で売り込むよう指示された。

 「血液がドロドロですから、このままでは脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞になりますよ」

 昨年夏、中部地方で開かれた呉服の展示即売会。男性はその一角に設けられた自社コーナーで、採血した60歳代の女性に顕微鏡のモニター画面を示し、そう説明した。女性が動揺しているのがわかった。

 商品の銀製ブレスレットを左手首に試着してもらってから約15分後。再検査で「サラサラ」の血液の映像が画面に映ると、周囲からどよめきが起きた。「特殊加工でマイナスイオンが発生し、血液がサラサラになるんです」。お決まりのセールストークで、この日、40万〜15万円のブレスレットを数本売った。
   (後略)
===ここまで===

 この記事でのブレスレットは銀製だが、俺的にはゲルマニウム製のブレスレットの方が「悪い意味で」身近だったりする。
 ……この1年近く多忙で行けずにいる怪しい系の展示会では、この手の物をよく見かけるという意味で。

 材質が銀にしろゲルマニウムにしろ、幸いというか何と言うか、展示会で実際に血液を採取している現場を見かけたことはない。
 この手の展示会に出展する企業の人に聞いた話だと、薬事法や医師法に抵触しない方法で、いかに視覚的にインパクトを持たせるかに、毎回頭を痛めているそうだ。血液だとインパクト抜群だけれど、採血のための医師が必要、で、医師を臨時で雇おうにも、使用済みの注射針の始末などもあり、今度は保健所への申請で引っかかるとか。
 医師でも何でもない社員(企業によっては展示会のためだけの派遣)に、それらしく白衣を着せるのが、取れる方法としては限界らしい。
 ……来場者本人に採血させようと考えていた企業は、幸い俺の知っている範囲ではいなかった。

 マルチ商法などに加担している医師などは、「○○○社の△△△という商品は素晴らしい。×××に効果がある」というスピーチをしてくれるから、そういう医師と仲良くなれば良いのでは、などと話したことは……あったかな?
 ……まぁ、一般的な医師だと、こういう場所で名前を使われるのを避けるため、なかなか協力してもらえないという話は聞いた。

   読売新聞『「血液サラサラ」腕輪詐欺 容疑の社長ら逮捕 被害、8200人24億円か』2007年11月6日(リンク切れのためURLは非表示)
===引用開始===
 血液がサラサラになる、と健康効果があるように偽ってブレスレットを売りつけたとして、千葉県警生活経済課と鎌ヶ谷署は6日、東京都豊島区の健康器具販売会社「サンキョーコーポレーション」社長の同区池袋2、梶本稔容疑者(60)と同社幹部ら計7人を詐欺の疑いで逮捕した。
   (中略)
 調べによると、梶本容疑者らは2006年2月から10月までの間、お年寄りの女性ら愛知県などの計18人に、健康効果があるように偽って1本約2万円で仕入れた「ゲルマニウムブレスレット」を25万〜30万円程度で販売し、計約680万円をだまし取った疑い。

 梶本容疑者らは、健康食品や健康器具を特設会場で即売する内容のチラシを、住宅のポストに投函(とうかん)するなどして客を集めていた。特設会場は、空き店舗を借りるなどして短期間で移動を繰り返し、販売場所を転々としていた。

 客に自分の指先を針で突かせ、ブレスレットを使用する前後の血液を採取。それぞれの顕微鏡画像をパソコン画面に映し出し、使用前は「赤血球が数珠つなぎになっている」などと説明。使用後はカバーガラスをかけて赤血球間のすき間をあけ、「どろどろだった血液が改善された」などとだましていたという。
   (後略)
===ここまで===

 材質は何であれ、『血液サラサラ』商法では、手口はどこも同じなようだ。しかもこれ、SF商法でないかい?

 さて。
 apj氏のところでも紹介していた元社長の経営していた企業が、この「サンキョーコーポレーション」だ。

   読売新聞『「血液サラサラ」のニセ腕輪販売、社長ら4人に実刑判決』2008年8月18日
   http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080818-OYT1T00359.htm
===全文掲載===
 「血液がサラサラになる」と偽って効果のないブレスレットを売ったなどとして、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の罪に問われた健康器具販売会社「サンキョーコーポレーション」(東京都豊島区、破産)の元社長梶本稔(61)ら4被告の判決が18日、千葉地裁松戸支部であった。

 伊藤正高裁判長は「中高年層の健康不安をあおり、これにつけ込んだ巧妙で悪質な犯行」と述べ、梶本被告に懲役5年6月(求刑・懲役7年)を言い渡した。ほかの3被告にも、それぞれ懲役2〜4年の判決。

 判決によると、梶本被告らは2006年1月〜11月、全国で販売会を開き、採血した血液の顕微鏡画像を見せるなどしながら効果を信じ込ませ、38人にブレスレットやリングを販売し、1391万円をだまし取った。

 千葉地検松戸支部は当初、詐欺罪で起訴したが、組織的に詐欺を繰り返したとして訴因変更した。梶本被告は「詐欺目的の会社ではなく、組織性も低い」と主張していた。
===ここまで===

 元は詐欺容疑で逮捕・起訴、それが組織犯罪処罰法違反に変更して、実刑判決となっている所が結構興味深い。
 ……apj氏が指摘しなかったら、見逃していただろう事は秘密だ。

 つまり、いわゆる健康産業……似非科学やらオカルトやらが跳梁跋扈している怪しい業界は、かなりの企業が組織犯罪処罰法違反に該当する事になるのではないだろうか。
 ……ほとんどの「健康に良い」などというフレーズには科学的根拠に乏しい、というのが俺の経験則。中には都市伝説もあるし。

 まぁ、元々が薬事法すれすれトークをかます「詐欺的」から、「組織犯罪的」になるだけで、大した差はないのかもしれない。
 ただ中には、本気で似非科学やオカルト・都市伝説の類を信じて商品を売り込む企業がいる訳で……と言うか、「自社商品の良さを信じないで、客に商品を勧められるのか?」とかの精神論を考えてしまう辺り、俺もそれなりに毒されているのかもしれない(何に?)

 ……どこの展示会だったか……。
 どこかの岩を抽出したと言う、要するに泥水の薄茶色い上澄み液を『ミネラル水』を称して販売していた企業の社員に、色々と突っ込みを入れていたら、最後に「それでも、この商品が健康に良いと信じています」と胸を張られた事を思い出してしまった。

 ともかく。
 科学的根拠のない似非科学な代物を販売していると、商品の良さを信じていようがどうだろうが、詐欺罪ではなく組織犯罪処罰法違反で逮捕されかねなくなった、という事だ。
posted by にわか旅人 at 02:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 悪徳商法追放 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月13日

警報!FXソフト

 過去エントリで俺なりに「FXソフトの投資詐欺」と判断していたマルチ商法の株式会社オール・イン(北海道札幌市北区)が、5月26日の週になってHPを一新した。
     http://www.allin.jp/index.html

  過去ログ『投資詐欺オールインとスターライン』2008年4月26日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/94788312.html

 4月のエントリで、オールインが詐欺だと判断する材料は十分提示したつもりだったので、改めて書くつもりはなかった。……のだけど、一新されたHPも怪しさ満点だったので、とりあえず追加してみた。

 FXソフト『ビクトリーランVictory Run』や『FX』の単語が消え失せ、代わりに分子矯正医学だのリゾートなどの単語に取って代わっている。
 ……多分、下の2つの記事の影響だろう、と勝手に推測。

  北海道新聞『売買ソフトでFXなど勧誘 会員制業者の監視強化 金融庁方針』2008年5月22日
===全文掲載(赤色は当方にて着色した)===
 金融庁は二十一日、株式や外国為替証拠金取引(FX)など金融商品を自動売買するソフトで投資を募る業者に対し、監視を強化する方針を固めた。会員制でソフト利用を提供している業者に投資助言業者としての登録を要求。「ソフト提供だけで運用は別の業者」といった規制逃れを許さず、不透明な取引による投資家の被害防止を目指す。

 自動売買ソフトは、コンピューターが自動的に株式やFX取引を行って運用益獲得を狙うもの。操作にはある程度の知識が必要とされる。

 しかし、札幌の業者が会員に運用実態の詳細を伝えないまま「専門知識や技術は不要」として会員を拡大。同じような手法を取る業者が全国で増えているため、投資家保護の観点から対応を強化する。

 対象は、ソフトの使用に会員制を採っている業者で、店頭などで不特定多数に販売されるソフトの業者は対象外。登録業者には顧客への投資リスクの詳細な説明や業務内容、資産の運用状況についての報告などが義務づけられる。違反の場合は、業務停止といった行政処分が下される。

 同庁は、会員が自動売買ソフトの購入、使用や入会を第三者に対して勧誘する行為も投資助言・代理業に該当すると判断。この場合、会員も同庁への登録が必要になる。登録には五百万円の供託金が必要。

 この種の業者は会員が新たな会員を集める連鎖販売の形式を取るケースが多いが、今後は難しくなるとみられる。
===ここまで===

 オールインは業者登録を行っていないので、投資名目で会員を募る行為そのものが違法活動だ。

 それよりも、こちらの記事の方が投資詐欺のオールインには打撃が大きかったと思う。

  北海道新聞『金融庁、登録要請へ 札幌のFXソフト提供業者』2008年5月24日
===全文掲載(赤色は当方にて着色)===
 金融庁は二十三日、会員制で外国為替証拠金取引(FX)の自動売買ソフトを提供している札幌の業者に、金融商品取引業者としての登録を求める方針を固めた。従わない場合は違法行為とみなし、FX関連業務の停止を指導する。

 この業者は独自開発したという自動売買ソフトの使用を提供。会員はキプロスの電子マネー業者に運用資金を振り込み、資金の転送を受けたパナマのFX業者がソフトの指示で運用しているとする。

 金融庁は、外国のFX業者を通じた資金運用でも、国内の投資家に仲介する行為は証券会社などと同じ第一種金融商品取引業に当たり、会員制による自動売買ソフトの提供も投資助言業に当たると判断。同庁の監督指針に基づいて、登録を要求し応じない場合、FX関連業務の停止を警告。警告に従わなければ刑事告発も含めて対応する構え。

 この業者は自社のFXソフトを使った投資には「専門知識や技術は必要ない」と説明。会員が新たな会員を集める連鎖販売の仕組みを利用し、三万人以上の会員を集めているとされるが、実態は不透明で「きちんと運用されているのか不安」とする相談が金融庁などに相次いでいる。
===ここまで===

 いずれの記事も、話題の業者がオールインだと断定していないし、FXの自動売買ソフトをマルチ商法で広げている業者が、北海道にどれだけいるかは知らない。
 だけど俺の限られたアンテナに触れる業者は、オールインしかないのだよな。
 ……それにキプロスにある電子マネー業者って……ここまで条件の揃う業者が、他にあるのか?

 オールインに集めた資金を運用する、ないしは助言する能力があるなら、5百万円払って登録申請をかければ良いので、慌てて『ビクトリーラン』をHPから削除する必要はない。……元が詐欺だから、金融庁に目を付けられて慌てて逃げを打ったのかな?

 7月になった辺りから、複数のブログや掲示板で、オールインの外国為替証拠金取引業の登録を完了したとか、どこかの投資企業を買収したという話をちらほら見かけるようになった。
 しかしそれを裏付けるソースは、今のところ一つも見つけられずにいる。登録や買収云々を主張しているのもオールイン会員のブログや掲示板で、オールインのHPでは何一つそれられしい事に触れていない。
 ……金融庁の外国為替証拠金取引業者のリストにも、2008年7月12日現在、オールインの名前を見つけられずにいる。
     http://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kinyushohin.pdf

 「会員が勝手に言い回っているだけで、主催企業が言ったのではない」の姿勢で通すつもりかな?

 まぁ、それでも投資の振りはしているので、前述の根拠が出てくるまでは違法行為を続けていると見るのが無難たろうな。
 ……某エビ養殖詐欺と同様、集めた資金は海外に逃がして投資はしていない、が俺の予想。

 そもそも、中味のない急ごしらえのHPからして、近日中に夜逃げしても驚きはしない。

 さて。
 HP上はFXから撤退したオールインの次なる詐欺商材は、HPのほとんどが6月10日まで工事中のため不明だったが、11日になり追加された。

1. i-pointショップ
 これはキプロスにある架空口座に入金し、「I-ポイント」という電子マネーを購入、それを通じてネットショップを行うという代物。
 過去ログで示したように、G.T. I. Point社はオールインの架空口座だ。表向きは海外のポイント企業なので、為替変動もあるから1ポイント=\1なのがそもそも疑問なのだが……。これはもう、ドブにお金を捨てる……否、詐欺師に次の詐欺行為の原資を与える……行為になる。
 それに通常、ネットショッピングで電子マネーは使わない。俺の場合、郵便振替か、キャッシュカードでの翌月引き落としを使う。
 ……ネットショップすら開いていないのに、ポイントだけは購入しろというのは噴飯もの。「円天」よりもお粗末だ。

 しかも稼動は10月からの予定と謳っている。それまでは、使い道のないポイントを購入するしかない訳で……。

 「ビジネス提案ができる」という項目もある。ざっと説明を読んだところ、スターライン社ばりの『ジョイントビジネス』のような内容だ。

 ちなみに『ジョイントビジネス』とは、「専業の営業がいる商品を、営業経費・実費は本人負担、商品研修なしで素人に販売させ」、その上に参加費用として会員費を毎月むしりとる、詐欺と断言しても差し支えない凶悪な「ビジネスもどき」だ。
 ……深く考えるまでもなく、このようなものに参加して、素人に利益が出せるはずもない。会員が利益らしきものを得ようと思ったら、「ジョイントビジネスに参加する資格」という、形のないもので会員を募るしかないので、詐欺まで行かなくとも、ネズミ講の要件は満たすのではないかと思う。

2. オール・インヘルスチェックシステム
 最新の予防医学『分子矯正医学』による最適な栄養補助提案……だそうな。
 分子矯正医学(Orthomolecular Medicine)は、ノーベル賞を2度も受賞したライナス・ポーリング博士が提唱した医療だ。残念ながら、この説を裏づけする学術的な見識はまだなく、似非科学やサプリメントを販売する「よろしくない」類の業者が、「ノーベル賞を受賞した偉い人だから間違いはしない」と言うお粗末な権威付けに使っているのが現状だ。
 ……「ビタミンを摂れば摂るほどヒトは健康になる」の「メガビタミン説」と言えば判りやすいか?

3. Live For(リブフォー)
 これがi-poiontショップかな?
 2008年7月1日現在、商品数は10点にも満たず、価格(この場合はポイントか)すら設定されていない。
 ……動いてすらいないネットショップのために、毎月会員費を払わせるって、どんな詐欺だよ?

4. グランドリゾート
 収益性を無視した高齢者向け住宅プロジェクト。
 ……収益がなければ企業として成り立たないので、はなっから虚偽だと思ってよい。掛け声だけで、土地の1坪の手配すらしていない、が俺の見立てだ。
 住宅や不動産、介護関係には詳しくないのだけど、業者登録が必要ではないのか? オールインが業者登録をしていないだろう事は、容易に想像できるが……。

 さてさて。
 FXの詐欺行為で荒稼ぎができなくなったオールインの新ビジネス(らしきもの)を駆け足で追ってみたが、始まる前から破綻しているとしか思えない代物ばかりだ。
 俺的には、ビジネスと呼ぶもおこがましいビジネスビジョンだし、「絵に描いた餅」状態なので、ネズミ講よりも詐欺と称するのが妥当ではないかと思っている。
 ……これで会員から毎月、『Victory Run FX』の使用料を集めているのだろ? FXはもうやっていないのに。

 ところで。
 オールインの会社概要での事業内容もHPのリニューアルに合わせて一新されている。
     http://www.allin.jp/gaiyou.html
===引用開始===
事業内容 ・ショッピングモール展開
     (1)オール・イン・ショッピング
     (2)各種商品の提案・交換
     (3)LiveForブランド
     (4)ドロップシップ(ホームページサイト
及びオリジナルホームページの利
用権)
     (5)PTS-NAVI(健康チェック)
===ここまで===
 ……グランドリゾートの名目が入っていない。

 そしてこちらが、HP一新前の事業内容。
===引用開始===
事業内容 ・コンピュータ開発及び販売
     ・ジャパンネット銀行決済を使用した・・・
     ・電気通信機及び電子機器器具の部品の販売
===ここまで===

 HPの事業内容を書き換えるのは、それこそ1日もかかるまい。
 だけど登記簿の書き換えは……?
 ……ここまで業種が変わるのは、企業としての方向転換などという生易しいものではないぞ。
posted by にわか旅人 at 21:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 悪徳商法追放 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする