2009年11月26日

いまさらマイナスイオン

 商売のネタ探しか自己啓発か、上司があるセミナーに参加した。
 それだけならどうでもいい話なのだが、「ためになる良い話だった」と感心した内容が似非科学だったりすると、目も当てられない。
 今回はそんな話。

 上司の話から出た講師の名前と日程から判断するに、上司が出席したセミナーはこれのようだ。

   サン・アスリート株式会社『究極の予防医学。健康志向の方!「食育」「栄養学」「ボディケア」を学ぶ方 必見です!』2009年10月2日
     http://www.sunathlete.com/comming/post_53.html
===引用開始===
 今回、人間の基礎の基礎である、継続的な健康(未病)を維持するために
 予防医学の第一人者であります。
 あの堀口医院の理事長(前院長)であります医師
 堀口 裕(ひろし) 先生をお招きいたします。
     (中略)
 堀口先生は
病気には成らないで欲しい・・・いつもそういわれております。
 色々な方向を研究された結果
 マイナスイオンが人体の細胞を活性化させた結果に
 免疫力向上や血行改善を促進してゆくと言われます。
===ここまで===

 ……よりにもよって、と言うか、今さら『マイナスイオン』かよ!?
 上司の理数系知識が低いのは前々から知っていたが、ここまで酷いとは予想外だった。
 ……いや。
 「乳酸菌発酵の食品なのに、殺菌したら乳酸菌を入れた意味がなくなるじゃないか! なんでこんな事をするんだ! 理解できない?!」
 と某乳酸菌発酵食品を批判していたくらいだから、予想してしかるべきだったかもしれない。
 ……殺菌すると、菌に分解・生成された化合物が元の物質に戻ると思っていたらしい……それ何て言う『ゴールド・エクスペリエンス』? そもそも乳酸菌のほとんどは胃で殺菌されるのに、それすら知らないっていうのが……。

 こんな上司が『陽イオン』『陰イオン』の単語を知るはずもなく……と言うとバカにしている感があるが、本当に知らなかったのだから仕方ない……「『マイナスイオン』は化学で使う単語ではありませんよ」と俺が説明をしたら、無視……どころか肉体言語込みで逆ギレされた。

 肉体言語の詳細はエントリの主旨から逸れるので省くとして、マイナスイオンの健康・医療効果で上司ががなり立てた内容は、似非科学・マルチ商法批判サイトや掲示板で見かける信者の発言とそっくりだ。
 ……実際はチンピラごろつきの口調で罵倒されたのだが、見苦しいので変えてある。

 曰く。
 ・「マイナスイオンがインチキなら、医療機関で使うはずがない。医療機器として認可されているのだから、マイナスイオンには効果がある」
 ・「堀口医院その他、マイナスイオン治療器を使っている病院では、患者が列を作って待っている。それ程効果のある治療法だ。疑うなら病院に行って見てくればいい」
 ・「大手メーカーもマイナスイオンの装置を作っている。存在しないと言うなら、大手メーカーが作るはずない」
 ・「マイナスイオンが存在しないと言うなら、存在しないことを証明しろ。できたらノーベル賞ものだ」
 etc. etc…

 こうも見事にはまられると、
 「たった1回のセミナーで、ここまで洗脳されるか! 恐るべし、洗脳セミナー!!」
 ……と、笑えない冗談を飛ばすしかない。

 さて。
 どうすれば上司に、マイナスイオンに根拠はないと理解させられるか?

 カルトやマルチ商法にはまった人への対処としてよく言われているのは、
 1. 話は聞いても相手(会員になる・セミナー出席・商品の購入)はしない。
 2. 共通の友人(がいれば)に、注意するよう連絡を入れる。
 3. 当人の熱が冷めて元に戻ったら、受け入れる心構えをしておく。
 ……だったかな?

 つまり今は放置して、遠巻きに「これっておかしくないか?」と自覚するのを待つしかない訳だ。

 ところが、だ。
 不可抗力とは言えかなり悪い選択をしてしまった。
 マイナスイオン批判の資料を見られてしまったのだな。
   菊池誠『「ニセ科学」入門』大阪大学サイバーメディアセンター
     http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html

 資料としてプリントアウトしたものを机の上に置いておいたら、それを上司に見られてしまった。不本意ながら、結果としては否定する資料を見たのと同じ。
 ……タイトルだけで上司はブチ切れ、肉体言語に走ったから中味は読んでいないと思う。

 こっちを見られたら、もっと大変だったかもしれない。
   菊池誠『科学者はマイナス・イオンブームの何に困惑させられたのか』大阪大学サイバーメディアセンター
     http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/texts/minus_ion.pdf

   『ニセ科学』YouTube
     http://www.youtube.com/watch?v=wF7usjmg-xw


   『まん延するニセ科学』YouTube
     http://www.youtube.com/watch?v=sCKPIzb3ajA


 そもそも中学生レベルの理科でも、マイナスイオンの説明がおかしいのは十分理解できるはずだ。
 ところが、
 「堀口先生は工学部を卒業してから、医学部に入り直して医者になった。中学生レベルの理科の知識しかないくせに、マイナスイオンの研究を長年続けている先生に難癖をつけるのか」
 と意味不明な理由を付けたのが上司だ。
 ……いえいえ。中学生レベルの科学を求められているのは貴方です。

 さてさて。
 俺がマイナスイオンを批判したにあたり、怒り心頭の上司が難問……というかイチャモン・難癖を吹っかけてきた。

 曰く。
 ・堀口先生は何年もマイナスイオンを研究し、装置を開発してきた。だからお前はそれを否定する研究をして「マイナスイオンが存在しない」という論文を提出しろ。
 ・「(中高生の)教科書に書いてある」「○○○からの引用」などの根拠は、間違えている恐れがあるから使うな。自分で実験・研究した内容だけで語れ。
 etc. etc….。

 「悪魔の証明」を求めるのは良くある話だが、教科書まで否定して「実験で証明しろ」と来たのは新しい。
 ……「何百何千人が追試を行って、少しずつ修正した内容をまとめたのが教科書なのに、それを否定するなんてどこの原始人?」「厨ニDQN乙」と、どこかの巨大掲示板に書くような台詞が浮かんだのは秘密だ。

 「何一つ証明できないくせに、何年も研究している人を批判するとは、一体何様のつもりだ!」
 の一文は、上記「曰く」で並べた文言の後に必ず付いてきている。
 ……前後がつながらないのはお約束……? 証明するのはこっちではなくて、「先にマイナスイオンの健康効果を堀口先生する方が先」だと言ったら、肉体言語を食らった。

 今回が初めてではないものの、この上司、つくづく科学リテラシーを持ち合わせていないのだな、と絶望的な気持ちになった。
 ……まぁ、職場では研究・開発の人が呆れ返る科学の基礎を平気で質問する人物なので、科学リテラシー云々を話すだけ無駄な相手だ。

 このままでは愚痴で終わってしまうので、「否定できるならしてみろ」と、上司がセミナーかどこかでもらってきた資料を並べてみる。上司によると、「マイナスイオンを証明する」資料らしい。
 ……否定ではなくて、科学的に「おかしい」と指摘しただけなんだけどね。

 (1) 『電子の基礎知識』カンゲンイオン医学研究会資料
 (2) 堀口昇、堀口裕、二見英揚、植松美紀、仁木麻早、佐藤有『赤血球細胞内検査・血液検査に基づく新陳代謝検査法の開発と「新陳代謝スケール」の作成』医療と検査機器・試薬 30(3): 299-314, 2007.
 (3) 堀口昇、時代強、堀口裕『HIV/AIDSに対する還元電子治療成績』化学療法の領域、2008年10月号別冊(原著:Antibiotics & Chemotherapy, 24 (10): 93-103, 2008)
 (4) 堀口裕『心拍スペクトル解析から検討したマイナスイオンの自律神経への影響』全国マイナスイオン医学会誌、4 (1): 40-44, 2000.
 (5) 『カンゲンイオンの効果 いつまでも健康でいたい』カンゲンイオン医学研究会、2005. 3-4
 (6) カンゲンイオン医学会誌、7 (7): 2004.
 (7) 『Miエナジー ET-21』取扱説明書
 (8) 『Miエナジー使用マニュアル』カンゲンイオン医学研究会、2005. 2-3.

 (1)の『電子の基礎知識』については、以前『水商売ウォッチング』の掲示板で触れた事がある。
 ……よそ様の掲示板なので手加減していたのと、書き込みに不慣れだった時分なので、今読み返すと全身を掻き毟りたくなる。言いたかったことの半分も語れていない。
     http://atom11.phys.ocha.ac.jp/bbs01/msg.php?mid=19152&form=tree

 (2)〜(8)の文献・資料については、機会を見つけてまとめられればと思う……のだけど、エントリのタイトル通り「いまさら?」感がしないでもない。
 例えば(2)の『赤血球細胞内検査(以下略)』文献では、
 「この検査法は『人の病気は細胞に起こり、細胞の酸性・酸化の亢進が正常なエネルギー産生を阻害する』という考え方に基づいている」
 と冒頭で断っているくらいダメダメなものだ。中味はまともに試験したようなのに、出だしから科学論文じゃないって。
 ……後の資料も推して知るべし。

 さてさてさて。
 職場であれば、上司がマイナスイオン商品を取り扱いたいと稟議を出したところで、上層部で止められる公算が大きい。被害があるとすれば、直下の俺が八つ当たりされる程度だろう。
 しかし俺が問題と感じるのは、上司が自称(裏を取るつもりはない)するに、上司は町内会会長と、中学生の野球チーム(全国大会出場経験有り)の監督をしている、というものだ。
 『水からの伝言』みたいに、おかしな経路で教育に入っていかないか。それが心配だ。
 ……マイナスイオンはとっくに社会に溶け込んでいる、という異論は認める。
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2009年08月23日

ゼロ(零)磁場

 地殻変動による断層同士がぶつかり合う事で互いの磁気を打ち消し、磁気が低くなっている土地がある。そのような土地はエネルギーが低いと思われがちだが、ある特殊なエネルギーが形成・蓄積されている。
 古来より聖地、あるいは癒しの地として知られる場所がそれであり、有名な場所ではフランスのルルド、中国の蓮華山、日本なら長野県の分抗峠が該当する。それらの土地のエネルギーが蓄えられた水が、「奇蹟の水」「神秘の水」として知られるのは周知の通りである。
 この癒しのエネルギーを蓄えている土地を、磁気の低い(あるいは無い)事から『ゼロ磁場』と言う。


 「蓮華山やルルド地方に断層なんかあるのか?」というのが俺の疑問だったりする。
 しかし『ゼロ磁場』とそこの水の奇蹟的な効果を信じる信者は、疑問を抱いたりしない。
 ……カルトは教えを疑う事を禁じるようだし。

 本人が宗教だと理解して一人細々と信仰するなら放っておいても害はないが、市などの自治体がさも真実のように取り上げるのは問題だろ?

 長野県伊那市のHPより。
   『分杭峠(気場)』2007年4月27日
http://www.inacity.jp/view.rbz?nd=95&of=1&ik=1&pnp=38&pnp=76&pnp=95&cd=157
===引用開始(赤色強調は当方による)===
☆☆ ゼロ磁場(気場とは?) ☆☆

【断層断面図ゼロ零磁場(断層)の機能】

 分杭峠は中央構造線という大断層の上にあります。断層には地表面のズレとしての段差並びにゼロ零磁場があり、人間に例えると皮膚の経絡(けいらく)・経穴(つぼ)と同様に気の通る道並びに気の出口・入口であると考えることが出来ます
 断層の両側から押し合う力によって、断層には全般的にエネルギーの蓄積があり、また局部の突出部にはエネルギーのないゼロに近い場所(零場)もあり得ると推定出来ます。零は文字どおり「なにも無い、零」でありますが、(+)回転と(-)回転が一対になった素粒子状のスピン対(気)は零にならず、逆に零場に次第に蓄積される傾向があると判断できます
 断層付近には、放射線の強い場所や地磁気変化の著しい場所があります。実験によると、サイ(気)はラジウム等放射性物質原子の原子核内の不安定な中性子に直接働きかけて、y線などのエネルギーを放出して、より安定的なラドン等になる(ラジウム崩壊)性質があります。
 気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています。ラドン温泉などとして知られる低線量放射線は、免疫の機能を高め、自然治癒力を増進させるもので、健康に良いと言われています
===ここまで===

 『ゼロ零磁場』と『サイ(気)』について説明しているらしいのだが、何度読み返しても意味不明だ。
 ……「考えることが出来ます」「推定出来ます」「判断できます」「考えられています」と、歯切れの悪い説明しかできない事は理解した。

 スピンに触れているから、つい『ゼロ零磁場』とは原子核のスピン(核磁気モーメント、核スピン)の事かと誤解しそうだが、「スピン対は零にならない」「対は零場に蓄積される」で意味が判らなくなる。
 と言うか、真面目に物理化学を勉強している人なら、鼻で笑う与太話だろ、これ。俺は笑えないが。
 ……「零場」なんて単語はないし、スピン対が「気」のはずもない。「蓄積」されるのはゴミデータとデータ取り(の準備)に費やす時間と、無駄になる紙の束ぐらいのものだ。

 更に意味不明なのが、「実験によると、サイ(気)は放射性元素の不安定な中性子に働きかける」の下りだ。

 どういう実験で「気」を確認したのか、と初歩的にツッコむならば、だ。
 「気」によって、半減期が短縮されたのを確認したと見るべきだろうな、うん。物理化学だけでなく、地質学や考古学あたりの年代測定に半減期を用いる学問にも影響が出るから、ぜひとも論文にまとめて提出してもらいたいものだ。
 ……放射線治療後にも使えるな。医療にも大貢献だ。こんなネットの一角で実験で確認したなんて言っている場合じゃないぞ。

 放射性元素の中性子は、不安定でも何でもない。
 原子核での陽子と中性子の比率が歪なために中性子が飛び出し、原子番号の低い元素になるという話であって、中性子が何か変なエネルギーを出して、陽子・中性子の数も変わらずに安定した元素なり同位体になる訳ではない。
 ……比率が歪というのも正確な表現でないので心苦しいところだ。

 「気は不安定な物質を安定化してバランスを取る性質があり、この崩壊の際のエネルギーを使って異常現象を起こしていると考えられています」というのも意味が判らない。
 ……意味が判らないと、何回言わせたいのだろう?

 不安定な物質を「安定」させているのに、どうして「崩壊」するのさ? 放射線のある温泉が健康に良いような話は時々耳にするけど、それが「気」の起こす「異常現象」なのか?
 ……「気」が異常の原因なら、健康に良いというのと矛盾するだろ?

 軽くツッコミを入れてみたものの、『ゼロ零磁場』『サイ(気)』とある時点で、似非科学なのは述べるまでもない。

 これがどこかの企業のHPならまだしも(それでもネタとしての需要はある)、市がHPに堂々と載せているのだから、伊那市が他にも変なものに手を出していないか、ちょっとどころではなく酷く心配になった。
 ……ざっと見た限り、EM菌入りの団子を川に投げ入れる活動や、「ありがとう」と声をかけて水質の改善を図るとか、波動転写器で分杭峠の「気」を転写した水を販売する、とかはしていないようだ。


 いや、甘かった。
 市が販売しているのではないのが幸い(?)、『ゼロ磁場の秘水』と名前で既に販売されている。
   零磁場ミネラル株式会社HP
     http://zerojiba.jp/

 この企業は波動転写器を使った水は販していないようだ。
 ……しかし「気」やら「スピリチュアル」やらの怪しい単語の数は、伊那市のHPの比ではない。

 勿論、波動信者が目を付けないはずがない。
   分杭峠(ぶんぐいとうげ)ゼロ磁場の情報サイト
     http://bungui.fineup.net/

 管轄(?)の市が「気」やら「ゼロ零磁場」なる似非科学をHPに載せているのは、似非科学・オカルト信者にどう映っているのだろう?
 「市がHPに掲載しているのだから、ゼロ磁場水と気と波動は科学的に正しいと認められたのだ」かな?


◎参考◎
 ゼロ磁場ショップ〜イヤシロチ〜
   http://www.honmono-ariake.com/
 NMR超基礎編
   http://www.chem-station.com/yukitopics/nmr-kiso.htm
 Wikipedia 『放射性物質』
   http://xurl.jp/1t1a
 Wikipedia 『同位体』
   http://xurl.jp/2t1a
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2009年08月13日

オールイン被害弁護団結成

 2007年9月から2〜3回エントリを書いている投資詐欺の『株式会社オール・イン』が佳境に入った。
 ……佳境に入ったのは、正確には半月以上前の2009年7月20日に一斉捜索からだ。

   読売新聞『無登録FXで巨額資金、投資関連会社を捜索』2009年7月20日
   http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090720-OYT1T00307.htm?from=nwlb(リンク切れ)
===全文掲載(赤色は当方による)===
 札幌市の投資関連会社「オール・イン」が無登録で外国為替証拠金取引(FX取引)を行い、高配当をうたって総額100億円超の巨額資金を集めていたとされる問題で、道警は20日、金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で、札幌市北区の同社本社など、同社関連施設を一斉捜索した。

 捜索を受けたのは、同社本社のほか、仙台市泉区の同社関連会社、札幌市中央区の同社社長の自宅など数か所に上った。

 捜査関係者などによると、同社は2007年夏頃から会員を募集。1口10万〜300万円の出資金を、海外の資産運用会社が指定した都内の銀行口座に入金し、インターネットを通じて自動的にFX取引ができる専用ソフトウエアで自宅などのパソコンから出資金を運用する仕組みで、全国約2万人の会員を集めていたという。

 FX取引を行うには金融庁の営業登録が必要。オール・インは営業登録がなく、FX取引については、海外の資産運用会社が独自に行っているなどと主張しているが、道警では、オール・インが会員にFX取引ができるソフトウエアを有償提供していたことについて、金融商品取引法で制限している投資助言などの行為に当たると判断した。

 同社では、運用実績について契約書などに月約20%の利息があるとしていたほか、会員募集の際には「毎月30〜40%の配当がある」など、高配当を約束して勧誘していたケースもあったという。

 しかし、昨年秋から会員への配当が遅れるようになり、解約しても出資金が返還されないトラブルも起きていることから、道警では出資金が適切に運用されていなかった可能性もあるとみており、今後は押収した資料の分析を進め、詐欺容疑などの適用も視野に捜査を進める方針。

 同社の広報部長は、FX取引について「金融庁に登録はしていなかった」と認めているが、違法性の認識については「自分の立場では話すことができない」としている。また、同社側が社長名で会員に配信したメールでは、FX取引は海外の資産運用会社が行っているとして、「(オール・インが)法律に抵触するような行為を行っていない」などと主張している
===ここまで===

 さて。
 「海外の資産運用会社が独自に行っている」という下りなのだが、俺の情報収集能力の低さもあって社名が見つからない。
 ネットで調べると、「Victory Run FXが自動売買を行っている」から「オールインの投資のプロが手ずから取引している」「運用などしていない。実績は捏造だろう」まで色々と話が錯綜している。
 ……投資など一切しておらず、会費を全て自転車操業に使っていたのだろう、というのが俺の推測。

 資産運用会社として、『アセットカンパニー』の名前を何度か見かけてはいる。ただしこの業者は、昨年のうちに登録を抹消されている。

   北海道新聞『FX無登録容疑のオール・イン 昨年6月に登録業者買収 信頼性高める狙いか』2009年7月23日
     http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/178685.html
===全文掲載(赤色は当方による)===
 金融庁に無登録で外国為替証拠金取引(FX)に関与し、多額の資金を集めたとして金融商品取引法(金商法)違反(無登録営業)などの疑いで道警の家宅捜索を受けた「オール・イン」(森克彦社長)が昨年、正規のFX登録業者を買収していたことが22日、分かった。この業者は買収直後に金商法違反で登録を抹消されたが、登録業者の買収により「会員の信頼性を高める」(関係者)狙いがあったとみられる。

 買収されたのはFX業者「アセットカンパニー」(札幌)。2007年11月に金融商品取引業者として北海道財務局に登録。100人弱の顧客を集め、1億円を超える証拠金を預かっていた。
===ここまで===

 この記事にある理由から、『アセットカンパニー』が運用していたとは考えにくい。ついでに国内の業者だし。
 ……資産運用の有無については、これからはっきりすると期待したいな。

 さてさて。
 資産運用からネット通販に至るまで、オールインの提供するサービス(と言って良いかどうか疑問だが)を受けるには、アイポイントというポイント(擬似通貨)を購入しないとならない。
 このポイントを取り扱っているのが、キプロスにある『G.T. IPoint』という企業だ。

 ……が。
 別のエントリでも書いているように、G.T. IPointはオールインのペーパー企業で、登記はあっても実体は存在しない。
 実際、G.T.IPointの存在は確認できなかったと報道された。

   北海道新聞『マルチ商法会員狙い勧誘か 札幌市のFX投資関連会社』2009年7月21日
     http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/178408.html
===全文掲載(赤色は当方による)===
 金融庁に無登録で外国為替証拠金取引(FX)に関与したとして、金融商品取引法違反などの疑いで道警の家宅捜索を受けた札幌市の投資関連会社「オール・イン」が、会員を集めるのに当たって同社関係者らがマルチ商法の会員を対象に勧誘していた疑いがあることが21日、捜査関係者への取材で分かった。

 同社の実態がマルチ商法と類似していたことや、会員に対し「資金の入金先」と説明していたキプロスの電子マネー業者が実際には存在しなかった疑いもあり、道警は近く幹部らから事情聴取を行い、組織の実態解明を進める方針。

 捜査関係者によると、札幌市内の健康食品などのマルチ商法会員を対象に勧誘、中でも末端会員に投資を持ち掛けるケースが多かった。同社の複数の幹部はマルチ商法に携わっていたことがあるとみられるほか、これまでキプロスの電子マネー業者の存在は確認できていないという。

 オール・イン元会員によると、勧誘した会員が開設した口座数に応じて紹介手数料が入る仕組みになっており、現金や電子マネーとして支払われていた。紹介した会員がやめない限り、手数料は毎月支払われたという。

 同社の会員数はピーク時には2万人を超えており、会員が会員を勧誘することで、短期間に会員を急増させたとみられる。
===ここまで===

 つまりG.T. IPointに振り込まれた金銭は、全てオールインが着服している。前述したように、運用していないと推測しているので、あえで「着服」という表現にした。

 現在の代表、森克彦氏がウインズインターナショナルから転がり込んで約2年。その間に被害額は100億円を超えてしまったか。
 ……こんな弱小ブログでも『Yahoo知恵袋』からのリンクを辿ったり、『オールイン 森克彦』で検索して来る人がいたから、少しは被害防止に役立っていた……と思いたい。

 2年で一斉捜索となったのは、個人的には早い気がしないでもない。しかし被害金額の大きさと、被害者が増えるのを防ぐという意味では、遅かったとも感じる。

 話はずれるが、かつて輸入品を扱う職場にいた事があり、為替の変動を見ていた時期がある。支払日は毎月何日と決まっていたため、為替に合わせて支払うと言う事はなかったけれど、原価に跳ね返ってくるので為替の上下に一喜一憂していた。
 その頃の経験で学んだ……と言うと大げさか……のは、素人では為替の上下の予測は不可能という事だ。プロでも読めないのだから、素人が手を出せば大火傷するのは改めて言うまでもない。

 FXにしろ商品先物にしろ、この手合いの投資話に手を出すのは、その人の都合や考えもあるから、理由についてはどうこう言わない。

 だけどオールインが詐欺集団(Victory Run FXの存在が不明だった頃はネズミ講と言ったが)なのは、JPモルガンから名指しされた時点で明らかになっていたし、JPモルガンに名指しされる前後でも詐欺を疑う根拠はあった。

 それでもオールインを信じて投資した人には、かけられる良い言葉が思いつかない。
 ……何を考えて参加したのだろう?

   Miffy58『オールインって』
     http://blog.livedoor.jp/miffy58/

 この期(2009年8月)に及んでも、親がオールインから目が覚めないmiffy58氏にも、親が何を考えて未だにオールインを信じ続けているのか理解できないようだ。蚊帳の外のこちらに理解できるものではないのかもしれないな。

 最後に。
 オールインの被害者弁護団が結成された。

   北海道新聞『オール・インに賠償請求へ FX関連で被害弁護団を結成 』2009年8月6日
     http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/181227.html
===全文掲載===
 金融商品取引法違反の疑いで家宅捜索を受けた札幌の外国為替証拠金取引(FX)関連業者「オール・イン」をめぐり、東京の弁護士有志5人が5日、被害弁護団(荒井哲朗代表)を結成した。9月に同社や関連企業、役員、幹部会員らに対し、会員の出資金返還を求める損害賠償請求訴訟を起こす方針。

 9月4日まで会員の弁護団への委任を受け付け、両社、役員、幹部会員の破産申し立ても検討する。詳しくは事務局の「あおい法律事務所」のホームページを参照。問い合わせは同事務所(電)03・3501・3600へ。
====ここまで==

 あおい法律事務所『(オール・イン商法・リブラ商法に関する)説明書』
     http://www.aoi-law.com/gtipoint.html
 同上『オール・イン、リブラ等GTI商法被害事件 参加申込みについて』
     http://www.aoi-law.com/gtipoint_flow.html

 ……なんだろう。ウインズインターナショナルと同じに、9月になっていきなり「倒産しました」という話になる気がするのは……。


●過去ログ
『ウインズインターナショナル倒産』2007年9月30日
   http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/58088725.html?1250046822
『投資詐欺オールインとスターライン』2008年4月26日
   http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/94788312.html?1249959856
『警報!FXソフト』2008年7月13日
   http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/102804476.html?1249959860
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2009年05月19日

似非科学でごきげん? なクリニック

 ちょいと久し振りに『健康産業流通新聞』の「代替医療の現場から」。
 2009年3月28日と古い記事だけれど、90回目を数えるこのコラムに登場した人物は「三番町ごきげんクリニック」の院長、澤登雅一(さわのぼり・まさかず)医学博士だ。

   三番町ごきげんクリニックHP『院長プロフィール』より
     http://www.kenko.org/about_clinic/profile.html
===引用開始===
医学博士
東海大学医学部血液腫瘍内科非常勤講師
日本内科学会認定内科専門医
日本血液学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定
日本抗加齢医学会専門医
米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医
日本医師会認定産業医
1992年、東京慈恵会医科大学卒業。
血液内科医として、日本赤十字社医療センターにて14年間勤務。
2005年より三番町ごきげんクリニック院長。
===ここまで===

 プロフィールを眺める限り、素人目には1点を除けばかなりまともに見える。
 しかしHPを見れば明らかなように、「三番町ごきげんクリニック」は代替医療専門のクリニックだし、「米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医」という肩書きで、全てを台無しにしてしまった印象がある。
 ……キレーション治療に効果がない事は別のエントリで以前書いた。

 あらかじめ断っておくと、『米国先端医療学会』などとHPで銘打っていても、ACAMはAmerican College for Advancement in Medicineの略で、ゲーリー・ゴードン(Garry Gordon)博士が設立したNPOだ。正式な学会ですらない。
 ACAMは既存の医療をほぼ全面的に否定し、CAM(Complementally Alternative Medicine、代替医療)を推進している組織でもある。
 ……『キレーション療法』で調べると、Garry Gordonの名前がかなり出てくるので、ACAMはキレーション療法推奨で一番手を担っている組織と考えても良いだろう。

 しかもACAMは、キレーション療法に科学的な根拠はなく、「キレーション療法に効果があるような広告」は行わないと、1998年にFederal Trade Commission(FTC、米連邦取引委員会)と和解した経歴も持つ。

Federal Trade Commission “Medical Association Settles False Advertising Charges Over Promotion of "Chelation Therapy" December 8, 1998.
   http://www.quackwatch.org/02ConsumerProtection/ftcchelation.html
(Quackwatch のページより)
===引用開始===
The American College for Advancement in Medicine (ACAM) has agreed to settle Federal Trade Commission charges that it made unsubstantiated and false advertising claims that non-surgical, EDTA "chelation therapy" is effective in treating atherosclerosis, and that the effectiveness of the therapy has been proven by scientific studies.

米国先端医療学会(ACAM)は、アテローム性動脈硬化症の治療効果に、手術を用いないEDTA『キレーション療法』に科学的な研究で効果が証明されたかのような無根拠かつ虚偽の広告を今後行わないと、米連邦取引委員会との間で和解をした。
===ここまで===

 澤登院長がこの事を知っていて、キレーション療法を薦めているのであれば悪辣だし、知らなければ許されるというレベルの話ではない……と思うのは俺の偏見。
 ……ただし広告規制はアメリカの話で、日本は無関係だと言われればそれまで。

 以前のキレーション療法のエントリで色々と調べていた時に、このクリニックと澤登院長にも突き当たっていたので、俺的に「怪しい人物」との先入観がついているのは認める。
 その上で、話を記事に戻す。記事からの引用部は青字にする。

 私のクリニックでは大きく3つのテーマを掲げています。ひとつは血管、2番は体のさびつき(酸化)、3番は栄養バランスです。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす粥状動脈硬化は血管にコレステロールなどがたまって動脈が狭窄し、血管が詰まりやすくなった状態です。

 血管にものが詰まって動脈が狭まり動脈硬化につながるあたりは、俺は専門家ではないので断言はできないけれど、正しいと思われる。
 ……日本赤十字社で血液の専門家として14年勤務していて、それでデタラメを並べるはずないだろう。……という考えからだったのだけれど、某内視鏡の医学博士が専門分野でデタラメを並べていたのを思い出したら、自信がなくなった。

 体がさびつく(酸化する)と老化が進むことはすでに科学的に十分認められています。また、ほとんどの病気の間接的あるいは直接的な原因となることもわかっています。

 「身体の酸化=老化」の図式は、似非科学・似非健康関係のよくあるパターン。「酸化=老化」の例として、新しい鉄釘と赤錆の浮いた鉄釘との比較写真を時々見かける。

 ちょっと考えてみよう。
 ヒトの身体は鉄(Fe)でできているか? 答えはNo。Yesだと思うなら、亜鉛を身体に巻くなり、微弱電流を常時流し続けるなり、pHが10かそこらの塩基性水溶液に漬かっていればよろしい。
 そもそも鉄を例に出して同列に語る自体間違えている。
 ……生命体には新陳代謝もあり、細胞は常に更新されている。この釘に浮いたサビの与太話を信じるヒトは、釘にも新陳代謝があると考えているのか、自分には新陳代謝がないと考えているのか、一体どちらなのだろう?

 ところで、細胞の酸化と老化を比較したデータが出ているとは知らなかったな。その論文をぜひ教えてほしい。

 3番目の栄養バランスに関して今大きな問題は、土壌枯れや農薬、化学肥料などで野菜や果物に含まれる栄養素が以前に比べ非常に少なくなっていることです。例えば50年前と今とを比較すると、ニンジン1本に含まれるビタミンA量は約10分の1に減っています。私たちは1日に食品添加物を1円玉1枚程度の量をとっているといわれます。食品添加物を体内で処理するにはビタミンB群などが多く必要です。つまり、私たちは昔と同じ量を食べてはいては、もはや栄養は不十分だということです。ところが、実際に私たちにどんな栄養素が足りないかは通常の検診ではわかりません。

 ……Don’t fix it unless it is broken. 壊れていないものは直すな。このフレーズが浮かんだ。
 この辺の説明は、澤登氏の妄想全開という感じだな。

 生鮮食品の栄養素が50年程昔と比べて10分の1に減っている、という話は良く聞く。ただしサプリメントの販売を目的とするサイトや提灯記事でだが。もう少し言えば、栄養素の減少の話は、根拠のないでまかせだ。

 栄養素減少の与太話は、俺の調べた範囲では、1936年6月の『Cosmopolitan』の記事が出所のようだ。
“’Dead Doctors’ doesn't die.” National Council Against Health Fraud Newsletter, Jan/Feb 1998.
   http://www.ncahf.org/nl/1998/1-2.html
===引用開始===
It turns out that the "document" is nothing more than the reprinting of a highly speculative article about a passing fad written by a Florida farmer in the June, 1936, issue of Cosmopolitan magazine as requested by Florida's Senator Fletcher.

その『記事』は、Fletcherフロリダ州知事の要請を受けたフロリダ州の農家が、1936年6月のCosmopolitanに掲載した流行に追従した記事であり、正確性の非常に低い記事以外の何物でもない。
===ここまで===

 「食品添加物を分解するのにビタミンB群がうんたら〜」の下りは初耳、かつ意味不明。
 ……分解・吸収されなければ、そのまま体外に排出されるので、なぜ体内で一生懸命分解しなくてはならないのだろう? 食物繊維などの『難消化性』のものは、分解されずに排出されるのを知らない……とか?

 さて。
 出だしから疑問満載のこの3つのテーマを実践するために、「ごきげんクリニック」では点滴療法・サプリメント療法が主軸として行われている。その代表的なものが、『キレーション療法』と『ビタミンC大量点滴療法』だ。

 キレーション療法は既に取り上げているので、ここでは省略する。
 『ビタミンC大量点滴療法』は、分子矯正医学(Orthomolecular Therapy)や『メガビタミン』で知られる似非科学だ。

私がビタミンC大量点滴療法を知ったのは、2005年にアメリカで開催されたACAM(アメリカ先端医療学会)でした。(中略)私はずっとガンの医療に従事していたので、ビタミンC大量点滴療法の発表を聞いたとき、ガンの標準的治療法の欠点を補う治療法だと直感しました。

 ここで出てきたACAM。
 ……直感で新規の医療方法を採用されては困る。せめて査読のある論文で調査してほしい。そう思うのは俺だけ?

優先すべきは標準的治療です。なぜならばビタミンC大量点滴療法よりも標準的治療のほうが、治療効果に対する科学的根拠が高いことは事実だからです。私のクリニックでは、ガンが進行して標準的治療では難しいという方や有効な治療法がないという方を除いては、標準的治療法との併用を原則としています。

 まともな医療も提供しているのか。
 うがった見方をすれば、「効果のないビタミンCの点滴だけで、医療ネグレクトで訴訟を起こされるのを防ぐため」とも取れる。
 ……これで治る患者が出たら、標準的な治療も同時に行っていた事には触れないで、「ビタミンC大量点適法でガンが治りました」と大きく宣伝するのかな?

 私自身はクリニックでガンの患者さんにビタミンC大量点滴療法を提供するだけでなく、所属する東海大学血液腫瘍内科で、再発悪性リンパ腫に対するビタミンC大量点滴療法の第一相臨床試験を行っています。

 体験談の収集ではなく、きちんとした方法で治験を集めているらしい。
 それならそれで良いのだけれど、果たして有意義なデータが蓄積できるのやら。
 ……肯定的なデータだけでなくて、「○○人を対象に試験を行った。有意差は確認できなかった」の否定的なデータも『有意義』に入れるのは言わずもがな。

   Wikipedia『治験』
     http://xurl.jp/jiq
===引用開始===
第T相試験(フェーズ T)
自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討することを主な目的とした探索的試験である。(中略)抗がん剤などの投与自体に軽い手術や長期間の経過観察や予め副作用が予想されるものは、外科的に治療の終わった患者(表面的には健常者)に対して、補助化学療法としての試験を行うことがある。
===ここまで===

 学問の自由なので、研究すること自体の否定はしない。ただし結果が良好であれ空振りであれ、ちゃんと論文にまとめて提出してほしい。
 ……どこかの講演会で「かれこれこういう研究をしています。良好な結果が出ています」だけの話だけで終わらせずに、さ。

 さてさて。
 インタビューによれば「三番町ごきげんクリニック」で提供している医療にもまともな医療はあるようだが、HPを見る限りでは「かなり怪しい」治療法を色々と提供している「怪しいクリニック」という印象しかない。

 困ったことに、この手の怪しい医療は、なぜかメディアへの露出が多いのだよな。いわゆる『業界紙』の『健康産業流通新聞』以外では、2008年3月25日にはTBSの『これが世界のスーパードクター8 !』にも出演したらしい。
     http://tvtopic.goo.ne.jp/program/77/12117/168846/0/0/0/index.html

 放送は見ていないので内容については触れないが、ガンや循環器系の病気に悩むヒトがこれを見たら、あっさり引っかかってしまうのではないかと不安を感じる。

 「効果があるかどうかは判らないけれど、試してみないよりはマシ」と考えるのならば、それはそのヒトの自由なので、『キレーション療法』でも『ビタミンC大量点滴療法』でも受ければ良いだろう。
 だけど効果がないと報告は上げられている訳で……。
 ……そんな似非医療にお金を注ぎ込むよりも、高めのレストランで食事するなり旅行するなり、別の事に費やす方が精神的に良いと思うのだが、どうだろう?
posted by にわか旅人 at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月22日

今更ながら似非科学批判批判

 かれこれ1年近くになるのかな?
 一時期、似非科学を批判するあちこちのブログで、『似非科学批判批判』が話題になった。
 「一見科学的な説明に見えるが、突き詰めれば既存の科学とは相容れない(もしくはあからさまに矛盾している)説明をしている商品や理論」を、「いや、その説明はおかしい。既存の科学では、かれこれこのように証明されている」と批判するのを 似 非 科 学 批 判とするなら、『 似 非 科 学 批 判 批 判 』は「似非科学を批判する行為を批判する行為」と言えるだろう。

 文末に「だろう」と付けたのは、似非科学批判批判について触れているブログをいくつか巡り、似非科学批判批判者のコメントを読んでもみたところ、俺の読解力と理解力の低さからか、「具体的に何を問題として、似非科学批判を批判しているのか」、俺には理解できないからだ。

 専門知識がある訳でもなく、『似非科学批判』の真似事しかできない俺の知能では、コメント欄での議論の深さと早さに参加する機が得られず、ROMするしかなかったのが実際で、ほとぼりが冷めてかなり経つ今なら、自分のブログでこそこそ書く程度であれば人目につかずに済むだろうとの希望的予測から、春を寝過ごしたカエルのタイミングで口を出してみる事にする。

 過去ログから。
 『健康産業新聞』が『似非科学批判批判』している記事に、俺なりにツッコミを入れたものだ。
   過去ログ『健康産業界の偽科学への主張?』2007年3月25日
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36822643.html

 過去ログ内でも「何が言いたいのか判らない」と書いているし、改めて記事を読み直しても「で、何が言いたいの?」という疑問符が真っ先に出てくる。
 ……似非科学な商品とそれらを製造・販売する企業が多い健康業界だから、似非科学を支持するためにも『似非科学批判批判』な記事を書く責任がある、というのは判る。

 記事を書いた人物が、マイナスイオンや波動を似非科学と知っているのかどうか、は多分重要ではない。
 ……この新聞社の記者・元記者の何人かと面識があるが、あくまで会話の印象で語るのならば、科学・似非科学の区別がついていなさそう……ではあった。怪しい売り文句だと薄々感じていても、仕事だから仕方ないという諦観もあると思う。

 その記事の問題点は、既に当時にツッコミを入れているので、ここで蒸し返すつもりはない。しかし改めて『似非学批判批判』という観点で読み返すと、「似非科学を批判する人を批判する」側に観察できる独特の主張が見える。

===引用開始===
未科学を偽科学と批判するグループの、事を性急に断じてしまう考え方こそが、非科学的といわざるをえない。
   (中略)
要は科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる。してみれば、このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる。
===ここまで===

1. 似非科学批判批判の特徴 その1
 似非科学批判を一からげにして語るため、どの似非科学批判を批判しているのかが判らない。

 「未科学を偽科学と批判するグループ」というのが、一体どこのグループを指しているのかは知らない。まずそのようなグループの存在を俺は知らないし、巡回ルートにあるそれぞれのブログも、各自がめいめい勝手に似非科学批判を行っており、グループを構成などしていない。

 となれば、この記事で批判されている「未科学を偽科学と批判するグループ」というのは、記事を書いた本人(と、記事を掲載した新聞社の関係者ら)の妄想の中にのみ存在する対象であり、そのような妄想内のグループを批判するなど、競泳用のプールに釣り糸を垂らすぐらいに無意味だとしか、俺には表現のしようがない。
 ……勿論、俺がそういうグループの存在を知らないだけの可能性はある。

 俺からの視点で『似非科学批判を批判』する側は、「科学的に誤った情報を、科学と称して垂れ流している」という『問題点』の部分はすっ飛ばし、「似非科学だと批判されたから、批判し返す」という脊髄反射をしているように見える。
 ……批判を投げ返した先には誰もいないのだが、『似非科学批判批判』にとっては受け取る人のいる・いないは重要ではなく、むしろ「批判し返した」という事実が重要なようだ。

 批判の批判を受け取る相手がいないのだから、更なる反論があるはずもない。それをもって「このところの過激なフードファディズム批判や科学と偽科学のキャンペーンも、アガリクス本の反対バージョンかと笑えてくる」と、勝手な勝利宣言をしている。
 ……壁に向かってぶつぶつ独り言を唱えるのなら、壁相手に勝利宣言するのが筋でないかい?

2. 似非科学批判批判の特徴 その2
 現段階では証明されていない『未科学』と、誤りと証明できる『似非科学』とを混同する。
 少なくとも俺の巡回ルートのブログで、『未科学』=『似非科学』(記事中では偽科学)と一緒くたにしている人はいないし、俺も一緒くたにしたエントリは書いていない……つもりだ。
 後の研究により証明・解明されるのを待つものを『未科学』とするならば、既に数多くの追試を経て証明されている『科学』と明らかに食い違う「科学めいた言説」を垂れ流しているのが『偽科学』『似非科学』として良い。

 具体例になるかな?
 水(H2O)は水素(H2)と酸素(O2)の化合物であり、溶媒として使用できるが、情報を記憶する媒体としては使用できない。この辺りは『科学』として認めてもらえるだろう。

 水に水素を溶かし、記憶力の低下したマウスに投与したところ、記憶力が回復した。これは過去ログでちょっと取り上げた内容だ。事の真偽はこれから行われるかもしれない追試で確認されると期待している。
 これは今後の研究結果を待つものなので、『未科学』と分類できるだろう。

 水に「ありがとう」など綺麗な言葉をかけると氷の結晶は綺麗になり、「ばかやろう」などの汚い言葉をかけると結晶は汚くなる。
 「水からの伝言」で有名(?)なセリフらしい。
 水が情報(この場合、言語)を理解する事はない。またどれだけ優秀な専門家が努力しても、水に記憶力があると証明する事もできない。ただ単に発言するだけなら構わないが、それをあたかも『科学』のように見せかけた実験を行い、結果の写真(何百枚もの写真から目的に適ったものを取捨選択)を出しているので、『似非科学』と分類できる。

 この事例2つをもって、全ての『未科学』と『似非科学』の違いを語れる訳ではないが、おおよその違いは理解できるかと思う。現在未科学とされているものが、後年『科学』となるか『似非科学』となるかは不明だが、『似非科学』が『科学』になる事はまずないと断言できるだろう。

 このように『未科学』と『似非科学』は似て非なるものなのだが、『似非科学批判批判者』の特徴の1つが、この2つを並べて同義に語っている事だ。
 「科学とどのように付き合い、科学されていないもの(未科学とでも呼ぶのか)をどのように評価するのかということになる」の部分に、それが表れている。

3. 似非科学批判批判の特徴 その3
 「似非科学でも、誰かに迷惑がかかる訳ではない/救われている人がいる」

4. 似非科学批判批判の特徴 その4
 「こんな似非科学、基礎教養程度の知識があれば引っかかる人はいない。引っかかる方の自己責任だ」

 #3と#4の主張も時々見かける気がするのだけれど、今回取り上げた過去ログとは関係なさそうなので、別の機会に回す。いつになるかは判らない。
 ……まだ考えがまとまっていないし。
posted by にわか旅人 at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月25日

秋葉原の献血センター

 ちょいと時間が経ってしまったけれど。

   矢吹美貴『メイドさんいる?アキバ献血ルーム支える男性リピーター』読売新聞、2009年2月2日
     http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000029-yom-soci(リンク切れ)
===全文掲載===
 献血者数は近年、全国的に減少が続き、特に冬場は落ち込む。
 そんな中、東京・千代田区のJR秋葉原駅近くにある「アキバ献血ルーム」が盛況だ。開所以来の3年間で、献血者数を1・5倍に伸ばす勢い。アキバの街に足しげく通う男性たちが熱心な「リピーター」となり、血液の需要を支えている。

 秋葉原電気街の中心部に立つオフィスビルの1階。木目調のテーブルと約30席のいすが並ぶ待合室は週末、献血を待つ人で満席になる。本棚はアキバらしく漫画本約800冊でぎっしり。これほどの数になるのは、献血者自身が寄贈してくれるからという。

 先月下旬、土曜日。漫画を開いて順番を待っていた千葉県船橋市の新聞販売店長、佐藤智一さん(29)は「ゲームを買うついでによく寄るんです」と笑顔。献血歴16回のうち13回がアキバルームでの献血だった。

 同ルームが開所したのは2005年6月。「すべてはあれから始まった」と東京都赤十字血液センターの矢沢幸雄広報係長(50)は振り返る。06年3月の1か月間、ルームの宣伝のため、近くのフットケアサロンの女性に来てもらい、献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。

 日本赤十字社本社には「品位がない」と不評の声もあったが、反響は大きく、ネットで知った男性たちが有志を募り、約60人がいっぺんにやってきたことも。メイドのサービスはその時だけだったが、今も「メイドさんは?」と訪ねて来る人がいるという。

 他の献血ルームでも手相やタロット占い、メンタルセラピーなどの無料イベントを行い、献血者を募っているが、アキバでは月1回、手相占いをするだけ。それでも、05年度に約2万2100人だった献血者は、06年度約3万人、07年度約3万4600人と増加。最近ではますます勢いがつき、昨年夏には採血ベッドと問診室を増設したほどだ。

 特徴は男性の比率の高さ。日赤によると、都内の献血者の男女比は6対4ほどで推移しているが、アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。200と400ミリ・リットルのうち、400を選ぶ人が91%(07年)を占め、都内平均を8ポイントも上回っている。買い物や旅行のついでに立ち寄る人が多く、献血者の住所は北海道から沖縄まで。全国でも著名な血液センターになった。

 2か月に1度、買い物に来る度に立ち寄るという群馬県太田市の男性会社員土岐操さん(35)は「人とかかわるのは苦手だけど、献血なら深くかかわらなくても社会貢献できるから」。週末ごとに開かれる声優やアイドルらの無料ライブを見に来る東京都江戸川区の男性会社員(29)は「午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。寝ているだけで良いことをした気分になれる」と話した。
===ここまで===

 秋葉原の献血センターと言えば、JR秋葉原駅とその周辺が改修されるより前、公園横のプレハブ小屋(だったっけ?)を『献血センター』と言っていた頃から、たまに立ち寄っていた。新旧のセンターで合わせて10回近く秋葉原で献血しているはず。
 だけど「足しげく」は通っていない。2008年は年末の1回しか献血に行っていないし、場所もなぜか池袋の献血センターだ。

>献血者にメイド姿で手のマッサージをするサービスを行ったのだ。
 2006年の3月頃は最初の採血の段階で一部の数字が悪く、センターに行っても献血できずにいたのだよなぁ……。
 ……メイドに誘われ、ふらふら中に入っていった記憶はある。残念ながらマッサージはなかった。

   過去ログ
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/19464693.html
     http://tsure-zatsu.seesaa.net/article/36732609.html

>特徴は男性の比率の高さ。(中略)アキバだけは男性が85%に跳ね上がる。
 煩悩全開?
 でもまぁ、輸血用の血液はいつでもどこでも足りないようだし、献血自体悪い事ではないし、問題なし。
 ……献血をHIV他感染症のチェックに使う人は除外する。

>午前と午後のイベントの合間は暇なので、休みがてら献血する。
 何と言うか……秋葉原に来る人達の特徴を良く表しているなぁ、と感心。
 ……俺はイベントには行かないけどな。

 さて。
 昨年末は400mL献血だったので、次回献血ができるのは今年3月になってから。
 PCの周辺機器を買うかどうか迷い中だけど、秋葉原に行く事があったら、久々にここの献血センターにでも行ってみようかな?
posted by にわか旅人 at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月24日

『健康本の世界』が削除された模様

 怪しい団体や似非科学・似非健康本とその著者をかなりの数把握している事で、データベースとして重宝していた『健康本の世界』が、2009年2月22日頃に削除されてしまった……ようだ。2月21日では普通に開けたと記憶しているので、削除されたとすれば22日以降だろう。

   『健康本の世界』跡地
     http://khon.at.infoseek.co.jp/

 ……更新中で見えなくなっているだけかもしれないので、とりあえず「ようだ」としておく。

 『健康本の世界』との関連の有無は知らない。
 Wikipediaからはニセ勲章『ザンテ・聖デニス・ギリシャ勲章』の項目が、2009年2月15日から削除対象に上げられている。

   Wikipedia『ザンテ・聖デニス・ギリシャ勲章』
     http://xurl.jp/h0l

 削除の理由は、ソースとしたサイト(の1つがなぜかこのブログ)の中立的視点に問題あり、との事らしい。

 勿論、『健康本の世界』でも当該ニセ勲章を網羅していたので、削除された日にちの近さもあり、何か関係でもあるのかと疑ってしまった。
 ……ざっと調べたところでは、関係はなさそうだ。偶然らしい。

 『健康本の世界』は良くも悪くも、あちこちの業者・個人から削除依頼を受けていたし、管理人氏もいつサイトを丸ごと削除されるか判らないような事を書いていた。その懸念していた日がついに来てしまった、という事かねぇ?
 ……本当に削除されてしまったのなら、とても残念な話だ。
posted by にわか旅人 at 01:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 表現規制 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月11日

自閉症の原因にワクチンは関係ない

 前回紹介したムーパパ氏のブログだが、2009年1月下旬に削除されてしまった。かれこれ3年更新せずに放置していたから、プロバイダの方で削除したのだろうか。
 ……当ブログでも取り上げている『ナチュラルクリニック代々木』の話もあり、色々と参考にしたかっただけに残念な事だ。

 さて。
 前回は自閉症とキレーション治療の関係について、つらつらと書き連ねてみた。その中で、「自閉症の原因は水銀の蓄積である」旨の風説が流布されていると、ちらと述べた。
 この時は、「予防接種ワクチン(に使われている水銀)が自閉症の原因だ」と主張するサイトはいくつか見つけていたものの、主旨から外れていたので詳しくは調べていなかった。
 それが今月になり2件の関連するサイトが出てきたので、とりあえず紹介する事にした。3つ目は、『忘却からの帰還』で取り上げていた元記事。
 ……NATROM氏のブックマークに感謝。

  『ワクチンと自閉症:多くの仮説があるが何の相関もない』食品安全情報blog、2009年2月2日
     http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090202#p1
  『「自閉症とMMRワクチンの関連を示す」論文のデータがフェイクだった by Times』忘却からの帰還、2009年2月9日
     http://transact.seesaa.net/article/113887944.html
  Brian Deer “MMR doctor Andrew Wakefield fixed data on autism” The Sunday Times, February 8, 2009.
     http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article5683671.ece

 これらによると、だ。
 ワクチンが自閉症の原因だと発表したのはAndrew Wakefieldと研究チームで、その論文は1998年2月の『The Lancet Medical Journal』にて掲載された。
 予防接種を受けた12人中8人の子供の家族が、自閉症の原因はMMR(新三種混合)ワクチンの接種後数日で、自閉症の症状が出てきたと言うものだ。

 実はこの論文、Lancet誌は後日取り消している。
  『英医学雑誌が「ワクチンと自閉症の関連示した論文の掲載は誤り」と発表』A Forward-looking Child Psychiatrist、2004年3月5日
  http://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/C174902512/E367309562/index.html

 しかしながら、Lancet誌のこの論文が火付け役となり、自閉症の原因は予防接種ワクチンに在りとする「いわゆるカルト」の土壌ができあがったのだろう……とは、俺の勝手な想像。
 ……死に直結しない自閉症を避けるために、子供の生死に関わるリスク回避を怠る行為は、優先順位の選択ではなくて虐待の一種だろ? しかもこれは1児童・1家族の問題でなく、地域全体の問題にもなりかねない……「反社会的な宗教団体」という事で、ここではカルトと言わせてもらった。

 「ワクチン有害説」「ワクチン否定論」の走りとなったWakefieldの論文に話を戻す。
 対象が12人と少数なだけでも信頼性は薄いと思うのだが、Deerの記事によると、元となった12人のデータが、実はねつ造だったらしい。
 WakefieldらがLancet誌に掲載した12人の症状と、病院側で調査した12人の症状は異なっていたと言うのだ。論文ではワクチン接種後に自閉症の症状が出たと書いてあったのが、病院の調査では、1人を除きワクチンを接種する前から症状は出ていたそうだ。
 ……Wakefieldはねつ造については否定しているが、2004年のBBC Newsの記事によると、ワクチンで自閉症になったと訴訟中の家族から研究費用をもらっていたようなので、どの程度の信頼性があるのやら……。

   “MMR study doctor calls for probe” BBC News, February 22, 2004.
     http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/3512079.stm

 とは言え。
 ワクチンと自閉症とは無関係だとする論文は、Wakefieldの後にもいくつも出ていたのに、「ワクチン原因説」を信じる人はいる。今さら元の論文がデマだと知れたところで、その人達がこれまでの信仰を変えたりはしないだろうな。
 ……そしてそれに便乗して、キレーション治療など効果の期待できない「いかがわしい医療」で商売する医師・医学博士の跳梁跋扈も。

 最後に。
 前回のエントリでは、「子供が自閉症になった原因が、自分達の遺伝的特質にあるのを認めたくないから、自責感を避ける方便に水銀に原因を押し付けている」という旨の一文を書いた。

 『忘却からの帰還』では、「ワクチン否定論者」がワクチン否定論を信じたがる別の説明をしている。
===引用開始===
人間の精神は、世界はランダムであると考えるよりも、神秘的で目に見えない力が秘かに働いていると信じたがる。そして、あらゆるデータに、人々は誤ったパターンを見出し、株式市場にトレンドを見出し、なじみの人間に陰謀を見出す。コントロールを失うと、たとえそれが空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求め、合理的な人々が実際には存在しないパターンを見出すようになる。
   (中略)
このような人間の推論傾向を思えば、「たまたま、自分たちの子供が自閉症の遺伝要因を持っていた」と考えるよりも「製薬会社の製造したワクチンによって、自分たちの子供が自閉症になった」と考える方が自然である。
===ここまで===

 ……なるほど。陰謀論者の思考の可能性もあるか。
 ただし陰謀論に踏み込んだ話は、個人的には勘弁してほしいところ。
 ……巡回先の似非科学批判のブログに出没する陰謀論者のコメント内容が、俺には理解不能なので。
posted by にわか旅人 at 14:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月01日

自閉症とキレーション治療

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて。
 読んでいて少々気になるブログを見つけた。似非科学や似非医療に引っかかった人で、自閉症の子供を持つ父親(ムーパパ)のブログだ。

自閉症のサプリメント
   http://diary.jp.aol.com/agknumd7/

 藁にもすがりたい気持ちから似非科学に引っかかったと言うより、科学リテラシーの著しい欠落が原因で引っかかってしまったという印象を受けた。本人に自覚はないのだろうが、洗脳され搾取されていく様が痛々しい。
 ……2006年1月の更新が最後になっているが、果たして元気でいるのだろうか?

 良い歳をした大人が、知識不足から変なものに引っかかるのは、半分自己責任のようなものだろう。問題は、似非科学に引っかかった親のせいで、子供が虐待される事だ。
 ……殴る蹴るだけが虐待ではなく、医学的根拠のない試験の結果を元に、これまた医学的根拠のない商品を飲食させるというのも、虐待の一種だろ?

 虐待云々の話は、とりあえずここでは触れないとして。
 ムーパパが子供の治療の「つもり」で取り組んでいる1つが『キレーション療法』だ。

 『日本キレーション治療普及協会』の説明によると、だ。
   http://www.chelation.jp/therapy/therapy.html
===引用開始===
EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と呼ばれる合成アミノ酸をビタミンやミネラルと共に定期的に点滴する治療方法です。EDTAが金属イオンをキール(ギリシャ語でカニのはさみ)のように掴みとり結合する性質から、キレーションという名前がついたと言われています。

EDTAキレーション治療は、有害金属を取り除く効果があり、抗酸化作用により血管を若返らせ、細胞を活性化する効果があります。抗加齢医学の領域でキレーション治療が注目される理由として、動脈硬化治療効果や有害金属除去による様々な変性疾患の予防と治療効果が期待できる点が挙げられます。
===ここまで===

 キレーションの名前の由来については間違っていない。
 キレートと言うのは、1つの金属イオンに対し2箇所以上で塩になる場合だったような……記憶が曖昧。

 キレーションにより有害金属を取り除くとあるが、キレート剤が有害金属(何をもって「有害」とするのかは不明)と選択的に結合し、体外に排出されるという仕組みに、根拠のある文献は俺がざっと調べた範囲では、鉛以外には見当たらなかった。
 ……鉛中毒患者の治療には使用されているようだが、鉛以外の重金属中毒の治療にも有効と示唆する文献は見つけられなかった。

Ogawa M, Nakajima Y, Kubota R, Endo Y. « Two Cases of Acute Lead Poisoning due to Occupational Exposure to Lead.” Clinical Toxicology, 2008 Apr; 46(4):332-5.
   http://mo-v.jp/?e3db

 ましてやキレーションによる抗酸化作用や、細胞を活性化させるという説明に、根拠の有無を問うまでもない。

 さて。
 このキレーション治療は、ムーパパの例のように、身内(特に子供)に自閉症を持つ家族にかなり広まっているらしい。自閉症の原因が重金属(水銀、Hg)の蓄積によるものと信じているようだ。
 ……水銀原因説を唱えているのは、俺の見たところ「怪しい」サイトが多い。

 自閉児の親からすれば、人並みにしてやりたいという気持ちもあるだろうし、その気持ちを否定するつもりはない。藁にもすがる思いで、この手の耳に心地良く聞こえる似非医療に手を出す気持ちは……残念ながら親ではないので共感できない。
 ……自閉症は先天性のものだそうで、親の自責感を避ける方便に水銀に責任を押し付けるのであれば、なおさらに親の気持ちに共感はできない。

 自閉症の原因はともかく。
 万が一キレーション治療で自閉症が改善されるのであれば、結果を裏付けるデータを取り、正規の医療につなげれば良い。
 しかし実際は、親(あるいは家族や本人)の弱みに付け込んだ商売なので、知見データなどあるはずがなく、自閉症児を持つ家族を称する人の体験談が目につく。

 科学的な根拠がないという事は、平たく言えば、安全性も危険性も確認されていない「医療の真似事」な訳で、実際、キレーション治療は「安全」とは言い難いようだ。キレーション治療が直接の原因ではないが、処方ミスによる死亡例が子供(2歳と5歳)で2件、大人で1件ある。
 ……5歳児の方は自閉症があったという話だから、親が治療目的でキレーション治療を受けさせていたのでは、とは俺の勝手な憶測。

“FDA Links Child Deaths to Chelation Therapy. Drug used to treat lead, mercury poisoning; often used for autism” MSNBC March 2, 2006.
  http://www.msnbc.msn.com/id/11640868/
Centers for Disease Control and Prevention “Deaths Associated with Hypocalcemia from Chelation Therapy --- Texas, Pennsylvania, and Oregon, 20032005” March 3, 2006. / 55(08); 204-207
   http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5508a3.htm

 報告によると、子供2人の死因となった処方ミスとは、同じEDTA塩(?)でもNa塩かCa塩かの違いで、どちらも医療施設には普通にある薬品らしい。ただしNa2EDTAは、子供の重金属中毒には使われないらしい。
 ……キレーション療法ではCaEDTAの方を使うようだが、どちらのEDTAにせよ、水銀中毒とその解毒作用に、科学的な根拠はない。

 「EDTAによる水銀の解毒作用」に科学的な根拠はないが、「水銀と自閉症」の関係を「否定する」資料なら見つかった。

Patrick Ip, Virginia Wong, Marco Ho, Joseph Lee, and Wilfred Wong, “Mercury Exposure in Children With Autistic Spectrum Disorder: Case-Control Study” Journal of Child Neurology, Vol. 19, No. 6, 431-434 (2004)
   http://jcn.sagepub.com/cgi/content/abstract/19/6/431

 こちらの資料によると、2000年に5ヶ月間に渡るコホート調査を行っている。
 対象としたのは82人の自閉症児(平均年齢7.2歳)で、55人の定型発達児(平均年齢7.8歳)の、毛髪と血液中の水銀量を計測・比較している。
 自閉症児の血液中の水銀量が平均19.53 nmol/Lなのに対し、定型発達児は17.68 nmol/L。毛髪分析では自閉症児が2.26 ppmなのに対して定型発達児2.07 ppmと、数値は誤差の範囲内であるとしている。
 つまり、水銀と自閉症に関連はないという結論だ。
 ……2004年の文献なので、新しい文献が出ている可能性はある。

 ちなみに毛髪検査に医学的な根拠はない。

 そもそも、なぜ「水銀が体内(主に脳)に蓄積すると自閉症になる」という与太話が出回っているのか、その出所が不明瞭なのだよな。
 ……定型発達者と比較して、自閉症者の脳から有意差のある水銀が測定された、という報告はないようだ。

 検索してみると、日本では2004年3月にTBSの『報道特集』で自閉症の治療としてキレーション治療が紹介されたようだ。
 ……あらかじめ言うまでもなく、自閉症を真面目に取り扱う組織からは、放送内容を否定されている。

NPO法人東京都自閉症協会『自閉症と水銀中毒について―キレート療法は有効か』
   http://www.autism.jp/etc_suigin.html
千葉県自閉症協会『TBSテレビ報道特集「自閉症の原因は水銀?」について』2004年3月14日
   http://www.interq.or.jp/japan/aschiba/tbs_autism_mercury.html
矢崎史郎『自閉症と水銀−TBS報道特集を斬る−』
   http://www.geocities.jp/symyky1019/Autism-mercury.htm

 TBSが取り上げる前でも、キレーション治療が自閉症に有効だとの与太話はあった訳で、似非医療としてのキレーション治療は、1960年代まで遡る。
 ……60年代において既に、キレーション治療推奨者らが主張する効果はないとの報告は上げられているし、何年か毎にこまめにキレーション療法の効果を否定する報告は提出されている。

Green, Saul “Chelation Therapy: Unproven Claims and Unsound Theories” Quackwatch
   http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/chelation.html
American Heart Association “Questions and Answers about Chelation Therapy”
   http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3000843

 ただし90年代辺りまでは、キレーション治療は心臓病などの疾患に効果があるとしていたようで、自閉症との関係は言われていなかったように見受けられる。
 ……1989年にFDAとAmerican Heart Associationのレポートから、『10大健康詐欺』の1つとしてキレーション治療が取り上げられたのを境に、自閉症治療に移行したのではないかと、俺の勝手な憶測。

 キレーション治療が自閉症の治療(他に解毒作用)に効果があると主張するのであれば、キレーション療法を推奨する団体や医師・医学博士は両手でも足りない程いるのだから、誰かが文献にまとめて提出すれば良い。
 にも関わらず、キレート療法の効果と安全性についての研究をしている業者はいないようで、太っ腹にもThe National Institutes of Health (NIH)が研究費用をねん出したらしい。

Atwood KC, Woeckner E, Baratz RS, Sampson WI. “Why the NIH Trial to Assess Chelation Therapy (TACT) should be abandoned.” Medscape Journal of Medicine, 2008 May 13;10(5):115.
     http://mo-v.jp/?e3dd

 Atwoodらは、始めからキレーション療法の有効性の研究をする必要はないと説いていたらしいけれど、キレーション療法を信じる側の勢いを止める事は出来なかったということか。
 この調査は2009年に終わる予定だ。

 これ以上続けると、自閉症とは関係がなくなってくるので終わりにする。

 とりあえず。
 素人の俺が調べても、これだけ資料が出てくるのだから、キレーション治療がいかに胡散臭い、もっと言ってしまえば「いかがわしい」治療なのかは判りそうなものだ。
 それでもこの治療法に手を出す自閉症児を持つ親は、十分な情報が得られないからではなく、進んで自分の子供を人体実験にしているか、虐待しているように見える。

 一番悪いのは、そういう親の弱みに付け込んで、期待すらできない医療やサプリメントを売り物にしている業者だとしても、ね。
posted by にわか旅人 at 19:47| Comment(1) | TrackBack(0) | 健康増進? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月05日

樹液シートで足裏から毒素排出

 肩こりや慢性的な倦怠感、その他の体調不良の原因の多くは、体内に蓄積された毒素によるものだ。体調を良くするためには、この毒素を体外に排出する必要がある。排出のための最適な器官が、「第2の心臓」と言われる足の裏だ。
 毒素は全身のつぼが集中する足の裏を通じ、体外に排出されるが、その排出能力を一層高めるのが、ハーブ、天然岩石の粉末その他、各種の天然素材のパワーを閉じ込めた「樹液シート」だ。
 寝る前に樹液シートを足裏に貼ると、シート内の天然成分が足裏のつぼを刺激し、毒素を体外に吸い出してくれる。
 その効果の程は、翌朝にシートがどれほど変色しているかを見てみれば明らかだ。シートを変色させたのが、体外から排出された毒素だ。


 俺の回りでは2、3年前に話題になり、今や聞くことのなくなった似非科学商品に『樹液シート』なるものがある。『足裏シート』や他の呼び名もあるらしいが、ここではとりあえず「就寝前に足裏に貼ると、寝ている間に足裏から毒素を吸い出す」という触れ込みの健康グッズを『樹液シート』で統一しておく。

 実は『樹液シート』をネタで買った事がある。ハーブとトルマリン粉末か何かが入っていて、マイナスイオンの効果でナンチャラという触れ込みのあった商品だ。
 使ってみたところ、確かに一夜明ければ樹液シートの色は変わっていた。でも身体の調子や気分が良くなったという事はない。
 それどころか、「これって汗を吸って色が変わっただけだよなぁ」と、染み出てきた液体と糊で汚れた足裏を見つめ、朝から空しい気分になってしまったのは良い思い出……か?
 ……あくまで俺の体験談。ひょっとしたら、プラシーボ効果で気分の良くなれる人がいるかもしれない。

 そもそも、ここで言われる「毒素」が不明なのだよな。
 重金属だとかホルムアルデヒドだとか、その他にも幾つもの「いわゆる毒物」の名前なら時々聞いたけれど、実際に足裏から排出されたというデータは、少なくとも俺が見て回った樹液シートのパッケージにはなかった……と思う。
 ……まぁ、毒素は肝臓で無毒化されて、ほとんどは尿や便で排出されるのだから、排泄器官でもない足裏から、そのような物が出てくると考える方がどうかしている。

 マツキヨで買った樹液シートの経験が、果たして価格に見合う価値があったのかどうかはともかく。
 ……同じ箱の中身で、左右に貼ったシートの色が違っていた時は吹いた。

 ネタで購入した樹液シートが、同じ商品でありながら左右で違う色になった事で、販売していた企業に電話をした。念のため言っておけば、クレームではない。返品はしなかったし、返金も要求していない。1消費者として至極ていねいに、とても当たり前の質問をしただけだ。

 まず先に。
 本当に毒素が排出されているなら、左右で色が大きく変わるとはちょっと考えにくい。左右で蓄積されている「毒素」が別々な訳ないだろうしね。片方が赤茶色、もう一方が抹茶色だったかな?
 左右の色の違いの理由を問い合わせたところ、「わかりません」の回答だった。

 次に。
 俺の知識では、体内の毒素は肝臓で無毒化されて体外に排出されるはず。なぜ足の裏から毒素が排出されるのか、その毒素の種類についても、問い合わせてみた。
 出てきた回答は……「わかりません」「知りません」あたりの要領を得ないものだったと記憶している。
 ……いやいや。毒素を足裏から吸い出していると、パッケージに書いていたのはあんたらだろうが……。
 まぁこれで笑える回答が出ていたら、速攻でブログネタにしていたかもしれない。

 さて。
 余りにもあからさまな似非科学……と言うか「おもしろ似非健康グッズ」な乗りに、当時はこのブログで取り上げる気もなれなかったのだが、この手の商品が海外に輸出されていると遅ればせながら知ったので、慌ててエントリを書いてみることにした。
 メインのソースはQuackwatchと、そこに貼られているリンクだ。
   Stephen Barrett “The Detox Foot Pad ScamQuackwatch, August 23, 20008.
     http://www.devicewatch.org/reports/kinoki.shtml

 ……「おもしろ似非健康グッズ」と書いたが、あくまで、この手の商品には何ら医学的・科学的な根拠がなく、悪くてもせいぜい足が糊でかぶれる程度の効果しか期待できないと理解して、購入するならの話だ。何らかの効果を期待して、受けている治療を拒絶するような人が万が一にもいる可能性を考慮すると、「おもしろ」いと言っていられないのが現状だろう。

 話を戻す。
 全米で一番有名な『樹液シート』……なのかどうかは知らないが、後で紹介する記事でも名前入りで報道されていた位だから、それなりの知名度はあるのだろう……が「Kinoki Foot Pads」という商品だ。
     http://www.buykinoki.com/
 ……2008年10月5日現在、Kinoki社の「Foot Pads」はオーダーフォームしかないが、9月下旬までは商品の画像も紹介されていた。

 そしてこちらが、Amazonで販売している『樹液シート』
     http://xurl.jp/0nd
 ……購入は自由だけど、お金の無駄なのであまりお薦めはしない。
 とりあえず「Foot Pads」と「樹液シート」が同じ種類の商品を指していると理解してもらえれば良い。

 とは言え。
 この手の商品を肯定する人達からすれば、「アメリカにも輸出されているのだから、効果は本物だ」と胸を張って俺の発言は誤りだと指摘したくなるかもしれない。
 ……樹液シートの効果を云々する前に、足裏から排出される『毒素』と、排出のメカニズムをきっちりと説明してもらいたいものだ。

 しかし肯定する人達には残念な事に、この手の商品が似非科学であると、あちらのTV番組でも報道されるに至っている。
   John Stossel “Ridding Yourself of Toxins, or Money? Company Says Kinoki Foot Pads' Capture Toxins From Your Body'” ABC News, April 11, 2008.
     http://abcnews.go.com/Health/Stossel/Story?id=4636224&page=1
 と言うか、俺の知る範囲では日本では話にも上がっていないのに比べれば、あちらの食いつきはなかなかに良い。

 しかもKinoki社は一方的に否定する報道をされたのではなく、毒素その他を排出する根拠を教えてほしいとの要望に、科学的根拠のある資料を出さなかったし、インタビューにも応じなかったと言うのだから、どのように解釈されても仕方あるまい。
 ……似非科学な商品の常として、科学的根拠を問われると、意味不明な大量の体験談ばかり出してくる日本の業者とは少し違うかも。

 似非科学に対する日米の企業とマスコミの対応の差はさておき。
 俺が販売会社に問い合わせても詳細の不明だった「毒素」だが、上述の報道では、重金属他、23種類の溶媒を含めた成分分析をしたとある。
 ……訳はうまくないが、意味は通じると思う。
===引用開始===
The lab tested for a lot of things, including heavy metals like arsenic and mercury and 23 solvents, including benzene, tolulene and styrene and found none of these on the used pads.

訳)研究室でヒ素や水銀などの重金属、及びベンゼン、トルエン、スチレンなど23種類の溶媒の多くの試験を行ったところ、前述のいかなる成分も使用済みシートからは検出されなかった。
===ここまで===

 ……はて?
 樹液シートは体内の毒素(重金属やら何やら)を足の裏から吸い出すのだよな? それがまったく検出できなかったって? それじゃあ、いったい何を吸い出しているのだ?
 ……やっぱり、汗……しかないわな。

 そしてABC Newsでの報道の後、とあるラジオ局でも似たような調査を行ったらしい。下記の引用文はQuackwatchからのもの。
===引用開始===
she had her husband wear pads overnight and then too them to a laboratory for testing. The lab found that the heavy metal content of the used pads were the same as that of an unused pad, which meant that the pads don't "suck out any toxins." Then she held an unused pad over a pot of boiling water. The steam caused the pad to turn black, indicating that the dark color that results from wearing a Kinoki pad is caused by a chemical in the pad that reacts to moisture.

訳)彼女(ラジオの人)は夫にシートを一晩貼り付けさせた後、研究所で分析した。研究室では使用済みシートと未使用シートの重金属の濃度に変化を観察できず、これはすなわち、シートが「毒素を吸い出して」などいないという意味である。次いで彼女は、未使用のシートを沸騰したお湯を入れたやかんにかざしてみた。蒸気によりシートが黒く変色したことで、Kinoki社の樹液シートが変色するのは、中の成分が湿気と反応するからだと結論できた。
===ここまで===

 ……化学反応での何でもなく、乾燥した粉末に水分が加わると、粘度と色が出てくるのと同じ理屈だと思うぞ。別の樹液シートを使用した経験から言って。

 さてさて。
 このエントリの頭から断言している事だけれど、化学名すらはっきりしない「毒素」が足裏から排出されるなどまずあり得ないし、足裏がそんなに大事なら、一部の身体障害者らは毒素を排出できずに毎日生死の境をさ迷っている訳で……と言うか、肝臓なんかいらないだろ。

 別のエントリでも書いたことを、ここでもう一度書いておく。
 ……肝臓以外の個所で解毒できる器用な人達は、それのできない不器用な人達に肝臓を譲ってくれ。
posted by にわか旅人 at 15:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 似非科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする